G-30


出願商標「ポロ図形」拒絶審決取消請求事件:東京高裁平15(行ケ)371平成16年2月25日判決(認容/取消)

〔キーワード〕 

POLO, Ralph Lauren 


 

〔事  実〕


 
1.特許庁における手続の経緯
 原告(ユーエスピーエー・プロパティーズ・インク)は,全米ポロ協会の権利を管理する同協会の100%出資の会社であるところ,平成7年8月2日,第21類「ランチボックス,その他の食器類(貴金属製のものを除く。),ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ,砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜き,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,魚ぐし,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,家事用手袋,化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),電気式歯ブラシ,おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用はけ,船舶ブラシ,ブラシ用豚毛,洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー,ガラス製包装用容器(「ガラス製栓・ガラス製ふた」を除く。),陶磁製包装用容器,ガラス製栓,ガラス製ふた,かいばおけ,家禽用リング,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,小鳥かご,小鳥用水盤,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ,家庭用燃え殻ふるい,石炭入れ,紙タオル取出し用金属製箱,靴脱ぎ器,せっけん用ディスペンサー,寝室用簡易便器,トイレットペーパーホルダー,貯金箱(金属製のものを除く。),ねずみ取り器,はえたたき,湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,ガラス製又は磁器製の立て看板,香炉,コッフェル」を指定商品とする商標(以下「本願商標」という。)について,登録出願をしたが,特許庁は,平成11年12月7日に登録を拒絶する旨の査定をした。
 原告は,平成12年3月21日,上記拒絶査定を不服として,特許庁に審判の請求をした。
 特許庁は,上記請求を審理した結果,平成15年3月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。
2.本件審決の理由の要点
(1) 別紙2の引用商標(5)は,別紙2の引用商標(1)及び(2)における馬がより左に傾けて疾走しているとみられる図形を表示してなるものである。また,別紙2の引用商標(1)ないし(4)において,文字と図形部分は,それぞれが独立して自他商品の識別標識として機能を果たすものと認められる(以下,別紙2の引用商標(1)ないし(5)を単に「引用商標(1)」ないし「引用商標(5)」という。)。
(2) そこで,図形からのみなる本願商標の図形と引用商標(1)ないし(5)の図形部分とを比較するに,両者は,共にプレーヤーがマレットを持って,疾走する馬に乗り,正面やや斜め方向から全体を黒色で描いたものとして基本的な構成態様が共通し,人馬の動き,プレーヤーの姿勢,マレットの位置・角度,ボールの有無に差異があるものである。
 ところで,ポロ(競技)は,米国,英国等で行われているが,我が国では,一般に,「1個の木のボールを馬上から長柄の槌(マレット)で相手側のゴールへ打ち込み合って勝負を争うスポーツ」であることとしてある程度は理解はされている(広辞苑)が,そのルールの外,プレーヤーの動き,馬の動き,マレットの位置・角度等は左程に理解,認識されていないものといえる。そうすると,両者は,これに接する,本願商標の指定商品の取引者及び需要者においては,プレーヤーの動き,馬の動き,マレットの位置・角度,ボールの有無に差異があるとしても,プレーヤーがマレットを持って,疾走する馬に乗り,正面やや斜め方向から全体を黒色で描いてなる基本的な構成態様部分に関心が寄せられることから,これより「ポロ競技」又は「ポロ」の称呼,観念が連想,想記され,これをもって商取引がなされるというのが相当である。そうとすれば,両者は,共に「ポロ競技」又は略称して「ポロ」の称呼,観念が生ずるものである。
 また,両者は,その外観においても,前記のとおり,ポロ競技の理解,認識の程度からすれば,人馬の動き,プレーヤーの姿勢,マレットの位置・角度,ボールの有無に差異はあるとしても,ポロ競技を直ちに理解させるプレーヤーがマレットを持って,疾走する馬に乗り,正面やや斜め方向から全体を黒色で描いてなる基本的な構成態様の,いわば象徴的部分が共通しているものであるから,その象徴的部分に関心が寄せられ,それが見る者にとって注意を引くところであり,両者は,その構成の軌を同一にし,時と所を異にしてみるときは全体の外観において彼此相紛らわしいものといわざるを得ない。
(3) してみれば,本願商標と引用商標(1)ないし(5)とは,その外観,称呼及び観念において同一又は類似するものと認められる。そして,本願商標の指定商品には,引用各商標の指定商品と同一又は類似する商品が含まれるものである。
 したがって,本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとしてその登録を拒絶すべきものとした原査定は,妥当である。
 

 

〔判  断〕


 
 1.原告は,本願商標の登録が本号に違反するものであるとした本件審決の認定判断は誤りである旨主張する。
 本号は,「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって,その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」については,商標登録を受けることができない旨規定している。この場合,商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり,誤認混同を生ずるおそれがあるか否かは,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者及び需要者に与える印象,記憶,連想等を考察し,これらに加え,その商品についての取引の具体的な実情に照らし,その商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断すべきものと解される。
 ところで,本件審決が,本願商標の登録が本号に違反するか否かの判断に当たって,本願商標と対比すべき登録商標として挙げた引用商標(5)は,本願商標の登録出願の日(平成7年8月2日)より後の平成9年11月5日に登録出願されたものであるから,本号の「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標」には該当せず,したがって,引用商標(5)に類似することを理由に本号に該当するとすることはできない。この点に関する本件審決の判断は誤りである。
 そこで,引用商標(1)ないし(4)(引用各商標)及びそれらの指定商品との対比において,上記の観点から,本願商標の登録が本号に違反するものであるか否かについて,以下検討する
2.引用商標(1)及び(2)は,図形を中心とし,「Ralph」と「Lauren」の両欧文字をその左右に表示してなるものであり,引用商標(3)は,引用商標(1)及び(2)と同一の構成からなる文字と図形を黒色の長方形内に白抜きし,かつ,それに斑点状模様を重ねて表示してなるものであり,引用商標(4)は,図形を中心とし,「POLO」と「RALPH LAUREN」の両欧文字(それぞれの語頭のスペルは他の文字より大きく表示されている。)をその左右に表示してなるものである。このように引用各商標は文字と図形とからなる結合商標であるところ,結合商標において各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合していると認められない商標は,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしばその一部だけによって簡略に称呼,観念されることがあることは,経験則上よくみられることである。しかして,本願商標の出願当時,引用各商標が結合商標として周知著名なものであり,その後もその周知著名性に変わりがないことは後記4(2)に認定のとおりであり(原告もこのことを自認している。),引用各商標についても上記の経験則が当てはまると認められるのであって,その図形部分も,文字部分とは独立して自他商品識別機能を有するものと認めるのが相当である。
3.そこで,本願商標の図形と引用各商標の図形部分とを対比観察することとする。
(1) 外観について
ア 本願商標は,黒いシルエットで表された馬と人の図形からなるものである。上記シルエットの詳細は,右向きの馬の上にポロの競技者が馬の向きとは反対の左方向に体を向け下を見ながら真下にあるポロの玉を,後方から下向きに振り下ろしたマレットで今,まさに打たんとしているところを表したものである。殊に,馬上の競技者が馬の向きと異なる方向を向き,馬の4本の足と下向きのスティック(マレット)が混在し,マレットの前に玉が置かれている点が特徴的である。
イ 引用各商標の図形部分は,同じく馬と人からなるものである。その詳細は,左向きの馬が両足を蹴り上げた状態で疾駆する状態にあり,馬の上にポロ競技のプレーヤーが馬の向きと同じ方向に体を伸ばしてマレットを右手の上方に高く振り上げたところを表したものである。
ウ 両者を対比するに,両者は,プレーヤーがマレットを持って,馬に乗り,正面やや斜め方向から全体を黒色で描いてなる基本的構成態様で一致しているとはいうものの,@馬の向きが異なり,馬とこれに騎乗したポロ競技のプレーヤーとの関係が,本願商標においては異なる方向を向きかがみ込んだ姿勢をとっているのに対し,引用各商標においては,馬と同一方向に上半身を伸ばしている点,A前者においてはマレットを下にある玉に当てるべく,下方に振り下ろした状態にあり,現にマレットの前に玉が置かれているのに対し,後者においてはマレットが右手の上方に高く振り上げた状態にあり,下方に玉は描かれていない点,B馬の動きが,前者においては,疾駆していた馬をプレーヤーがマレットで玉を打つべく,制御してやや踏みとどまる姿勢を示しているのに対し,後者においては,馬がまさに疾駆している姿勢を示している点で相違しており,ポロ競技における,人と馬及びマレットという主要な構成要素のすべてにおいて表現態様が相違していて,全体として看者に異なる印象,記憶を生じさせるものというべきである。
 本件審決は,わが国における一般のポロ競技の理解,認識の程度からすれば,両者は,人馬の動き,プレーヤーの姿勢,マレットの位置・角度,ボールの有無に差異はあるとしても,ポロ競技を直ちに理解させるプレーヤーがマレットを持って,疾走する馬に乗り,正面やや斜め方向から全体を黒色で描いてなる基本的な構成態様の,いわば象徴的部分が共通しているものであるから,その象徴的部分に関心が寄せられ,それが見る者にとって注意を引くところであり,両者は,その構成の軌を同一にし,時と所を異にしてみるときは全体の外観において彼此相紛らわしいものといわざるを得ないと判断しているが,我が国においても,一般に,ポロ競技は,「1個の木のボールを馬上から長柄の槌(マレット)で相手側のゴールへ打ち込み合って勝負を争うスポーツ」であるという程度の理解,認識はされているものと認められ(乙1),この程度の理解,認識をもって両者をみれば,自ずから上記の相違点に注意が向くと考えられるのであって,両者は,時と所を異にしてみても,看者が紛らわしいと感ずるほど外観が類似しているとは認め難い。
(2) 称呼,観念について
 本願商標の図形と引用各商標の図形部分とは,プレーヤーがマレットを持って疾走する馬に乗り,正面やや斜め方向から全体を黒色で描いてなる基本的な構成を採用しているところ,かかる図形に接した取引者及び需要者は,この構成から「ポロ競技」ないしその略称である「ポロ」の観念を生ずるものと考えられる。しかし,本願商標は,図形のみからなる商標であり,その図形もポロプレーヤーがポロ競技を行っている状態を切り取り表現したものであり,直感的に一定の称呼を生ずるような構成ではないから,上記図形のみから,「ポロ競技」ないし「ポロ」の称呼まで生ずるものということはできない。また,引用各商標も文字部分と一体としてみればともかく,その図形部分のみから上記のような称呼を生ずるとまでいうことはできない(なお,仮に本願商標の図形及び引用各商標の図形部分から「ポロ競技」等の称呼を生ずるとしても,それは上記図形等の構成から生じた「ポロ競技」等の観念に付随してこれと密接不可分な関係の下に生じたものにすぎないことから,商標の類否の判断に当たり,観念と独立して評価すべきほどの事実ではないことに留意すべきである。)。
4(1) 次に,本願商標と引用各商標の各指定商品についてみるに,本願商標に係る指定商品は,施行令1条別表の第21類の前記第2の1(1)記載の商品である。これに対し,引用各商標の指定商品は,次のとおりである。
ア 引用商標(1)に係る指定商品は,商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前のもの。以下「旧施行令」という。)1条別表の第19類の「台所用品(電気機械器具,手動利器および手動工具に属するものを除く。)日用品(他の類に属するものを除く。)」である。
イ 引用商標(2)に係る指定商品は,旧施行令1条別表の第24類「おもちや,人形,娯楽用具,運動具,釣り具,楽器,演奏補助品,蓄音機(電気蓄音機を除く。)レコード,これらの部品及び附属品」である。
ウ 引用商標(3)に係る指定商品は,施行令1条別表の第25類「被服(和服を除く。),ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物(げた,草履類を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴,乗馬靴」である。
エ 引用商標(4)に係る指定商品は,施行令1条別表の第24類の「織物(畳べり地を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,ふきん,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳,シャワーカーテン,布製ラベル,ビリヤードクロス」である。
(2) 本願商標に係る指定商品と引用各商標に係る指定商品とを対比すると,@本願商標に係る指定商品と引用商標(1)に係る指定商品とは全般に亘り重なり合い,A本願商標に係る指定商品中の「コッフェル」と引用商標(2)に係る「運動具」とが重なり合い,B本願商標に係る指定商品中の「靴ブラシ,靴べら,靴磨き布,軽便靴クリーナー,シューツリー」,「コッフェル」は,それぞれ引用商標(3)に係る指定商品中の「履物」,「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」と類似し,C本願商標に係る指定商品中の「清掃用具及び洗濯用具」,「湯かき棒,浴室用腰掛け,浴室用手おけ」はそれぞれ引用商標(4)に係る「ふきん」,「シャワーカーテン」と類似するという見方が一応できる。
 ところで,証拠及び弁論の全趣旨によれば,ザ・ポロ・ローレン・カンパニー・リミテッド・パートナーシップが保有する引用各商標は,本願商標の登録出願当時,アメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品を表示するものとして,我が国において取引者及び需要者間に広く認識され,引用各商標等を付したファッション関連商品ブランドは「ポロ」,「POLO」(「Polo」)と略称されることもあり,ラルフ・ローレンの「ポロ」,「POLO」ないし「Polo」として著名になり,強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたものであり,その周知著名性は,今日に至るまで継続していることが認められる。しかしながら,引用商標(1),(2)及び(4)に係る各指定商品は必ずしもファッション関連商品に該当するといえないものであるところ,引用各商標ないし「ポロ」,「POLO」(「Polo」)の略称が,ファッション関連商品以外の商品についても周知著名性を獲得していたと認めるに足りる的確な証拠はない。
5.さらに,本願商標を引用各商標に係る指定商品と同一又は類似する本願商標に係る指定商品に使用した場合に,その商品の取引者及び需要者にその商品の出所についての混同が生じるおそれがあるか否かについて検討するに,既に説示したとおり,本願商標の図形と引用各商標の図形部分とは,外観を全体として観察した場合,看者に異なる印象,記憶を生じさせるものであり,また,両者は「ポロ競技」ないしその略称としての「ポロ」の観念を生じさせるものである点で類似するといえるものの,後者が,引用各商標の周知著名性のゆえに,ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品を表示する「ポロ」ないし「POLO」(「Polo」)を想起させるのに対し,前者は,通常は,単にラルフ・ローレンとは関係のない単にスポーツとしての「ポロ競技」あるいはその略称である「ポロ」を想起させるにすぎないものと考えられる。加えて,引用各商標ないし「ポロ」,「POLO」(「Polo」)の略称が,ファッション関連商品以外の商品についても周知著名性を獲得していたと認めるに足りないことは,前記4(2)に説示したとおりである。
 上記の諸点にかんがみれば,引用各商標に係る指定商品と同一又は類似する本願商標に係る指定商品に本願商標を使用するとしても,その商品の取引者及び需要者が引用各商標を想起し,引用各商標の兄弟ブランド又はファミリーブランドに係る商品であるかのようにその出所につき誤認混同を生ずるおそれは存在しないというべきである。そして,そのことは,本願商標の指定商品が日常的に使用される商品であって,その需要者が通常は特別の専門知識を有するものでない一般の消費者であることを考慮に入れても,変わりがないというべきである。
 したがって,本願商標の登録は本号に違反するものではない。

論  説

1.商標「POLO」の登録をめぐっては、これまでにも、G−2、G−21において取扱ってきたが、ここで取り上げた事件は、特許庁の審査・審判では拒絶された「POLO図形」について、東京高裁では、この図形商標はRalph Laurenのポロ図形とは無関係のものと判断し、出所の混同を起こすことはないと認定し、審決取消しの判決をしたのである。

2.判決は、引用商標(1)〜(5)のうち、(5)は本願商標の後願商標であったことから、これを除外し、(1)〜(4)と対比して類否判断をした。
 商標の類否判断は、外観・称呼・観念の三要素の対比によってなされるが常であるが、本願商標は図形態様であることから、引用商標ら中の図形態様についてのみ対比した。その結果、いずれの図形も本願商標の図形とは違い、看者が紛らわしいと感ずるほどに外観が類似しているとはいえないと認定した。
 次に、称呼・観念については、本願商標を引用商標らとの図形からは「ポロ」の称呼や観念が直ちに出てくるとはいえないと認定した。引用商標らの図形には「Ralph Lauren」の文字表示が付記されていることは、この人物のポロ競技との観念が生ずることはあっても、ポロ競技自体はありふれた競技であるから、図形だけの商標の場合にあっては、その態様が詳細に見きわめられなければならないのである。

3.しかしながら、結論はともかく、その認証に至るまでの理由づけには疑問がある。
 東京高裁は、本願商標が図形のみから成る標章態様であることから、「ポロ競技」や「ポロ」の称呼・観念を生ずることはないことを理由に、専ら外観の詳細な違いを見極めた上で、引用商標の図形との非類似性を認定し、本願商標は登録できると判断した。
 しかし、本願商標の図形について前記のように認定したことは明らかに無理があるといえる。それよりも、引用商標は小さい図形と大きい「Ralph Lauren」の文字とを一体不可分の標章態様から成るものと把握し、本願商標は「ラルフ・ローレン」のポロ図形標章ではなく、単にポロ競技の一図形標章であると認定し、両商標は全体として見たとき、非類似の商標と判断した方が説得力があるというべきである。

[牛木理一]