G-22

 
 

?図形事件:東京高裁平成14年(行ケ)178号平成15年1月29日判決(棄却)<13民>

〔キーワード〕 
創作的図形、自他商品識別力の要部、商標の類似

 

〔事  実〕


 
1.特許庁における手続の経緯
 被告(ゲス?インコーポレーテッド)は、指定商品を第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」とする商標登録第4231114号商標(平成11年1月14日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。
 原告(大阪ケミカル株式会社)は、平成12年10月11日、被告を被請求人として、本件商標の指定商品中「履物」についての登録を無効にすることについて審判を請求した。
 特許庁は、同請求を無効2000−35552号事件として審理した上、平成14年3月12日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同月25日、原告に送達された。
2.審決の理由
 審決は、本件商標は、指定商品を第25類「履物」とする商標登録第4060799号商標(平成8年4月16日登録出願、平成9年9月26日設定登録、以下「引用商標」という。)と外観、称呼及び観念において類似する商標であり、かつ、指定商品中「履物」について、引用商標の指定商品と同一であるから、本件商標は、指定商品中「履物」について商標法4条1項11号に違反して登録されたものであるとの請求人(原告)の主張に対し、本件商標は、創作的な特異な図形として認識されるものであって、引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、同号に違反して登録されたものではないから、同法46条1項の規定により、その登録を無効とすることはできないとした。

 

〔判   断〕


 
1.取消事由(本件商標と引用商標の類否判断の誤り)について
(1) 本件商標及び引用商標の構成態様について
 本件商標は、別添審決謄本写し別掲(1)のとおり、上半部に欧文符号のクエスチョンマーク(疑問符)「?」(以下「疑問符」という。)の上部の図形をほぼ同一幅をもって肉太帯状にデザインして表し、下半部に黒く塗りつぶした正三角形(同部分は、全体に対し、高さにおいて約3分の1、幅において約2分の1を占める。)を配してなるものである。そして、乙1、22(枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、本件商標は、被告が、主としてアパレル商品に使用し、いずれも引用商標に先立って出願、登録された被告主張に係る「トライアングル(逆三角形)ゲスブランド」、すなわち、商標登録第2065076号商標(昭和60年4月3日登録出願、昭和63年7月22日設定登録、乙22−1)、商標登録第2213017号商標(昭和62年9月10日登録出願、平成2年2月23日設定登録、乙22−2)及び商標登録第2496833号商標(平成元年2月6日登録出願、平成5年1月29日設定登録、乙22−3)の構成中の下部に表された上記図形部分を、独立した商標としたものであることが認められる。
 他方、引用商標は、同別掲(2)のとおり、やや扁平にデザインされた疑問符の下に通常の活字体により「Question mark*」の欧文字(同部分は、高さにおいて全体の約8分の1を占め、幅においては上部の疑問符よりやや幅広である。)を表してなるものである。
(2) 類否判断について
ア 本件商標は、その構成中の上半部が疑問符の上部をデザインしたものであることが外観から明らかであり、これに接する指定商品中「履物」の一般的な取引者、需要者に疑問符を想起させることは否定できないが、通常の疑問符の下部は黒丸で表されるのに対し、本件商標の構成は、この部分が比較的大きな黒く塗りつぶされた正三角形で表されていることが外観上の顕著な特徴となっており、上記の一般的な取引者、需要者が通常払う注意力を基準とした場合に、その相違に容易に気付くことが明らかであるから、本件商標は、疑問符を変形図案化したものと連想させるところがあるとしても、これとは異なった創作的な特異な図形として認識されるものである。そして、疑問符自体は、ありふれた図形であって、自他商品識別力がないか希薄というべきであるから、本件商標は、疑問符に類似している部分は、自他商品識別力がないか希薄な部分であり、疑問符と相違する部分が、自他商品識別力が強い要部であると認められる。
   なお、乙11−1、3〜11(いずれも「GUESS」1999年〔平成11年〕秋号)、乙12−2、3(いずれも同2001年〔平成13年〕秋号)、乙13−2、3、6〜8(いずれも同年春号)には、被告の商品であるジーンズやアクセサリーに本件商標が付されていること、乙14−2−1(平成9年10月5日TBSブリタニカ発行の「FIGAROフィガロジャポン」8巻18号)、乙15−2−1、3−1(いずれも同月6日宝島社発行の「Spring」新創刊第2号)、乙16−2−1(マガジンハウス発行の「BRUTUS」同年1月1日・15日号)、乙17−2−1(同平成10年3月1日号)、乙18−2−1(婦人画報社発行の「MEN'S CLUB」平成9年4月号)には、被告の商品を紹介する雑誌記事中に本件商標が掲載されていることが認められるが、上記証拠のうち、乙11〜13(いずれも枝番を含む。)は、本件商標の登録査定時である平成10年11月24日(甲2)より後に頒布されたものであり、その余の上記証拠によっては、上記登録査定時において、被告主張のように、本件商標が、「GUESS(ゲス)のクエスチョンマーク」又はこれを簡略化した「GUESS(ゲス)クエスチョンマーク」の一連の称呼及び「GUESS(ゲス)社の疑問符」の観念を生ずるとまでは推認することができず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
イ そうすると、本件商標は、疑問符と類似している部分が要部であるということができず、これに接する指定商品中「履物」の一般的な取引者、需要者に、疑問符とは異なった創作的な特異な図形として認識されるものであることは上記のとおりであるから、単なる「クエスチョンマーク」との称呼及び「クエスチョンマーク(疑問符)」の観念を生ずるものということはできない。他方、引用商標の上記構成からは、上部の疑問符及び下部の欧文字部分の構成文字に相応して、「クエスチョンマーク」の称呼が生ずることは明らかであるから、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において類似するものということはできない。
   また、本件商標と引用商標の上記構成から、両者が共に疑問符に類似する点を有することは否定できないが、疑問符と類似している部分は要部であるということができないことは前示のとおりであり、その余の部分が相違することは、その外観上明らかであり、本件商標と引用商標とは、外観においても類似するものということはできない。
   したがって、本件商標は、引用商標とは外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似する商標とは認められない。
ウ 原告は、原告の商品である履物(靴)に引用商標を使用しており、他方、被告は、現在、本件商標をその指定商品に使用していないが、これを使用した場合は、本件商標と引用商標との間に商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると主張するところ、被告による本件商標の使用の有無は、両商標の類否判断に直接影響を及ぼすものではないし、他に、上記のような外観、称呼及び観念上の非類似性を妨げ、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれをうかがわせるような取引の実情を認めるに足りる証拠はない。
(3) そうすると、本件商標は、商標法4条1項11号に違反して登録されたものではないから、同法46条1項の規定により、その登録を無効とすることはできないとした審決の判断に、誤りはない。
2.以上のとおり、原告主張の取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。

〔研  究〕

 引用商標は先願登録ではあるが、その標章は周知の「クエスチョンマーク」の図形であるのに対し、後願登録の本件商標は、その標章がクエスチョンマークに似てはいるが特異な創作性のある図形であることから、両商標は外観,称呼,観念の三点から見ても自他商品の混同を起すことはないと認定され、類似する商標ではないと判断されたことは妥当である。
 図形中の一部に共通部分があったとしても、異なる他の部分がきわめて強烈な区別力を有する部分であることが認められる以上、両者は類似するものではないが、引用商標は本件商標に比較すれば、それ自体、自他商品の識別力の弱い標章から成るものといえる。

[牛木理一]