C1-22

 

 

「ワイヤブラシセット」商品形態・損害賠償請求事件:大阪地裁平12(ワ)1974号(甲事件)・12240号(乙事件).平成14年4月9日判(一認)〔判時1826号132頁〕

〔キーワード〕 
商品の容器・包装、商品と包装との一体性、商品形態の模倣、継続的取引契約

 

〔事  実〕

 

 「甲事件」は、原告(株式会社パシーン・インターナショナル)が被告(エコー金属株式会社)に対し、被告の販売する2本組ワイヤーブラシセットは、原告の商品形態を模倣したものとして、不競法2条1項3号、4条に基づき、損害賠償請求した事案、「乙事件」は、原告が被告に対し、被告の2本組ワイヤーブラシセットの販売行為は、原被告間の継続的取引契約に反するとして損害賠償を請求した事案である。
 争点は、次の4点にあった。
(1) 原告商品A、Bの商品形態は、不正競争防止法2条1項3号によって保護されるべき「商品の形態」に当たるか(甲事件)。
(2) 原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に該当するか(甲事件)。
(3) 被告の被告商品A、Bの販売行為は、原被告間の継続的取引契約に違反するか(乙事件)。
(4) 損害の発生及び額(甲、乙事件)

〔主  文〕

  1. 被告は、原告に対し、金899,556円及びこれに対する平成12年11月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2. 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3. 訴訟費用は、これを4分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

〔判  断〕

1 争点(1)(原告商品A、Bの商品形態は、不正競争防止法2条1項3号によって保護されるべき「商品の形態」に当たるか。)について
(1) 原告商品A、Bの外観及び構成は、別紙「原告商品A目録」及び別紙「原告商品A及び被告商品Aの構成目録」中の原告商品A欄、別紙「原告商品B目録」及び別紙「原告商品B及び被告商品Bの構成目録」中の原告商品B欄に各記載のとおりである。
(2) ブラシ本体について
ア 証拠によれば、次の事実が認められる。
(ア) 原告は、既存の中国製のブラシセット(ブラシ3本がブリスターパックに包装された商品。以下「3本ブラシセット」という。)に含まれていたブラシに修正を施して、原告商品A、Bのブラシの形態にしたものであるが、その修正を施した点は次のとおりである。
a 中国製の3本ブラシセットは、ステンレスブラシ、真鍮ブラシ及びこれらより二回りくらい小さいナイロンブラシの3点セットであったが、ナイロンブラシをステンレスブラシや真鍮ブラシと同じ大きさにするようにした。
b ブラシのハンドル部分を、1.5oから2o薄くした。
(イ) 原告商品A、Bのブラシは、線材を植毛したブラシ部とこれに続く穏やかに湾曲するハンドルからなり、ハンドル部分には握りやすいように波型状の細工が施されているものであるが、線材を植毛したブラシ部とこれに続くハンドル部を有するというのはブラシの基本的形状であり、原告商品A、Bのブラシの特徴はハンドルの形状にあるというべきところ、同形態を有するブラシは、1994年(平成6年)5月21日ころ、既に中国で製造されていた。
イ そうすると、原告商品A、Bのブラシ本体は、その商品形態の特徴がハンドル部の微細な形状にあるにすぎず、しかも、平成6年ころ中国において同形態のブラシが製造されていたことに加え、原告が加えた修正の程度がほとんど看者の注意を惹かない部分に及ぼされているにすぎず、その程度も小さいことなどを考慮すると、それ自体では、同種の商品が通常有する形態(不正競争防止法2条1項3号かっこ書)を有するにすぎないというというべきである。
(3) 包装(台紙及びブリスターパック)について
 ア 不正競争防止法2条1項3号にいう「商品の形態」とは、商品の形状、模様、色彩、光沢等外観上認識できるものをいうが、商品の容器や包装についても、商品と一体となっていて、商品自体と容易に切り離せない態様で結びついている場合には、同号の「商品の形態」に含まれると解すべきである。しかるところ、原告商品A、Bは、その包装(台紙及びブリスターパック)が商品と一体となり、商品自体と容易に切り離せない態様で結びついており、このように包装された形態で市場に流通しているものであるから、原告商品A、Bの包装は不正競争防止法2条1項3号にいう「商品の形態」に含まれるものというべきである。
 原告商品A、Bにおけるブリスターパックは、2本組のブラシが固定された形態を有し、台紙は、緑地と黄色地あるいは赤地と薄赤地の2色に配色され、白抜き文字、緑文字及び赤文字で商品名や説明文が記載されており、各記載部分の文字は種々の大きさの書体が選択され、文字の配列も、横書き、縦書きのほか、ブラシの湾曲に沿った形で配されている部分もある。
イ 被告は、原告商品A、Bのブラシのような棒状の商品が複数本で一組となって固定されるようなブリスターパックや、台紙のデザインは、格別の特徴がなく「通常有する形態」に当たると主張するが、ブラシを2本組みにしてブリスターパックで包装する場合でも、ブラシの並べ方には種々の配置が考えられ、また、台紙のデザインについても、記載文言の内容や、その配色、文字の配置、書体、印刷の質等をどうするかについては、種々の選択が考えられるのであって、原告商品A、Bの包装形態が「通常有する形態」に当たるということはできず、他に、原告商品A、Bの包装形態が「通常有する形態」であることを認めるに足りる証拠はない。
(4) そうすると、原告商品A、Bは、その包装(台紙及びブリスターパック)部分を含めた商品形態において、不正競争防止法2条1項3号により保護される商品形態に当たるというべきである。
2 争点(2)(原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に該当するか。)について
(1) 不正競争防止法2条1項3号は、「他人の商品」の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、輸入する行為等につき不正競争行為とする旨規定するが、その趣旨は、費用や労力を投下して商品を開発して市場に置いた者が、これを回収するに必要な期間(最初に販売された日から3年間)、投下した費用や労力の回収を容易にし、商品化への社会的意欲を高めるために、費用や労力を投下することなく先行者の開発した商品の形態を模倣する行為を規制することとしたものである。
 したがって、同号の保護を受けるべき者に当たるか否かは、当該商品を商品化して市場に置くに際し、費用や労力を投下した者といえるか否かを検討することによって決すべきことになる。
 そして、仮に、甲、乙それぞれが、当該商品を商品化して市場に置くために、費用や労力を分担した場合には、第三者の模倣行為に対しては、両者とも保護を受けることができる立場にあることはいうまでもないが、甲、乙間においては、当該商品が相互に「他人の商品」に当たらないため、当該商品を譲渡等する行為を不正競争行為ということはできないというべきである。
 そこで、こうした観点から、原告商品A、Bの商品化して市場に置くについて、原告ないし被告が費用や労力を投下したか否かについて検討する。
(2) 証拠によれば、次の事実が認められる。
ア 原告は、海外の様々なメーカー等から素材となる道具類等を探し出し、その素材を日本向けにアレンジして新しい商品を開発し、それを日本の卸売業者や100円均一ショップ等の小売店に納入するという業務を中心に行っている。
 被告は、中国や東南アジア等の国で生産される価格の安い日用雑貨類を輸入商社から仕入れ、それを国内の100円均一ショップを経営する会社に卸売りするという業務を行っている。
イ 原告は、従前、上記日本向けの商品を株式会社タマハシ(以下「タマハシ」という。)を通じて、日本の卸売業者や小売店に販売しており、タマハシ以外の会社に商品を納入することはなかったが、平成4年2月ころ、タマハシの社長が死亡したことを契機に、被告との間で取引をするようになった。
ウ 原告と被告との関係は、かつてのタマハシとの関係と同様に、原告が商品を開発し、これを被告が販売するというものであった。
原告代表者は、商品開発に際し、海外の商社を通じてメーカーと折衝し、被告の意見を聞いた上で最終的な商品化に至るという方法を採っており、商品によっては概ね1年くらいの商品開発の期間が必要となり、原告代表者は、その作業のために海外出張を繰り返していた。
エ 原告商品A、Bが商品化されるまでの経緯は次のとおりである。
(ア) 原告は、中国で販売されていた3本ブラシセットを2本組セットにして100円均一ショップ向けの製品にし、被告に対して販売することを企画した。
(イ) 原告は、前記1(2)記載のとおり、中国製の3本ブラシセットのブラシ本体について、ステンレスブラシ、真鍮ブラシ及びナイロンブラシをいずれも同じ大きさにするとともに、ブラシのハンドル部分を1.5oから2o薄くする修正をし、原告は、その修正のための金型代の一部として30万円を支払った。なお、金型代のその余の部分は、原告と中国の製造業者との間に介在する商社が負担し、同商社はその費用を販売単価に上乗せして回収することとした。
(ウ) 原告は、原告商品A、Bの台紙のデザインを印刷会社に依頼し、その印刷製版費用として、7万2000円を支出した。
 原告代表者は、日本語の読み書きが十分にできないこともあって、印刷原版ができた段階でこれを被告のもとに持ち込み、被告代表者が、同台紙のデザインが100円均一ショップで販売するのにふさわしいか、日本語による商品名、商品の特徴の表示、使用方法の説明書き、使用上の注意、被告の商品メーカーコード(4991203)等が正しく印刷されているかどうかを確認した上で、原告代表者は、同原版を用いて台紙の印刷を発注し、原告商品A、Bを商品化した。
オ 原告は、被告に対し、@原告商品A、Bを、平成10年3月16日に各3万6000個の注文を受けて、同年7月8日に各1万8000個(単価54円)、同年9月17日に各1万8000個(単価50円)を納品し、A同年9月9日に各3万9600個の注文を受けて、同年11月11日に同数量(単価51円)を納品し、その納品数量の合計は各7万5600個(合計15万1200個)である。
 なお、原告は、被告から原告商品A、Bの注文を受けてから、製造業者に受注数量分の製造を依頼して、でき上がった製品を被告に納入したものであり、原告が在庫を抱えることはなかった。一方、被告は、大創産業に対して毎月数千個単位の数量を納品していることからすると、原告から一括して仕入れた原告商品A、Bを在庫として抱え、その中から月々大創産業に納品していたものと推認できる。
カ その後、被告は、他の輸入商社と比較して原告からの仕入価格が約2割近く高かったため、平成11年6月ころ、原告に対して原告商品A、Bの仕入価格の減額を求めたが、原告がこれに応じなかったことから、同月下旬ころ、原告以外の他社に被告商品A、Bを発注し、これを仕入れることとした。
キ 被告は、平成12年6月ころ、被告商品A、Bとは異なる新たな台紙のデザインを依頼し、その後は、被告商品A、Bは販売していない。
(3) 以上の事実関係に基づいて、原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に該当するかについて検討する。
ア 前記1記載のとおり、原告商品A、Bの商品形態は、ブラシを2本組にしてブリスターパック及び台紙によって包装した包装形態をとることによって、不正競争防止法2条1項3号の保護の対象となるものというべきところ、原告は、原告商品A、Bの開発に際し、台紙の印刷製版費用として7万2000円を負担し、中国の業者との間で数度にわたり打ち合わせを重ねたものにすぎず、しかも、原告は商品在庫を抱えるなどの販売リスクを負っているものではない。
イ 一方、被告は、100円均一ショップを経営する会社に卸売りするという業務を行っており、日本語の読み書きが十分にできない原告代表者に代わり、原告が中国から持ち込んだ原告商品A、Bを100円均一ショップにおいて販売するのに適するか否かという視点で台紙のデザインを確認した上、これを仕入れ、被告会社が有する大創産業に対する販売ルートを通じて流通に置き、また、商品在庫を抱えるという販売リスクを負っていたものである。
ウ 上記のような原告及び被告が負担した費用、労力、リスクの程度を考慮すると、原告商品A、Bを商品化して流通に置くについて、原告のみがその費用や労力を負担したということはできず、被告においても一定の労力、リスクを負担したものと評価できるから、原告及び被告のそれぞれが費用や労力を分担したものというべきである。
エ そうすると、原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に該当しないというべきであるから、同号を理由とする原告の請求(甲事件)は理由がない。
3 争点(3)(被告の被告商品A、Bの販売行為は、原被告間の継続的取引契約に違反するものか。)について
(1)ア 上記2(2)記載のとおり、原告は、原告商品A、Bの開発に際し、台紙の印刷製版費用として7万2000円を負担し、中国の業者との間で数度にわたり打ち合わせを重ね、金型費用として30万円を支出するなどし、原告と被告とが、費用や労力を分担して原告商品A、Bを商品化し流通に置いたものである。
イ しかも、原告商品A、Bは、次のような商品(包装)の形態から、被告のみに専属的に納入することが想定されていたものである。
(ア) 原告商品A、Bは、台紙に被告の商品メーカーコード(4991203)及びバーコードが印刷されている。
(イ) 原告は、原告商品A、Bのほかに、黄色の地に緑色の帯に白地で「BENRI GOODS」と記載し、裏面に被告の商品メーカーコードを記載した台紙及びブリスターパックを用いた金具類(甲6及び7の各1〜12)を被告に納入していたが、これらの金具の台紙と原告商品Bの台紙は、色、字体などが同一であり、同じコンセプトの商品として出所が同一であるか、同じグループであるとの印象を消費者に抱かせるものである。
ウ 以上によれば、原告と被告との間では、定期的に一定数量の商品を被告が原告から購入することを義務付けるような約束はなかったから、そのような意味での継続的取引契約が締結されたものとは認められないけれども、原告商品A、Bを原告から被告のみに専属的に納入し、被告はこれを買い受けることを内容とする継続的な取引契約が成立するに至ったものと認めるのが相当である。
 そして、甲12によれば、原告は、原告商品A、Bを被告に納入することしか想定していなかったので、被告による突然の取引打切りに対応して、すぐに新しい販売ルートを見つけることはできても、商品の仕様を変えなければならないため、売上の大幅減は免れなかったことが認められる。
エ 前記認定事実によれば、原告と被告の間には原告商品A、Bについての継続的取引契約が成立するに至っていたものであるから、被告がこの契約関係を解消するに当たっても、信義則上、被告は、合理的期間内は原告商品A、Bと実質的に同一の商品形態を有する商品を原告以外から仕入れて販売することはできないと解するのが相当である。
 そして、原告が原告製品A、Bの商品化等に投下した費用や労力の程度、原告が被告との取引打切りに対応して商品の仕様を変えなければならないかったこと等を考慮すると、上記合理的期間は、被告が原告との取引を打ち切った平成11年6月下旬ころから約6か月の間、すなわち平成11年12月末日までとするのが相当である。
(2) 被告は、他の業者が提示する価格に比べ、原告の提示価格がおよそ2割も高かったため、被告側から原告に対して適正な価格を指し値としたが、原告がこれに応じなかったので、原告との取引を中止したものであると主張する。
 確かに、被告が定期的に一定数量の原告商品A、Bを購入することが義務付けられるような継続的取引契約が締結されたことを認めることはできないことは上記のとおりであるから、被告が原告との取引を中止したとの一事をもって直ちに契約違反に当たるということはできない。
 しかし、被告が、原告と費用や労力を分担して商品化した原告商品A、Bの商品形態と実質的に同一と評価されるような商品形態を有する商品を原告以外の会社に製造させてこれを仕入れることが許されないことは上記のとおりであり、被告が仮にワイヤーブラシを販売するのであれば、被告が平成12年6月ころ以降に販売しているワイヤーブラシのように、原告商品A、Bとは異なる包装形態にして販売すべきであったというべきである。
 したがって、被告の主張は理由がない。
(3) 被告商品Aは原告商品Aの商品形態と、被告商品Bは原告商品Bの商品形態と、それぞれ、実質的に同一といえる程度に類似した商品形態を有していることは前記第2の1(3)記載のとおりであるから、被告が、被告商品A、Bを原告以外の会社から仕入れて販売したことは、上記取引契約に付随する信義則上の義務に反する行為であり、被告は、上記義務を負う合理的期間である平成11年12月末日までの間は、同契約違反の仕入行為により、原告が得ることができたであろう損害を賠償する責任を負うものというべきである。
4 争点(4)(損害の発生及び額)について
(1) 被告商品A、Bの販売数量について
 大創産業が被告から仕入れた2本組ワイヤーブラシセットの数量について調査嘱託を受けて回答した書面(甲16)によれば、大創産業は、平成10年7月から平成11年12月末日までの間に被告から、2本組ワイヤーブラシセットを21万5592個(原告商品A、B及び被告商品A、Bの合計仕入数量)仕入れていることが認められ、前記2(2)オ記載のとおり、原告が被告に納品した原告商品A、Bの数量は15万1200個であるから、被告が平成11年12月末日までに販売した被告商品A、Bの数量は、6万4392個(21万5592個−15万1200個)であると認められる。
 なお、平成13年11月13日付文書提出命令(平成13年(モ)第7214号)に従って被告が提出した被告商品A、Bの販売台帳によれば、被告は、大創産業に対し、平成11年12月末日までの間に、被告商品Aを2万6496個、被告商品Bを2万4516個、合計5万1012個を納品しているとの集計結果が示されているが、上記甲16の書面は第三者である大創産業の作成に係るものであって、より信用性が高いと認められるから、被告提出の販売台帳に基づく上記集計結果をもってしても、上記認定を覆すには足りない。
(2) 原告が得られたであろう利益額について
ア 前記のとおり、原告が原告商品A、Bを被告に対して販売したのは、平成10年7月8日の各1万8000個、同年9月17日の各1万8000個、同年11月11日の各3万9600個であるが、さらに被告との間で継続的取引が続いた場合における原告が得られたであろう利益の算定に当たっては、最終時点の取引価格を前提にするのが相当である。
イ 原告の被告に対する原告商品A、Bの上記最終時点の販売価格は、前記2(2)オ記載のとおり、1個当たり51円であった。
ウ 甲15及び18の各3によれば、原告の原告商品A、Bの上記最終時点の仕入価格は0.23米ドルであり、同時点における円相場(1米ドル当たり126.3429円)を基に円換算すると、29.06円となる。
エ 甲19の1〜6によれば、原告が原告商品A、Bを各3万9600個輸入した際の輸送コストは、海上運賃が15万円(1.89円/個)、関税が16万7800円(2.12円/個)、消費税が12万3200円(1.56円/個)、陸揚げ料が11万6725円(1.47円/個)、陸上輸送費が7万3500円(0.93円/個)であり、1個当たりの輸送コストの合計は、7.97円であることが認められる。
オ 上記の原告商品A、Bの販売価格、仕入価格、輸送コストを基に、原告が原告商品A、Bの販売により得られた利益を算出すると、1個当たり13.97円(51円−29.06円−7.97円)となり、被告が原告以外の他社から被告商品A、Bを仕入れるのではなく、これを原告から仕入れた場合に原告が得られたであろう利益も同額であるとするのが相当である。
(3) そうすると、被告が上記のとおり原告以外の他社から被告商品A、B6万4392個を仕入れてこれを大創産業に販売したことにより被った原告の損害は、89万9556円(6万4392個×13.97円)となる。
5 以上によれば、原告の被告に対する継続的取引契約の違反を理由とする請求(乙事件)は、金89万9556円及びこれに対する乙事件訴状到達の日の翌日である平成12年11月19日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、原告の乙事件のその余の請求及び甲事件の請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

〔論  説〕

1. この事件は、最初、原告は被告に対して、原告商品(A)(B)を販売し、被告は原告商品を100円ショップの(株)大創産業に販売していたが、その後、被告は被告商品を原告以外の会社に発注して仕入れ、大創産業に販売するようになった。
原告商品と被告商品はともに2本組ワイヤブラシセットで、両商品の商品形態は不競法2条1項3号の「模倣」の客観的要件としての実質的同一性を有するものであることに当事者間に争いがなかった。

2. 争点(1)について、問題となったのは、ブラシ本体と包装(台紙及びブリスターパック)から構成されて販売している原告商品は、その包装部分を含めた全体が法2条1項3号によって保護される「商品の形態」に当たるか否かの点にあった。
 この点に対し判決は、「商品の形態」とは、商品自体だけでなく、商品と一体となり容易に切り離せない態様で包装された状態で市場に流通している場合は、包装状態の商品も「商品の形態」に含まれると解した。そして、ブラシ本体は「同種の商品が通常有する形態」であると認定したが、前記包装状態を含めて一体性を認め、原告商品の態様を「商品の形態」に該ると判断したのである。
 この事件において、原告は「商品の形態」に該当するか否かの問題について、商品自体の保護を主位的請求とし、包装状態にある商品の保護を予備的請求としたわけではないが、判決は結果的には、包装状態にある商品自体を保護することにした。
 判決は、当該商品がバラ売り状態であれば保護に価いしないものと判断したが、包装状態で売られていたことに注目したのは、顧客は包装状態を通してしか商品を見ることができないと認定したからであろう。
 したがって、被告が包装の形状や表示や色彩などを別異のものにすれば、判決は両者の実質的同一性を認めず、商品形態の模倣に該当しないと判断することになろう。(甲事件)

3. 争点(2)については、原告商品A,Bが被告にとって「他人の商品」に該当するといえるかが問題となったが、判決は、原告商品を商品化して流通に置くことについては、原告のみがその費用や労力を負担したわけではなく、被告も一定の労力やリスクを負担したものと認定した。
 このような場合、原告商品A,Bは、被告にとって「他人の商品」といえるものではないから、法2条1項3号の適用は排除されたが、妥当であろう。(甲事件)

4. 争点(3)については、被告による被告商品A,Bの販売行為は原被告間の継続的取引契約に違反する行為といえるかが問題となったが、判決は、被告が被告商品A,Bを原告以外の会社から仕入れて販売したことは、取引契約に付随する信義則に反する行為であると認定し、平成11年12月末までは契約違反の仕入行為により原告が得ることができたであろう損害額を賠償する責任が、被告にはあると判断したことは妥当である。(乙事件)

5. なお、争点(1)の問題についての判断に対しては、商品自体の形態ではなく商品を収容した包装状態下の形態も、法3条1項3号の「商品の形態」に該当すると拡張解釈したことの妥当性について、被告は争う余地があったであろうが、控訴されなかった。
 しかし、今後、同様の問題が起こる可能性があるから、かような場合に対処する理論武装をしておく必要があるだろう。

[牛木理一]