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出願商標「Afternoon Tea」拒絶審決取消請求事件:東京高裁平14(行ケ)596号平成15年6月4日判(認・審決取消)

〔キーワード〕 
品質の誤認、店舗の著名性

 

〔事  実〕


 
 原告(株式会社サザビー)は、本願商標「Afternoon Tea」のロゴ文字について、「第32類ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、平成12年12月27日に出願したが、拒絶査定され、また請求不成立の審決を受けた。その理由は、商標法4条1項16号(商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標)に該当するとのことであった。
 これに対し原告は、第1に本願商標の意義についての認定の誤りを指摘し、第2に原告店舗の著名性についての判断の誤り指摘して争った。

 

〔判   断〕


 
1 取消事由1(本願商標の意義の認定誤り)について
(1) 本願商標は、審決書の後記の「本願商標」のとおり、レタリングされた「Afternoon Tea」の欧文字からなるものであり、その指定商品を「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」とするものである(当事者間に争いがない。)。
 本願商標の構成において、「Afternoon Tea」の欧文字は、ギャラモンドの書体を基礎にデザイナーがデザインしたものであって、各欧文字の大部分が白抜きの二重線(二重線の一部は右側が幾分太い。)というやや特徴的な字体で描かれ、語頭の「A」と続く「f」の文字の下部が連結して表されているほか、「Afternoon」と「Tea」との2つの単語の間に空白部分がわずかに設けられているため、通常の2単語の各別の商標と比較すると、まとまりのよい一連のものと認識されやすい。そして、本願商標からは、「アフターヌーンティー」との一連の称呼のみが生じるものと認められる。
 また、「Afternoon」及び「Tea」のいずれの英単語も、我が国において親しまれたものであり、「午後」及び「茶」「紅茶」を意味することは、本願商品の取引者、需要者において容易に認識し得るところである。したがって、本願商標から「茶」「紅茶」の観念が生じることは明らかであり、「Afternoon Tea」の一連の文字部分から、「午後の紅茶」という英語の直訳的意味が認識できるとともに、「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の招待」「お茶の会」という意味も認識されるものと解され、本願商標からは、これらに対応する観念が生じるものと認められる。
(2) 原告は、本願商標に印象的なデザインが施され、全体で一つの単語として認識され称呼されることから、原告の周知なブランド名としての観念のみが抽出されると主張する。
 しかし、前記認定のとおり、本願商標の欧文字は、やや特徴的ではあるが、格別変化に富んだ識別力の高い字体、書体を採用するものではなく、標章全体として独創的なデザインを有するものでもない。また、「Afternoon」と「Tea」との2つの単語の間には、空白部分が設けられており、全く一連のものとして表記されているわけではない。しかも、「Afternoon」及び「Tea」のいずれの英単語も、「午後」及び「茶」「紅茶」を意味する親しまれたものであるから、本願商標から、「茶」「紅茶」「午後の紅茶」の観念が生じることは当然であり、「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」といった観念も生じるものと認められる。したがって、後述する原告店舗名である「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の周知性及び本願商標の称呼の一連性を併せ考慮しても、本願商標から原告の周知なブランド名としての観念のみが抽出されるものとは到底認めることができず、原告の主張は採用できない。
2 取消事由2(原告店舗名の著名性の判断誤り)について
(1) 後記各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア) 原告は、昭和47年4月、家具の輸入販売を目的として設立され(商業登記簿上の会社設立の年月日は、昭和49年2月2日)、後にバッグ袋物や被服などの企画製造販売にも進出したが、昭和56年9月、オリジナルブランド「アフタヌーンティー」を使用して生活雑貨の販売を開始し、それとともに、東京都渋谷区の渋谷パルコ内に、喫茶店(ティールーム)と生活雑貨の販売店を合体させた店舗を開設し、その店名として「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」を採択した(以下この名称で開設された同様の店舗を、「アフタヌーンティー店舗」という。)。同店舗内の喫茶スペースでは、「カフェオレボウル」という小型の丼様の入れ物に「カフェオレ」(ミルク入りコーヒー)を入れて提供し、隣接する雑貨スペースでその「カフェオレボウル」が販売されるという形態が試みられていた。また、同店舗及びその後に開設されたアフタヌーンティー店舗では、紅茶(ティー)のみならず各種コーヒーやジュース、乳清飲料、ビールなども提供され、「Afternoon Tea」の名称が付されたメニューにおいて、上記各種飲み物が掲示されていた。そして、原告は、昭和62年から本願商標と同一形態の標章をアフタヌーンティー店舗の名称及びこれに関連する事業等に採択し、継続して使用している。
 その後、アフタヌーンティー店舗は、増加の一途をたどり、北海道から沖縄県まで全国的に展開され、平成13年3月末現在で、直営店舗数は140店に及んでおり、このうち、軽飲食物提供店は76店、生活雑貨販売店は57店、ピザキッチンは1店、パン製造販売店は3店、パン製造販売と飲食物提供店は3店、生活雑貨販売大型店は6店である。この結果、鞄の「サザビー」、服飾の「アニエスベー」、コーヒーショップの「スターバックス」、レストランの「キハチ」などのブランドを抱える原告(関連会社を含む。)において、アフタヌーンティー店舗における売上高は大きな部分を占めており、アフタヌーンティー店舗の喫茶部門の売上げ(飲食代金だけでなくパンなどテイクアウト商品の売上げを含む。)は、平成元年に15億2600万円であったが、平成5年には44億5300万円に増加した。そして、平成13年3月期において、アフタヌーンティー店舗の喫茶部門の売上げは、124億4000万円、雑貨部門の売上げが107億3000万円に至っている。
 さらに、原告は、平成14年8月31日、アフタヌーンティー店舗の設立20周年を記念して、東京都中央区銀座に「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドだけを扱う大型の旗艦店舗(地下1階地上4階)として、ジェネラルストアを開店した。ジェネラルストアでは、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドを付して食器、文房具、家具、被服、バッグ、タオル、雑貨等の日用品が販売されるほか、ベイカーショップではパンやケーキが販売され、英国の有名シェフが企画するレストラン、日本茶やハーブ茶を扱う和風茶寮、著名な英国女性がプロデュースするフラワーショップやフラワーアレンジメントスクール、ネイルサロンなども設けられている。(甲44ないし68。ただし、甲58ないし68は、本件審決の原告への送達後のものである。以下同じ。)
イ) 原告は、「Afternoon Tea」の商標を付した上で、「コーヒー」及び「ココア」などの紅茶とは異なる飲料も商品として販売してきた。例えば、平成7年10月には、コーヒー粉・砂糖・シナモンスティックとカフェオレボウルとをセットにして販売し(製造数量1200)、コーヒー袋の裏面には「AFTERNOON TEA COFFEE FOR CAFE AU LAIT」の表示が付されていた。また、平成8年11月には、エスプレッソコーヒー及びカフェオレを販売し、商品の包装袋には「AFTERNOON TEA'S ESPRESSO」及び「AFTERNOON TEA'S CAFE AU LAIT」の表示が付されていた。さらに、平成9年10月には、ミニウイスク(泡立て器)付きのフレーバーココアを販売し(製造数量3000)、商品の包装袋には、本願商標が付されていた。同様に、平成10年10月及び同11年9月にも、フレーバーココアを販売し(製造数量1万4000以上)、商品の包装袋には、本願商標が付されていた。加えて、平成11年11月には、クリスマス用のコーヒー及びココアを販売し、商品の包装には、本願商標が付されていた。
 また、原告が本願商標を付して販売しようとする商品は、飲食物及び生活雑貨のいずれについても、アフタヌーンティー店舗などの直営店において各個人に対してのみ販売され、他社への卸売りや業務用の販売は行われていない。そして、このようなアフタヌーンティー店舗におけるテイクアウト(持帰り)商品の売上げ(日商)は、当初、1店当たり3000円程度であったが、平成6年当時には、30万円程度に達している。
ウ) 昭和56年9月の渋谷区におけるアフタヌーンティー店舗の開設後、同年11月には、著名な女性誌「non‐no」(株式会社集英社発行)及び「anan」(平凡出版株式会社発行)の中で、喫茶店と生活雑貨の販売店を合体させた同店舗の開設状況が紹介され、昭和56年10月及び同57年1月にも、同様の女性誌「SAISON de non‐no」(株式会社集英社発行)の中で、喫茶店と生活雑貨の販売店を合体させた同店舗が紹介された。昭和60年9月には、女性誌「オリーブ」(株式会社マガジンハウス発行)の中で、東京都目黒区自由が丘に開設されたアフタヌーンティー店舗が、「自由が丘の散歩には欠かせない」と紹介され、その後も同店舗に関して、同誌の昭和61年4月号では、「もうすっかり有名でしょう?」との記事が、(「横浜そごう」のアフタヌーンティー店舗の紹介とともに)掲載され、昭和60年11月には、十代の女性を対象とした雑誌「ティーンの部屋」(学習研究社発行)でも同店舗が紹介された。したがって、若い女性たちの間では、このころからアフタヌーンティー店舗の名称が、一定の周知性を獲得していたものと認められる。
 さらに、原告が本願商標と同一形態の標章をアフタヌーンティー店舗名等に広く採択した昭和62年以降も、上記「non‐no」、「anan」、「SAISON de non‐no」及び「オリーブ」並びにこれ以外の主に女性を対象にした「ChouChou」(株式会社角川書店発行)、「Hanako」(株式会社マガジンハウス発行)、「GINZA」(株式会社マガジンハウス発行)、「LEE」(株式会社集英社発行)、「ELLE ジャポン」(株式会社アシェット婦人画報社発行)、「MORE」(株式会社集英社発行)、「メイプル」(株式会社集英社発行)、「SPUR」(株式会社集英社発行)、「ミセス」(文化出版局発行)、「mc Sister」(株式会社アシェット婦人画報社発行)、「LUCi」(株式会社扶桑社発行)、「新潟こまち」(株式会社ニューズライン発行)、「saitaリビング」(株式会社芝パーク出版発行)、「装苑」(文化出版局発行)、「Leaf」(株式会社リーフパブリケーションズ発行)、「TANTO」(株式会社集英社発行)、「Grand Magazine」(日之出出版株式会社発行)、「dish」(株式会社ライベッカ発行)、「Domani」(株式会社小学館発行)、「VITA」、「CLUB」、「SEDA」(日之出出版株式会社発行)、「Spy's Girl」(株式会社ワークスジャパン発行)、「HAPPY GIRLS」、「CUTiE」(株式会社宝島社発行)、「OZ magazine」(スターツ出版株式会社発行)、「Caz」(株式会社扶桑社発行)、「KIREI」(株式会社オレンジページ発行)、「non‐no ウエディング」(株式会社集英社発行)、「MUTTS」(株式会社マガジンハウス発行)、「Oggi」(株式会社小学館発行)、「poroco」(株式会コスモメディア発行)、「ELLE donichef」(株式会社アシェット婦人画報社発行)、「saita」(株式会社芝パーク出版発行)、「Sweet」(株式会社宝島社発行)、「九州ゼクシィ」(株式会社リクルート発行)、「MOE」(株式会社集英社発行)、「La Vie de 30ans」(キッコーマン株式会社発行)、「女性セブン」(株式会社小学館発行)、「OZ magazine Wedding」(スターツ出版株式会社発行)、「ELLE a table」(株式会社アシェット婦人画報社発行)、「クロワッサン」(株式会社マガジンハウス発行)、「ヴァンテーヌ」(株式会社アシェット婦人画報社発行)、「VERY」(株式会社光文社発行)、「BAILA」(株式会社集英社発行)、「HAO」(有限会社エイチエイオー発行)、「ハイファッション」(文化出版局発行)、「ELLE DECO」(株式会社アシェット婦人画報社発行)、「Look!s」(スタイライフ株式会社発行)、「FRau Gorgeous」(株式会社講談社発行)、「Kelly」(株式会社ゲイン発行)などの多数の雑誌において、アフタヌーンティー店舗が頻繁に取り上げられ、該店舗の内容及び提供される飲食物が紹介されるほか、販売される生活雑貨や持帰り用のパン等が紹介されており、記事の中には本願商標をアフタヌーンティー店舗を示す標章として掲載するものもあるから、本件審決当時において、比較的若い女性の間では、原告の経営する店舗として「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称が周知であったものと認められる。
 また、一般の情報誌や地域のタウン誌である「CanDoぴあ」(ぴあ株式会社発行)、「シティリビング」(サンケイリビング新聞社シティ事業本部発行)、「Tokyo Walker」(株式会社角川書店発行)、「クリスマス計画書」(ぴあ株式会社発行)、「cafe sweets」(株式会社柴田書店発行)、「UNION SQUARE」、「シティ情報ふくおか」(株式会社プランニング秀巧社発行)、「ザ・テレビジョン(首都圏関東版)」(株式会社日経BP社発行)、「the 自由が丘」、「道新トゥデー」(株式会社北海道新聞社発行)、「Tokyo Santa」(株式会社婦人画報社発行)、「ala!」(株式会社扶桑社発行)、「Chibaぴあ」(ぴあ株式会社発行)、「Yokohamaぴあ」(ぴあ株式会社発行)、「冬ぴあ」(ぴあ株式会社発行)、「じゃらんDE東京」(株式会社リクルート発行)、「TJカゴシマ」(斯文堂株式会社発行)、「YOKOHAMA Walker」(株式会社角川書店発行)、「SUPERランチBOOK100」、「東京エンターテインメントMAP2000」(株式会社角川書店発行)、「NICE TOWN」(ナイスタウン出版株式会社発行)、「Kansai Walker ChouChou」(株式会社角川書店発行)、「熊本ハイカラ」(熊本ハイカラ株式会社発行)、「Chiba Walker」(株式会社角川書店発行)、「北九州マガジンおいらの街」(株式会社オーパス発行)、「Kyusyu Walker」(株式会社角川書店発行)、「SUKI・TAN」(株式会社アクセス情報発行)、「Kansai Walker」(株式会社角川書店発行)、「にいがたタウン情報」(ジョイフルタウン発行)、「タウン情報まつやま」(株式会社エスピーシー発行)、「タウン情報おかやま」(株式会社アス発行)、「Kobe Walker」(株式会社角川書店発行)、「日々上質通信」(株式会社宝塚阪急発行)、「すぱいす」(熊本日日新聞社発行)、「タウンボイス」(城西朝日会発行)、「デートぴあ」(ぴあ株式会社発行)、「グルメ東海版(ぴあMAPシリーズ)」(ぴあ株式会社発行)、「KANSAI1週間」(株式会社講談社発行)、「ぴあ」(ぴあ株式会社発行)、「Hokkaido Walker」(株式会社角川書店発行)、「TJKagawa」(株式会社ホットカプセル発行)、「関西版ぴあ」(ぴあ株式会社発行)
、「ひろしまっぷ」(株式会社ひろしまタウン情報発行)、「モンタン」(株式会社ヒューマンエナジー研究所発行)、「Hiroshima Walker」(株式会社角川書店発行)、「札幌cafe本」(株式会社コスモメディア発行)、「TOKYO BROS」(株式会社東京ニュース通信社発行)、「TOKYO1週間」(株式会社講談社発行)でも、全国に展開されたアフタヌーンティー店舗の関連記事が頻繁に掲載されている。
 さらに、女性を直接の対象としていない一般的な雑誌、経済誌及び新聞紙並びに飲食業界及び流通業界等の業界雑誌である「H2O」(日本放送出版協会発行)、「北海道新聞」(株式会社北海道新聞社発行)、「日経マーケット女性版」(日経BP社発行)、「フードビジネス」(株式会社フードビジネス発行)、「週刊スパ」(株式会社扶桑社発行)、「繊研新聞」(繊研新聞社発行)、「日本繊維新聞」(繊研新聞社発行)、「日本経済新聞」(株式会社日本経済新聞社発行)、「POPEYE」(株式会社マガジン発行)、「dining」(株式会社柴田書店発行)、「ファッション販売」(株式会社商業界発行)、「紅茶カタログ」(株式会社東西社発行)、「パンニュース」(株式会社パンニュース発行)、「THE SPOON(キューピー株式会社発行)、「月刊食堂」(株式会社柴田書店発行)、「大分合同新聞」(有限会社大分合同新聞社発行)、「週刊文春」(株式会社文藝春秋発行)、「西日本スポーツ」(株式会社西日本新聞社発行)、「毎日新聞」(株式会社毎日新聞社発行)、「日刊スポーツ」(株式会社日刊スポーツ新聞社発行)、「近代食堂」(株式会社旭屋出版発行)、「MdN」(株式会社エムディエヌコーポレーション発行)、「ケイコとマナブ(首都圏版)」(株式会社リクルート発行)、「an」(株式会社学生援護会発行)、「レタスクラブ」(株式会社SSコミュニケーションズ発行)、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社発行)、「Begin」(株式会社世界文化社発行)、「朝日新聞」(株式会社朝日新聞社発行)、「自由民主」(自由民主党発行)、「産経新聞」(株式会社産経新聞社発行)、「FIGARO japon」(TBSブリタニカ発行)、「BUZZ」(株式会社ロッキング・オン発行)、「Cut」(株式会社ロッキング・オン発行)、「読売新聞」(株式会社読売新聞社発行)、「Gainer」(株式会社光文社発行)、「Delicious」(株式会社世界文化社発行)、「Casa BRUTUS」(株式会社マガジンハウス発行)、「グルメジャーナル」(飛鳥出版株式会社発行)、「日経レストラン」(株式会社日経BP社発行)、「日経トレンディ」(株式会社日経BP社発行)、「Zakka」(株式会社主婦の友社発行)、「パン店菓子店」(株式会社旭屋出版発行)、「ENGINE」(株式会社新潮社発行)、「KellyグルメDX」(株式会社ゲイン発行)、「Welcome to HAIKARA cafe」や、ホームページ上でも、アフタヌーンティー店舗の経営の内容や店舗の様子、平成14年に開店したジェネラルストアなどが頻繁に紹介されている。
 これらの各種新聞雑誌等による紹介記事とは別に、原告は、本願商標をアフタヌーンティー店舗の標章として明示して活発な宣伝広告活動を行っており、例えば、平成7年3月には、前記「anan」、「non‐no」などの7種類の雑誌における広告掲載費として合計5906万円を支出し、広告制作費として1289万円を支出している。
(2) 以上の認定事実によれば、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」が、原告の経営するアフタヌーンティー店舗のいわゆるハウスマークであり、本願商標が、アフタヌーンティー店舗を示す標章として使用されていたことは、比較的若い女性の間では遅くとも本件審決時おいて周知であったことが明らかであると認められる。また、アフタヌーンティー店舗は、若い女性のみを対象としない全国各地の地域の情報紙でも頻繁に取り上げられており、原告によるアフタヌーンティー店舗の経営内容や販売展開の状況は、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞等の一般新聞や週刊誌で紹介され、飲食業界や流通業界の業界紙でも多数回にわたり紹介されているから、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称が、アフタヌーンティー店舗のハウスマークであることは、若い女性に限定されず、一般の需要者・消費者にとって、上記時点においてかなりの程度で周知であったものと認められる。
 さらに、アフタヌーンティー店舗では、長年にわたり、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称を付し、本願商標を掲載したメニューを使用して紅茶以外のコーヒー・ジュース等の飲み物を提供してきたものと認められるから、このような飲食物の提供形態をとることにより、注文者が品質を誤認するような混乱を生じることはなかったものと推認するのが相当である。また、同様に、原告では、近年、本願商標を付して紅茶以外のコーヒー・ココアなどの飲み物を販売してきたものと認められるところ、このような飲食物の販売形態をとることにより、需要者が品質を誤認するような混乱も生じることがなかったものと推認される。
 なお、原告の経営方針として、本願商標を付した各種商品は、アフタヌーンティー店舗においてのみ販売されており、一般の需要者・消費者が、他の店舗及び自動販売機等によって本願商標を付した各種商品を購入することは困難な状況にあるものと認められる。
 以上の諸事情に加えて、前記説示のとおり、本願商標から「茶」「紅茶」の観念のみが生じるものではなく、「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」といった観念も生じるものであり、必ずしも商品の品質のみが想起されるものでないことも併せ考慮すると、本願商標をその指定商品について使用した場合に、商品「茶」であるかのごとく、需要者をして、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認めることはできないといえる。
 したがって、原告の取消事由2の主張には理由がある。
(3) 被告は、本願商品は、「ビール」を除いて、その需要者を限定されるものでなく、また、「ビール」を含めて、その販売地域を限定されるものでない商品であって、上記程度の店舗の拡大によっては、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称が、本願商品の取引の実情に照らして、一般的に周知であるとはいえないと主張する。
 確かに、本願商品(ビールを除く。)の需要者は一般的であって、若い女性などに限定されるものではないが、前記認定のとおり、アフタヌーンティー店舗は、北海道から沖縄県まで全国的に展開され、平成13年3月末現在で、直営店舗数は140店に及び、喫茶部門のみの売上げが124億4000万円に達している。そして、若い女性のみを対象としない全国各地の地域の情報紙でも、同店舗が頻繁に取り上げられ、原告によるアフタヌーンティー店舗の経営内容や販売展開の状況は、一般新聞や週刊誌、経済紙、業界紙でも多数回にわたり紹介されているから、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称が、アフタヌーンティー店舗のハウスマークであることは、若い女性に限定されず、一般の需要者・消費者にとって、遅くとも本件審決時においてかなりの程度で周知であったものと認められ、被告の主張は採用できない。
 また、被告は、本願商品には「ビール」が含まれているから、本願商品等の一般的需要者である運転者等が「ビール」を「茶」と誤認して使用した場合に、混乱や悲惨な事態が生じることは容易に想起できると主張する。
 しかし、原告が、アフタヌーンティー店舗の周知なハウスマークとなっている本願商標のみを付して、他にアルコール飲料であること明示せずにビールを販売するものとは想定し難い上、前記認定のとおり、アフタヌーンティー店舗では、長年にわたり、本願商標を掲載したメニューを使用して紅茶以外にコーヒー・ジュースやビール等の飲み物を提供してきた実績があり、本願商標を付してコーヒー・ココアなどの飲み物を販売してきた実績もあるが、これらの飲食物の提供及び販売形態をとることにより、注文者・需要者が品質を誤認するような混乱は生じていないものと推認され、しかも、具体的販売形態として、一般の需要者・消費者が、アフタヌーンティー店舗以外の店舗及び自動販売機等によって本願商標を付した各種商品を購入することは困難な状況にあることを考慮すると、被告の主張するような混乱や悲惨な事態が生じるものとは到底考えられず、上記主張は採用できない。
4 結論
 以上のとおり、本件審決は、本願商標が品質の誤認を生じると誤った判断をしたものであり、この誤りがその結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件審決は取消しを免れない。

論  説

日本人は、「アフターヌーンティー」などというと、「午後の紅茶」と直訳してそのような意味の言葉としか理解しないようであり、特許庁も「茶」にこだわった審査をした。しかし、裁判所は、今日の社会的な状況を見て、そのような言葉の商標が付けられていたとしても、もっと広い意味をもった言葉として使用されているものと理解し、午後の茶の会とか午後の軽い食事という意味と解したことは賢明であるといえる。
 そのようにこの言葉を解すれば、単に「茶」に限らず、ビールやジュースやコーラも含まれることになり、必ずしも商品の品質の誤認を起すことはわが国においてもあり得ないと考えたことは妥当である。
 それにしても、原告側はきわめて多くの周知性を立証する証拠を提出しているが、これらによってこの商標が店舗の「ハウスマーク」となっており、その著名性が立証されたことに意義があったとえる。原告側代理人の努力と情熱の成果であろう。

[牛木理一]