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「エアーソフトガン純正部品」商品形態・損害賠償請求事件:東京地裁平成8年(ワ)19445号平成 11年2月25日判決(棄却)〔民46部〕〔判例タイムズNo.997 p.266, 日経デザイン1999年8月号 P.70〕

〔キーワード〕 
商品の形態、選択肢、模倣、模倣者、機能、互換性、通常有する形態、付加的特徴、純正部品、互換性部品 

 

〔判示・認定事項〕 

  1. 不競法2条1項3号の趣旨は、他人が資金労力を投下して 開発商品化した商品の形態につき、他に選択肢があるにもかかわらず、ことさらこれを模倣して自らの商品として市場に置くことは、先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為であって、競争上不公正な行為と評価されるべきものであり、このような行為により模倣者が商品形態開発のための費用労力を要することなく先行者と市場において競合することを許容するときは、新商品の開発に対する社会的意欲を減殺することとなる。このような観点から、模倣者の右のような行為を不正競争として規制することによって、先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたのが、右規定の趣旨と解するのが相当である。
  2. 法が商品形態の模倣行為を規制しているのが、先行者が商品形態開発のために投下した費用労力を保護する趣旨のものであることに照らせば、当該商品の性質上その形態が一義的に決まるものについては、商品の形態について他の選択肢がないことから製造者の創意工夫の働く余地がなく、この点につき先行者が資金・労力を投下することが考えられないことからして、法2条1項3号による保護の対象とならないものと解される。すなわち、商品の形態とその機能とが不可分一体となっている場合、互換性保持のため一定の形態をとることが必要な場合や、特定の商品の形態が市場で事実上の標準となっている場合など、その形態をとらない限り商品とし成立し得ない場合は、形態模倣の規制対象にならないものと解すべきである。法2条1項3号の条文において、括弧書きと して「当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。」と規定されているのは右の趣旨であって、同種の商品においてありふれた形態や、製作上回避不可能な形態等を、「通常有する形態」として形態模倣に対する保護の対象から除外したものである。
  3. 本件における原告商品及び被告商品は、いずれも原告遊戯銃の部品である。部品であっても、当該部品がその構成の一部として組み込まれる製品(以下「本体」という。)と別個の商品として独立して取引の対象となるものであれば、法 2条1項3号の「商品」に当たるということができる。ボルト、ナットなどに代表されるような製品の種類範囲を問わず、工業製品一般に利用される部品や本体の製造元を問わず同種製品に共通して使用することが可能な、いわゆる汎用部品においては、その形態について、同種の部品に共通する一般的形状に加えて工夫により何らかの特徴を付与することが十分考えられるところであり、そのような付加的特徴を含む形態が法2条1項3号による保護の対象となることは、明らかである。これに対して、特定の製品にのみ使用される部品については、右と同列に論ずることはできない。すなわち、特定の製品について、当初から本体に組み込まれている部品と同一の形態の部品を本体の製造者販売者等が修理等の目的のために別個に独立した商品として販売している場合(以下、右の部品を「純正部品」という。)において、第三者が純正部品と互換性を有する部品を独立した商品として販売するとき (以下、右の部品を「互換性部品」という。)には、純正部品の形態は、法2条1項3号による保護の対象とならないと解するのが相当である。けだし、純正部品は特定の製品のみを本体として使用するという性質上本体における取付部位や係合する他の部品との関係からその形状が一義的に決まるか、そうでないとしても本体に当初から取り付けられている部品と交換するという目的からその形態は右部品と同一又は極めて類似した形態となることが避けられないものであって、独立した商品としての純正部品自体にはその形態について創意工夫が働く余地がないというべきであり、他方、右事情は互換性部品についても同様に当てはまることから、両者の形態は必然的に同一又は極めて類似するものとならざるを得ないからである。このように解しても、本体の製造者は、本体に組み込まれる部品の形態の開発のために資金労力を投下したとしても、本体の販売価格に反映させることによってその対価を回収することが可能であることに加え、右部品の形態が技術的見地ないし美感的見地から意義を有する場合には特許権実用新案権ないし意匠権を通じて純正部品の製造販売について法的保護を受けることが可能であるから(通常の場合、本体に組み込まれるべき部品の形態が開発され、右部品の組み込まれた本体が販売されてから一定の期間を経過した後に、修理等のための部品に対する需要が発生するから、純正部品が第三者の販売する互換性部品との競合を生ずるまでにある程度の期間を要するので、本体の製造者は部品の形態につき前記のような諸権利を通じての法的保護を受けることが時間的な面で困難とはいえない。)、本体の製造者にとって著しい不利益を与えることにはならない。
  4. 仮に純正部品の形態が法2条1項3号による保護の対象となると解した場合には、純正部品の販売に先んじて第三者が互換性部品を販売したときには、先行して販売されている互換性部品の形態と同一の形態であるという理由から本体の製造者が互換性部品に遅れて純正部品を販売する行為が制限されることになりかねないが(当該形態の部品を組み込んだ本体が既に販売されているにしても、本体に組み込まれた部品の形態は「商品の形態」ではない。)、このような結果は極めて不合理であるし、また、本体を購入して使用する需要者としては、互換性部品の販売が純正部品の形態模倣を理由として制限されるときには、純正部品と互換性部品との間での選択により高品質ないし安価な部品を入手する可能性を閉ざされる不利益を被り、ひいては本体購入時に予期しなかった高額な出費をその後の修理等の時点において強いられることにもなりかねない。純正部品の形態は、法2条1項3号にいう「通常有する形態」に該当するものというべきであって、第三者がこれと同一の形態の商品を販売したとしても、不正競争行為とはならないと解するのが相当である。
  5. 原告商品は、原告が製造販売する原告遊戯銃のみに使用される部品である。原告商品の形態については、これが原告遊戯銃に当初から組み込まれている部品の形態と相違するものであることをうかがわせる証拠はなく、両者の形態は同一であるものと認められるものであって、原告商品は原告遊戯銃の純正部品ということができる。したがって、その形態は、法2条1項3号にいう「通常有する形態」に該当するというべきであるから、被告らによる被告商品の販売行為は、被告商品と原告商品の形態が実質的に同一であるといえるか否かについて判断するまでもなく、不正競争行為には該当しないというべきである。

 

〔事  実〕

 

  1. 本件は、原告が被告らに対し、被告らが販売した商品は、原告の別紙三「展開図」に記載された遊戯銃の部品の形態を模倣したもので、被告らの行為は不正競争防止法 2条1項3号に該当すると主張して、損害賠償を請求した事案である。
     原告は、本件訴訟において被告らによる商品の譲渡等の差止め請求もしていたが、本件訴訟係属中に原告の商品が最初に販売された日から3年を経過したことから、差止め請求を取り下げた。
  2. 原告(W社)は、遊戯銃の製造,販売及び輸出入を業とする株式会社である。
    被告5名は、遊戯銃の小売や卸売、その部品の小売、販売又は製造、販売をしていた会社や個人である。

〔争  点〕

(1) 原告商品(部品)の形態は、「製作上不可避な形態」として2条1項3号の規定適用が排除されるか。
(2) 原告商品の形態は、「同種の商品が通常有する形態」に当たるのか。
(3) 被告商品の形態は、原告商品の形態を模倣したものか。

 

〔判  断〕

 

一 争点1(原告商品について、その形態が「製作上不可避な形態」であるとして、法2条1項3号の適用が排除されるか。)について検討する。

1(一) 法2条1項3号の趣旨につき考察するに、他人が資金労力を投下して開発商品化した商品の形態につき、他に選択肢があるにもかかわらず、ことさらこれを模倣して自らの商品として市場に置くことは、先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為であって、競争上不公正な行為と評価されるべきものであり、また、このような行為により模倣者が商品形態開発のための費用労力を要することなく先行者と市場において競合することを許容するときは、新商品の開発に対する社会的意欲を減殺することとなる。このような観点から、模倣者の右のような行為を不正競争として規制することによって、先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたのが、右規定の趣旨と解するのが相当である。
 このように、法が商品形態の模倣行為を規制しているのが、先行者が商品形態開発のために投下した費用労力を保護する趣旨のものであることに照らせば、当該商品の性質上その形態 が一義的に決まるものについては、商品の形態について他の選択肢がないことから製造者の創意工夫の働く余地がなく、この 点につき先行者が資金・労力を投下することが考えられないことからして、法2条1項3号による保護の対象とならないものと解される。すなわち、商品の形態とその機能とが不可分一体となっている場合、互換性保持のため一定の形態をとることが必要な場合や、特定の商品の形態が市場で事実上の標準となっている場合など、その形態をとらない限り商品として成立し得ない場合は、形態模倣の規制対象にならないものと解すべきである。法2条1項3号の条文において、括弧書きとして「当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能及び効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く。」と規定されているのは右の趣旨であって 、同種の商品においてありふれた形態や、製作上回避不可能な 形態等を、「通常有する形態」として形態模倣に対する保護の 対象から除外したものである。
(二) 本件における原告商品及び被告商品は、いずれも原告遊戯銃の部品である。部品であっても、当該部品がその構成の一部 として組み込まれる製品(以下「本体」という。)と別個の商品として独立して取引の対象となるものであれば、法2条1項 3号の「商品」に当たるということができる。そして、ボルト、ナットなどに代表されるような製品の種類範囲を問わず工業製品一般に利用される部品や本体の製造元を問わず同種製品に共通して使用することが可能な、いわゆる汎用部品においては、その形態について、同種の部品に共通する一般的形状に加えて工夫により何らかの特徴を付与することが十分考えられるところであり、そのような付加的特徴を含む形態が法2条1項3号による保護の対象となることは、明らかである。これに対し て、特定の製品にのみ使用される部品については、右と同列に論ずることはできない。すなわち、特定の製品について、当初から本体に組み込まれている部品と同一の形態の部品を本体の製造者販売者等が修理等の目的のために別個に独立した商品として販売している場合(以下、右の部品を「純正部品」という。)において、第三者が純正部品と互換性を有する部品を独立した商品として販売するとき(以下、右の部品を「互換性部品」という。)には、純正部品の形態は、法2条1項3号による保護の対象とならないと解するのが相当である。けだし、純正部品は特定の製品のみを本体として使用するという性質上本体における取付部位や係合する他の部品との関係からその形状が 一義的に決まるか、そうでないとしても本体に当初から取り付けられている部品と交換するという目的からその形態は右部品と同一又は極めて類似した形態となることが避けられないものであって、独立した商品としての純正部品自体にはその形態について創意工夫が働く余地がないというべきであり、他方、右事情は互換性部品についても同様に当てはまることから、両者の形態は必然的に同一又は極めて類似するものとならざるを得ないからである。
 右のように解しても、本体の製造者は、本体に組み込まれる部品の形態の開発のために資金労力を投下したとしても、本体の販売価格に反映させることによってその対価を回収することが可能であることに加え、右部品の形態が技術的見地ないし美感的見地から意義を有する場合には特許権・実用新案権ないし意匠権を通じて純正部品の製造販売について法的保護を受けることが可能であるから(通常の場合、本体に組み込まれるべき部品の形態が開発され、右部品の組み込まれた本体が販売されてから一定の期間を経過した後に、修理等のための部品に対する需要が発生するから、純正部品が第三者の販売する互換性部品との競合を生ずるまでにある程度の期間を要するので、本体の製造者は部品の形態につき前記のような諸権利を通じての法的保護を受けることが時間的な面で困難とはいえない。)、本体の製造者にとって著しい不利益を与えることにはならない。
 他方、仮に純正部品の形態が法2条1項3号による保護の対象となると解した場合には、純正部品の販売に先んじて第三者が互換性部品を販売したときには、先行して販売されている互換性部品の形態と同一の形態であるという理由から本体の製造者が互換性部品に遅れて純正部品を販売する行為が制限され ることになりかねないが(当該形態の部品を組み込んだ本体が既に販売されているにしても、本体に組み込まれた部品の形態 は「商品の形態」ではない。)、このような結果は極めて不合理であるし、また、本体を購入して使用する需要者としては、互換性部品の販売が純正部品の形態模倣を理由として制限されるときには、純正部品と互換性部品との間での選択により高品質ないし安価な部品を入手する可能性を閉ざされる不利益を被り、ひいては本体購入時に予期しなかった高額な出費をその後の修理等の時点において強いられることにもなりかねない。
 右のとおり、純正部品の形態は法2条1項3号にいう「通常有する形態」に該当するものというべきであって、第三者がこれと同一の形態の商品を販売したとしても、不正競争行為とはならないと解するのが相当である。

2 これを本件について見ると、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実を認めることができる。
(一) 原告遊戯銃は、別紙三「展開図」に示されたとおり、その購入者が個々の部品に分解して組み立てることができるようになっており、原告は、原告遊戯銃とは別に、その部品も販売している。原告遊戯銃は、原告が開発し、「マグナブローバックシステム」と呼んでいるエアーソフトガンの発射方式を採用したものであって、右方式を実現するため、本物の銃器や従来からある遊戯銃とは異なる独自の内部構造を有している。そのため部品の形態についても、右発射方式を実現することができるように、本物の銃器や従来の遊戯銃の部品の形態と相違する部分がある。なお、原告は、右発射方式に関して特許出願をし、既に特許査定を得ている。〈証拠〉 
(二) 被告商品は、いずれもカスタムパーツと呼ばれる原告遊戯銃の部品である。遊技銃(エアーソフトガン)のカスタムパーツとは、遊戯銃本体の製造者が作り上げた遊戯銃に組み込まれている構成部品と交換することによって遊戯銃の性能、機能、外観等を変化させ、向上させることを目的に開発されているものであり、遊戯銃本体に当初から組み込まれている部品と互換性を有する必要があることから、基本的な寸法、形状がこれと一致するものである。〈証拠〉

3 右に認定した事実及び前記第二、第一記載の事実(前提となる事実関係)により検討すると、まず、原告商品は、原告が製造販売する原告遊戯銃のみに使用される部品である。そして、原告商品の形態については、これが原告遊戯銃に当初から組み込まれている部品の形態と相違するものであることをうかがわせる証拠はなく、両者の形態は同一であるものと認められるものであって、原告商品は原告遊戯銃の純正部品ということができる。したがって、右1(二)で説示したとおり、その形態は法 2条1項3号にいう「通常有する形態」に該当するというべきである。そうすると、被告らによる被告商品の販売行為は、被告商品と原告商品の形態が実質的に同一であるといえるか否かについて判断するまでもなく、不正競争行為には該当しないというべきである。

4 この点につき、原告は前記第二、二1(二)のとおり主張するが、その主張は右1において説示した法の趣旨と相いれないものというべきである。なお、原告は、銃砲刀剣類所持等取締法及び 日本遊戯銃協同組合の自主規制による材料の制限等を根拠に、被告らを保護すべき実質的な理由はないなどと主張し、これに沿う証拠〈証拠〉を提出するが、原告の主張する事由は、法 2条1項3号の解釈に当たり参酌すべきものではなく、原告の主張は採用することができない。

〔研  究〕

1.判決は、「当該商品の性質上その形態が一義的に決まるものについては、商品の形態について他の選択肢がないことから製造者の創意工夫の働く余地がなく、この点につき先行者が資金労力を投下することが考えられないことからして、法2条1項3号による保護の対象とならないものと解される。」と説示する。しかし、これは、新規に創作開発した新種商品の形態については該当しないことである。けだし、先行者は新種商品の創作開発に資金と労力を投下しているからである。また、当該商品の性質上その形態が一義的に決まるものには、他の選択肢の余地がないと断定するが、どうしてそのように断定することができるのか。けだし、時間の経過によって、当該商品の形態にも別の選択肢が生まれてくる可能性もあるからである。まして、新種商品においておや。
2.また、自から創意工夫した部品の商品形態が、自己の全体商品の機能と不可分の関係にあることと、他人が互換性のある同一形態の部品を製造販売することは、異次元の問題である。他人が互換性保持のために、その他人も同一部品を製造することができるとするためには、立法上の制限規定が用意されるべきである。したがって、裁判所が法律に基づくことなく解釈によって判断することは甚だ危険なことである。(注) 
3.不競法2条1項3号の適用に、当該商品が通常有する形態とは、新種商品についてはあり得ないことである。したがって、判決が、競争者が純正部品と互換性のある部品を独立した商品として販売するときは、純正部品の形態は「通常有する形態」に該当するとして法2条1項3号の保護対象とならないと解したことは、きわめて不可解なことである。
4.さらに、判決が、部品の形態が技術的見地又は美感的見地から意義を有する場合には、特許権や意匠権が与えられるから、本体の製造者にとって不利益が与えられることはないというが、不競法と特許法、意匠法とは保護法益が異なるし、またそのような権利を取得していない者に対しては全く通用しない考え方である。

[牛木理一]

(注) EU Design 規則の最初の案には、第23条に“spare parts”については、純正部品の法的保護は登録から3年間に制限するとする規定があった、その理由は、消費者保護の政策的見地から意匠権の効力に制限をつける立法が必要であるということであった。しかし、この規定はその後、日米欧の各自動車工業会やMPIなどの学界から反対の意見書が提出されたことから、規則から消えた。筆者は日本自動車工業会からの依頼により、反対の意見書を提出するとともに、わが国特許法にある裁定実施権制度のような制度を考えてみることを提案したものである。)