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出願商標「レゴ図形」拒絶審決取消請求事件:東京高裁平成12(行ケ)101号.平成13年2月28日判決 (認容)〔13民部〕

〔キーワード〕 
自他商品の識別力、ブロック玩具、使用による識別力

 

〔事  実〕

 

 原告(レゴ・システム・AS)は、本願商標を、第24類の「おもちゃ、その他」の商品を指定してわが国特許庁に、1987年4月7日にデンマーク特許庁に出願したものに基く優先権主張によって出願した。しかし、わが国特許庁は審査においても審判においても拒絶した。その理由は、本願商標は商標法3条1項3号に該当する自他商品 の識別力がなく、出願人提出の証拠によっても、同条2項の要件を 具備するには至っていないというものであった。

 

〔判  断〕

 

1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について
 本願商標の構成は、ほぼ正方形の枠内に、直方体のブロックを斜め上方から見た図形を斜めに配して表示するとともに、当該ブロックの上面に4個ずつ2列の丸い突起を規則的に配し、枠内背景を赤色に、ブロックの周囲を縁取り状に黄色に塗り分けたものである。
 他方、株式会社講談社発行の「日本語大辞典」(乙1)、株式会 社河田発行のブロックおもちゃの包装箱の貼付シール等(乙2の1〜3)、マスセット株式会社発行のブロックおもちゃのカタログ(乙4)及び株式会社主婦の友社発行のブロックおもちゃのカタログ(乙5)によれば、「プラスチック製の小さな直方体で、上下の凹凸に 一個一個がしっかりとはまりこむ」ブロックおもちゃは、我が国において一般的な玩具の一種であって、そのブロックの形状としては、直方体の上面に複数の丸い突起を配した形態が一般的で、当該突起の配列として4個ずつ2列とするものもごく普通に見られるものであること、また、ブロックの縦、横、高さの比率等においても、本願商標に表示されているブロックは他社製品のものと大差がないこと、この種のブロックおもちゃの包装箱等に、「部品の種類」などとして各種のブロックの形状を斜め上方から見た図形で表示することも広く行われていることが認められる。
 以上の事実に照らすと、本願商標の構成要素であるブロックの図形は、一般的に広く知られているこの種のブロックおもちゃにおける典型的なブロックの形状の一つを表示したもので、本願商標におけるほぼ正方形の枠及び枠内の赤色の彩色は、主要な構成部分であるブロックの図形の背景を示すもの、ブロックの周囲を縁取り状に黄色く彩色している点も、ブロックを強調する配色と解されるから、これらの枠や彩色という要素が付加されているにしても、本願商標の図形は、ブロックおもちゃにおけるブロックの図形を、普通に用いられる方法で表示するものというべきである。
 なお、原告は、本願商標が原告のハウスマークであるLEGO標章と構成の軌を一にする旨主張するが、両者は、ロゴ化された「LEGO」の文字とブロックの図形という両標章の最も本質的な部分で全く異なった構成となっており、LEGO標章の存在及び原告主張の両者の相似性は、前記認定を左右するものではない。
 そうすると、本願商標は、その指定商品である「ブロックおもちゃ、組立おもちゃ」の品質(部品の種類及び形状)を普通に用いられる方法で表示する標章のみから成る商標というべきであり、これが商標法3条1項3号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について
(1) 原告商品の包装箱(甲7〜13)、株式会社伊勢丹ほかの販売店
作成の証明書(甲14〜19)、協同広告株式会社作成の広告宣伝証明書(甲20)、原告作成のテレビCM出稿実績その他の集計表(甲21の1〜3、24、27)、テレビCM画像(甲25、26)、レゴジャパン株式会社代表者作成の陳述書(甲28)及び在日デンマーク国大使ピーター・ブルックナー作成の書簡(甲29)によれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、1962年(昭和37年)、日本における原告製品の販売を開始し、昭和53年1月に日本の子会社であるレゴ・ジャパン株式会 社(旧商号・日本レゴ株式会社)を設立してからは、同社が原告製品を輸入販売するようになり、現在、原告製品は、トイザラスほかの玩具専門店、イトーヨーカ堂ほかのスーパーマーケット、高島屋、三越、西武ほかの百貨店、その他玩具を取り扱う全国の主要店舗で販売されており、原告製品を取り扱う店舗総数は3632店に上る。
イ 原告製品には必ずLEGO標章が付されているが、本願商標は、原告製品のうち「基本セット」と呼ばれるセット商品にLEGO標章とともに付されて販売されており、その販売数量は、平成7年 〜平成12年の間だけでも、セット商品である品番4132が3万5005個 、同4135が2万4873個、同4198が10万5242個、同4244が28万6400個 、同4225が3万6361個等に及んでいる。なお、現在の我が国におけ るブロックおもちゃ市場における原告製品の占有率は約80%に達する。
ウ また、原告製品については活発な広告宣伝が行われており、そのテレビCM本数は、平成4年〜平成11年の間に15秒スポットのも のが1万5116本、30秒スポットのものが7221本に上り、少なくとも その一部には、やや見にくい角度ながら原告製品に本願商標が付された状況も映し出されている。
エ 本願商標の使用形態は、原告製品の包装箱等に、おおむねLEGO標章に準ずる体裁(例えば、箱の正面の左上部にLEGO標章、横面のこれに対応する左上部に本願商標をそれぞれ付するなど)で使用されており、構成部品の種類を説明するための表示とは、大きさ、配色、表示位置等から明確に区別 されている。
(2) 以上の事実を総合すれば、本願商標は、その指定商品「ブロックおもちゃ、組立おもちゃ」について使用をされた結果、審決時までには、需要者が原告の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めるのが相当であるから、これに反し、本願商標について商標法3条2項に規定する要件を具備するに至っていないとした審決の判断は誤りというべきである。

〔研  究〕

1. 「レゴ(LEGO)」と聞いたり言ったりすると、子供や子供を持つ親達は、その形態ないしデザインを直に想起することができる。今日では、ブロック玩具を代表する商標である。しかし、この「レゴ」のデザインを図形として商標登録の出願をしても、わが国特許庁では拒絶されて来た。そして、ようやく登録の灯が見えてきたのが本件判決である。
 この図形標章がわが国に出願されたのは1987年(昭和62年)9月22日であるから、立体商標登録制度が導入される前であったが、い わば立体商標といえる本願商標は、多方面からの周知証明書等が特許庁に提出されたことから、これで十分周知性証明がなされたと高裁は認定し、法3条2項の適用が認められる商標と判断したのである。
2. 立体商標についての出願を審査している現在の特許庁においては、商品の形態を表現した図形標章について、その形態に特徴があると需要者に見られていても、法3条1項3号が適用され拒絶される ものが殆んどであるようだ。しかし、周知性の証明が十分なされた場合には登録もされている。
 立体商標の登録制度は、いわば不正競争防止法を補完する制度といってもよく、同法2条1項1号で保護できるような商品等表示(商 品形態)を、商標登録することによって明確に保護を与えようとしたものと考えられる。
 とすれば、意匠権が消滅したデザインについても不競法2条1項1 号による保護が与えられる要件を具備しているものであれば、さらに商標法3条2項によって商標登録することも十分可能ということになろう。しかし、この問題については、別稿で研究しなければならない問題である。

[牛木理一]