C1-30

 

「ダウントップ」商品形態・損害賠償請求事件:東京地裁平16()12793平成17330日判決 〈棄却〉、知財高裁平17()10083 平成17125日判決(原判決変更)→C1-25 

〔キーワード〕
通常有する形態,独創性,容易想到,実質的同一性,模倣,判断手法,故意過失,損害賠償金

〔事  実〕
1.
原告(潟с塔Oファッション研究所)は、婦人服の製造,企画,卸,販売等を目的とする会社で、「abc une face (アーベーセー・アン・フェイス)」のブランドで、10代の女性を主たる顧客層として衣服を販売している。
 被告(潟買Fント・インターナショナル)は、衣料品の販売等を目的とする会社で、「
LIZ LISA」,「TRALALA de LIZ LISA」等のブランドで、10代の女性を主たる顧客層として衣服やアクセサリー等を販売している。
2.
本件は,衣料品の製造,販売等を行う原告(控訴人)が,被告(被控訴人)の販売した商品(原判決末尾添付「商品目録(2)」記載の商品。以下「被告商品」という。)は,原告の商品(原判決末尾添付「商品目録(1)」記載の商品。以下「原告商品」という。)の形態を模倣したものであると主張し,被告が被告商品を販売した行為は不正競争防止法2条1項3号(平成17年法律第75号による改正前のもの。以下,同号について同じ。)所定の不正競争行為に該当するとして,被告に対して同法4条に基づき同法5条1項所定の損害額等の支払を請求している事案である。

〔東京地裁の判断〕
1 原告商品の形態

 原告商品の形態が以下のとおりであることは,当事者間に争いがない(以下では,単に「A”」,「B”」等と表記することがある。)。
A” 前襟ぐりよりも後襟ぐりの方が開いている丸首ネックであり,
B” 前襟ぐりの中央に取り外し可能なヒモが付いており,当該ヒモを首の後方で結ぶようになっていて,
C” 前襟ぐりの中央に複数のギャザーが入っており,
D” 襟ぐり,袖ぐり及び上記ヒモにニットサテン生地を使用し,
E” 前身頃に4段のフリルが配され,
F” 上記フリルは,その先端にメローロックが施され,ギャザーを寄せて縫いつけられており,
G” 着丈はヒップラインが隠れる程度の長さであり,
H” 裾は中央部分から両脇部分にかけて曲線を描いて下降し,
I” 薄手のやや光沢感がある天竺の生地からなる,
J” ノースリーブ型のカットソー。
2 「同種商品が通常有する形態」か否かについて
(1) まず,原告商品の形態が,同種商品が通常有する形態であるか否かを判断するところ,不正競争防止法2条1項3号で保護される商品形態は,必ずしも独創的な形態であることは必要ないが,同号の立法趣旨が資金及び労力を投下した商品形態の開発者の市場への先行利益を保護するものであることからすれば,同種の先行商品に全く同一の形態のものが存在しない場合であっても,既に市場で広く見られるいくつかの商品形態を単に組み合わせただけであって,しかも,その組み合わせること自体も容易であるような商品形態については,同法2条1項3号にいう「同種の商品が通常有する形態」に当たるものと解するのが相当である。
(2) そこで検討するに,証拠(乙10ないし13,15ないし17,19ないし24,26,29,30,32,36ないし40,42ないし50,54(いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
 原告商品と同様の,前身頃にフリルの配されたノースリーブ型のカットソーは,平成14年夏ころから既に市場にて販売されており,同年及び平成15年にかけて,若い女性向けファッション雑誌にも多数回取り上げられていた商品である。
 また,原告商品の上記A”ないしI”の形態を個別に見ると,いずれの形態についても,同様の形態を有し前身頃にフリルの配されたノースリーブ型のカットソーが,原告商品の販売以前から市場にて販売されていた。すなわち,原告商品の販売以前から市場にて販売されていたフリルの配されたノースリーブ型のカットソーの中には,丸首ネック(A”)の商品(乙19の3,20の3,23の2,24の2),ホルターネック(B”)の商品(乙15の2,47の2),前襟ぐりの中央に複数のギャザーが入っている(C”)商品(乙13の2,19の2,22の2,49の2),前身頃に配されたフリルが4段である(E”)商品(乙10の4,11の2・3,12の2,17の2,22の2,26の2,29の7,30の2,32の2,38の3・4,43の4,45の3,48の2,49の2,50の2,54の2・3),着丈をヒップラインが隠れる程度の長さとする(G”)商品(乙11の3,24の2,37の2),裾が中央部分から両脇部分にかけて曲線を描いて下降している(H”)商品(乙11の3)が含まれていた。さらに,ニットサテン生地の使用,フリルの先端におけるメローロック処理,薄手の天竺の生地の使用が,いずれも一般的な服飾技術であること(弁論の全趣旨)を考慮すると,D”,F”及びI”の形態を有する商品も,従前から販売されていたものと推認される。

(3)
 そして,A”ないしJ”の形態は,いずれもそれ自体では独創性の乏しい特徴のない形態である上,前示のとおり,フリルの配されたノースリーブ型のカットソーとホルターネック又は丸首ネックとを組み合わせた商品が一般的であるのみならず,Vネック等とホルターネックとを組み合わせた商品(乙10の2,13の2,27の3・4,33の2・3,34の2)も原告商品の販売以前から市場にて販売されていたことを考慮すると,原告商品のように丸首ネックとホルターネックとを組み合わせることは容易に想到することができたといえ,A”ないしJ”を組み合わせることも容易であったと認められる。
 そうすると,既に市場に存在するありふれた形態であるA”ないしJ”を単に組み合わせたにすぎない原告商品は,前身頃にフリルの配されたノースリーブ型のカットソーとしてありふれた形態であって,原告商品の形態は,同種商品が通常有する形態であるといわなければならない。
(4) したがって,被告商品が原告商品と実質的に同一であるか否かを検討するまでもなく,被告による被告商品の販売行為は,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に該当するものではない。
3 結論
 以上より,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

〔知財高裁の判断〕
 控訴人が,婦人服の製造,企画,卸,販売等を目的とする株式会社であり,10代の女性を主たる顧客層として衣服を販売していること,被控訴人が,衣料品の販売等を目的とする株式会社であり,10代の女性を主たる顧客層として衣服やアクセサリー等を販売していることについては,当事者間に争いがない。
2 原告商品及び被告商品の形態
(1) 被控訴人の販売に係る原告商品の形態は,次のとおりである(争いがない。以下,単に「A”」「B”」などと表記することがある。)。
A” 後襟ぐりよりも前襟ぐりの方が開いている丸首ネックであり,
B” 前襟ぐりの中央に取り外し可能なヒモが付いており,当該ヒモを首の後方で結ぶようになっていて,
C” 前襟ぐりの中央に複数のギャザーが入っており,
D” 襟ぐり,袖ぐり及び上記ヒモにニットサテン生地を使用し,
E” 前身頃に4段のフリルが配され,
F” 上記フリルは,その先端にメローロックが施され,ギャザーを寄せて縫いつけられており,
G” 着丈はヒップラインが隠れる程度の長さであり,
H” 裾は中央部分から両脇部分にかけて曲線を描いて下降し,
I” 薄手のやや光沢感がある天竺の生地からなる,
J” ノースリーブ型のカットソー
(2) 被告商品の形態は,次のとおりである(争いのない事実,甲8,11ないし17,19(枝番号は省略する。以下,同じ。),検甲2,弁論の全趣旨。以下,単に「a”」「b”」などと表記することがある。)。
a” 後襟ぐりよりも前襟ぐりの方が開いている丸首ネックであり,
b” 前襟ぐりの中央に取り外し可能なヒモが付いており,当該ヒモを首の後方で結ぶようになっていて,
c” 前襟ぐりの中央に複数のギャザーが入っており,
d” 襟ぐり,袖ぐり及び上記ヒモにニットテープを使用し,
e” 前身頃に4段のフリルが配され,
f” 上記フリルは,その先端にメローロックが施され,ギャザーを寄せて縫いつけられており,
g” 着丈は腰骨部分に届く程度の長さであり,
h” 裾は中央部分から両脇部分にかけて曲線を描いて下降し,
i” 薄手のやや光沢感がある天竺の生地からなる,
j” ノースリーブ型のカットソー
3 原告商品と被告商品の形態の同一性の有無
(1) 上記2において認定した原告商品の形態と被告商品の形態を比較すると,両者は,@ 後襟ぐりよりも前襟ぐりの方が開いている丸首ネックであり(A”,a”),前襟ぐりの中央に取り外し可能なヒモが付いており,当該ヒモを首の後方で結ぶようになっていて(B”,b”),前身頃に4段のフリルが配され(E”,e”),着丈は腰骨ないしヒップラインに達する程度の長さであり(G”,g”),裾は中央部分から両脇部分にかけて曲線を描いて下降する(H”,h”),ノースリーブ型のカットソー(J”,j”)という基本的な構成において共通するほか,A 個々の具体的形状の多くが共通しており(C”,F”,H”,c”,f”,h”),また,B 全体の形状もほとんど同一である(甲8,11ないし19,検甲1,2)。
 そうすると,原告商品と被告商品は,基本的構成を共通にするほか,個々の特徴的形状の多くを共通にし,全体の形状もほとんど同一であるから,両者の形態は,実質的に同一というべきである。
(2) 確かに,被告商品は,襟ぐり,袖ぐり及び前襟ぐりの中央のヒモにニットサテン生地ではなく,ニットテープを用い(d”),着丈がやや短く(g”),ヒモの長さがやや短いなどの点において,原告商品と異なるが,いずれも些細な相違点であって,両者の形態を実質的に同一と判断する妨げとなるものではない。また,被告商品の背中部分にハートと「T/L」の文字が描かれていることや,色調が若干異なること(原告商品が濃いピンクであるのに対して,被告商品は淡いピンクである。)は,いずれも同一性の判断に影響しない。
4 模倣の有無
 被告商品が上記3のとおり細部の特徴まで原告商品と酷似していることに加えて,原告商品が平成16年1月22日から販売されたものであるところ(甲2ないし6,24),被告商品は同年3月10日に被控訴人により形態を指定して製造の発注がされ,同月22日ころから販売されたこと(甲8,乙1,61),原告商品と被告商品は,いずれも10代の若い女性を主たる顧客層として,市場を共通にすることなどの諸事情を総合考慮すれば,被告商品は原告商品を模倣して製造されたものと認めざるを得ない(同認定を覆すに足りる証拠はない。)。
5 原告商品の形態が「同種の商品が通常有する形態」かどうか。

(1) 上記2記載のA”ないしJ”の形状からなる原告商品の形態は,ノースリーブ型のカットソーであることから必然的に導かれる形態ということはできないし,何らかの特定の効果を奏するために必須の技術的形態ということもできない。
 そして,原告商品と同様の,前身頃にフリルの配されたノースリーブ型のカットソーで,原告商品の販売以前において市場で販売されていたものについて見ても,丸首ネック(A”)とホルターネック(B”)を組み合わせた商品は見当たらないのであって,この点からも,A”ないしJ”の形状からなる原告商品の形態が個性を有しないものということはできない。
 したがって,原告商品の形態は,「同種の商品が通常有する形態」であるとは認められない。
 なお,被控訴人は,丸首ネック(A”)とホルターネック(B”)を配したフリル付きのノースリーブ型カットソーの他社商品(乙58,検乙1)を提出するが,当該商品は,原告商品販売後の平成17年8月18日に東京都渋谷区内で販売されたものであることは認められるものの,販売開始時期,販売数量,広告掲載の有無等の事情が明らかでなく,また,その形態も原告商品と同一とはいえない形状を含むものであるから,これによっては,上記認定判断は左右されない。
(2) この点に関して,被控訴人は,原告商品の形態中のA”ないしJ”の各形状は,その一つ又はいくつかの形状を備えたノースリーブ型のカットソーが原告商品販売以前から存在するのであって,いずれも極めてありふれたものであり,A”ないしJ”のすべてを組み合わせることは極めて容易に想到することができるから,原告商品の形態は,全体としてもありふれたものであり,「同種の商品が通常有する形態」に該当すると主張する。
 しかし,不正競争防止法2条1項3号は,商品形態についての先行者の開発利益を模倣者から保護することを目的とする規定であるところ,同号の規定によって保護される商品の形態とは,商品全体の形態であり,また,必ずしも独創的な形態である必要はない。そうすると,商品の形態が同号の規定にいう「同種の商品が通常有する形態」に該当するかどうかは,商品を全体として観察して判断すべきであって,被控訴人の主張するように,全体としての形態を構成する個々の部分的形状を取り出して個別にそれがありふれたものかどうかを判断した上で,各形状を組み合わせることが容易かどうかを問題にするというような手法により判断すべきものではない。
 したがって,本件において,原告商品の形態中のA”ないしJ”の各形状につき,これを個別に見た場合に,これらのうち一つ又はいくつかの形状を備えたノースリーブ型のカットソーが原告商品販売以前から存在したとしても,そのことから,原告商品の形態が「同種の商品が通常有する形態」に該当するということはできず,被控訴人の上記主張は,採用することができない。
6 被控訴人の行為の不正競争行為該当性
 以上によれば,被控訴人が被告商品を販売した行為は,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に該当する。そして,前記1ないし4の事情に照らせば,上記不正競争行為について,被控訴人に故意又は過失があったと認められるから,被控訴人は,上記不正競争行為によって生じた控訴人の損害を賠償する責任がある。

7 損害額
 控訴人は,原告商品1枚につき1565円(販売額2900円から,仕入価額900円及び経費435円を控除した額)の利益を得ること,被控訴人が被告商品を150枚販売したことは,いずれも当事者間に争いがない。そうすると,不正競争防止法5条1項に基づく控訴人の損害額は,23万4750円である。
 また,本件訴訟の事案の内容,訴訟進行の経緯等の一切の事情を総合考慮すれば,被控訴人の不正競争行為と相当因果関係にある損害に該当する弁護士費用としては,10万円をもって相当と認める。
 したがって,控訴人の損害額の合計は,33万4750円となる。
8 結論
 以上によれば,控訴人の本訴請求は,33万4750円及びこれに対する平成16年6月24日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるが,その余は理由がない。
 よって,これと異なる原判決を,上記のとおり変更することとし,主文のとおり判決する。

 

〔各審判決の要旨〕

1.東京地裁の場合
1.1
 2条1項3号の目的は、資金及び労力を投下した商品形態の開発者の市場への先行利益の保護にある。
1.2
 「同種商品が通常有する形態」とは、市場広知の形態からの容易な組み合わせによる商品形態をいう。
1.3
 原告の商品形態は、同種商品が通常有する形態である。
1.4
 被告による被告商品の販売行為は、原告商品を模倣したといえないから、2条1項3号の不正競争行為に該当しない。

2.知財高裁の場合
2.1
 2条1項3号の目的は、商品形態についての先行者の開発利益を模倣者から保護することにある。
2.2
 「同種商品が通常有する形態」とは、商品全体として観察判断すべきで、全体を構成する個々の部分的形状を取り出し、それがありふれたものかどうかを判断した上で、各形状を組み合わせることが容易かどうかを問題にして判断すべきものではない。
2.3
 原告の商品形態は、ノースリーブ型のカットソーであることから必然的に導かれる形態ということはできないし、何らかの特定の効果を奏するために必須の技術的形態ということもできない。また、全体の形状から成る原告商品の形態が個性を有しないものということはできない。
2.4
 諸事情を総合考慮すれば、被告商品は原告商品を模倣して製造されたものであるから、2条1項3号の不正競争行為に該当する。

3.各審判決の対比表

.東京地裁判決(平17.3.30

.知財高裁判決(平17.12.5

1.1 2条1項3号の目的は、資金及び労力を投下した商品形態の開発者の市場への先行利益の保護にある。

2.1 2条1項3号の目的は、商品形態についての先行者の開発利益を模倣者から保護することにある。

1.2 「同種商品が通常有する形態」とは、市場広知の形態からの容易な組み合わせによる商品形態をいう。

2.2 「同種商品が通常有する形態」とは、商品全体として観察判断すべきで、全体を構成する個々の部分的形状を取り出し、それがありふれたものかどうかを判断した上で、各形状を組み合わせることが容易かどうかを問題にして判断すべきものではない。

1.3 原告の商品形態は、同種商品が通常有する形態である。

2.3 原告の商品形態は、ノースリーブ型のカットソーであることから必然的に導かれる形態ということはできないし、何らかの特定の効果を奏するために必須の技術的形態ということもできない。また、全体の形状から成る原告商品の形態が個性を有しないものということはできない。

1.4 被告による被告商品の販売行為は、原告商品を模倣したといえないから、2条1項3号の不正競争行為に該当しない。

2.4 諸事情を総合考慮すれば、被告商品は原告商品を模倣して製造されたものであるから、2条1項3号の不正競争行為に該当する。

〔論  説〕
1.
2005年10月31日まで施行されていた旧不競法の2条1項3号の規定は、カッコ書きが多過ぎてわかりにくい構成要件から成り立っていた。それは、次の点である。

@「最初に販売された日から起算して3年を経過したものを除く。」
A「当該他人の商品と同種の商品が通常有する形態を除く。」
B「同種の商品がない場合にあっては、当該他人の商品とその機能的効用が同一又は類似の商品。」
 この中で、Aの要件が最も理解に苦しんだ規定であったが、本件ではこの要件の解釈が一つの争点となった。
 私は、登録意匠の構造を解析するときは、いつも次のピラミッドを作って説明しているが、この中のもっともベースに存在する形態Aが、当該物品が属性として固有する「基本的形態」である。その上に、B「周知的形態」+C「公知的形態」が存在し、頂上部にはじめてD「創作的形態」が存在するようになる。(拙著「意匠権侵害」
25 経済産業調査会 2003

                                                                           

 ところが、本件の地裁はそのような考え方を一切無視し、全く独自の見解をとっている。それは、裁判所が「必ずしも独創的な形態であることは必要でないが」と断りつつも、当業者が「広知の形態から創作容易なもの」という基準を出していることである。しかし、この見解は最初から誤りであったのである。
 創作容易性とは、類似とは異質の評価でありながら、意匠の類似の場合には類似外の概念として使われているし、場合によっては類似の意味で解釈されることがあるから、曲者である。
 これに対し、知財高裁は、やはり「独創的な形態」である必要ではないと断ってはいても、前記概念について積極的に定義はせず、「商品を全体として観察して判断すべきであって」と根拠のない説示しかしていない。この説示は、地裁の認定が誤っていることに対すればまだましであるし、説得力は弱くても、少なくとも誤まりではないから、妥当というべきだろう。

2.別のダウントップ事件(東京地裁平16()5830平成16929日判・一認C1−25)では、原告と被告とが逆の事件であり、裁判所は原告の商品形態は同種商品が通常有する形態であるとは認められないと認定した上で、被告の商品形態は模倣により実質的同一性を有すると認定した。また、70万円の損害金を認定した。

3.ところが、2005年11月1日施行の改正不競法の2条1項3号の規定は、旧規定のような不消化なカッコ書きは排除し、1つのカッコ書きしか設けていない。即ち、「当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。」とは、正に私の前記ピラミッド構造の「A」の形態を指している。そして、この規定は意匠法5条3号に規定するものと同じであり、このような登録意匠にあっては無効事由にもなっているのである(意48条1項1号)。
 これによって、2条1項3号の規定は明快になり、適用し易くなったといえる。したがって、今後は同条項号事件では、当該商品(正確には物品というべきだ。)が属性として固有する基本的形態は除外した上で、両形態が実質的同一か否かの判断がなされることになる。
 そして、もう一つ忘れてはならないことは、適用期間についての規定が、旧3号から新19条1項5号イ
.に移行したことである。立法者は、なぜこのような判りにくい規定の仕方をしたのかといえば、本音は、2条1項3号の場合についても適用除外条項を撤廃したかったのではないだろうか。

 

 

〔牛木理一〕