C1-2

 

 

「ドレンホース」商品形態・損害賠償請求事件: 大阪地裁平成6(ワ)12186号.平成8年11月28日判決(棄却)

〔キーワード〕 
商品の形態、内部構造、同種の商品が通常有する形態

 

〔判示・認定事項〕 

  1. 不競法2条1項3号にいう「商品の形態」とは、商品の形状,模様,色彩,光沢等外観上認識することができるものをいうと解すべきであるから、外観に顕れない内部構造にとどまる限りは「商品の形態」に当たらない、と判示した。
  2. 原告商品につき新規性ある形態として主張する点は、いずれも不競法2条1項3号にいう「商品の形態」に当たらないか、同種の商品が通常有する形態にすぎない、と認定した。

 

〔事  実〕

 

 原告(U社)は、別紙第一物件目録記載のドレンホースを開発し製造し、平成4年3月28日頃から販売を開始したところ、被告(I社)は、平成6年7月から、訴外T社が製造したドレンホースを販売した(第二物件目録二)。 

〔争  点〕

1. 被告商品は、原告商品の形態を模倣したものであるか。
2. 原告商品の形態は、同種の商品が通常有する形態であるか。
3. 被告商品の販売開始は原告商品の販売開始日から起算して3年を経過した後であるか否かに関係して、原告商品の販売開始日はいつか。
4. 被告が損害賠償義務を負う場合、原告に対し賠償すべき損害の額。

 

〔判  断〕

 

一 争点1(被告商品は、原告商品の形態を模倣したものであるか)及び争点2(原告商品の形態は、同種の商品が通常有する形態であるか)について
1 原告は、被告商品は原告商品の新規性ある形態をすべて備えているから、原告商品の形態を模倣したものであると主張し、その原告商品の新規性ある形態として、1.長尺ホースである、2.外皮部分には内部に独立した伸縮自在のパッド状筒が内蔵されている、3.ホース芯がプラスチック製である、の3点を挙げる。
 そこで、まず、これらの点が不正競争防止法2条1項3号にいう「商品の形態」に当たるか否かについて検討するに、他人が商品化のために資金、労力を投下して開発した商品について、その機能面ではなく形態面における模倣をもって不正競争行為とする同号の立法趣旨及び「形態」という用語の通常の意味に照らせば、同号にいう「商品の形態」とは、商品の形状、模様、色彩、光沢等外観上認識することができるものをいうと解すべきである。
 したがって、商品の機能、性能を実現するための構造は、それが外観に顕れる場合には右にいう「商品の形態」になりうるが、外観に顕れない内部構造にとどまる限りは「商品の形態」に当たらないといわなければならない(このような商品の機能、性能を実現するための内部構造は、要件を具備することにより特許法、実用新案法等による保護を受けることが可能であるから、権利保護に格別欠けるところはない。)。
 そうすると、原告が原告商品の新規性ある形態として挙げる点のうち、前記2.及び3.の点は、外観上認識できないことが明らかであるから、前記「商品の形態」に当たらないというべきである。
 原告は、右2.及び3.の点が商品として利用する段階では外から見ることができないことを認めながら、(1)商品の形態には、単に商品のデザインや外観のみではなく、色・つや・質感も含まれるところ、外皮の内側にはりめぐらされた太みのあるパッドは、ホースの質感、可塑感などに大きな特徴を与えている、(2)原告も被告も、そのカタログ〈証拠〉において、ホースを削ぎ切りした断面を商品特徴として売り出しており、パッドは商品の重要な要素となっている、(3)原告も被告も、原告商品、被告商品がカッターナイフなどで簡単に切断できると宣伝しているが、これの形態面は、ホース芯がプラスチック製であるということであり、やはり商品の重要な要素となっているとして、商品形態に当たると主張する。
 しかし、原告商品〈証拠〉において、外皮部分に内蔵されているパッドが質感、可塑感などに大きな影響を与えているものとは認められない。わずかに、やや力を入れて原告商品を握ると、右パッドのために若干弾力性のあることを感じることができるものの、外観のみから認識することはできない。仮に、外観のみから若干弾力性のあることが認識しうるとしても、また右パッドが原告商品の質感等に何らかの影響を与えているとしても、その場合には、外観上認識できる質感等そのものが「商品の形態」を構成するにすぎず、そのような質感等に影響を与えている商品の内部構造そのものをもって「商品の形態」ということはできない。また、原告主張のとおり、原告も被告も、そのカタログ〈証拠〉においてホースを削ぎ切りした断面を商品特徴として売り出していること、原告商品、被告商品がカッターナイフなどで簡単に切断できると広告していること〈証拠〉が認められる。しかしながら、原告商品、被告商品は結露防止用の断熱ドレンホースであって、外観上認識できる形状等もさることながら、液体を流すというホース本来の機能からそのホース内面の状態が重要であるとともに、結露防止用ということで断熱材が重要であることから、商品販売用のカタログを作成するに当たって、ホースを削ぎ切りした断面の写真を掲載することによって内部構造を明らかにすることはいわば当然ともいうべきことであって、かかるホースを削ぎ切りした断面によって明らかになる内部構造は、外観上認識できない以上、パッドがいかに原告主張のとおり重要な要素となっているとしても、パッドが「商品の形態」に当たるということはできないし、また、カッターナイフなどで簡単に切断することができるという点も、ホース芯がプラスチック製であるという商品の内部構造に基づく機能を説明するものであることにほかならないから、商品の機能の重要性を理由に外観上認識できない内部構造をもって「商品の形態」に当たるということはできない。
 したがって、原告の主張は採用することができない。
2 これに対し、原告が、原告商品の新規性ある形態として挙げる点のうち、1.の長尺ホースであるとの点は、一応、外観上認識できる形状であるということができる。
 しかしながら、右にいう「長尺」とは、どの程度の長さをいうのか原告の主張によっても明らかでないところ、そもそもドレンホースは、エアコンの室内機に発生する水滴を室外に排出するたものであるから、一定の長さを有するのは当然であり、その長短は相対的なものにすぎない。のみならず、原告商品の実際の長さは20メートルであると認められるところ〈証拠〉によれば、ドレンホースの構造にはスパイラル方式(原告商品、被告商品、日立14ΦRWMD1041〈証拠〉、東芝14ΦD407710504〈証拠〉と蛇腹方式とがあって、その優劣はつけがたいところ、被告は、昭和62年には長さ5メートルの蛇腹方式の断熱ドレンホースであって、エアコンを設置する現場で必要な長さに切断して使用するものを販売していたし、断熱材と一体となっていない蛇腹方式のドレンホースは、昭和53年ころから長さ50メートルのものを販売していたことが認められる。
 したがって、原告における前記1.の長尺ホースであるとの点は、同種の商品が通常有する形態であるというべきである。
3 以上によれば、原告が原告商品の新規性ある形態として主張する1.ないし3.の点は、いずれも、そもそも不正競争防止法2条1項3号にいう「商品の形態」に当たらないか、同種の商品が通常有 する形態にすぎないから、結局、同号による保護は受けられないということになる。

〔研  究〕

 製品の内部構造は「商品の形態」といえないと裁判所が解したことは妥当である。したがって、原告の商品形態は、不競法2条1項3号に規定する保護すべき「商品の形態」とはいえないとされた。 
 製品の内部構造は、特許法や実用新案法の保護の対象となるものではあっても、意匠法や不競法の保護対象となるものではないことは、疑問の余地はないというべきである。

[牛木理一]