C2-9

虚偽告知流布事件:本訴大阪地裁平16(ワ)12713等.平成17年9月26日判(一認),反訴平17(ワ)2470平成17年9月26日判(棄却)

〔キーワード〕
標章の周知性、営業誹謗行為、告知・流布、信用毀損の損害金

〔主  文〕
1 本訴被告(反訴原告)は、本訴原告(反訴被告)が販売するバイオセリシン石鹸が、偽物、コピー品あるいは韓国特許第0282252号の特許権を侵害するものである旨を、第三者に対して告知し、流布してはならない。
2 本訴被告(反訴原告)は、本訴原告(反訴被告)に対し30万円及びこれに対する平成16年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 本訴原告(反訴被告)のその余の本訴請求及び本訴被告(反訴原告)の反訴請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、これを4分し、その1を本訴被告(反訴原告)の負担とし、その余を本訴原告(反訴被告)の負担とする。
5 この判決は、第1、第2項に限り、仮に執行することができる。

〔事  実〕
 原告(ユメックスバイオテック梶jは、健康食品の製造販売等を業とする会社である。
 被告(潟uレーンコスモス)は、食料品の販売等を業とする会社である。
 原告は、平成14年末頃から、日本国内で「バイオセリシン」の名称で石鹸を販売していた。この頃の原告商品は、イウォンが製造した石鹸を、原告がウィメックスを介して購入したもの。
 平成16年7月頃、原告とイウォンの関係は解約ないし終了し、原告は原告の「バイオセリシン」石鹸の仕入先を、韓国のハンビットコリアに変更した。
 同月頃、被告は複数の卸売業者に対し、イウォン作成名義の文書をファックス送信した。その文書には、「特許番号:シルクセリシン特許(第0282252号)それから当社は特許を保有し韓国で唯一バイオセリシン石鹸を生産しているメーカーです。」「2004年7月からは日本国のBRAIN COSMOS CO.LTDだけに供給しています。もし2004年7月以降、上記会社以外の企業が輸入されたらその製品の全ては偽者と言う事を証明致します。」との記載がある。
 平成16年8月ころから、被告は、「韓国直輸入」、「冬虫夏草エキスを配合」として、別紙標章目録2記載の標章を使用した石鹸(以下「被告商品」という。)を、本件標章を使用した包装箱に収納し、「バイオセリシン美容石鹸」の名称で宣伝広告して販売している。被告商品は、イウォンから購入したものである。
 原告は、同月2日付けで、「バイオセリシン石鹸取り扱い販売業者各位様」と題する通知文書(以下「原告文書」という。)を複数の販売業者宛に発送した。原告文書には、「株式会社ブレーンコスモスが本年7月下旬に輸入したバイオセリシン化粧石鹸には『冬虫夏草エキスは一切配合などされておらず』、虚偽の薬務標榜を行っております。これは重大な薬事法違反行為であり、弊社は証拠を保全するとともに、所轄監督官庁への告発を検討致しております。」との記載がある。
 そこで、本件の争点は次のとおり。
 (1)本件標章は、原告の周知商品等表示か。
 (2)被告の営業誹謗行為の成否。
 (3)原告文書の内容は虚偽か。
 (4)被告の混同行為、営業誹謗行為の場合の原告の損害。
 (5)被告の営業誹謗行為の場合の信用回復措置の要否。
 (6)原告の営業誹謗行為の場合の信用回復措置の要否。

〔判  断〕

1 争点(1)(本件標章は原告の周知商品等表示か)について
(1) 証拠(甲1)によれば、原告商品は希望小売価格1575円の石鹸であることが認められる。そして、甲第6号証には、原告商品が、平成14年11月28日に販売を開始して以来、平成16年7月28日までの約1年8か月間に無償サンプル・社用を含め1万1000個弱出荷されたこと、同月29日から31日までに、ノーブル株式会社の2万個を含め、約10社に3万個強を出荷したこと、同年8月中には十社強に3万個弱を出荷したことの記載がある。
(2) 上記記載が正しいとしても、原告商品の売上は、平成16年7月28日までの約1年8か月間に希望小売価格にして千数百万円相当であり、一日平均の売上個数は20個以下、売上価格(希望小売価格)は3万円以下ということになる。
 そして、石鹸は安価な消耗品であって、消費する度に購入の必要が生じるから一人の顧客がいれば年間複数個販売できるものであり、しかも、良いという評判を知った場合に試みに一度買って使ってみることが躊躇されるほどの価格のものではないことを考えると、原告商品の評判を知る需要者は多くないことが推認されるところである。
 もっとも、例えば飲食店のように、その店舗に行かなければ役務の提供を受けられない営業の商品等表示であれば、その店舗のある地方の需要者の間で、当該商品等表示の名声がよく知られている場合には、当該商品等表示を認識している需要者の数が日本全国の需要者との比較では少数であっても、当該商品等表示は、当該地方においては周知となっているというべきときがある。しかし、甲第6号証の記載では、原告の販売先は、札幌、東京、大阪、広島等全国に散在していることになるから、前記の程度の販売量の石鹸について、その商品名「バイオセリシン」が日本全国の需要者の間に「広く認識」されていたものとすることはできない。換言すれば、不正競争防止法2条1項1号所定の混同行為の規制は、本件の場合では、商標登録にもよらずに、日本全国における特定の営業表示の独占を認めることにつながるものであるから、その周知商品等表示は、独占を認めるだけの実績のあるものでなければならないところ、原告商品にそれだけの周知性を認めることはできないのである。
(3) 上記甲第6号証の記載のとおり、原告が原告商品を、平成16年7月29日から31日までに、ノーブル株式会社の2万個を含め約10社に3万個強出荷したとしても、上記ノーブル株式会社を始めとする出荷を受けた業者は、流通の中間にいる卸売業者又は小売業者であるものと認められるから、この時に出荷した原告商品が市場に浸透するには、なおある程度の時間がかかっていたものと推認される。したがって、本件標章が、同月末までに、商品等表示として需要者の間に周知性を取得したと認めることはできない。なお、上記ノーブル株式会社を始めとする約10社程度の卸売業者又は小売業者が本件標章を知っていたことは、周知性認定の根拠とするに足りるものではない。
(4) 他方、証拠(甲14、乙2)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、平成16年8月6日には被告商品合計3300s程度(1個の内容量は100g)を輸入して販売を開始し、同年9月13日には、被告商品をダイエット&ビューティフェア2004に出品し、販売開始後2週間で程度で受注が2万個と称していること、同月6日ころには、インターネット上で「2種類のバイオセリシン石鹸が出回っている」と認識する者もいたことが認められる。
 上記事実と、原告商品の同年7月末ころから8月にかけての出荷数量(甲第6号証記載のもの)を比較すると、同年8月、9月ころにおける市場での販売数は、原告商品、被告商品が混在した状態であったものと認められるから、その後においても、「バイオセリシン」ないし本件標章が、原告の商品等表示として周知になったと認めることはできない。
(5) 証拠(甲2、乙4)によれば、原告商品は、インターネット上の原告のホームページに掲載されており、また、平成16年7月30日ころには、楽天市場のウェブサイト上で「肌美人の国 韓国から直輸入」として韓国国旗をあしらい、「韓国の高級エステサロンの香りがほわぁ〜」「韓国に日本人が殺到する前にだれよりも先にゲットして!!」などと記載して、韓国からの輸入品であることを強調する効果を狙った宣伝がされていたことが認められるけれども、インターネット上の掲載は、テレビ・新聞等と異なり掲載すれば多数の人が自然にそれに接するというものではないから、上記(1)の販売個数からみて、上記事実は前記認定を左右するに足りるものではない。
2 争点(2)(被告の営業誹謗行為の成否)について
(1) イウォン文書について
ア 証拠(甲11)によれば、イウォン文書は、前記第2の1(5)の記載を含むものであって、素直に読めば、イウォンが本件特許権ないし通常実施権を保有し、韓国で唯一バイオセリシン石鹸を生産しており、被告以外の者が輸入販売する物は偽物である、すなわち特許侵害品ないし何らかの知的財産権の侵害品であると理解されるものである。
 しかし、証拠(甲12、13)及び弁論の全趣旨によれば、イウォンは、酵素によるバイオシリクセリシンペプチド水溶液及び粉末の製造方法の発明である本件特許の通常実施権者であるが、ハンビットコリアの使用している方法は、同特許権の方法とは異なるものであることが認められる。
 したがって、イウォン文書は、虚偽の事実を告知するものということができる。
イ 弁論の全趣旨によれば、被告は、イウォン文書を、原告の取引先たる卸売業者2社程度に、イウォン文書をファクスしたことが認められる。そして、原告は、バイオセリシン石鹸を輸入販売しているから、原告の取引先等の関係者がこれをみれば、原告商品がその特許侵害品ないし何らかの知的財産権の侵害品であると証明する内容であると理解するものと認められる。したがって、被告は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したものというべきである。なお、原告と被告が競争関係にあることは、前記第2の1の事実から明らかである。
ウ 被告は、イウォン文書は、2004年7月以降被告以外のルートで販売されるものに「バイオセリシン」という商品名が付けられたとしても、従来流通してきたイウォン製造のものではない旨注意を促し、情報を提供しようとしたものにすぎないと主張するが、そういう情報を提供するなら、特許権を記載する必要も、「偽物」と記載する必要もなく、その旨端的に記載するだけですむのである。同文書を被告主張のように読むことは普通の理解とは言い難い。
 また、被告は、原告とイウォンの関係解消後も、原告が「バイオセリシン」という商品名を使用するのは本来禁止されてしかるべき筋合いである旨主張するが、そのような契約があったとも認められないし、信義則上そう解することもできない。
エ なお、証拠(甲21)によれば、イウォン文書作成に関し、被告がイウォンに対し、何らかの依頼をしたことが認められるけれども、このことは、前記ア、イ認定の事実を左右するものではない。
(2) 口頭での告知・流布について
 証拠(甲19、20)によれば、被告従業員は、平成16年9月13日ころ、ダイエット&ビューティーフェア2004において、身分を隠している原告従業員に対し、原告商品について、@「あっちがコピーなんですね。」「要は、特許取っている所コピーしてやってるから、止められるんですよ、あっちの方でも。作れないんですね。」と述べ、A「コピーって言う事は、もう正規品では無いって事ですよね」との誘導に対し、「そうですよね」と答え、B「本物とか偽物とかいうような表現にもなるんですか?それは」との問いに「要は偽物ですよね」と回答したことが認められる。上記A、Bは、原告従業員の誘導によるものであるが、上記@の「コピー」「特許取ってる所コピーしてやってる」との表現は、原告従業員の誘導によるものではない。したがって、このころ、被告従業員は、原告商品に話が及んだ場合には、一般来場者に対して上記A、Bの説明をしていたとは認められないが、上記@のような説明をしていた可能性があるものと認められる。しかし、そのように原告商品に言及した来場者の数は、本件全証拠によっても明らかではない。
(3) 差止の必要性
 被告従業員は、原告商品について「コピー」「特許取ってる所コピーしてやってる」等の表現をしたことがあり、被告は、「偽物」との記載があり、本件特許権侵害品であると証明する内容と理解されるイウォン文書の配布が営業誹謗行為であることを争っているから、差止の必要がある。なお、それ以外の他人の特許権一般については、これまで被告がそのような説明を行ったことがあるとは認められず、そのおそれも認められないから、差止の必要は認められない。

3 争点(3)(原告文書の内容が虚偽か)について
(1) 不正競争防止法2条1項14号所定の行為該当性について、告知された事実が「虚偽」であるか否かの立証責任は、当該行為が不正競争であると主張する側(本件では被告)にあると解されるところ、本件全証拠によっても、被告が、「平成16年7月下旬に輸入したバイオセリシン化粧石鹸」すなわち同年8月6日に通関した被告商品について、冬虫夏草エキスが配合されていないという事実が虚偽であったとの立証があったとまではいうことができない。その理由は、次のとおりである。
ア 証拠(甲9)によれば、本訴提起時である平成16年11月12日までに原告が入手して撮影できた被告商品(甲9)の箱には、成分として「冬虫夏草エキス」の表示があることが認められる。しかし、上記被告商品が、いつの時点で輸入販売された物かは明らかでない(ちなみに、証拠(甲19)によれば、平成16年9月13日には、被告従業員は原告従業員に対し、被告商品について2回目の輸入をする予定であることを説明していることが認められる。)。
イ 被告は、オリジナルのイウォン商品には冬虫夏草エキスが含まれており、したがって、イウォン商品をそのまま輸入した被告商品にも、冬虫夏草エキスが含まれていると主張する。
 しかし、証拠(甲24、25)によれば、韓国で販売されているイウォン商品及びこれを他の業者が輸入した物には、成分表示として「パーム油、ホホバ油、アロエエキス、シルクセリシンエキス、キトサン、水酸化Na、塩化Na、蒸留水、香料」とされ、冬虫夏草エキスの記載がないこと、インターネット上のイウォンのホームページに掲載されているイウォン商品についても、成分が表示されているのにその中に冬虫夏草エキスの記載がないことが認められる。
 この点に関して、被告は、韓国の流通においては、全成分表示が義務づけられていないため、入れて当たり前の冬虫夏草エキスは表示をしておらず、「その他」と記載されているにすぎないと主張する。
 しかし、弁論の全趣旨によれば、冬虫夏草は、昆虫などに寄生して生じるキノコ類であって、漢方薬として利用されるものもあることが認められるから、美容石鹸に入れた場合にも、薬理上の効果に期待を持たせられるものであって、販売促進上重要な成分であるというべきである。折角そのような成分を入れておきながら、これを記載しないというのは不自然であって、直ちに信用しがたいところである。
ウ また、証拠(甲1の2、25の4)及び弁論の全趣旨によれば、冬虫夏草エキスを配合した場合、石鹸はやや褐色味を帯びてしまうこと、そのために原告商品も褐色味を帯びているが、イウォン商品は純白であって褐色味が無いことが認められる。したがって、イウォン商品に冬虫夏草エキスが含まれていることは、この点においても疑問がある。
エ 証拠(甲4、23)によれば、平成14年ころ、イウォンと原告との前記第2の1(3)の取引に介入しているウィメックスに対し、イウォンが開示したイウォン商品の成分配合表は、合計100%になる成分が表記されているが、その中に冬虫夏草は記載されていないことが認められる。
 この点に関し、被告は、上記甲第23号証は、1つの成分配合の例として送付したにすぎず、当時のイウォン商品の成分配合表ではなく、その際同時にイウォン商品の配合表を乙第3号証により送付していると主張する。
 しかし、乙第3号証は、甲第23号証と別の文書であって、それぞれ押印がされているにもかかわらず同一の文書番号が付されているものであって、体裁として不自然である。また、同一機会に送付するのであれば、一通の文書に並記すればよいのであって、わざわざ別に押印して別文書を作成するという理由も認められない。さらに、イウォン商品の名称は「バイオセリシン」ないし「セリシン(シルク)美容石鹸」であるのに、乙第3号証の記載では、その内容が、冬虫夏草が1.5%であるのに対し、シルクは僅か0.5%となっており、その名称との間に齟齬があるようにも思われる。このように、乙第3号証の記載には疑問があるため、前記原告文書の記載が「虚偽」であることの証拠とすることができない。
オ 乙第18号証には、イウォン作成名義で、2005年7月13日付けで、「当社が製造したバイオセリシン美容石鹸は2000年度からセリシンと冬虫夏草を添加してバイオセリシン美容石鹸の製品を最初に生産していました。」との記載がある。しかし、上記は、本件訴訟のために作成されたものと認められるところ、上記イないしエの疑問点について、何ら説明もないものであって、直ちに信用することができない。
(2) もっとも、証拠(甲25の4)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、冬虫夏草エキスを配合した石鹸は褐色味を帯びるのにイウォン商品には冬虫夏草エキスが含まれていないと主張して、現在販売されている被告商品が、イウォン商品の純白とは異なりやや褐色味を帯びている事実を立証して「(現在販売されている被告商品に)冬虫夏草エキスが真に配合されているか否かは不明であるが」「少なくとも被告商品がオリジナルのイウォン商品とは異なる」として、現在販売されている被告商品についての冬虫夏草エキス配合を否定しているわけではないことが認められる。
 そうだとすると、原告が冬虫夏草エキスが配合されていないと主張しているのは、「平成16年7月下旬に輸入された被告商品」であって、現在の状況下では、「現在の被告商品」について、原告が、「冬虫夏草エキスは一切配合などされておらず、被告が虚偽の業務標榜を行っており重大な薬事法違反である旨」を、第三者に告知、流布するおそれがあるという立証があるとまでは認められない。
 他方、「平成16年7月下旬に輸入された被告商品」については、「冬虫夏草エキスは一切配合などされておらず、被告が虚偽の業務標榜を行っており重大な薬事法違反である旨」が虚偽であるとの立証があるとまではいえないことは前示のとおりである。
 したがって、いずれにせよ、被告の請求は理由がない(なお、現在の被告商品については前記(1)アないしエの認定に用いた証拠は当てはまらないから、原告が「現在の被告商品」について、原告文書の如き内容を告知、流布したとすれば、それが虚偽か否かは、前記(1)の認定とは全く異なる問題である。)。

4 争点(4)(原告の損害)
(1) 被告に不正競争防止法2条1項1号所定の混同行為があったと認められないことは、前示のとおりである。
(2) 被告の営業誹謗行為による原告の損害について
 本件全証拠によっても、イウォン文書が、被告が自認する卸先2社以外に送付されたと認めることはできない。また、被告従業員が、原告商品が話題となった場合に、原告商品を「コピー」「特許取ってる所コピーしてやってる」との表現をした可能性はあるものの、そのような話題となった来場者の数が不明であることは前示のとおりである。
 そうだとすると、本件全証拠によっても、被告の行為により、原告が販売機会を喪失したとか、そのことによる損害が発生したとか、とは認められないものというべきである。もっとも、前認定の被告の行為があれば、原告商品が特許権侵害品であるかのような誤解を招きかねないところであるから、これにより、原告は、卸先に説明・対応する必要がある程度の信用低下が発生したものと認められる。当裁判所は、信用毀損による原告の損害を30万円と認める。

5 争点(5)(信用回復措置の要否)
 前記認定の被告による営業誹謗行為の相手方の数、内容からして、一般不特定人を対象とする新聞広告等の信用回復措置が必要とは認められない。

6 結論
 以上の次第であるから、@本訴請求のうち、混同行為を理由とする差止及び損害賠償請求は理由がないから棄却し、A本訴請求のうち、営業誹謗行為を理由とする差止請求及び損害賠償は主文の限度で理由があるから認容し、信用回復措置請求は理由がないから棄却し、B反訴請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

〔論  説〕
1.争点(1)に対し、裁判所は原告の商品売上げ個数と金額を見て、原告が使用していた商品名「バイオセリシン」の標章が、日本全国の需要間に広く認識されていたものとすることはできない。けだし、日本全国における特定の営業表示の独占を認めるだけの実績のあるものではないから、原告商品にそれだけの周知性を認めることはできないと認定した。裁判所は、ここに不競法2条1項1号における「周知性」の範囲とは、全国一円と判していることになる。

2.ところが、被告が原告の取引先に対して送信したFAX上の記載に、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知したことについて、裁判所はそれを認めた。FAX上の記載文書には、原告が取扱っている石鹸が韓国では特許権があるものであったり、偽物であったりと主張することは、すべて虚偽であると認定した。また、この虚偽の事実の告知・流布は口頭でも行われたことを認定した。
 以上の事実から、裁判所は、「偽物」のイウォン文書の配布が営業誹謗行為に当たるとして、差止めの必要性があることを判示したが、妥当である。
 また、裁判所は、被告の行為によって、原告が販売機会を喪失したり、そのことによる損害賠償金の支払を請求したが、それは認められないと判断された。しかし、卸先に説明・対応する必要がある程度の信用低下が発生したものと認められるとして、信用毀損による原告の損害を30万円と認定した。金額は別として、それを認定したことは妥当であろう。

[牛木理一]