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「誕生石ロザリオ」商品形態・損害賠償請求事件:東京地裁平成9年(ワ)5309号平成11年4月22日 判決(認容)〔民46部〕

〔キーワード〕 
不競法2条1項3号、商品形態の模倣、商品の通常有する形態、外国製品の輸入、権利の主体

 

〔判示・認定事項〕 

  1. 原告製品は、原告が企画し、その形態を決定し、韓国会社に指示して製造させ、販売した商品であるから、原告製品を開発・商品化し市場に置いた主体は原告であり、原告製品は、原告の商品といういうべきである。したがって、原告は、原告製品を模倣した商品に関し、不正競争防止法2条1項3号に基づく権利の主体となり得る。
  2. 原告製品が発売される以前から存していたのは、数珠又はアクセサリー用の略式数珠であり、各月の誕生石に対応するアクリル球と房の色を備えたブレスレットという特徴的形態を具備するものではないから、原告製品と同様の形態の同種商品が原告製品の発売前から一般的に存在していたことを認めることはできない。したがって、原告製品の形態が、同種の商品が通常有する形態であると認めることはできない。 
  3. 仮に、被告製品が原告製品と同じ韓国の業者によって製造され、輸入されたものであるとしても、原告製品は、原告が開発・商品化した商品であり、韓国の業者は、原告の具体的な注文にしたがって原告製品の製造を行ったにすぎないから、韓国業者が原告とは無関係に原告製品と同一の形態の商品を製造すれば、その商品は原告製品を模倣した商品にほかならない。
  4. 被告製品の販売によって被告が得た利益額246,400円は、不正競争防止法5条1項により、被告の不正競争によって原告が被った損害額と推定される。

 

〔事  実〕

 

 原告(D社)と被告(B社)は、玩具の販売を目的とする会社である。
 原告は、原告製品を、平成7年4月及び7月に、韓国のアインコーポレーション(以下、「アイン」という。)から輸入し、同年5月頃から、「誕生石ロザリオ」の名称で日本国内で販売した。
 被告は、平成7年12月末頃に、韓国から輸入した被告製品を、「誕生石ブレスレット」又は「CD&ブレスレット」の名称で日本国内で販売した。

〔争  点〕

1. 原告製品に関し、原告は不競法2条1項3号に基づく権利の主体となり得るか。
2. 原告製品の形態が、同種の商品が通常有する形態か否か。
3. 被告製品は原告製品の形態を模倣した商品か否か。
4. 損 害

 

〔判  断〕

 

一 争点1について
1 〈証拠〉によると、以下の事実が認められる。 
(一) 平成6年10月末ころ、原告は、自社が販売する子供向けの玩具として数珠風のブレスレットを企画し、キーホルダーの企画、製品化を主な業務とするH社(以下「H」という。)に、アジアの業者へのサンプル調査の窓口となることを依頼した。
(二) 同年11月、Hの担当者M(以下「M」という。)は、原告の右依頼を受けて、アジアの業者数社からサンプルのカタログを収集し、原告代表者K(以下「K」という。)に示したが、原告が求めている子供向けの玩具に相応するものは見つからなかった。
(三) 同年12月、Kは、各月の誕生石を素材とした色別のビーズブレスレットとする企画を考え、これをHに提示し、KとMらHの担当者との間の打ち合わせの結果、各月の誕生石の色別にアクリルの球をつなぎ合わせて房を付けた12種類のブレスレットにするという商品の基本構想が決まった。
 その後すぐに、Kは、玩具などのパーツを組み合せて要求した製品を作成する業者として、以前原告と取引のあった韓国のアインをMに紹介し、Mは、アインと連絡を取り、前記のような商品の基本構想を説明してサンプルの作成を依頼した。
(四) 同年12月24日、KとMは、商品サンプルを持参して来日したアインの代表者S(以下「S」という。)と、右サンプルを見ながら商品に関する打ち合わせを行った。その際、各月の誕生石の色に合うアクリル球の色合いをそれぞれ決めたほか、KがSに対し、アクリル球のつなぎ方につき、大きな半透明の球3個につき小さな色付きの球1個を組み合わせてつなぐことなどを指示した。
(五) 同年12月30日ころ、アインから前記の指示に従って作成した商品サンプルがHに送付された。KとMの間で右サンプルを検討した結果、4月のダイヤモンドのブレスレットを丸いアクリル球のものから本物のダイヤモンドのようにカットしたものにすることとなり、Mがアインにその旨を指示した。
(六) その後、KとSとの電話での打ち合わせ及びKとSとのファックスでのやりとりの結果、ブレスレットに付ける房をリリアンにすること、使用するアクリル球を大12個と小4個の合計16個とすることなどが決められ、さらにアインからサンプルの送付を受けて、Kがアクリル球と房の色を決定し、平成7年1月20日ころに、最終的な商品が第一目録記載のとおりのものに確定した。
2 以上の経過によると、原告製品は、原告が、企画し、その形態を決定し、アインに指示して製造させ、販売した商品であるから、原告製品を開発・商品化して市場に置いた主体は原告であり、原告製品は、原告の商品というべきである。したがって、原告は、原告製品を模倣した商品に関し、不正競争防止法2条1項3号に基づく権利の主体となり得る。
二 争点2について
 被告は、原告製品のような数珠状のブレスレットは原告製品が発売される以前から一般的に存在していたから、原告製品の形態は同種の商品が通常有する形態である旨主張し、その〈証拠〉を提出する。しかしながら、〈証拠〉は、子供向けの玩具である原告製品とは明らかに商品の種類を異にする数珠又はアクセサリー用の略式数珠に関する証拠であり、また、〈証拠〉に示された商品は、数珠状のブレスレットであることにおいて原告製品と共通するのみで、第一目録記載のような原告製品の具体的形態、とりわけ各月の誕生石に対応するアクリル球と房の色を備えたブレスレットという特徴的形態を具備するものではなく、これらの証拠はいずれも、原告製品と同様の形態の同種商品が原告製品の発売前から一般的に存在していたことを示す証拠とはいえない。また、証人Mの証言及び被告代表者の供述中にも、数珠状のブレスレットが原告製品の発売前から存在していた旨の供述があるが、その具体的形態は不明であり、これによって、原告製品と同様の形態の同種商品が原告製品の発売前から一般的に存在していたことを認めることはできない。
 したがって、原告製品の形態が、通常有する形態であると認めることはできない。
三 争点3について
 被告製品の形態が原告製品の形態と同一であること、被告製品は原告製品と同じく韓国の業者から輸入したものであること、原告製品が最初に韓国から輸入されたのが平成7年4月、2回目に輸入されたのが同年7月であるところ、被告製品が韓国から輸入されたのは 同年12月末ころであることを総合すると、被告製品は、韓国の業者が原告製品に依拠して製造したものであり、原告製品の形態を模倣した商品であると認められる。
 被告は、被告製品と原告製品とは、同じ韓国の業者から輸入された同一の商品と考えられるから、被告製品は原告製品を模倣したものではない旨主張する。しかし、仮に、被告製品が原告製品と同じく前記アインによって製造され、被告が輸入したものであるとしても、前記一で認定したとおり、原告製品は、原告が開発・商品化した商品であり、アインは原告の具体的な注文に従って原告製品の製造を行ったものにすぎないから、アインが原告とは無関係に原告製品と同一の形態の商品と製造すれば、その商品は、原告製品を模倣した商品にほかならないというべきである。したがって、被告の前記主張は理由がない。
四 争点4について
 被告が平成7年から同8年までの間に被告製品を販売することによって得た利益の額については、24万6400円の範囲で当事者間に争いがなく、これを越える利益を得たことを認めるに足りる証拠はない。
 被告製品の販売によって被告が得た利益額24万6400円は、不正競争防止法5条1項により、被告の不正競争によって原告が被った損害の額と推定される。
五 結論
 以上によると、原告の本訴請求は、24万6400円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから、主文のとおり判決する。

〔研  究〕

1.不競法2項1条3号が適用される他人の商品形態の模倣行為が不正競争となる条件には、同規定のカッコ書きの要件を満たしていなければならない。
1. 最初に販売された日から起算して3年を経過しない商品であること。
2. 他人の商品と同種の商品が通常有する形態ではないこと。
第1の期間の要件は、模倣行為の発見が早いことと仮処分申請を早くすることを逃したら、3年間はすぐに経ってしまうから、注意すべきである。本訴事件の請求は平成9年中であったが、原告製品の最初販売は平成7年5月であり、口頭弁論終結日までにはすでに3年間は経過してしまっていたことから、差止め請求に対しては請求棄却となり、損害賠償請求だけが認容されたものと思われる。
 第2の「通常有する形態」とは、当該商品が、商品たることを存在づけられている属性としての各種の機能的形態から成る固有の形態部分を意味するのであり、他人の商品の最初の販売前の公知ないし周知の形態を意味するものではないと考えるべきである。その意味で、この点についての判決の事実認定はあいまいであるといえる。
 法規定の文理解釈上はそのとおりであるが、意匠法との関係および不競法の目的を考えて論理解釈すれば、すでに他人の商品販売前に公知ないし周知となっているような商品形態を実施する場合には、これは模倣とはいえないから、たとえ販売から3年以内であったとしても不正競争行為とはならないというべきであろう。
 しかし、この点は法規定で明確にしておくべきであるし、また類似の形態についても保護対象とすべきであるから、保護期間の短かさとともに将来の改正問題として再考されるべきである。
2.判決は、「原告は、原告製品を模倣した商品に関し、不正競争防止法2条1項3号に基づく権利の主体となり得る。」と判示している。ここに「権利の主体」とは、3条の差止請求権の主体、4条の損害賠償請求権の主体のことを意味しているのであろう。しかし、他人の模倣行為から保護される商品形態自体には、意匠権や商標権のように保護される権利というものは存在しないのであるから、法律用語の使用には注意すべきである。したがって、ここは「利益の主体」というべきであろう。

[牛木理一]