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登録商標「VENTURES」取消審決取消請求事件: 東京高裁平成12(行ケ)135号.平成13年2月6日判決(棄却)〈18民部〉

〔キーワード〕

商標とは、商標の使用とは、自他商品識別機能

〔事  実〕

 脱退被告は、旧第24類において「THE VENTURES」のロゴ文字から成る登録商標第2464427号(本件商標)の商標権者であったが 、平成12年2月25日登録をもって被告(訴状引受人)に本件商標権を譲渡し、現に本件商標権者となった。
 原告は、平成9年7月18日、脱退被告を被請求人として、本件商標中「楽器等」について、不使用による商標登録取消の審判を請求したが、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があった(平成9年審判12311号.平成12年3月15日審決)。
 これに対し、請求人(原告)はこの審決に対する取消請求訴訟を東京高裁に起した。

 

〔判  断〕


 
1. 当裁判所も、証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、当時の商標権者であった脱退被告(東芝イーエムアイ株式会社)から許諾を受けた通常使用権者であるフェンダージャパン株式会社(フェンダージャパン社)によって、その取消請求に係る指定商品について使用されていたものと認めるものであるが、その理由は、審決の理由の要点中の「審決の判断」において審決が説示したとおりであって(ただし、審決の理由の要点(4)−2(c)及び(4)−3のいずれも第2段落のなお書き分を除く。)、その理由に補足すべき点はないし、これらの認定を覆すべき証拠もない。原告の準備書面中には、審判において審判長が脱退被告にした審尋で提出された証明書や甲第11号証等の卸売証明書等の証明力について種々主張する部分があるが、採用することができない。
 なお、上記の証拠とは、上記審決説示部分に掲げられた審判乙号証等に対応する以下の書証である。
 甲6号証中の証明書=審判における審尋に対する回答書に添付されたフェンダージャパン社作成の証明書
 乙第3号証=フェンダージャパン社発行のカタログ「TWANG 1996 Collection」、審判乙第3号証
 甲第9号証=フェンダージャパン社発行のカタログ「TWANG 1997 Collection」、審判乙第4号証
 甲第11号証=フェンダージャパン社発行の卸売証明書、審判乙第5号証
 甲第12号証=フェンダージャパン社発行の卸売証明書、審判乙第6号証
 甲第13号証=株式会社山野楽器発行の卸売証明書、審判乙第7号証
 甲第14号証=株式会社神田商会の卸売証明書、審判乙第8号証
2. 原告は、フェンダージャパン社のカタログに示されたエレクトリック・ギターの「THE VENTURES」ロゴ(本件商標)には自他商品識別機能がないと主張するが、乙第3号証及び甲第9号証のカタログの該当頁に掲載されているエレクトリック・ギターには、ボディの左側上部とヘッドの上部に、本件商標と社会通念上同一のものと認められる「THE VENtURES」の文字のロゴが付されており、とりわけ、ボディの左側上部に付されたものは、上記ギターの看者には際だって目立つものとなっており、このロゴに自他商品識別機能のあることは明らかである。ベンチャーズがエレクトリック・ギター・プレイヤーを中心にして構成される著名なバンドであることは当裁判所にも顕著な事実であるが、この事実をもってしても、上記ロゴの自他商品識別機能を否定するものではないし、他に上記ロゴに自他商品識別機能があるとすべきことを覆すべき特段の事情を認めるべき証拠はない。
3. したがって、本件商標が使用されたとの審決の認定を争う原告の審決取消事由は理由がない。

〔研 究〕

 この判決の理由からは全く底の浅さを感ずるものである。すなわち、フェンダージャパン社が製造販売するギターには「FENDER」の商標の他に、有名な“STRATOCASTER”・“JAZZMASTER”・“JAZZBASE”の商標が固有の商品表示としてそれぞれのギターやベースに付されているから、それ以外にさらに“THE VENTURES”のロゴ文字が付されていても、それをフェンダージャパン社は自社が製造販売するギターやベースのための商標とは考えていないし、顧客の方も商標とは考えない。
 製造販売者のフェンダージャパン社は、そのようなロゴ文字は、米国のインストルメンタルグループで有名な「ザ・ベンチャーズ」の表示そのものであるから、あたかも彼らが使用するために同社が特に製作したギターやベースであるかのように顧客に宣伝していることになる。ところが、フェンダージャパン社が前記ロゴ文字を付したギターやベースは、「ザ・ベンチャーズ」のために特に製作した「ベンチャーズ・モデル」といわれるものでは全くなかった。事実は、逆に彼らは、かれらの使用するギターとベースを、ノーキー・エドワーズが脱退した後は、再びフェンダー社(USA)の前記商標のものに求めていたのである。その点、かってセミー・モズレーのモズライト社が、ノーキー・エドワーズの推薦の結果、「ザ・ベンチャーズ」のために特に製作した「ベンチャーズ・モデル」といわれる1963年〜1965年のモズライトギターとは違う。この時代のモズライトギターは、「ザ・ベンチャーズ」が使用するシグネチャーモデルとなっていたのである。しかし、「Mマーク mosrite of California」の商標とは別に前記ロゴ文字 が付されていても、それは商品の識別機能を発揮するための商標とはいわれていなかったし、単に「ザ・ベンチャーズ」のシグネチャ−モデルであることの宣伝効果を狙ったものであったのである。
 前記のようなロゴ文字のギターやベースへの使用は、有名タレントの名前を商品の宣伝に利用するいわばタレント広告のようなものである。ということは、例えば、「石原裕次郎」や「美空ひばり」の有名故人、「田端義夫」や「加山雄三」の有名歌手の肖像、氏名、サインを、既製デザインのギターの一部やそのギターの広告に表示するようなものである。
 この判決の考え方からすれば、もしフェンダージャパン社の製造する前記各種ギターに前記の有名人のサインが表示されていても、そのサイン自体はギターについて自他商品の識別機能を発揮していることになる。すると、フェンダージャパン社の著名な商標である「FENDER」や「STRATOCASTER」・「JAZZMASTER」・「JAZZBASE」は一体何の役割を果たしているというのだろうか。「THE VENTURES」のロゴ文字もまた商標であるとすれば、一つの商品に3つもの商標が表示されることになるが、これは一体どういう意味があると理解すべきなのだろうか。この判決で高裁は何の答えも出していない。
 しかし、この高裁判決は、商標とは何か、商標の使用とは何か、という商標法における本質的な問題について、理論的な裏付け理由を与えて答えるべきであったのに何にもないのは、情けないことである。原告は、それについての十分な説示があれば納得もしようが、審決取消訴訟を扱う高裁判決にしては、珍しく理由のない一方的な判断である。      

[牛木理一]