C1-34

 

「胃潰瘍治療剤カプセル」事件:東京地裁平17()5655平成1822440判決(請求棄却)

〔キーワード〕
ジェネリック医薬品,商品等表示性,特徴ある形態,出所表示機能,周知性,需要者,不競法による法的処置時期

〔事  実〕
1.
本件は、原告(エーザイ株式会社)が被告(大正薬品工業株式会社)に対し、原告医薬品カプセル等の色彩及び形態に類似するジェネリック医薬品を製造,販売する被告の行為は、不正競争防止法2条1項1号に該当すると主張して、同法3条に基く差止め及び廃棄並びに同法4条,5条2項に基く損害金及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。
2.
原告は、昭和59年12月6日,販売名を「セルベックスカプセル50mg」といい、テプレノンを有効成分として含有する胃潰瘍治療剤(以下「原告商品」という。)の販売を開始し、以後、原告商品の販売を継続している。原告商品は、テプレノンが充填された別紙原告標章目録2記載のカプセルを別紙原告標章目録1記載のPTPシートに装填した形態で販売されている(以下、原告商品の形態を「原告形態」という。)。
 原告商品及び被告商品は、医療用医薬品である。したがって、原告商品及び被告商品は、直接又は卸売業者を介して、病院,医院,薬局に販売される。
 患者は、医師の処方に基いて、院内処方の場合は病院又は医院から、院外処方の場合は薬局から、原告商品又は被告商品を購入する。
 医師は、患者の症状に応じて、当該患者に適した医薬品を選択し、処方せんに記載する。
 商品名処方がされた場合、薬剤師は、医師の発行した処方せんに記載された医薬品につき、これを変更して調剤してはならないから(薬剤師法23条2項)、当該医師が発行した処方せんに記載されたとおりの商品を患者に提供する。
 現在は数が極めて少ないが、医師により一般名処方で処方せんが出される場合がある。この場合、処方せんを受け取った薬剤師の判断により、@処方せんに記載された一般名に対応する具体的な商品を薬剤師が選択する場合と、
A薬剤師が、患者に対して、処方せんに記載された一般名に対応する商品について具体的に説明した上で、患者が具体的な商品を選択する場合がある。
 被告は、平成9年、販売名を「セルテプノンカプセル50mg」といい、テプレノンを有効成分として含有する胃潰瘍治療剤(以下「被告商品」という。)の製造、販売を開始し、以後、被告商品の製造、販売を継続している。
 被告商品は、テプレノンが充填された別紙被告標章目録2記載のカプセルを別紙被告標章目録1記載のPTPシートに装填した形態で製造、販売されている(以下、被告商品の形態を「被告形態」という。)。

3.
本件の争点は、次のとおり。
 
(1)原告形態は、不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」として需要者の間で広く認識されているか。
 
(2)被告形態は原告形態と類似するか。
 
(3)被告商品を販売する被告の行為に混同を生じさせるおそれがあるか。
 
(4)被告の故意又は過失は認められるか。
 
(5)原告の損害額はいくらか。

〔判  断〕
1 争点
(1)(商品等表示及び周知性)について
(1)
 形態の商品等表示性
 不正競争防止法2条1項1号が他人の周知商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用することを不正競争と定めた趣旨は,同使用行為により周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止し,もって周知な商品等表示が有する営業上の信用を保護し,事業者間の公正な競争を確保することにある。
 商品の形態が特定の商品と密接に結びつき,その形態を有する商品を見ればそれだけで特定の者の商品であると判断されるようになった場合には,当該形態が出所表示機能を獲得し,特定の者の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものということができる。
 ある商品の形態が極めて特殊で独特な場合には,その形態だけで商品等表示性を認めることができるが,形態が特殊とはいえなくても,特徴のある形態を有し,その形態が長年継続的排他的に使用されたり,短期であっても強力に宣伝されたような場合には,当該形態が出所表示機能を獲得し,その商品の商品等表示になっていると認めることができる場合がある。

(2)
 医療用医薬品の商品該当性
ア 医療用医薬品である原告商品も,商品であることに何ら変わりはないから,添付文書がなく,箱から取り出された状態であっても,原告商品は,不正競争防止法2条1項1号の商品に当たり,その形態が商品等表示に当たり得るものと認められる。
イ 被告は,「医薬品は,その直接の容器又は直接の被包に,次に掲げる事項が記載されていなければならない。」
(薬事法50条)等と規定されていることを理由に,箱から取り出された状態での原告商品は不正競争防止法2条1項1号の商品に当たらず,原告形態も同号の商品等表示に当たらない旨主張する。
 しかしながら,被告主張の薬事法の規定から,被告主張のように解することはできないから,被告の上記主張は,理由がない。

(3)
 特徴のある形態
ア はじめに
 原告形態は,形態が極めて特殊で独特であり,その形態だけで商品等表示性を認めることができる場合には当たらないから,以下,原告形態が特徴のある形態を有し,その形態が長年継続的排他的に使用されたり,短期であっても強力に宣伝された結果,出所表示機能を獲得した場合に当たるかについて検討する。
イ 原告形態

(
) 構成
 前提事実
(2)イのとおり,原告形態は,カプセルの色が緑色と白色の2色で,PTPシートのデザインが銀色地に青色文字で記載された形態を有するものである。
(
) 特徴点
 証拠
(甲10,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,医療用医薬品のPTPシートとして,銀色又は金色が採用されることが多いこと,その結果,PTPシートの色と文字の色の組合せとして一般的に用いられているものの種類はさほど多くないことが認められる。
 しかも,原告形態を観察すると,透明の包装を通して見ることのできる緑色と白色の2色のカプセルの色は,それを見る人の注意を惹き,面積の広いPTPシートの銀色も見る人の注意を惹くが,PTPシート上に記載される文字の色は,面積がさほど大きくないこともあって見る人の注意をあまり惹かないものと認められる。
 したがって,原告形態において,取引上需要者の注目を惹く部分は,PTPシートの銀色と緑色白色の2色のカプセルの色であると認められる。
ウ 需要者と考慮すべき医薬品の範囲

(
) 医師等
 医師等が原告商品の需要者であることは,当事者間に争いがない。
 胃潰瘍治療剤を処方する医師として内科医を想定しても,内科医は,日々胃潰瘍治療剤だけでなく,広範囲の医療用医薬品を取り扱っているものであるから,原告形態が出所表示機能を獲得したかの判断に当たっては,原告形態がカプセル剤である医療用医薬品の中で特徴のある形態を有しているか否かを検討すべきである。
 薬剤師についても,日々胃潰瘍治療剤だけでなく,広範囲の医療用医薬品を取り扱っているものであるから,同様に,原告形態がカプセル剤である医療用医薬品の中で特徴のある形態を有しているか否かを検討すべきである。
() 患者
a 患者は,自ら積極的に薬剤を選択しないことの方が多いものの,処方される医薬品に関心を持ち,医師に対し,特定の医療用医薬品を処方してほしいとの希望を伝えることも十分考えられるから,患者も,原告商品の需要者に当たるものと認めるべきである。
 これに反する被告の主張は,患者は医療において医師の言うがままの受け身の立場にあるとの古い医療観を前提とするものであり,採用することができない。
b 胃潰瘍治療剤の投与を受けている患者を需要者として想定しても,高齢化の進展とともに患者が複数の疾患に罹患し,胃潰瘍治療剤だけでなく同時に多くの種類の医療用医薬品を服用していることは容易に想定することのできる事態であるし,高齢者ではなくても,患者が風邪や受傷により年に数回受診し,胃潰瘍治療剤に加え,多くの種類の医療用医療品に接するものと認められる。したがって,胃潰瘍治療剤の投与を受けている患者についても,原告形態がカプセル剤である医療用医薬品の中で特徴のある形態を有しているか否かを検討すべきである。

(
) 他の医療用医薬品の形態
a 胃潰瘍治療剤
 証拠
(乙2,3,10)及び弁論の全趣旨によれば,次のカプセルの色及びPTPシートのデザインの胃潰瘍治療剤が販売されていることが認められる。
  
(a) アシノンカプセル150(ゼリア新薬工業株式会社)
     カプセルの色       緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン  白色地
(裏面銀色地)に青色文字
     販売開始時期      平成2年9月
  
(b) ゲファニールカプセル50(住友製薬株式会社)
     カプセルの色       緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン  銀色地に緑色文字
     販売開始時期      昭和45年8月
  b 胃潰瘍治療剤以外の医療用医薬品
 証拠
(乙3〜10)及び弁論の全趣旨によれば,次のカプセルの色及びPTPシートのデザインの胃潰瘍治療剤以外の医療用医薬品が販売されていることが認められる。
  
(a) インスミン15(杏林製薬株式会社)
     カプセルの色       濃い緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン  金色地に青色文字
     販売開始時期       昭和54年4月
  
(b) アタラックス−P(50mg)(ファイザー株式会社)
     カプセルの色       濃い緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン  金色地
(裏面銀色地)に紺色文字
     販売開始時期       昭和44年12月
  
(c) ケフレックスカプセル(塩野義製薬株式会社)
     カプセルの色       濃い緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン  銀色地に緑色文字
     販売開始時期       昭和45年5月
  
(d) セブンイー・P(科研製薬株式会社)
     カプセルの色       濃い緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン  銀色地に緑色文字
     販売開始時期       昭和59年6月
  
(e) フェルターゼ(佐藤薬品工業株式会社。乙8)
     カプセルの色        緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン   銀色地に緑色文字
     販売開始時期       昭和51年11月
  
(f) ラリキシンカプセル(現大正富山医薬品株式会社)
     カプセルの色       濃い緑色と白色の2色
     PTPシートのデザイン  銀色地に黒色文字
     販売開始時期       昭和47年9月
エ 検討
() 上記ウに認定した事実によれば,胃潰瘍治療剤であるアシノンカプセル150及びゲファニールカプセル50の形態と原告形態とは,需要者の注目を惹く部分であるカプセルの色が類似し,PTPシートについても,アシノンカプセル150及びゲファニールカプセル50のPTPシートは,銀色又は白色(文字は青色又は緑色)である。
 胃潰瘍治療剤以外でも,インスミン15ら6種類の医薬品の形態と原告形態とは,需要者の注目を惹く部分であるカプセルの色が類似し,そのうちケフレックスカプセルら4種類の医薬品のPTPシートは,銀色地
(文字は緑色又は黒色)である。
(
) これらの事実によれば,原告商品は,本件口頭弁論終結日である平成17年12月時点ではもちろん,損害賠償請求の時点とされる平成14年3月以降の時点においても,特徴のある形態を有していたものと認めることはできない。
(
)a これに対して,原告は,原告形態が特徴的な形態か否かを判断するに当たり,カプセルの色とPTPシートのデザインの両者を一体として考察すべきである旨主張する。
 しかしながら,カプセルの色とPTPシートのデザインを一体として考察した場合でも,前記ウのとおり,取引上需要者の注目を惹くPTPシートの銀色と緑色白色の2色のカプセルの色を備えた医療用医薬品は数多く存在しているから,原告の上記主張は,採用することができない。
b 原告は,アシノンカプセル150及びゲファニールカプセル50については,カプセル等の色彩が異なっている旨主張する。
 確かに,証拠
(乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,アシノンカプセル150等のカプセルの色はやや明るめの淡い緑色であり,アシノンカプセル150のPTPシートの色は白色であることが認められるが,原告形態からその出所として原告を想起することを妨げる一事情とはなり得る程度の色の類似性は有しているものと認められるから,原告の上記主張は,採用することができない。
 
(4) 販売実績等
 ア 情報伝達活動
 証拠
(甲1,2,3の1〜4,4の1〜3)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,原告商品の販売開始された昭和59年12月以来20年以上にわたり,1000人に達するMRを通じて,全国の医師等に対し,製品便覧や新発売ご案内のチラシを配布して,原告商品に関する情報提供及び宣伝活動を行ってきたこと,製品便覧等では原告形態やカプセルだけの形態の写真も掲載されているが,細粒の形態の写真や箱入り又は缶入りの状態の写真が掲載されたものもあることが認められる。
イ 販売実績
 証拠
(甲12,15)によれば,原告商品(剤型が細粒であるものを含む。以下,この項で同じ。)の売上高は,昭和59年は10億円であったが,平成元年には180億円になり,最高の売上げを記録した平成7年には482億円に達したこと,医薬品が医師によってどれだけ処方されたかを示す処方ランキングにおいて,全国の病院で処方された全医薬品の中で平成13年まで処方ランキングの2位を維持し(開業医では6位程度),平成16年においても同ランキングの4位であったこと(開業医では7位),及びA2B抗潰瘍用剤の中では,原告商品は,平成12年から平成16年まで処方ランキングで,病院,開業医とも1位であったことが認められる。
ウ 原告ホームページ等
 証拠
(甲14)及び弁論の全趣旨によれば,原告商品については,医療用医薬品であるため,最終需要者である患者向けのテレビコマーシャル等の広告宣伝は行われていないが,原告ホームページ(甲14)には,製品情報の1つとしてセルベックスの説明がされ,原告形態の写真も掲載されていることが認められる。
(5)
 医療用医薬品の識別
 ア 935通知
 
() 厚生省(当時)医薬安全局長から各都道府県知事にあてた平成12年9月19日付け医薬発第935号「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」と題する通知(935通知)は,「医薬品の誤投与を防止するためには,調剤時,投薬時及び患者の服用時に容易に本来投与すべき医薬品が確認できるよう,PTPシートに販売名,規格等が記載されていることが重要であることから,今後承認される医薬品のPTPシートに記載すべき事項については別添4のとおり取り扱うこととすること。」とし,別添4の3項(記載項目)で,医薬品のPTPシートには,@和文販売名,A英文販売名,B規格・含量,C識別コード,Dケアマーク,E注意表示を記載すべきものとし,その冒頭で,記載項目の表示方法につき,「線等のデザインや記載項目を抜き文字等とする工夫は任意とするが,本取扱いの趣旨が損なわれないよう配慮すること」とし,同4項(記載場所)で,記載場所を指定していることは,当事者間に争いがない。
(
) 935通知は,PTPシートにつき類似した外観を有する医薬品が複数存在することを前提として,医薬品の誤投与が健康被害をもたらす危険性にかんがみ,医薬品の取り違えを減少させるため,PTPシートへの販売名等の分かりやすい記載を義務づけたものと認められる。
イ ピルブック等
 証拠
(甲5〜7,16)によれば,近年,医師等を対象として処方薬を写真で紹介する専門書や,患者を対象として処方薬を写真等から検索できるようにして紹介する書籍が発行されていることが認められる。
 これらの事実は,患者はもちろん,医師等においても,カプセルやPTPシートの色を1つの手がかりとして医療用医薬品の識別を行っていることをうかがわせるものである。
ウ 識別の実際

(
) 医師等
 前記935通知及び証拠
(乙1)によれば,PTPシートにつき類似した外観を有する医薬品が複数存在する状況下で,外観だけに頼って医療用医薬品の識別を行うことは,医薬品の取り違えの確率を高めるものであるから,医師等は,外観を医療用医薬品の識別の補助に使用することはあっても,最終確認としてPTPシートに記載された販売名等を確認し,識別を行っているものと認められる。
 その結果,医師等が医療用医薬品を選択,識別するに当たり,配色を含む形態の果たす割合は相当低いものであり,スーパーマーケットの棚に並べられている一般消費財の場合と同様に取り扱うことはできないといわなければならない。
() 胃潰瘍の患者
 前提事実
(4)のとおり,胃潰瘍の患者は,医師の処方に基づいて医療用医薬品を購入するものであり,大多数の場合である商品名で処方がされる場合,及び例外的に医師により一般名処方で処方され,薬剤師が具体的商品を選択する場合,胃潰瘍の患者が医療用医薬品の選択に関与することはないが,ごく例外的に,医師により一般名処方で処方され,かつ薬剤師が患者の選択に委ねる場合がある。
 この場合,弁論の全趣旨のよれば,薬剤師は患者に対し,いくつかの商品の現物を提示することはあっても,薬としての同等性や価格の差についても説明し,患者は,それらの情報を総合して商品の選択を行うことが多いと認められるから,このような選択において医療用医薬品の外観が果たす役割は,さほど高いものではないと認められる。
 前記
(3)()のとおり,患者が処方される医薬品に関心を持ち,医師に対し,特定の医療用医薬品を処方してほしいとの希望を伝えることも十分考えられる。この場合,医師等の場合に比し,患者が販売名等を確認せずに外観によって原告商品を識別することがより高い割合であるとは考えられるが,自己の健康に直結する医療用医薬品を識別するものであるから,スーパーマーケットの棚に並べられている一般消費財の場合とは異なり,相当程度の注意を払って医療用医薬品を識別するものと考えられる。
 
(6) 判断
 以上の事実を総合すれば,本件口頭弁論終結日である平成17年12月時点においても,損害賠償請求の時点である平成14年3月以降の時点においても,原告形態が原告商品と密接に結びつき,原告商品を見ればそれだけで原告の商品であると判断されるようになったものとまで認めることはできず,原告形態が原告の商品等表示として需要者の間に広く認識されているということはできない。
 なお,医療用医薬品も商取引の対象となる商品であることに変わりはないから,ジェネリック医薬品につき,先発医薬品に類似した外観を採用することは,不正競争防止法の観点からは,決して望ましいことではない。したがって,医療用医薬品であっても,形態の独自性の程度が高く,形態の類似するジェネリック医薬品に対し速やかに販売差止等の法的処置を執った等の要件が整えば,医薬品の取り違えから生ずる健康被害を防止するため販売名等の確認が不可欠とされている点を併せ考慮しても,不正競争防止法2条1項1号の要件を満たすことは十分あり得ることを付言する。
2 結論
 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。

〔論  説〕
1.
判決は最初に、商品形態がきわめて特殊で独特なものは、その形態だけで商品等表示性を認めることができると判示し、たとえ特殊な形態でなくても、特徴のある形態を有し、長年継続的排他的に使用された場合や短期でも強力に宣伝された場合には、当該形態が出所表示機能を獲得し、その商品の商品等表示になっていると認められる場合があると判示している。
2.
そこで、原告の商品形態について、その形態だけで特殊で独特な形態ではないが、特徴ある形態を有し長年継続的排他的に使用された結果、出所表示機能を獲得した場合に当たるかを検討した。この検討は、@原告形態の特徴点としての配色,A看者としての需要者(医師,患者)が考慮する胃潰瘍治療剤やその他の医薬品も、最終確認としてPTPシートに記載された販売等を確認して識別を行っているものと認めた。したがって、医師等が医療用医薬品を選択,識別するに当たり、配色を含む形態の果す割合は相当低いものと判示した。それは、スーパーの棚上の一般消費財と同様に取り扱うことはできないということである。
 また、患者の場合は、医師等の場合とは違い、販売名等を確認せずに外観によって原告商品を識別することがより高い割合であるとは考えられるが、自己の健康に直結する医療用医薬品を識別するものだから、相当程度の注意を払って識別するものであると判示した。
3.そこで判決は、これらの事実を総合して、平成17年12月の時点においても、平成14年3月以降の時点においても、原告形態が原告商品と密接に結びついて、それだけで原告の商品である判断されるようになったとまでは認められないし、原告の商品等表示として需要者間に広く認識されているということはできないと判断した。
 以上の結果、判決は、原告の商品形態は不競法2条1項1号の要件を満たしていないと判断した。

4.
しかしながら、判決は最後に重要な付言をわれわれにしている。それは、ジェネリック医薬品であったとしても、他者が先発医薬品に類似した外観を採用することは、不正競争改正法の観点からは決して望ましいことではないと判示していることである。そのためには、先発医薬品メーカーが迅速な法的処置をとることが必要であると助言している。
 この付言(傍論)は、不正競争防止法の保護法益は、特許権や意匠権のそれとは違うものであるから、たとえ存続期間が満了したからといって目をつけていた先発製品の特許権や意匠権が消滅したことを奇貨として、競業他社が同一又は類似の意匠(商品形態)を実施することは、不競法2条1項1号による不正競争行為となるおそれがあることに対する警句であるといえる。

 

 

〔牛木理一〕