D-28

 

 

キャンディ・キャンディ第5事件:東京地裁平成11年(ワ)20392号平成14年5月30日判決(認容)

〔キーワード〕 
漫画キャラクターの絵、絵の商品利用、共同不法行為、損害賠償額、弁護士費用
〔事  実〕
 本件は、連載漫画のストーリーの創作を担当した著述家である原告が、原告に無断で行われた同連載漫画の登場人物の絵の商品化事業について、原告が同連載漫画について有する原著作者としての権利を侵害すると主張して、同商品化事業に関与した被告らに対し、著作権侵害を理由とする損害賠償等の支払を求めたものである。これに対して、被告らは、単にストーリーを創作したにすぎない原告は連載漫画の登場人物の絵の使用について権利を主張することはできないと主張して、著作権侵害を争い、過失の存在を争うとともに、損害賠償の額を争っている。
1 前提となる事実
(1) 当事者
ア 原告Aは、漫画の原作、児童文学作品等を主な活動領域とする著述家であり、 本件で問題とされている連載漫画(「キャンディ・キャンディ」)のストーリーの創作を含め、その活動に関して「a」のペンネームを使用している
イ 被告B(以下「被告B」という。)は、漫画家であり、「b」のペンネームを使用している。また、被告有限会社アイプロダクション(以下「被告アイプロ」という。)は、被告Bを代表取締役とするアニメーションの著作及び制作販売を主たる業務とする会社であり、被告Bの有する著作権等の権利について専属的にその管理を行っている。
ウ 被告株式会社ダンエンタープライズ(以下「被告ダン」という。)は、工業所有権、映像、文芸、美術、音楽に関する著作権等の取得、譲渡及び貸与等を主たる業務とする会社であり、被告サンブライト株式会社(以下「被告サンブライト」という。)は、商標権、実用新案権、意匠権の売買、仲介及びリース業等を主たる業務とする会社である。
エ 被告タニイ株式会社(以下「被告タニイ」という。)は、衣料品、服飾品の製造販売並びに日用雑貨品の販売及び意匠権、商標権、特許権、実用新案権の取得等を主たる業務とする会社である。
オ 被告有限会社アース・プロジェクト(以下「被告アース」という。)は、著作権、著作隣接権の取得、管理、譲渡を主たる業務とする会社である。
(2) 連載漫画の制作の経緯
 漫画「キャンディ・キャンディ」(以下「本件連載漫画」という。)は株式会社講談社発行の月刊少女漫画雑誌「なかよし」(以下「なかよし」という。)
の昭和50年4月号から同54年3月号までに連載された連続したストーリーを有する漫画であるところ、本件連載漫画は、連載の各回ごとに、原告がストーリーを創作し、小説形式にした原稿(以下「原作原稿」という。)を作成してこれを被告Bに渡し、被告Bが同原稿に基づいて漫画を作成するという手順で制作された。なかよしにおける本件連載漫画の各連載分には、その扉絵に、作者として、被告Bのペンネームである「b」と共に、「原作 a」という形で原告のペンネームが表示されていた。
(3) 商品化事業をめぐる紛争の経緯
原告は、平成7年11月15日、被告Bとの間で、本件連載漫画の登場人物の絵の使用については両名で許諾をし、使用料については両名の間で分割して取得する旨の合意をしていた(以下、「平成7年合意」という。)。しかしその後、原告は、被告Bとの間で本件連載漫画の著作権の帰属をめぐって紛争を生じ、平成9年、被告Bらを相手方として、本件連載漫画の登場人物を描いた絵の販売の差止め等を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(東京地裁平成9年(ワ)第19444号事件)。東京地方裁判所は、平成11年2月25日、同事件について、原告の請求を認容する判決を言い渡した。被告Bは、同判決に対して控訴したが(東京高裁平成11年(ネ)第1602号事件)、東京高等裁判所は、平成12年3月30日、被告Bの控訴を棄却する判決を言い渡した(甲8)。同被告は、同判決に対して上告受理の申立てをしたが、最高裁判所は、平成13年10月25日、同被告の上告を棄却する判決を言い渡した(以下「先行訴訟上告審判決」という。)。
(4) 被告らの行為
ア 被告Bは、被告アイプロに対し、本件連載漫画について被告Bの有する著作権を管理しその商品化事業を遂行することを委任した。これに基づき、被告アイプロは、被告ダンとの間で、本件連載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化契約を締結して、被告ダンが被告サンブライトに対し、被告サンブライトがその傘下の販売業者及び被告タニイに対し、被告タニイがその傘下の販売業者に対し、それぞれ本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾した。前記各販売業者は、これに基づき、本件連載漫画の登場人物の絵の付された玩具、文具、衣料品等のキャラクター商品(以下、これと後記の株式会社サンメールの販売に係る商品を併せて「本件商品」と総称する。)を製作して、平成10年10月から平成11年5月にかけて販売した。
イ 被告Bの前記委任に基づき、被告アイプロは、被告アースとの間で、本件連載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化契約を締結して、被告アースが株式会社サンメール(以下「サンメール」という。)に対し、本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾した。サンメールは、これに基づき、レターセット、メモ等のキャラクター商品(前記のとおり、サンメールの販売に係る商品を含めて「本件商品」という。)を製作し、平成10年3月から同年6月にかけて販売した(なお、被告アースの本件商品化事業への関与が上記にとどまるものかどうかについては、後記のとおり、争いがある。)。
(5)被告らの本件連載漫画の登場人物の絵についての使用料
ア 被告サンブライト傘下の販売業者は、本件商品を販売したときは、被告サンブライトに対し、販売した本件商品の上代価格(小売価格を指す。以下、同じ。)の6%に相当する金員を、本件連載漫画の登場人物の絵の使用料として支払うこととされていた。被告タニイは、自己又はその傘下の販売業者が本件商品を販売したときは、被告サンブライトに対し、販売された本件商品の上代価格の6%を支払うこととされていた。なお、被告タニイの傘下の販売業者が被告タニイに支払っていた使用料は、上代価格の6%を下回るものではないと認められる。
イ 被告サンブライトは、前記ア記載の販売業者(被告タニイを含む。)が本件商品を販売したときは、被告ダンに対し、販売された本件商品の上代価格の4%に相当する金員を支払うこととされていた。
ウ 被告ダンは、前記イ記載の販売業者が本件商品を販売したときは、被告アイプロに対し、販売された本件商品の上代価格の3%に相当する金員を支払うこととされていた。
エ サンメールが本件商品を販売したときは、サンメールは被告アースに対して販売された本件商品の上代価格の5%に相当する金員を支払い、被告アースは被告アイプロに対して同商品の上代価格の3%に相当する金員を支払うこととされていた。
2 争点
(1)本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して、原告の本件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか。
(2)本件商品の販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用について、被告らが責任を負うかどうか。
 ア 被告アースの関与行為の内容
 イ 被告らの過失の有無等
(3)原告の被った損害額等。
  〔判  断〕
  1 争点1(本件連載漫画の登場人物の絵のみを使用する行為に対して、原告の本件連載漫画の原著作者としての権利が及ぶかどうか)について
 前記第2の1(前提となる事実)(2)に記載した本件連載漫画の制作の経緯によれば、本件連載漫画は、原告の創作した原作原稿を原著作物とする二次的著作物に当たると認められるから、原告は、本件連載漫画について原著作者の権利を有するというべきである。そして、二次的著作物である本件連載漫画の使用に関し、原著作物の著作者である原告は本件連載漫画の著作者である被告が有するものと同一の種類の権利を専有し、本件連載漫画の登場人物の絵の使用についても、権利を有するものというべきである(最高裁平成12年(受)第798号同13年10月25日一小廷判決・裁判集民事203号285頁、判時1767号115頁。先行訴訟上告審判決)。
 なお、被告B及び被告アイプロは、本件においては、原告から被告Bに本件連載漫画の第1回連載分の原作原稿が交付される前に、被告Bによりキャンディ原画及びキャンディ予告原画が作成されていたから、本件連載漫画における主人公キャンディの絵は、原告作成の原作原稿に依拠することなく作成されたものであり、原作原稿を原著作物とする二次的著作物に当たらないと主張する。     
 しかし、証拠(甲8〜10、乙9、10)及び弁論の全趣旨によれば、キャンディ原画は、本件連載漫画における主人公キャンディの絵との関係でいえば、下書きないし習作というべきものであり、キャンディ予告原画も、本件連載漫画の予告掲載のため、昭和50年1月初めに、原告、被告、なかよしの編集者との間での打合せの結果を踏まえて主人公キャンディの暫定的な予定画として作成されたものであって、いずれも、原作原稿において予定されていた主人公の性格等の特徴に合致するように、本件連載漫画の制作作業の一環として作成されたものである。
 これによれば、キャンディ原画及びキャンディ予告原画は、いずれも、本件連載漫画のストーリーと無関係に独立して作成されたものということができず、本件連載漫画の制作経過を全体としてみれば、キャンディ原画及びキャンディ予告原画は、本件連載漫画における主人公キャンディの絵と一体として、原告作成の原作原稿に依拠して作成されたものというべきである。
 したがって、結果的に、本件連載漫画において描かれた主人公キャンディの絵がキャンディ原画及びキャンディ予告原画と同一ないし類似するものであったとしても、本件連載漫画の絵が、これらに依拠して作成されたということはできないから、被告B及び被告アイプロの主張を採用することはできない。また、その他の被告らの主張も、上記に照らし、いずれも採用することができない。
2 争点2(本件商品の製造販売による本件連載漫画の登場人物の絵の使用について、被告らが責任を負うかどうか)について
(1)本件商品の商品化事業について
 前記第2の1(前提となる事実)に記載の事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、被告Bは被告アイプロに対し本件連載漫画について被告Bの有する著作権を管理しその商品化事業を遂行することを委任し、被告アイプロは被告ダンとの間で本件連載漫画の登場人物の絵について第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化契約を締結し、被告ダンが被告サンブライトに対し、被告サンブライトがその傘下の販売業者及び被告タニイに対し、被告タニイがその傘下の販売業者に対し、それぞれ本件連載漫画の登場人物の絵の使用を再許諾したものであって、被告タニイ及び前記各販売業者は、これに基づき、本件連載漫画の登場人物の絵の付された本件商品を製造して、平成10年10月から平成11年5月にかけて本件商品を販売したことが認められるから、これによれば、被告B、被告アイプロ、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイは、一体として、末端の販売業者をして本件商品の製造販売を行わせるという商品化事業を遂行したものというべきである。加えて、前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、同商品化事業において、被告Bは被告アイプロ、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者までを、被告アイプロは被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者までを、被告ダンは被告サンブライト及び被告タニイを通じて被告タニイを含む末端の販売業者までを、被告サンブライトは自ら又は被告タニイを通じて被告タニイを含む販売業者を、被告タニイはその傘下の販売業者を、それぞれ把握し、それぞれ本件商品の売上数量、売上額等を報告させることによってその販売状況を掌握していたことが認められる。したがって、上記被告らは、上記商品化事業を一体として遂行したものとして、それぞれが関与しているルートの傘下に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)が本件商品の製造販売を行った行為について、著作権侵害の共同不法行為者として責任を負うものというべきである。
 また、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告アースは、平成9年10月28日、被告Bから本件連載漫画の登場人物の絵について著作権管理代行、再許諾権等を付与されていたフジサンケイアドワーク及び被告アイプロから、本件連載漫画の登場人物の絵につき第三者の使用に対する再許諾権の付与を含む商品化事業の許諾を受け、これに基づいてサンメールに対して当該絵の使用を再許諾し、サンメールが本件商品を製造して平成10年3月から同年6月にかけて販売したこと、サンメールは、本件商品を販売したときは、その売上数量、売上額等を被告アースに報告し、これに基づいて、被告アースからフジサンケイアドワークに対し、使用料が支払われ、被告アイプロ、被告Bがこれを把握していたことが認められるから、これによれば、被告B、被告アイプロ、被告アース、サンメールは、一体として、末端の販売業者であるサンメールが本件商品の製造販売を行うという商品化事業を遂行し、同商品化事業において、被告Bは被告アイプロ、フジサンケイアドワーク及び被告アースを通じて末端の販売業者であるサンメールまでを、被告アイプロは被告アースを通じてサンメールまでを、被告アースはサンメールを、それぞれ把握し、それぞれ本件商品の売上数量、売上額等を報告させることによってその販売状況を掌握していたことが認められる。したがって、被告B、被告アイプロ及び被告アースは、上記商品化事業を一体として遂行したものとして、サンメールが本件商品の製造販売を行った行為について、著作権侵害の共同不法行為者として責任を負うものというべきである。
(2)争点2ア(被告アースの関与行為の内容について)
 原告は、被告アースの関与行為に関して、被告アースは、被告ダンを中心とする商品化事業についても、被告ダンに対して本件連載漫画の商品化を再許諾することの内諾を与えたことにより関与したものであるから、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売についても責任を負うと主張する。
 そこで検討するに、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告アースは、平成10年5月15日ころから被告ダンに対して本件連載漫画の登場人物の絵の商品化事業に参加することを持ちかけ、同年6月1日には、被告アースが被告ダンに対して本件連載漫画の登場人物の絵の使用を許諾し、被告ダンが被告アースと共同して商品化事業を遂行する旨の契約を、被告ダンとの間で締結したことが認められる。しかし、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告アイプロ及び被告ダンは、被告アースを除外して被告アイプロからの窓口を被告ダンに一本化して商品化事業を遂行する旨を合意し、同年7月27日に、被告アイプロ、被告ダン及び被告アースの三者の間で、以後は、被告アイプロから直接被告ダンが許諾を受けて同被告に窓口を一本化して商品化事業を遂行し、被告アースは商品化事業の系列から外れる旨の合意が成立し、これに伴って、後日、同年6月1日にさかのぼった日付で、被告アイプロを許諾者、被告ダンを被許諾者とし、被告アースを被告アイプロの代理人として表示した「商品化権使用許諾書」が作成されるとともに、被告アースを当事者から除外した形での被告サンブライトに対する使用許諾契約書も作成されたこと、被告ダンを中心とする商品化事業における販売業者による本件商品の販売(すなわち、サンメールの販売分を除く本件商品の販売)は、同年7月27日以前には行われておらず、被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の販売については、販売店からの使用料支払の経由者となっておらず、その分配にもあずかっていないことが認められるものであり、これらの事情を総合すれば、被告アースは、サンメールの販売分を除く本件商品の製造販売については責任を負わないというべきである。原告の主張は、採用できない。
(3)争点2イ(被告らの過失の有無等)について
ア 前記第2の1(前提となる事実)に記載の事実に証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。
(ア)被告アースは、平成9年10月28日にフジサンケイアドワーク及び被告アイプロから本件連載漫画の登場人物の絵の使用についての許諾を得て、本件連載漫画のキャラクターの商品化事業を遂行し、サンメールに対して本件商品の製造販売を許諾した。
 被告アースは、本件連載漫画の原作者が原告であると知っていたが、被告アイプロとの同契約の締結に当たり、被告Bから、キャンディの絵をめぐって原告とフジサンケイアドワークとの間で裁判になっており、同裁判において原告が、キャンディの原画についての権利を主張して、その販売の差止めを求めていると告げられた。被告アースは、同時に、被告Bからも、絵のみの使用であれば原告の権利は及ばないこと、その旨の代理人弁護士の見解も文書で得ていること、原告との争いの実態は利益の配分の問題にすぎないことを告げられ、この結果、被告アース代表者は、被告Bの書き下ろしの絵であれば原告の権利は及ばないと考えて、被告アイプロとの契約締結に至った。
 その後、被告アースは、平成10年3月初め、原告から、「商品化には原作者である原告の許可が必要であるところ、被告アースが許諾したサンメールは原告の許可を得ていないので、商品の製造を中止してほしい」旨の通知を受けた。そこで、被告アースは、被告B及び被告アイプロに連絡をとったところ、被告B及び被告アイプロからは、漫画作品の出版でなければ問題ないとの認識でいると言われ、第三者が本件連載漫画の登場人物の絵を使用するに当たって、原告の同意を得なかったとしても何ら違法ではないとの趣旨の代理人弁護士の意見書の写しを交付された。
(イ)被告ダンは、平成10年7月27日ころ、被告アイプロから本件連載漫画のキャラクターの商品化事業について許諾を得、被告ダンは同被告の営業部門を担当している被告サンブライトに対し、被告サンブライトはその傘下の販売業者及び被告タニイに対し、それぞれ本件商品の製造販売を再許諾して、本件連載漫画の登場人物の絵の商品化事業を遂行した。
 被告ダン及び被告サンブライトは、被告Bと原告が係争中ということを知っていたが、被告B及び被告アイプロから、本件連載漫画の登場人物の絵の著作権は被告Bが持っているので心配ないとの説明を受け、絵を使用するだけであれば原告の権利は及ばない旨の被告B及び被告Bの当時の代理人弁護士の見解が記載された文書の交付を受けていた。そのようななかで、被告サンブライトから商品化許諾を受けていた被告タニイは、平成10年8月26日、原告から、「本件連載漫画の商品化には原作者の承諾がいるので、被告Bの許諾だけでは商品化はできない」旨の内容証明郵便の送付を受けた。被告タニイからの連絡を受けた被告ダン及び被告サンブライトが、被告B及び被告アイプロに対してこれを報告したところ、被告B及び被告アイプロの当時の代理人弁護士から、被告Bの許諾だけで商品化はできる旨を再度説明された。被告ダン及び被告サンブライトは、同被告両名の代理人弁護士から原告の許諾も受けた方がよい旨のアドバイスを受け、商品化事業の遂行については進める一方、原告の許諾も得るべく努めたが、結局原告の許諾を得ることはできなかった。
イ 上記認定事実によれば、被告らは、本件連載漫画について著作権を有するのは被告Bのみである旨及び仮に原告に何らかの権利があったとしても本件連載漫画のストーリーを用いないで登場人物の絵を使用するだけであれば著作権法上の問題を生じない旨の共通認識の下で、共同して、本件連載漫画の登場人物の絵を使用した商品化事業を遂行したものと認められるから、前述したとおり、本件商品の製造販売による著作権の侵害については、被告らは、それぞれが関与したルートの傘下に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)による本件商品の販売について、共同不法行為者として責任を負担するものというべきである。
ウ 被告らは、いずれも自己の過失を争うが、本件連載漫画の登場人物の絵の使用については、それにより著作権法上の問題を生じないかどうかを、各自が、事業の遂行に当たって自己の責任により判断すべきものであるところ、被告らは、いずれも、本件連載漫画について原告が原作原稿を著述していることについては認識があったものであり、また、本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告から実際に権利主張がされていることを認識していたものである。加えて、なかよしにおける本件連載漫画の各連載分に「原作 a」という形で原告のペンネームが表示されていたこと(前記第2の1(前提となる事実)参照)に照らしても、本件連載漫画の登場人物の絵の使用につき原告が何らかの権利を有することは容易に知り得べきものであった。これらの点に照らせば、被告らに過失のあったことは明らかである。被告アース、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイは、被告B及び同被告の当時の代理人弁護士から本件連載漫画の登場人物の絵の利用については原告の権利は及ばない旨の説明があったことをもって過失の存在を争うが、前記の事情に照らせば、被告B及びその代理人弁護士の説明を軽信したことには、過失があったというべきである。
3 争点3(原告の被った損害の額等)について
(1)著作権法114条2項に基づく損害額
ア 本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告が受けるべき金銭の額
(ア) 上述したとおり、被告らは、被告Bを頂点とし販売業者を末端とする 商品化事業を一体となって行ったものとして、それぞれが関与しているルートの傘下に属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)が本件商品の製造販売を行った行為について、著作権侵害の共同不法行為者として責任を負うものであるところ、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告ダンの関与するルートに属する末端の販売業者(被告タニイを含む。)は、本件商品の製造販売につき、本件連載漫画の登場人物の絵の使用料として、商品の上代価格の少なくとも6%に相当する金額を直接のライセンサーに対して支払っていることが認められる。本件商品の上代価格の6%という合意は、被告Bが本件連載漫画の登場人物の絵の使用についてのすべての権利を有することを前提として、商品化契約としての通常の交渉の結果合意された額と認めることができるから、同合意により定められた本件商品の上代価格の6%に相当する額をもって、本件連載漫画の登場人物の絵を商品化した場合に第三者から支払われるべき使用料と認めるのが相当である。なお、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告アースは、サンメールとの間で、本件商品の上代価格の5%を使用料として受け取る旨を合意していたことが認められるが、この点を考慮しても、上記のとおり、被告ダンの関与するルートに属する多数の末端の販売業者が上代価格の6%を著作物使用料として支払っていたことに照らせば、本件連載漫画の登場人物の絵の使用について著作権者が受けるべき金銭の額(著作権法114条2項)は、商品の上代価格の6%と認めるのが相当というべきである。
本件連載漫画については、原告は原著作物の著作者として、被告Bは二次的著作物の著作者としてそれぞれ権利を有するものである。本件連載漫画の商品化事業に当たって第三者から支払われる著作物使用料の両者の間での分配割合は、特段の事情のない限り各2分の1と解されるところ、玩具、文具、衣料品等の通常のキャラクター商品である本件商品における著作物の使用については、この分配割合を変更すべき事情は見当たらない。
 そうすると、被告らの商品化事業における本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告が受けるべき金銭の額(著作権法114条2項)は、商品の上代価格の3%(上記認定の6%の2分の1)と認めるのが相当である。
(イ) この点につき、被告ダン及び被告サンブライトは、使用料相当損害金(著作権法114条2項)の算定に当たっては、被告Bがライセンサーとして実際に受領していた著作物使用料率である3%が基準となり、原告が請求し得る損害額はその2分の1に当たる1.5%であると主張し、その理由として、ライセンシーは、著作物使用料だけでなく、著作権管理会社の費用等も含んだものとしてライセンス料を支払うのであり、著作権法114条2項の文言も「その著作権の行使につき受けるべき金銭の額」と定められ、使用者がその著作権の使用につき支払うべき金銭の額とは定められていないこと、被告Bも自らの会社において直接商品化許諾を行った際の著作物使用料は3%であったことを指摘し、被告タニイ、被告アースも同旨の主張をする。
 しかし、原告が原著作物の著作権者として本件連載漫画の登場人物の絵について有する権利を侵害されたのは、末端の販売業者により本件商品に登場人物の絵が付されて販売されたこと(複製権の侵害)によるものであり、原告の権利に対する侵害行為である販売業者による複製行為について、上記のとおり侵害行為者である販売業者から上代価格の6%が対価として支払われていることが認められるのであるから、この金額が著作権者が著作権の行使につき受けるべき金銭の額に該当するというべきであり、末端の販売業者に対して絵の使用を再許諾した再許諾権者は、販売業者による著作権侵害行為(複製行為)についての共同不法行為者として、この金額について販売業者と連帯して賠償の責に任ずるものと解するのが相当である。本件において、末端の販売業者から支払われる使用料につき、著作権者である被告Bに支払われるまでの間に、被告アース、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイが中間に再許諾権者として関与して、その分配にあずかっているという事情は、単に共同不法行為者の間で侵害によって得られた利益を分配しているというだけのことであり、著作権侵害により権利者が被った損害額を減額する理由となるものではない。また、被告アース、被告ダン、被告サンブライト及び被告タニイが、著作権侵害行為の対価として末端の販売業者から支払われた使用料から、その一部を自己の利益として手元にとどめることについて、これを正当化する何らの理由を見いだすこともできない。
イ 各被告の行為による原告の損害額
(ア)証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告ら(被告アースを除く。)が関与した商品化事業についての販売業者(被告タニイを含む。)の売上額の合計は8億6862万8095円であると認められ、これに3%を乗じた額は2605万8842円である。このうち、被告タニイ及びその再許諾先の売上額の合計は3億1353万3295円であると認められ、これに3%を乗じた額は940万5998円である(なお、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告タニイが再許諾した販売業者の販売分について合計958万9225円の返品分、値引分が認められるから、この分については、売上額から控除して計算した。被告タニイ及び被告サンブライトの主張するこれを超える在庫分、返品分については、これを裏付けるに足りる証拠がない。)。
 また、証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告B、被告アイプロ及び被告アースが関与したサンメールの売上額は3208万円と認められ、これに3%を乗じた額は96万2400円である。
(イ)これを、前掲各証拠により認められる販売業者による各月別の売上額に基づいて、各月別に分けて記載すると、次のとおりである(被告タニイの返品値引分については、被告タニイの再許諾先の販売が行われた平成10年10月〜同11年3月の期間に案分して計算した。)。
@ 被告B
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき    96万2400円
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき   779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
 合計                    2702万1242円
A 被告アイプロ
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき    96万2400円
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき   779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
 合計                    2702万1242円

  B 被告ダン
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき   779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
 合計                    2605万8842円
C 被告サンブライト
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき   779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
 合計                    2605万8842円
D 被告タニイ
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 199万1577円
 平成10年12月の販売に係る分につき      96万8433円
 平成11年1月の販売に係る分につき      158万6210円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき   485万9778円
 合計                     940万5998円
E 被告アース
 平成10年3月〜6月の販売に係る分につき    96万2400円
(ウ)各被告が支払義務を負う上記の各債務の連帯関係(不真正連帯債務)は、次のとおりである。
@ 被告B、被告アイプロ及び被告アースは、同被告の販売に係る分である 96万2400円につき、連帯して支払義務を負う。
A 被告B、被告アイプロ、被告ダン及び被告サンブライトは、次の金額につき、連帯して支払義務を負う。
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 557万6360円
 平成10年12月の販売に係る分につき     867万3495円
 平成11年1月の販売に係る分につき      371万4441円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき   779万4546円
 平成11年5月の販売に係る分につき       30万0000円
 合計                    2605万8842円 
B 被告タニイは、上記Aの金額のうち次の金額につき、被告B、被告アイプロ、被告ダン及び被告サンブライトと連帯して、支払義務を負う。
 平成10年10月、11月の販売に係る分につき 199万1577円
 平成10年12月の販売に係る分につき      96万8433円
 平成11年1月の販売に係る分につき      158万6210円
 平成11年2月、3月の販売に係る分につき   485万9778円
 合計                     940万5998円
(エ)被告ダンは、業者に請求したが実際には払われていないロイヤリティが存在し、これに相当する分の額を損害の額から控除すべきであると主張するが、本件連載漫画の登場人物の絵を使用したことによる著作権法114条2項の損害は、販売業者から中間の再許諾権者に使用料が支払われたか否かにかかわらず発生するものであるから、被告ダンの主張は失当である。
(オ)被告タニイは、被告ダンの提出している金額には、本件商品以外の商品も含まれているから不正確であるとして、被告タニイ及びその傘下の販売業者の売上額は、2億0918万7720円であり、これの3%(被告Bの受領額)は、627万5631円である旨主張する。
 しかし、被告タニイ関係として被告ダンが提出している売上額(合計額3億1353万3295円)は、丙12に記載があるのに対し、被告タニイの本件商品以外の商品も含まれているとの主張には、裏付けとなる証拠がないうえ、その主張する内容も具体性を欠く部分を含むものであり、被告タニイの主張は採用できない。
(2)精神的損害について
 原告は、被告ダン及び被告タニイの行為により氏名表示権(著作権法19条1項)が侵害されたと主張する。しかし、既に著作者によって表示されている著作者名をそのとおり表示して著作物を使用すること自体は、著作者から別段の意思表示がない限り、著作者の人格を傷つけるものではないから(著作権法19条2項参照)、被告らが「<C>a」との表示を使用したことをもって、氏名表示権の侵害とみることはできない。原告の主張は、採用できない。
 また、被告Bの行為を理由とする慰謝料請求については、本件で提出されている証拠によっては、原告主張の事実を認めるに足りない。
(3)弁護士費用について
本件における原告の請求の内容、本件事案の性質、本件訴訟の審理経過その他の事情を考慮すれば、被告らによる著作権の侵害行為と相当因果関係があるものとして被告らに負担させるべき弁護士費用としては、次の金額をもって相当と認める。被告ら(被告アースを除く。)の負担する弁護士費用は、それぞれの額において相互に連帯関係(不真正連帯債務)に立つ。また、被告アースの負担する弁護士費用は、被告B及び被告アイプロの負担する弁護士費用と連帯関係(不真正連帯債務)に立つ。
    被告B                    250万円
    被告アイプロ                250万円
    被告ダン                   240万円
    被告サンブライト              240万円
    被告タニイ                  100万円
    被告アース                   10万円
(4)遅延損害金の起算日について
 著作権法114条2項に基づく損害額については、遅延損害金の起算日として原告が主張している各販売期間の末日をもって、当該侵害行為の後の日として遅延損害金の起算日と認めることができる。
 不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用について、原告は、被告ら(被告アースを除く。)については被告アイプロと被告ダンとの間で本件連載漫画の登場人物の絵の使用許諾契約が締結された日である平成10年6月1日、被告アースについては平成10年3月1日を遅延損害金の起算日と主張する。しかし、不法行為と相当因果関係に立つ損害としての弁護士費用の賠償債務は当該不法行為の時に履行遅滞となるところ(最高裁昭和55年(オ)第1113号同58年9月6日三小廷判決・民集37巻7号901頁)、本件において原告に対する著作権侵害による損害は、単に著作物使用許諾契約が締結されただけでは足りず、末端の販売業者により本件商品に本件連載漫画の登場人物の絵が付されて販売された時に発生するものであるから、各被告についてその関与する販売業者による商品の製造販売行為がすべて行われた時点(最終の販売期間の末日)をもって、遅延損害金の起算日と解するのが相当である。したがって、被告アースはその関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30日から、被告タニイはその関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日から、被告ダンは100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンが関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、被告サンブライトは100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンが関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、被告Bは10万円については被告アースと共に関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30日、100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、被告アイプロは10万円については被告アースと共に関与する製造販売行為の最終日である平成10年6月30日、100万円については被告タニイと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年3月3日、140万円については被告ダンと共に関与する製造販売行為の最終日である平成11年5月31日から、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
(5)損害額についての結論
 上記によれば、原告は、被告らに対して、共同不法行為による損害賠償として、以下のとおりの支払を求めることができる。
ア 被告Bは、2952万1242円及び内金106万2400円に対する平 成10年6月30日から、内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
イ 被告アイプロは、2952万1242円及び内金106万2400円に対する平成10年6月30日から、内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
ウ 被告ダンは、2845万8842円及び内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
エ 被告サンブライトは、2845万8842円及び内金557万6360円に対する平成10年11月30日から、内金867万3495円に対する平成10年12月31日から、内金371万4441円に対する平成11年1月31日から、内金879万4546円に対する平成11年3月3日から、内金170万円に対する平成11年5月31日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
オ 被告タニイは、1040万5998円及び内金199万1577円に対する平成10年11月30日から、内金96万8433円に対する平成10年12月31日から、内金158万6210円に対する平成11年1月31日から、内金585万9778円に対する平成11年3月3日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
カ 被告アースは、106万2400円及びこれに対する平成10年6月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
〔研  究〕
1.ストーリー漫画「キャンディ・キャンディ」は、昭和50年4月号から連載を開始し昭和54年3月号までつづいた長編ものであった。講談社の少女コミック月刊誌「なかよし」の担当編集者は、昭和50年4月号から新連載するストーリー漫画の企画をまず立て、五十嵐優美子(いがらしゆみこ)を漫画家に選んだ後、大型の名作物の連載を考えて、原作者として児童文学者の名木田恵子(水木杏子)を選んだ。そして、作品の基本的コンセプトから設定は、担当編集者と原作者と漫画家の三者で話し合って決め行った。したがって、この三者は常に一体となって、「キャンディ・キャンディ」のストーリー漫画の連載を仲良く続けたのであった。
  そのような仲良し関係の2人であったが、漫画家のいがらしゆみこが原作者の水木杏子の同意を得ずに商品化事業を行ったことが発端で、平成9年に始まったのが「キャンディ・キャンディ」をめぐる一連の著作権侵害をめぐる民事訴訟である。
  平成9年に始まった第1事件は、被告にはいがらしゆみこ氏のほか、商品化サービス業のフジサンケイアドワークもあったが、東京地裁でも東京高裁でも、ストーリー作家と漫画家との関係は、原著作権者と二次的著作権者という法律関係にあると認定し、この関係の認定は平成13年10月25日に最高裁判決でも認容され、原告側の全面勝訴で終ったのである。
2.ところで、本事件が先の事件と違うのは、被告に漫画家とそのプロダクションのほかに、漫画家と商品化権契約をしていた会社4社がまとめて損害賠償請求の対象者となっていることである。そして、これら4社はいずれも著作権や工業所有権の取得、売買、貸与等を業務としている中間業者である。
  本件においては、争点(1)(2)についてはすでに最高裁判決まで出ていることから、問題はなかったが、各社に対する損害賠償額の算定だけが主要課題であった。
3.判決は、原告請求の損害賠償額の算定には、著作権法114条2項を適用し、著作権者は故意又は過失によって著作権を侵害した者に対しては、使用(複製)許諾をした場合に受取るべき金額に相当する額が使用料となるから、これを損害賠償として請求できると考え、末端販売者との間に商品化契約をした被告らに対しては、商品の上代価格の6%を相当と認めた。そして、原告と被告Bとはそれを折半することが相当とした。けだし、両者は原著作者と二次的著作者という関係であるからで、この分担割合を変更する事情は見当たらないという。このような考え方は、現在のわが国の民事訴訟法では妥当というべきであろう。
  その結果、判決で計算されているような金額が各被告に対して使用料相当額として決定したのである。
 再許諾権者である被告4社らと販売業者による著作権侵害行為(複製行為)は共同不法行為となるから、連帯して賠償責任を負うことになるのである。

[牛木理一]