C1-26

 

「女性ドール用素体」商品形態・損害賠償等請求事件:東京地裁平14(ワ)22433(甲事件)・平15(ワ)4564(乙事件)平成16年11月24日判(一部認容)〔特二平成17年3月24日号〕

〔キーワード〕 
虚偽事実の告知流布行為、契約、商品等表示性、周知性、類似性、混同

〔主  文〕

1 被告は、原告に対し、金400万円及びこれに対する平成14年11月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 被告の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は、甲事件及び乙事件を通じてこれを5分し、その4を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。
5 この判決は、主文1項に限り仮に執行することができる。

〔事  実〕

〔甲事件〕
 原告(株式会社オビツ製作所)は被告(株式会社ボークス)に対し、被告の取締役が原告の取引先の社員に対して、原告商品は被告商品に類似するから、原告及び原告の取引者を訴えると告知した行為が不競法2条1項14号の虚偽の事実を告知し、または流布する行為に該当すると主張し、同号,3条1項,4条及び7条等に基づき、損害賠償、営業誹謗行為の差止めおよび信用回復措置を求めた。
〔乙事件〕
 被告は原告に対し、@被告商品に類似する原告スタンダード商品を製造,販売する被告の行為が、原告と被告との間で締結された契約上の秘密保持義務及び競業避止義務に違反する、A被告商品の形態が被告の周知な商品等表示であり、これと類似する原告スタンダード商品を被告が製造,販売する行為は、被告商品と誤認混同を生じさせると主張し、民法415条,不競法2条1項1号,3条1項及び4条に基づき、損害賠償及び原告商品の製造等の差止めを求めた。
〔原告・被告の商品〕
 原告は、平成14年5月24日から、別紙第一目録記載の女性ドール用素体(以下、「原告スタンダード商品」という。)を製造,販売している。
 被告は、平成10年9月から別紙第三目録記載の女性ドール用素体(以下、「被告商品1」という。)を、平成12年6月から別紙第四目録記載の女性ドール用素体(以下、「被告商品2」という。)を、平成12年12月から別紙第五目録記載の女性ドール用素体(以下、「被告商品3」という。)を、それぞれ製造,販売している。
〔争  点〕
〔甲事件〕
(1) 被告による虚偽事実の告知流布行為の有無
(2) 原告の被った損害額等
〔乙事件〕
(1) 原告の契約に基づく秘密保持義務及び競業避止業務の有無
(2) 被告商品の形態の商品等表示性の有無
(3) 被告商品の形態の周知性の有無
(4) 被告商品と原告スタンダード商品の類似性及び混同のおそれの有無
(5) 被告の蒙った損害額等

 

〔判  断〕

 

〔乙事件〕
 先に、乙事件について判断する。
1 争点(1)(契約に基づく原告の秘密保持義務及び競業避止義務の有無)について
 被告は、本件業務委託契約が成立し、原告と被告の間に相互に緊密な依存関係が継続したことにより、原告が、被告に対して本件業務委託契約に基づく競業避止義務及び営業秘密保持義務を負担していたにもかかわらず、被告の技術情報及び営業情報等を利用して被告商品と類似する原告スタンダード商品を製造、販売したのは上記各義務違反を構成すると主張する。
 原告は、被告から、継続的に〔乙事件〕(1)(被告の主張)ア記載の業務を受託していたが(争いない)、継続的に業務を受託しているからといって、直ちに委託者である被告と受託者である原告との間に競業避止義務や営業秘密保持義務を伴う本件業務委託契約が成立したと判断することはできない。
 この点について敷衍すると、被告の主張する競業避止義務及び営業秘密義務は、その性質上、原告の事業活動を大きく制約するものであるから、原告、被告間において、原告が負担することになる不作為義務の具体的内容、範囲、制約を受ける期間、地域等について詳細に協議、検討、意思確認がされ、確認された意思を反映した書面が作成されることが一般であるといえる。しかるに、本件においては、原、被告間で本件業務委託契約が締結され、委託業務が継続する過程で、このような申し出や協議がされた形跡は全くなく、また、その旨を明記した書面が作成されたこともないのであるから、原告が、被告主張に係る各義務を負担したと認定することはできない。また、本件全証拠によるも、被告主張に係る合意がされたことを推認させる合理的な事情を認めることもできない。
 したがって、被告の債務不履行に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
2 争点(2)(被告商品の形態の商品等表示性)について
(1) 事実認定
 前記争いのない事実等、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 被告商品の各部分の形態等
 被告商品の各部分の形態等は、以下のとおりである。
(ア) 胴体部
 胴体部は、被告商品1及び2については胸郭部、腹部及び骨盤部の3つに、被告商品3については胸郭部、上腹部、下腹部及び骨盤部の4つに分割されている。これにより、被告商品に、上半身を反らせる、上半身をねじりながら反らせる、上半身を折り曲げる等の姿勢を取ることができる。
 そして、上記各部は、以下の形態を有している。
a 胸郭部は、人間の肋骨の骨格と同じように、前下部が凹んだ形状である。
b 腹部(被告商品3においては上腹部及び下腹部)は、胸郭部や骨盤部よりも細く成型されている。
c 骨盤部は、側部に骨盤の張りが強調され、前上部がやや凹んだ形状である。
(イ) 脚部
 脚部は、股関節の支点と膝関節の支点を直線で結んだ場合に、膝関節の支点がその内側に位置するように構成されている。脚部の付け根には凹部が設けられ、太股の張りが強調されている。
(ウ) 肘関節及び膝関節
 肘関節及び膝関節は、前後に回転する2つの軸によって構成され、そのつなぎ目の部分に、それぞれ肘の突起及び膝小僧が設けられている(ただし、被告商品1及び2には肘の突起は設けられていない。)。肘関節及び膝関節の上部は、回転できる構造が採用されている。これにより、被告商品に、横座り、あひる座り、椅子に座った状態で足を組む等の姿勢を取ることができる。
イ 先行商品の形態及び販売態様等
(ア) 被告商品1が発売された平成10年9月以前から、関節部分が可動するドール用素体に頭部を付けた上、衣服を着せるなどした完成品の男性ドール又は女性ドールが販売されていた。需要者が独自のドールを製作しようとする場合には、これらの完成品を一旦購入した上で、そのドール用素体部分を使用して、独自のドールとすることが行われていた。
 これらの完成品ドールを構成するドール用素体の中には、@胴体部を、胸郭部、腹部及び骨盤部の3つに分割した形態、A肘関節又は膝関節を前後に回転する2つの軸によって構成し、その上部は回転することが可能な構造となっている形態を有するものが存在した。
(イ) ノアドロームは、平成9年6月ころ、株式会社タカラが製造販売する「スーパーアクションジェニー」という完成品の女性ドールに使用されていたドール用素体を購入し、これを、需要者が独自のドールを製作するためだけに、「アクション・ボディ・フィギュア」(以下「ノアドローム商品」という。)という名称で発売した。
 ノアドローム商品は、胴体部が、腰の部分で2つに分割されていた。
ウ 被告商品の販売、広告の状況
(ア) 被告は、平成10年9月に被告商品1を、平成12年6月に被告商品2を、同年12月に被告商品3を、それぞれ発売した。
(イ) 被告の商品は、販売店の店頭において、透明なパッケージに直立した状態で入れられた上、同種商品とともに陳列されて、販売されている。
(ウ) 被告は、被告商品発売以降、株式会社ホビージャパン発行の月刊ホビージャパン等に、継続的に被告商品の広告を掲載した。
 また、被告は、月刊ホビージャパンや書籍において、被告商品を用いたドールの製作方法を紹介したり、ドール製作体験講座の開催、ドールズパーティと称するイベント(顧客が、被告商品等を使用して製作したドールを展示・販売したり、ドールの着せ替え用衣服の製造業者等が自社製品を来場者に販売する催しである。)を年3回主催してきた。
 さらに、株式会社ワニブックス、株式会社講談社、株式会社婦人生活社、株式会社メディアワークス等が出版した書籍や月刊ホビージャパンに、被告商品を使用した完成品のドール等が取り上げられた。
(2) 商品等表示性についての判断
 以上認定した事実を基礎として、被告商品の形態が不正競争防止法2条1項1号に定める商品等表示に該当するか否かについて検討する。
 商品の形態は、必ずしも商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが、商品の形態が他の商品と識別し得る独特の特徴を有し、かつ、商品の形態が長期間継続的かつ独占的に使用され、又は、その使用が短期間であっても商品形態について強力な宣伝等が伴う場合には、商品の形態が、商品自体の機能や美観等の観点から選択されたという意味を超えて、自他識別機能又は出所表示機能を有するに至ることがあり得る。そこで、以下、これらの観点から、被告が特徴的形態であると主張する被告商品形態1ないし3について、判断する。
ア 被告が特徴的形態であると主張する被告商品形態1ないし3は、いずれも、女性の人体の形状又は動作を表現するという被告商品の目的に由来するものであって、需要者に強い印象を与える特徴的な形態ではなく、被告商品の広告や販売の状況等に照らしても、その形態が、自他識別機能又は出所表示機能を有する商品等表示であると認めることはできない。
 以下、その理由を詳細に述べる。
(ア) 胴体部
 胴体部を3つ又は4つに分割している点は、被告商品に、女性の人体と同様に、上半身を反らせる、上半身をねじりながら反らせる、上半身を折り曲げる等の姿勢を取らせることを可能にするための機能に由来するものであって、商品等表示として特徴的な形態ということはできない。
 また、被告製品において、分割された胴体部の具体的な胸郭部、腹部及び骨盤部の前記(1)ア(ア)認定の形状については、いずれも、女性の体型を表現しようという観点から、選択し得る形状が大きく制約されることに加え、同種の商品における胴体部の分割された部分の形状と対比しても特異なものではないから、特徴的な形態とはいえない。
(イ) 脚部
 股関節の支点と膝関節の支点を直線で結んだ場合に、膝関節の支点がその内側に位置するように脚部を構成している点は、外観上、一見して分かるほど明確に表現されていないため、需要者が観察しても容易に気づかない点であって、このような微細な形状は商品等表示となり得る形態とはいえない。
 また、脚の付け根及び太股を前記(1)ア(イ)認定の形態としている点は、いずれも、女性の体型を表現するという観点から、選択し得る形状が大きく制約されることに加え、他の同種商品においても、女性の体型を表現するために、同様の形態を備えており、特異なものであるとはいえないないから、特徴的な形態とはいえない。
(ウ) 肘関節及び膝関節
 前後に回転する2つの軸により肘関節及び膝関節を構成し、その上部を回転することが可能な構造としている点は、被告商品に、横座り、あひる座り、椅子に座った状態で足を組む等の姿勢を取らせることを可能にするための機能に由来するものであり、選択し得る形状が制約されることに加え、被告商品が販売される前から、このような形状を有する商品が存在していることに照らせば、特徴的な形態とはいえない。
 また、肘関節及び膝関節のつなぎ目の部分に、肘の突起及び膝小僧が設けられている点は、人体を表現するという目的に由来する当然の形態であることに加え、小さな部品であって、目立ちにくいことに照らせば、特徴的な形態とはいえない。
(エ) その他の部分
 その他、本件全証拠によっても、被告商品において、需要者に強い印象を与える特徴的な形態を認めることはできない。
イ これに対し、被告は、@被告商品の形態は、所要の機能を実現するためばかりではなく、形態上の違和感を緩和するために選択されていること、A他のドール用素体は、所要の機能を実現するために生じる形態上の違和感が緩和されていないこと、Bキャラクタードールとカスタマイズドールとは異なるカテゴリーであることから、被告商品の商品等表示性の検討に当たって、被告商品が販売される前から存在していた商品を考慮すべきではないなどと主張する。しかし、@前記認定のとおり、被告が特徴的形態であると主張する被告商品形態1ないし3は、機能的な理由から採られた形態を超えた、需要者に訴える独自の特徴があるといえる部分はいえないこと、A他のドール用素体においても、被告が被告商品について主張するとの同様に、多少なりとも、形態上の違和感を緩和する措置が講じられていること、B需要者がドール用素体を用いて独自のドールを製作する際に、格別、キャラクタードールとカスタマイズドールとを区別しているとは認められないことに照らせば、被告の上記主張を採用することはできない。
(3) 小括
 以上のとおり、被告商品の形態は、不正競争防止法2条1項1号に定める商品等表示に該当するとはいえないから、被告の不正競争防止法2条1項1号、3条1項及び4条に基づく請求は、その余の点(なお、仮に、被告商品のごく一部に特徴的な部分があったとしても、被告商品と原告スタンダード商品との形態上の相違点を超えて、両商品が類似し、出所に混同を来すと判断することはできない。)について具体的な判断をするまでもなく、理由がない。

〔甲事件〕
 次に、甲事件について判断する。
3 争点(1)(虚偽事実の告知流布行為)について
(1) 事実認定
 前記争いのない事実等、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 本件告知行為1について
(ア) 原告と被告との間の継続的取引の状況
 被告と原告とは、平成9年3月から取引を開始し、被告が、原告に対し、ドール用素体等について、以下の業務を委託していた。しかし、被告商品に関しては、被告は、原告ではなく別の会社に金型の製作を委託した上、原告に対し、頭部の接着や箱詰め等の作業を委託していた。
@ 胴体、頭部、靴その他小物及びマスクの金型の製作、洋服及び靴の抜き型の製作
A ソフトビニールの金型の製作
B アクションフィギュアの金型の製作
C パッケージ用フィルムの製作
D 植毛、頭部の接着、洋服の縫製、着付け、箱詰め等の作業
(イ) 原告商品の製造販売の計画及び被告側からの中止要請
 平成13年末ころ、被告は、原告が新しいドール用素体の開発を行っているという話を聞いた。そこで、Sは、原告の常務であったNに対し、原告がどのような素体を開発しているのかを問い合わせた。
 平成14年4月のはじめになって、原告は、被告に対し、原告の製造する男性ドール用素体と原告商品の見本品を送付した。Sは、見本品を見て、原告商品が被告商品と極めて類似していると判断し、Nに対し、原告商品の販売中止方を求めた。しかし、Nは、金型の製造に多額の投資をしていること等もあり、製造中止の要請を拒否した。これに対して、Sは、Nに、再度、原告商品の販売中止を求め、さらに、被告において、原告商品の金型及び原告が製造した原告商品を買い取るとの提案をしたが、原告は拒否した。被告と原告は、同年5月に静岡で実施されるホビーショーにおいて、協議をすることとした。
(ウ) 原告と被告との本件業務委託契約の解消
 原告代表者及びSと被告代表者とは、平成14年5月16日、静岡で行われたホビーショーにおいて、原告商品の販売について、話合いを行ったが、決裂した。
 被告は、原告に対し、同月28日、@原告商品が、被告商品の商品等表示であるその形態と同一であるため、需要者をして、被告商品との誤認混同を生じさせるおそれが高いこと、A被告商品と競合する原告商品を販売する原告の行為は、被告の営業上の利益を著しく侵害することから、原告商品を販売する原告の行為は、債務不履行に当たるなどとして、被告と原告との間の製造委託契約を解除する等と記載した「契約解除通知書」と題する文書(以下「本件解除通知書」という。)を送付した。
(エ) Sの三ツ星商店に対する電話(本件告知行為1)
 このような経緯の中で、Sは、静岡のホビーショーの直前である平成14年5月半ばころ、三ツ星商店のMに対して、約1時間にわたって、電話で、原告が原告商品を発売することに関して、概要、@被告は、原告に下請けとして仕事をさせていたのに、原告は、被告商品と類似した原告商品を売り出した、Aしかるべきところに出て決着をつけるつもりだ、B原告及び原告商品を販売する会社に対して、訴訟に訴えなければ仕方がない、C今度、原告代表者と静岡のホビーショーで会うという内容の発言をした。
 なお、三ツ星商店は、模型、ホビー等を取り扱っている卸問屋であり、関東地方では、被告の商品を卸売販売していた唯一の問屋であった。三ツ星商店は、原告との取引はなかった。
(オ) 本件告知行為1に対する三ツ星商店及びビートの対応
a ビートは、玩具・模型の卸売販売、代理店販売を行う会社である。原告とビートとは、平成14年3月13日、原告がビートに対し、原告の商品を継続的に売り渡すとの商品基本取引契約を締結した。ビートは、同契約に基づいて、同月末ころ、原告の製造する男性ドール用素体を買い受けて販売を開始した。
 そして、上記基本取引契約に沿って、ビートは、原告に対し、同年5月30日、電話により、@原告商品についての注文書を作成して、ビートの取引先にファクシミリ等で配布して注文をとる、A同年6月8日を注文の締切日にしているので、同月10日に注文数を集計して、原告に発注すると伝え、その注文書を、ファクシミリで原告に送付し、原告商品を買い受けて販売する等、販売に関する具体的・詳細な準備行為を実施していた。
b ところが、三ツ星商店のMは、同年5月末ころ、ビートの代表者であるGと商談をした際に、同人に対して、@被告のSから電話で、本件告知行為1のとおりの内容を伝えられたこと、被告が原告商品について訴えるという動きがあることを話し、さらに、A原告商品の取扱いは慎重にした方がいいとの助言をした。
c そこで、Gは、原告商品について被告から訴えられることを嫌悪して、原告との取引を中止することとし、同年6月13日、原告に対して、その旨を伝えた。そして、ビートは、原告に対し、同月25日、@原告商品について、被告から原告に対し、被告商品と類似しているとの抗議がされていることから、原告と被告との間の問題が解決するまでは、原告との取引を行わない、A原告から取引先を開示するように依頼されたが応じることはできない等と記載した「通知書」と題する文書を送付した。
 これに対して、原告は、ビートに、ビートに原告商品を発注した取引先を開示してもらって、原告が直接その取引先に商品を供給する旨の代替案を提示したが、拒否された。原告は、やむなく、原告商品について、アゾンと取引をすることとした。
イ 本件告知行為2について
(ア) 原告とトゥールズとの取引
 トゥールズは、画材商品を販売する会社である。トゥールズの社員であるTは、平成14年5月ころ、ホビーショーにおいて、原告商品を見て、漫画制作の人物デッサン用のモデル人形として販売することを考え、同年8月初旬から、原告と取引関係を結び、原告商品の販売を開始した。
(イ) Sのバニーコーポレーションに対する電話(本件告知行為2)
 バニーコーポレーションは、トゥールズの関連会社であり、被告との間で取引があった。
 Sとバニーコーポレーションの営業部係長であったKとは、平成14年8月20日午後3時ころ、契約書作成の件に関して、電話をしていた。その際、Sは、Kに対して、@被告の下請けをしていた原告が、被告商品に類似した原告商品を製造、販売したこと、A原告を訴えようと思っていること、Bさらに、同月16日から18日ころ、コミケというイベントで、トゥールズが、原告商品を販売していた事実を知るにいたったこと等を伝えた。
 また、Sは、トゥールズに対して訴訟を提起することがあるかどうか、電話の内容をトゥールズに伝えるべきかとのKからの質問に対して、訴訟を提起することを示唆し、また、トゥールズに伝えて欲しい旨を回答した。
(ウ) 本件告知行為2に対するバニーコーポレーションの対応
 Kは、直ちに、上司であるWに対し、@被告の下請けをしていた原告が、被告商品に類似した原告商品を製造したこと、A被告が原告を訴えるかもしれないこと、Bトゥールズも原告商品を販売しているので、被告に訴えられるかもしれないことを報告し、この件をトゥールズに伝えるべきである旨進言した。
 これを受けて、Wは、平成14年8月20日午後5時30分ころ、トゥールズのTに対し、電話で、@KがSと商談中、原告商品の関係で被告が原告とトゥールズを訴えるという話が出たこと、AKが、トゥールズはバニーコーポレーションの関連会社であることを告げると、Sから、この件をトゥールズに知らせておいて欲しいと言われたことを伝えた。
(エ) 本件告知行為2に対するトゥールズの対応
a Wからの連絡を受けたTは、平成14年8月20日午後5時45分ころ、原告代表者に対し、電話で、Wから伝えられた本件告知行為2の内容を話し、トゥールズは、問題に巻き込まれたくない旨を伝えた。これに対し、原告代表者は、@被告が三ツ星商店に対しても訴えると言ったり、雑誌広告の妨害をしたため、被告に対し、後記「本件通知書」を送付したが返事がまだである、Aトゥールズからも、被告に対し、権利侵害の根拠を示した書面を要求して欲しい等を依頼した。
b Tは、翌21日午前10時35分ころ、バニーコーポレーションのKに対し、電話で、本件告知行為2におけるSの発言内容を再確認した。そして、Tは、同日午前10時55分ころ、原告代表者からの事実照会のための電話に対して、Kから再確認したとおりの内容を回答した。
c トゥールズは、訴訟に巻き込まれるおそれのある取引は避けるべきであるとして、原告との取引の中止を決定した。そして、トゥールズは、翌22日、原告に対して、以下の内容を記載したFAX書面を送信した。すなわち、@原告商品について、Sが、Kに対し、同月20日、トゥールズ及び原告を訴えるのでトゥールズに伝えて欲しいと発言したという連絡を受けたこと、A同連絡を受けて社内で協議した結果、トゥールズによる原告商品の販売を中止することを決定した等を記載した書面(以下「本件FAX書面1」という。)をFAX送信した。
(オ) 本件告知行為2に対する原告の事実確認
a 原告は、Kから連絡を受けた直後である平成14年8月20日午後6時50分ころ、被告に対して、事実を確認するため、以下の内容を記載したFAXを送信した。すなわち、Sがバニーコレーションに対して、トゥールズが取り扱っている原告商品は、被告の権利を侵害しているため、それを扱っている会社及び原告に対して訴訟をする予定であるので、その取扱いを止めた方がよいという話をしたとのことであるが、そのような事実があるか否かの確認を求める旨を記載したFAX書面(以下「本件FAX書面2」という。)を送信した。
b これに対して、被告は、同月22日、原告に、本件告知行為2における発言の内容について、Sに事実確認をした上、SがKに対して、@原告商品を販売している会社に対して訴訟をするつもりである、A原告商品の取扱いを止めた方がよい、Bトゥールズと原告を訴えるのでトゥールズに伝えて欲しい等の発言をしたことはない等と記載した「平成14年8月20日付FAXによるお問い合わせについて」と題する書面(以下「本件被告回答書1」という。)を送付した。
c 原告は、トゥールズに対し、本件被告回答書1を回送した。これに対して、Tは、同書面を見た上で、原告に対し、同月30日、@原告商品についての問題は、原告と被告との間の問題であり、その販売先を紛争に巻き込まないという原告と被告との間の覚書、A上記覚書の内容を原告が保証するとともに、原告商品の販売ができなくなったときは原告の負担で返品等の手続を行うという原告の覚書があれば、トゥールズと原告との間の取引を再開する等と記載した書面を送付した。しかし、原告は、トゥールズに対して、上記の覚書を作成、送付することはできなかった。なお、同社は、既に完成していた原告商品に限っては販売した。
ウ 本件各告知行為に対する原告の質問と被告の回答
(ア) 原告は、前記「本件FAX書面2」の他に、被告に対し、平成14年7月25日、原告代表者がこれまでの経緯等を記載した「契約解除通知書に対する反論と質問書」と題する書面とともに、@原告が原告商品を販売する行為が被告の権利を侵害するという被告の主張の法律的根拠等についての回答を求める、A原告商品の販売について警告すべき点があれば、原告の取引先に対してではなく、原告に対してすることを要望する等と記載した「御通知書」と題する書面(以下「本件通知書」という。)を送付した。
(イ) 被告は、原告に対し、同月27日、@原告が原告商品を販売する行為が、不正競争防止法2条1項1号又は3号に該当する上、被告と原告との間の継続的製造等委託契約上の秘密保持義務、競業避止義務等に違反する、A原告商品の販売について、被告が原告の取引先等に対して警告をした事実はない等を記載した「平成14年7月25日付通知書に対する回答書」と題する書面(以下「本件被告回答書2」という。)を送付した。
エ Sの証言について
 被告は、Sが、@本件告知行為1において、原告商品を販売する会社に対して、訴訟に訴えなければ仕方がない、A本件告知行為2において、トゥールズを訴える予定であり、そのことをトゥールズに伝えておいて欲しいと言ったことはないと主張し、証人Sは、これに沿う証言をするとともに、Sの陳述書(乙7)にはこれに沿う記載がある。しかし、証人K、同T及び同Mの各証言、前記ア(オ)及びイ(ウ)で認定した、ビート及びトゥールズが、それぞれ原告との取引を中止するに至った経緯、理由、時期、本件FAX書面1及び2の記載内容等に照らせば、上記証言及び陳述書の記載を信用することは到底できない。被告の主張は理由がない。
(2) 判断
 以上認定した事実を基礎として、本件告知行為1及び2が不正競争防止法2条1項13号に定める営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為に該当するか否か等について検討する。
ア 虚偽事実の告知行為の有無
 当裁判所は、本件告知行為1及び2に係るSの発言内容が、いずれも営業上の信用を害する虚偽の事実を告知・流布する行為に該当すると判断する。その理由は、以下のとおりである。
 すなわち、本件告知行為1及び2に係るSの発言内容は、被告の下請けをしていた原告が被告商品に類似した原告商品を製造、販売したことについて、原告及び原告商品を販売する者に対して訴訟を提起する意思があるというものである。そして、Sは、いかなる法的根拠に基づき、いかなる請求をするかは明言していないものの、Sが告知した際の諸般の事情を総合すれば、本件告知行為1及び2は、原告が被告商品に類似した原告商品を製造、販売する行為が被告の何らかの権利を侵害するため、被告が、原告及び原告商品を販売する者(本件告知行為2においてはトゥールズ)に対して、販売の差止め等を求める権利を有すること、権利行使の意思があることを告知したものと解される。
 ところで、前記1及び2で判示したとおり、原告が原告商品を製造、販売する行為は、被告と原告との間の契約に反するものではないし、不正競争防止法2条1項1号に該当するものでもなく、その他、本件において、被告が原告に対して、原告商品の販売の差止め等を求める権利を有する法的根拠は認められない。そして、他人の有する権利を侵害し、そのため差止め等の対象となる商品を原告が製造し、販売しているとの事実は、当該商品を取り扱うものの営業上の信用に関わる、虚偽の事実であるから、本件告知行為1及び2は、いずれも、不正競争防止法2条1項13号所定の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為に該当する。
 これに対し、被告は、原告の主張する事実が認められるとしても、本件告知行為1及び2におけるSの発言を聞いた者が真実に反する誤解をすることはあり得ないから、Sの各発言は、いずれも、営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為に該当しないと主張する。しかし、前記判示したところに照らし、被告の上記主張は採用することはできない。
イ 過失の有無
 以下のとおりの経緯に照らして、本件告知行為1及び2をするに当たり、Sには過失がある。すなわち、Sは、本件告知行為1及び2に先だって、被告の取引先各社に対して、「被告商品と類似する商品を製造、販売しない旨の義務を負担することを内容とする業務提携契約書」の作成を求めていた経緯がある(証人S)ことに照らすならば、このような契約書が締結されていない本件においては、被告は原告に対して、原告商品の販売を差し止める権利などを有するものではないということを十分に認識していたものと推認できること、Sが被告の取締役であること、本件告知行為1及び2の相手は、原告、被告と同じ業界に属する会社の担当者であって、Sの発言内容が、直ちに伝わることは容易に推測できること、特に、本件告知行為2については、バニーコーポレーションとトゥールズとの関係を確認した上で、トゥールズに伝えるように示唆していること等の事情を総合考慮すれば、いずれの発言についても、Sに過失があるものと認められる。Sの行為は、被告の業務を執行する過程で行われたことも明らかである。
4 争点(2)(損害等)について
 そこで、被告の上記不正競争行為によって原告の被った損害等について、判断する。
(1) 損害額
ア 逸失利益
 原告は、本件告知行為1及び2によって、通常の問屋ルート(アゾンルート、ビートルート)、画材問屋ルートを通して、原告商品を販売することによる得べかりし利益を失ったとして、その損害額が4865万5175円であると主張する。
 しかし、以下に詳細に述べるとおり、原告の主張する損害額について、本件告知行為1及び2と因果関係を有する損害の額を確定することができない。すなわち、
(ア) 通常の問屋ルートで売上げられたはずの販売額
 原告は、本件告知行為1及び2がなければ、アゾンが十分な広告をし、また、アゾン及びビートが現在よりも多くの取引先と取引をすることができたので、原告の売上げが増加していたと主張し、甲39(アゾン作成の「オビツボディ販売実績と予測数量」と題する文書)及び甲46(原告代表者の陳述書)には、これに沿う記載がある。なお、甲39によれば、アゾンにおける原告商品の売上げは、約18か月間の合計が2398万円である旨記載されている。
 しかし、上記記載は、一方的な推測を述べたものにすぎず、具体的な裏付けを欠いているから、直ちにこれを採用することはできず、その他、原告の主張を認めるに足りる的確な証拠はない。
(イ) 画材問屋ルートで売上げられたはずの販売額
 原告は、本件告知行為1及び2がなければ、現在原告商品を取り扱っているエスイーがより多くの問屋と取引をすることができ、また、トゥールズが原告との取引を中止してから原告がエスイーと取引を開始するまでの間、トゥールズと取引をすることができたので、原告の売上げが増加していたと主張し、甲42(エスイー作成の「デリータードール販売実績報告書」と題する文書)及び甲46には、これに沿う記載がある。
 しかし、上記記載のうち、エスイーが現在よりも多くの問屋と取引をすることができたという部分は、一方的な推測を述べたものにすぎず、具体的な裏付けを欠いているから、直ちにこれを採用することはできず、その他、上記部分についての原告の主張を認めるに足りる的確な証拠はない。
イ 無形損害
(ア) 前記詳細に認定したとおり、ビートは、平成14年6月13日ころに本件告知行為1を直接の理由として、また、トゥールズは、同年8月22日に本件告知行為2を直接の理由として、それぞれ、原告との取引を中止していること、原告が原告商品の製造、販売を開始した重要な時期において、原告の企画するとおりの販売ができなかったことに照らすならば、Sのした本件各告知行為によって、原告が被った財産上の損害は、必ずしも少なくないと推認される。
 確かに、アで述べたとおり、本件各告知行為と因果関係を有する財産上の損害の額については、必ずしも確定的に、認定・判断することができないが、確定的に損害額を認定することができない点については、無形損害の算定に当たっての、その一事情として考慮することとする。
 そうすると、本件告知行為1及び2における告知内容、相手方の状況、ビート及びトゥールズが取引を中止した状況、原告がその後に原告商品を販売することができた前記アの売上実績、原告商品等この種の商品の利益率(原告は、原告商品の利益率について35%と主張し、被告はこの種の商品の利益率を38%と主張する。)及び原告の受けた信用毀損の程度等、本件記録からうかがわれる諸事情を総合考慮すると、原告の被った損害は、有形、無形を含めて300万円と認めるのが相当である。
(イ) これに対し、原告は、被告の不正競争行為によって、業界誌「ホビージャパン」及び「電撃ホビーマガジン」から、原告商品の広告等掲載依頼が拒否されたと主張し、証拠によれば、業界誌「ホビージャパン」及び「電撃ホビーマガジン」から、原告商品が被告商品に類似していることを理由として被告が原告に対して訴訟を提起するという情報があるため、原告による原告商品の広告等掲載依頼が拒否されたことが窺える。しかし、本件全証拠によっても、本件告知行為1及び2と上記事実との間に、因果関係の存在を認めることはできないから、原告の上記主張は採用することができない。
 また、被告は、ビート及びトゥールズが原告との取引を中止したのは、被告の不正競争行為によるものではないし、原告に無形損害が生じているとすれば、それは、原告商品が模倣品として警告されていることを原告自身が流布したからである旨主張する。しかし、本件告知行為1及び2によりビート及びトゥールズが原告との取引を中止したことは、前記認定のとおりである上、本件全証拠によっても、原告商品が模倣品として警告されていることを原告自身が流布したことにより、原告の信用が毀損されたことを認めることはできないから、被告の上記主張は採用することができない。
ウ 弁護士費用
 原告が本件訴訟の提起・遂行を原告代理人に委任したことは記録上明らかであるところ、本件訴訟の内容、認容額、難易度その他一切の事情を考慮すれば、本件告知行為1及び2と相当因果関係のある弁護士費用は100万円が相当である。
エ 小括
 以上のとおり、原告が本件告知行為1及び2により被った損害額は、合計400万円となる。
(2) 営業誹謗行為の差止め及び信用回復措置の必要性
 被告は、自己の取引先の従業員に対して、口頭で営業誹謗行為を行ったにすぎないこと等に照らせば、被告が営業誹謗行為を現に反復継続して行い、又は行うおそれがあると認めることはできない。したがって、原告の被告に対する営業誹謗行為の差止めを求める請求は理由がない。
 また、上記判示したところに照らせば、原告の侵害回復措置を求める請求については、その必要性がない。
5 結論
   よって、原告の請求は、損害金400万円及びこれに対する平成14年11月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却する。また、被告の請求は、いずれも理由がないから棄却する。
〔論  説〕
  〔乙事件について〕
1.争点1について
 この事件において、裁判所はまず〔乙事件〕から判断をした。本件において〔乙事件〕とは、〔甲事件〕の被告が請求した反訴というべきものであるが、争点1として、被告は原告との間の契約に基づく秘密保持義務と競業避止義務の違反を主張した。
 乙事件の原告は、被告との間に本件業務委託契約が成立し、原告と被告との間に緊密な依存関係が継続していたから、被告は原告に対し競業避止義務と営業秘密保持義務を負担していたのに、原告の技術情報と営業情報を利用して、原告商品と類似する商品を被告が製造販売したことは前記各義務違反であると主張した。
 この点について判決は、だからといって直ちに委託者の原告と受託者の被告との間に競業避止義務や営業秘密保持義務を伴う業務委託契約が成立していたと判断することはできないとした。前記義務は被告の事業活動を大きく制約するものであるから、被告が負担することになる不作為義務の詳細が確認された意思を反映した書面が作成されるのが一般であるのに、その旨を明記した書面は作成されたことはない。したがって、被告の債務不履行に基づく請求は理由がないと判断された。
2.争点2について
 第2の争点の原告商品の形態が自他商品の識別力を有する商品等表示性を有するか否かについて、判決は、以下の理由によって否定した。
 原告の第三・第四・第五各目録記載の商品形態は、いずれも女性の人体の形状又は動作を表現するという原告商品の目的に由来するもので、「需要者に強い印象を与える特徴的な形態ではなく」、原告商品の広告や販売の状況等に照らしても、「その形が、自他識別機能又は出所表示機能を有する商品等表示であると認めることができない」と判示した。
 また、女性体型の胴体部、脚部、肘関節・膝関節、その他の部分の形態は、機能に由来するものであったり、同種商品と対比しても特異なものでないし、人体を表現する目的に由来する当然の形態であったり等に照らすと、特徴的な形態とはいえないと認定した。
 その結果、裁判所は、原告の商品形態3体は、不競法2条1項1号に規定する「商品等表示」に該当しないと判断し、それ以上、踏み込んで実体的類否の判断をしなかった。
3.疑問点
 このようにして、甲事件では、乙事件の前提となる原告商品の形態について商品等表示(換言すれば、デザイン)性を否定したが、このような考え方は疑問である。
 不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは、そのカッコ書きにあるように、広く「その他の商品を表示するもの」を含むものであるから、単純に商品の「デザイン」であり「形態」をいうと解してよい。しかし、本件の場合、各部の形態が機能に由来するものであったとしても、女性素体の人形全体としては、従来物とは違う特徴的形態があると認められるといえるのではないか。ここに特徴的形態とは、新規性が要求される意匠法のそれとは違うレベルのものをいう。
 要は、商品形態の類似性、周知性、混同性の要件を精査すべきであるのに、それを中止していることは説得力を欠く判決といわねばならないだろう。

〔甲事件について〕
4.虚偽事実の告知・流布
 原告は、被告会社のSが原告の取引先に対し、原告商品を販売することは、被告と原告との間の継続的な製造等委託契約に反することになるし、不競法2条1項1号に該当する不正競争として、その販売を中止する旨を告知・流布した行為は、不競法2条1項13号(現行法14号)に該当する不正競争行為と主張したことを、裁判所は認めた。結局、被告側の反論には、原告の不法行為に対して救済を求める法的根拠はなく、Sの行為には過失があると認め、逆に被告に対し損害賠償の支払いを命じた。
 その結果、裁判所は、告知の内容、相手方の状況、取引中止の状況、原告の売上実績、原告商品の利益率、原告の受けた信用毀損の程度等を総合考慮して、原告の有形・無形の損害額を300万円と算定した。
 これに、弁護士費用として100万円を加算して合計400万円を損害額と認定した。
 被告が原告と締結した最初の製造等委託契約の中に競業避止義務や営業秘密保持義務が含まれていると被告が思い違いをしていたところに、被告側の最初の過ちがあったといえるが、不競法2条1項13号(現14号)に抵触する行為をした事実は結果としてはやむを得ないといえよう。

〔その他の問題〕
 本件とは関係はないが、甲事件で被告となったボークスは、「スーパードルフィーミュウ」や「スーパードルフィーキラ」という女性人形を製造し高価で販売していることで有名であるが、この人形を模倣したものを中国で製造させ、これをインターネットで通販する者に対し、京都府警が不正競争防止法違反の容疑で逮捕した事件があった。(京都新聞夕刊平15.1.29、朝日新聞平15.1.30)

[牛木理一]