G-43

登録商標「国際自由学園」無効審決取消請求事件:知財高裁平17(行ケ)10613号平成17年12月27日判決(審決取消・登録無効)〔特許ニュース2006年1月27日号〕

〔キーワード〕
他人の著名な略称,周知の主体,商標法4条1項8号

〔主 文〕
1.特許庁が無効2003−35230号事件について、平成16年3月15日にした審決を取り消す。
2.訴訟の総費用は被告の負担とする。

〔事案の概要〕
 本件は、被告が商標権者である後記商標登録について、原告が無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、原告がその取消しを求めた事案である。
 本件訴訟は、平成16年4月20日に東京高等裁判所に提訴され、同裁判所は平成16年8月31日請求棄却の判決(以下「前判決」という。)をしたが、原告がこれを不服として上告し、最高裁判所が平成17年7月22日前判決を破棄して当庁に差し戻す判決(以下「上告審判決」という。)をしたので、当庁において再び審理することとなったものである。
 被告は、次のとおりの内容を有する登録第4153893号商標(以下「本件商標」という。甲1,2)の商標権者である。
 (商標)


 
(指定役務)第41類
「技芸・スポーツ又は知識の教授,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催」
(出願日)平成8年4月26日
(登録査定)平成10年4月30日
(登録日)平成10年6月5日


〔判  断〕
1 請求原因(1)(手続の経緯)及び(2)(本件審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
 また原告は,後記のとおり,大正10年の創立以来「自由学園」なる名称ないし商標を使用し続けているが,未登録であったため,平成14年11月27日出願し,平成15年7月1日の登録査定を経て,平成15年7月18日,商標登録第4693228号として,下記内容の商標権を取得している(乙1の1〜5)。
(商標)
 自由学園(標準文字)
(指定役務)第41類
「技芸・スポーツ又は知識の教授,当せん金付証票の発売,献体に関する情報の提供,献体の手配,セミナーの企画・運営又は開催,動物の調教,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,映像機器・音声機器等の機器であって放送番組の制作のために使用されるものの操作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),競馬の企画・運営又は開催,競輪の企画・運営又は開催,競艇の企画・運営又は開催,小型自動車競走の企画・運営又は開催,音響用又は映像用のスタジオの提供,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,楽器の貸与,運動用具の貸与,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与,書画の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」
 一方,株式会社スクリプト(東京都千代田区(以下省略))が商標権者である下記内容を有する商標登録第4145910号(出願平成8年4月9日,登録平成10年5月15日)につき,原告が特許庁に対し,法4条1項10号,15号,8号及び19号に該当する無効事由があるとして無効審判請求をしたところ,特許庁は平成16年6月4日,スクリプト社の前記商標は法8号及び15号に違反して登録されたから無効であると判断したが,8号該当とした理由は,学校法人自由学園は,「大正10年(1921年)4月15日に羽仁吉一・もと子夫婦により,東京目白(現在の豊島区西池袋)に女子のための中等教育を行う学校として創立されたことが認められる。その後,「自由学園」の名称は,請求人により大正10年から現在に至るまで80年以上の永きにわたり,一貫して「教育(知識の教授)」及び教育に関連する役務について使用され,そして,「自由学園」における教育のユニークさは,国内外で評判を呼び,古くから新聞・雑誌等のマスコミや,各種書籍等に取り上げられてきたことが認められる。してみれば,「自由学園」が請求人が運営する学校名及び請求人の略称として,また,請求人が提供する役務(知識の教授,他)についての商標として,本件商標の出願日(平成8年4月9日)より,はるか以前から,わが国において広く知られていたことが認められる」としたものである(甲411,乙13の2)。

(商標)
 東京自由学園
(指定役務)第41類
「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),能力開発に関するセミナーその他のセミナーの企画・運営又は開催」
2 当裁判所の審理範囲
 本件審決の取消しを求める本件訴訟は,前記のとおり,東京高等裁判所から平成16年8月31日に原告の請求を棄却する旨の判決がなされたが,上告審たる最高裁判所において,原告からの法4条1項8号に関する上告受理申立て理由のみが受理されて(それ以外の上告受理申立て理由は排除された。),平成17年7月22日,東京高等裁判所の前判決を破棄し本件訴訟を当庁(知的財産高等裁判所)に差し戻すとしたものである。
 すなわち,前記上告審判決は,
「(1) 被上告人は,「国際自由学園」の文字を横書きして成り,指定役務を商標法施行令(平成13年政令第265号による改正前のもの)別表第1の第41類の区分に属する「技芸・スポーツ又は知識の教授,研究用教材に関する情報の提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催」とする登録第4153893号の登録商標(平成8年4月26日商標登録出願,平成10年6月5日商標権の設定の登録。以下,この商標を「本件商標」といい,その商標登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である。被上告人は,神戸市に主たる事務所を置く学校法人であり,名称を「国際自由学園」とするビジネス専修学校の経営主体である。同学校は,昭和61年に技能教育のための施設として文部大臣の指定を受け,本校を兵庫県芦屋市に置き,開校時から平成4年までは東京都内の,それ以降は北海道内の通信制高等学校の技能連携校となって,高等学校の通信制課程に在籍する生徒に対してコンピュータ,経営,貿易関係等の授業を実施するなどしている。
 (2) 上告人は,大正10年,東京府目白(現在の東京都豊島区(以下省略))において,女子のための中等教育機関として設立され,その後,初等部を設立し,現在の東京都東久留米市に移転し,男子部,幼児生活団,最高学部が開設されるなどして一貫教育校となり,現在に至っている。上告人は,その名称である「学校法人自由学園」の略称「自由学園」(以下「上告人略称」という。)を,大正10年以来,教育(知識の教授)及びこれに関連する役務に使用している。上告人は,設立のころから本件商標の商標登録出願時に至るまで,各種の書籍,新聞,雑誌,テレビ等で度々取り上げられており,これらの記事等において,上告人を示す名称として上告人略称が用いられている。ただし,これらの記事等の多くは,上告人が,大正時代の日本を代表する先駆的な女性思想家である羽仁もと子及びその夫の吉一により,キリスト教精神,自由主義教育思想に基づく理想の教育を実現するために設立されたものであるという歴史的経緯や,上告人の独自の教育理念,教育内容に関するものであり,また,主として教育関係者等の知識人を対象とするものであって,学生,生徒,学校入学を志望する子女及びその者らの父母(以下「学生等」という。)に向けられたものではない。上告人略称は,上告人の設立の歴史的経緯,教育の独創性により,教育関係者を始めとする知識人の間ではよく知られているということができる。しかし,学生等との関係では,本件商標の商標登録出願の当時,東京都内及びその近郊において一定の知名度を有していたにすぎず,広範な地域において周知性を獲得するに至っていたと認めることはできない。
(3) 上告人は,平成15年6月2日,本件商標は,上告人の名称の著名な略称である上告人略称を含むから,8号所定の商標に当たり,商標登録を受けることができないと主張して,本件商標登録を無効にすることについて審判を請求した。この審判請求につき,特許庁において無効2003−35230号事件として審理された結果,平成16年3月15日,審判請求を不成立とする審決がされた」との事実認定をもとに,「本件商標「国際自由学園」が上告人略称「自由学園」を含む商標であること,上告人が被上告人に承諾を与えていないことは明らかであるから,上告人略称が上告人の名称の「著名な略称」といえるならば,本件商標は,8号所定の商標に当たるものとして,商標登録を受けることができないこととなる。
 商標法4条1項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。
 そうすると,人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。
 本件においては,前記事実関係によれば,上告人は,上告人略称を教育及びこれに関連する役務に長期間にわたり使用し続け,その間,書籍,新聞等で度々取り上げられており,上告人略称は,教育関係者を始めとする知識人の間で,よく知られているというのである。これによれば,上告人略称は,上告人を指し示すものとして一般に受け入れられていたと解する余地もあるということができる。そうであるとすれば,上告人略称が本件商標の指定役務の需要者である学生等の間で広く認識されていないことを主たる理由として本件商標登録が8号の規定に違反するものではないとした原審の判断には,8号の規定の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない」と判示している。
 これを受けて原被告双方は,差戻し後の当審において,本件審決の違法事由の有無を,法4条1項8号に該当するかどうかに絞って主張を展開しているので,当裁判所もこれに沿って判断することとする。
3 法4条1項8号該当性の有無
 (1) 証拠(甲3〜168,172〜290,310〜324,326〜331,377,381〜383,401,402,405,407及び408の各1,2,412,413,420〜422,429〜432,436〜438)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
ア 原告は,大正10年4月15日に,東京府目白(現在の東京都豊島区(以下省略))において,女子のための中等教育機関として,羽仁もと子,吉一夫妻によって創立された。その後,原告は昭和2年初等部を設立し,現在の東京都東久留米市に移転し,昭和10年には男子部を,昭和14年には幼児生活団を,昭和24年には男子最高学部を,翌昭和25年には女子最高学部を設立し,4歳児から22歳までの男女を育成する一貫教育校となった。昭和13年に財団法人に組織変更され,正式名称は「財団法人自由学園」となったが,昭和26年,私立学校法の施行に伴い,「学校法人自由学園」を正式名称とする学校法人となり,男子及び女子の中等科,高等科は,学校教育法に定める中学校,高等学校となった。しかし,最高学部は,現在も学校教育法による大学となることなく,各種学校のまま,独自の教育方針に基づく教育活動を行って,現在に至っている 。
イ 原告は,その名称である「学校法人自由学園」の略称「自由学園」(原告略称)を,大正10年以来,教育(知識の教授)及びこれに関連する役務に使用している。
ウ 昭和46年12月1日平凡社発行の「日本近代教育史事典」(甲201)271頁には,「この期(判決注;大正・昭和初期)の教育方法は普通「新教育」または「自由主義教育」の名でよばれる。それは,すでにのべたように子どもの価値意識の形成から知識内容のすみずみまでを権力によって画一的に統制されつつあった当時,教育方法の形式化,形骸化がび漫しつつあったのに対して自由(個性的)で生物的な市民的要求が顕在して,これをきびしく批判する声が高まったり,ついに公教育の中にこの声を一部とり入れざるを得なかった状況を反映したものである。」,「「新教育」は・・・従来の注入主義的・画一的・機械的暗記主義の教育方法に対して,それへの批判にもとづきながら子どもの個性,自発性を尊重していこうとするものであった。」との記載があり,岩波書店発行の「広辞苑」(甲15,420〜422) には,昭和30年5月25日発行の第2版から本件商標の出願後である平成10年11月11日発行の第5版に至るまで,「はに-もとこ【羽仁もと子】」の項目の下に「自由学園」創立に関する記載が,昭和60年3月25日平凡社発行の「大百科事典」(甲99) には,「じゆうがくえん 自由学園」の項目の下,「自治と労働を基調とする教育を追求」するために「日常生活を小集団で自律的に管理させていく方針を取」ったとの記載があるほか,同社「世界大百科事典」(甲100,429〜432)の昭和32年4月10日発行の初版から平成8年4月28日発行版まで,昭和64年1月1日ティービーエス・ブリタニカ発行の「ブリタニカ国際大百科事典」(甲101),平成9年11月7日講談社発行の「大事典ナビックス」(甲102),平成7年7月10日小学館発行の「日本大百科全書」(甲103),平成7年2月24日丸善発行の「丸善エンサイクロペディア 大百科」(甲104)などの多数の辞書,百科事典にも「自由学園」の項目がある。また,昭和7年3月9日付け報知新聞(甲412)には,「給仕も小使も・・・職員室もない学園」という見出しで原告の教育の特色を紹介する記事が,マッカーサー司令部に属したカナダの外交官であり,著名な歴史家であるE.H.ノーマンの著書である平成9年10月15日人文書院発行の「日本占領の記録」(甲25)には,「羽仁は自由学園という有名な女学校の歴史学教授で,この学校は,日本の子女が受けることのできるもっともリベラルな教育を提供しているという評判を多年にわたって得ています」(378頁,379頁)との記載があるなど,多数の辞書,事典及び書籍に,原告の創立の経緯,建学の精神等が記載され,原告が旧憲法下の大正時代に著名な女性思想家である羽仁もと子及びその夫吉一によりキリスト教精神に基づき独自の理想を掲げて教育を実施すべく設立されたこと,その教育の独自性に一定の歴史的意義を認めて,その歴史的事実及び評価が記載され,その教育内容が紹介されている。さらに,平成2年3月30日,平成5年3月30日,平成7年3月30日に三省堂が各発行した高校生用の日本史教科書「詳解日本史」(甲436〜438)には,羽仁もと子による自由学園の創立の事実が記載され,人物名に関する事典を含む多数の書籍等(甲26,32,191,192,194,196,198〜200,202,203,215,392)にも,原告の創立者である羽仁もと子や「自由学園」に関わった有識者に関連して,「自由学園」が取り上げられている。
エ 平成7年7月22日に首都圏で放送されたテレビ東京の番組「緑のびのび 森の中の学園」において「自由学園」を自然との共生を教育の中に取り入れている学校として紹介され,平成15年3月12日に全国放送されたTBSのテレビ番組「はなまるマーケット」において婦人雑誌「婦人之友」が創刊百周年を迎えることに関連して「自由学園」が紹介され,また,同年8月28日に首都圏で放送されたNHKの番組「首都圏ネットワーク」において「自由学園那須農場」が紹介され,これらを含めて,平成4年から平成6年までの間,「自由学園」や「自由学園工芸研究所」の製品である玩具を紹介する17のテレビ番組が放送された(甲407,408の各1,2)。
オ そのほかにも,「自由学園」について,あるいは「自由学園」の校舎であった「明日館」がアメリカの著名な建築家フランク・ロイド・ライトの設計によるものであること,「自由学園工芸研究所」の玩具が皇室で用いられていること,「自由学園」から多くの著名人が輩出していることなどについて,原告設立のころから判断の基準時である本件出願時(平成8年4月26日)及び登録査定時(平成10年4月30日,甲1)に至るまで,各種の書籍,新聞,雑誌等で度々取り上げられてきており,これらの記事等においては,原告を示す名称として原告略称が用いられている。
(2) 以上に認定したところによれば,原告は,大正10年の設立以来,原告略称を教育及びこれに関連する役務に長期間にわたり使用し続け,本件出願時を経て本件審決時に至るまでの間,各種の書籍,新聞,雑誌,テレビ等で度々取り上げられてきており,これらにおいては,原告を示す名称として原告略称が用いられてきたのであるから,原告略称は原告を指し示すものとして一般に受けいられていたものと認めることができ,したがって,上記基準時(本件出願時及び登録査定時)において,原告略称は原告の名称の「著名な略称」であったと認めることができる。
(3) これに対し,被告は,「教育関係者を始めとする知識人」に原告略称が原告を指し示すものとして受け入れられていたとしても,「教育関係者を始めとする知識人」とは,同じ「一般」に含まれる「指定役務の需要者である学生等」と比べ圧倒的に少数であることから,直ちに原告略称が「一般に受け入れられていた」ものと認められるべきではない,また,「教育関係者を始めとする知識人」と「指定役務の需要者である学生等」を足して本件の「一般」と考えた場合においても同様であるなどと主張する。
 しかしながら,前述した上告審判決によれば,人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについては,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものであるというのでから,「教育関係者を始めとする知識人」ないしこれに「指定役務の需要者である学生等」を加えた限定された層を基準とする被告の上記主張は,採用することができない。
(4) 以上によれば,原告略称「自由学園」は原告の名称の「著名な略称」というべきところ,本件商標「国際自由学園」が原告略称「自由学園」を含む商標であること,原告が被告に承諾を与えていないことは明らかであるから,本件商標は,法4条1項8号に違反するものといわなければならない。
4 結論
 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由があり,本件商標の登録は法4条1項8号に違反するものではないとした本件審決の認定判断は誤りであり,この誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件審決は取消しを免れない。
 よって,原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。

〔論  説〕
1.私は、本HPの「裁判例研究コーナー」のG−35に、「商標『国際自由学園』は『自由学園』に類似しない」と判断した東京高裁平16(行ケ)168号平成16年8月31日判決(棄却)を紹介した。その中で、原告主張の適用条文の商標法4条1項10号,15号,8号,19号のいずれについても高裁が否定的であったことを批判した。その中で8号適用について、高裁が説示した「国際自由学園」を「自由学園」と略称して称呼することはないとの点に対し、私は、このように考える教育関係者はごく少数派ではなかろうか。そして、「一般需要者は、略称することは十分あり得るだろうし、あるいは(神戸の地にあって)自由学園の承諾を得て商標登録しようとしているのかも知れないと誤信するだろう。」と論じていた。
 これに対し最高裁は東京高裁の判決を否定し、原告の主張を認容したが、その中心は4条1項8号であった。この最高裁の判決(G−39)の理由にのっとってなされたのが、今回の知財高裁の判決であったが、全く妥当な判断である。それにしても、2つの高裁の裁判官らの知識のレベルの差異を見せつけられたような事件であった。

2.ところで、教育関係者や学生などの第三者は、本件商標「国際自由学園」を「自由学園」と略称して話題にすることは頻繁に行われているだろうし、また商標の類否を判断する需要者として東京高裁判決では「学生」を挙げていたが、知財高裁では最高裁の判決の理由をそのまま引用し、「その略称が本人を指し示しているものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものであるというのであるから、『教育関係者を始めとする知識人』ないしこれに『指定役務の需要者である学生等』を加えた限定された層を基準とする被告の主張は採用することができない。」と判示した。
 この主体的基準は非常にわかりにくいけれども、そこは多数の物的証拠によって立証できたものといえる。
3.余談であるが、両自由学園の名称は類似するとして商標法では本件登録商標は登録無効の判決が確定しようとしているところ、学校法人名称については依然として問題が残っているといえる。ただ判決の認定によると、神戸市に主たる事務所をおく学校法人は昭和61年に文部大臣の指定を受けたビジネス専修学校であるから、時間が十分経っている。
 また、他人が登録した商標登録第4145910号(第41類・平成10年5月15日登録)に係る商標「東京自由学園」については、商標法4条1項8号及び15号に違反した登録として、平成16年6月4日に無効とされた。

牛木 理一