C1-17

 

 

 

「空調ユニットシステム」商品形態・差止等請求事件:東京地裁平成9年(ワ)8839号平成11年 5月10日判決(棄却)、東京高裁平成11年(ネ)3424号平成12年2月 17日判決(棄却)〔判時1718号120頁〕

〔キーワード〕 
技術的形態、形態的特徴、商品表示性、周知性、混同、模倣、最初に販売された日、改良商品(後続商品)

 

〔判示・認定事項〕 

 

〔事  実〕

 

1. 本事件は、被告物件目録記載の各物件の形態が、原告が製造、販売する製品の形態と同一であり、被告が右物件を販売する行為は、不正競争防止法2条1項1号及び3号の定める不正競争行為に該当すると主張して、原告が被告に対し、右販売の差止め及び損害賠償の支払を請求した事案である。
原告K社は、平成9年3月より、建物室内の天井裏内部に設置され、建物室内の空気調整・換気を行う装置(品名・型式「VAV・CAV・ファス一体型FP形」、以下「原告製品」という。)を「空調ユニットシステム」として、製造販売している。原告製品は、大別して、以下の4つの装置により構成されている。
(1) 空調用換気箱(以下「ミキシングチャンバー」という。)
(2) 可変定風量装置(以下「VAV」という。)
(3) 定風量装置(以下「CAV」という。)
(4) 折り曲げ可能な導管(以下「フレキシブルダクト」という。)
 原告製品には、ミキシングチャンバーの側面に接続されるフレキシブルダクトの数により7タイプがあり、フレキシブルダクト合計4本ないし10本が接続されるタイプの型式をF4ないしF10としている。
 このうち、フレキシブルダクトが、合計6本、8本、10本接続されるタイプ(以下、順に「原告製品4」、「原告製品5」、「原告製品6」という。)の形状は、順に原告物件目録4、5、6記載のとおりであり、それぞれの本体部分(本体部分は、前記(1)、(2)及び(3)の各装置から構成される。以下同じ。)の形状 は、順に原告物件目録1、2、3記載のとおりである。
2. 被告E社は、東京都港区の品川駅東口開発事業における品川インターシティA棟建設に際して、空調設備会社から、被告物件目録4ないし6記載の空調装置(以下、順に「被告製品4」ないし「被告製品6」といい、あわせて「被告製品」という。その本体部分は、被告物件目録1ないし3記載のとおりである。)を受注し、平成9年8月から同年12月末までの間に、納品を完了した。
 被告製品は、大別して以下の4つの装置により構成されている。
(1) ミキシングチャンバー
(2) VAV
(3) CAV
(4) フレキシブルダクト

〔争  点〕

1. 原告製品の形態は、周知な商品表示か。
2. 被告製品の形態は、原告製品の形態と類似し、原告製品と混同を生じさせるか、又は原告製品の形態を模倣したものか。
3. 不競法2条1項3号所定の「最初に販売された日」はいつか。

 

〔地裁の判断〕

 

一 争点1(商品表示性及び周知性)について
1 前記事実、証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これに反する証拠はない。
(一) 原告製品の形態上の特徴は、以下のとおりである。
(1) 直方体の箱状のミキシングチャンバーの背面に、VAVとCAVとがそれぞれ接続される2つの開口部が並行状態に設けられていること。
(2) ミキシングチャンバーのVAV及びCAV開口部に、VAVとCAVがそれぞれ接続されていること。
(3) ミキシングチャンバーの正面に、フレキシブルダクトを接続することが可能な開口部が設けられていること。(なお、フレキシブルダクトの接続が不必要である時は蓋で覆われている。)
(4) ミキシングチャンバーの左側面及び右側面に、フレキシブルダクトを接続する開口部が合計6個、8個又は10個設けられていること。
(5) フレキシブルダクトは、折り曲げ状態にしたがって、穏やかに曲がった形状であること。
(6) 原告製品の全体形状は、ミキシングチャンバーの左側面及び右側面から、複数のフレキシブルダクトが、ミキシングチャンバーの中心点より左及び右方向の外側に向かって穏やかに曲がった状態で広がっており、蟹の形状をしていること。
(二) 原告製品は、設置されるまでの間は、フレキシブルダクトをミキシングチャンバー内に収納させた状態で運搬される。原告製品においては、当該設置個所における吹出口の位置関係等により、接続されるフレキシブルダクトの本数が決まるため、原告製品の設置前においては、必ずしも設置後の完成形状が確定しない。また、原告製品は設置後、天井裏に隠れてしまい、通常人目に触れることはない。
(三) 原告は、平成4年3月に「FASU」の販売を開始し、平成5年からは業界誌等に積極的に宣伝広告して、その販売数を 伸ばし、「FASU」については日本経済新聞等にも取り上げられたことがある。しかし、右新聞記事等によると、 「FASU」が記事に取り上げられたのは、その機能、効用等が注目されたからであって、その形態が特殊であるからではない。
 また、原、被告以外の第三者も、直方体状の箱状のチャンバーの左右に、穏やかに曲がった形状のフレキシブルダクトが合計6本程度接続された空調製品を販売している。
2 右認定した事実を基礎として、原告商品の形態が商品表示性を有するか、また、その形態が周知であるかの点について検討する。
 (1) 原告製品を構成する個々の装置、すなわち、ミキシングチャンバー、VAV、CAV、及びフレキシブルダクトの形状は、いずれも、直方体や円筒状であって、特異なものとはいえないこと、(2) ミキシングチャンバーの形態については、風量バランス調整を行うため、ある程度の容量を必要とすること、また、ミキシング構造を設けたため、縦長にせざるを得ないこと等に照らすと、チャンバーに要求される機能を充たすために通常選択される形状であるといえること、(3) フレキシブルダクトの形状については、空調製品の設置場所の物理的な制約を受けることなくダクトを天井裏に配置するため折り曲げ可能にしたことに照らすと、ダクトに要求される機能を充たすために通常選択される形状であるといえること(なお、フレキシブルな構造は、ダクトの一般的な構造の一つであることは争いがない。)、(4)また、原告製品は、ミキシングチャンバーとフレ キシブルダクトがユニット化され、単に接続するだけで空調製品が完成するようにした点で工夫がされているが、形態上の特異性があるとはいえないこと、(5) さらに、ミキシングチャンバーに接続されるダクトの本数は、設置場所の具体的状況、吹出口との位置関係により左右されるものであって、あらかじめ自由に選択できるものとはいえないこと、原、被告以外の第三者も、直方体状の箱状のチャンバーの左右に、穏やかに曲がった形状のフレキシブルダクトが合計6本程度接続された空調製品を販売していること等の事情を総合考慮すると、原告製品の形態に、原告商品を表示識別する機能があると解することはできず、また、原告製品の形態上の特徴が需要者の間に周知であると解することもできない。
二 争点2(混同)について
 原、被告製品のような製品は、店頭で並べて販売されることはなく、主として、ビルの建設工事を請け負った設計会社、建設会社、又は空調設備会社が、空調製品の製造販売業者に対して、カタログ、パンフレット等から、販売会社や製品の機能等を詳細に検討した上で発注される商品である。このような、原、被告製品の取引の実情からすると、被告製品の形態的な特徴から、原告製品と出所等の混同誤認を招く事態を想定することはできない。
 以上のとおり、右一、二の理由から、不正競争防止法2条1項 1号に基づく原告の主張は理由がない。
三 争点3(最初に販売された日)について
1 前掲各証拠及び前提となる事実によれば、以下のとおりの事実が認められ、これに反する証拠はない。
(一) 前記のとおり、原告製品の形態上の特徴は、直方体の箱状のミキシングチャンバーの背面にVAV、CAVが接続され、左側面及び右側面に、フレキシブルダクトの開口部が設けられているという点、ミキシングチャンバーの左側面及び右側面から、複数のフレキシブルダクトが、ミキシングチャンバーの中心点より左及び右方向の外側に向かって穏やかに曲がった状態で広がっており、蟹の形状をしているという点であり、他方、「FASU」の形態の特徴は、直方体の箱状のチャンバーの左側面及び右側面から、複数のフレキシブルダクトが、チャンバーの中心点より左及び右方向の外側に向 かって穏やかに曲がった状態で広がっており、蟹の形状をしているという点である。
(二)  原告製品は、原告が平成4年3月ころに、商品名を 「FASU」として、販売を開始した空気調整装置に、温度コントロール機能を具備させるため、(1) 「FASU」のチャンバーの内部に空気を混合させるためのミキシング構造を設け、(2) 「FASU」のチャンバーにVAVとCAVを接続し、かつ、単一にユニット化した商品である。このような経緯から、原告製品は、先行商品である「FASU」の形態上の特徴をおおむね備えている。原告製品は、「FASU」と比較すると、「FASU」にミキシング構造を設け、VAV、CAVを接続したものであるため、主に チャンバーにミキシング構造を設けた分だけ、チャンバーがより縦長に成っている点、及びチャンバーンの背面にVAVとCAVが接続されている点において、形状が若干異なる。
2 右認定した事実を基礎に、不正競争防止法2条1項3号所定の「最初に販売された日」について検討する。
 原告製品は、「FASU」にミキシングボックスとVAVCAVを一体化した製品であり、「FASU」と原告製品との形態の差異は、チャンバーが若干縦長になった点とVAV、CAVが接続された点のみにあり、原告製品は、先行製品である「FASU」に、極く僅かな形態上の変更を加えたものに過ぎないものというべきである。このような場合、同法所定の 「最初に販売された日」は、原告商品の先行商品であり、かつ、基本的な形態のほぼすべてが具備されている「FASU」が、最初に販売された日である平成4年3月と解するのが相当である。 そうすると、被告が被告製品を製造、販売したのは、平成9年8月以降であるから、右製造、販売行為は、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為には該当しない。

〔高裁の判断〕

 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。
一 不正競争防止法2条1項1号に基づく請求について
1 控訴人商品の形態は、原判決添付の原告物件目録記載のとおりであり、これを具体的に表現すれば、次のとおりである。
1. 直方体の箱状のミキシングチャンバーの背面に、VAVとCAVとがそれぞれ接続される二つの開口部が並行状態に設けられている。
2. ミキシングチャンバーのVAV及びCAV開口部に、VAVとCAVがそれぞれ接続されている。
3. ミキシングチャンバーの正面に、フレキシブルダクトを接続することが可能な開口部が設けられている。(なお、フレキシブルダクトの接続が不必要であるときは蓋で覆われている。)
4. ミキシングチャンバーの左側面及び右側面に、フレキシブルダクトを接続する開口部が合計6個、8個又は10個設けられている。
5. フレキシブルダクトは、折り曲げ状態にしたがって、穏やかに曲がった形状である。
6. 控訴人商品の全体形状は、ミキシングチャンバーの左側面及び右側面から、複数のフレキシブルダクトが、ミキシングチャンバーの中心点より左及び右方向の外側に向かって穏やかに曲がった状態で広がっており、蟹の形状をしている。
2(一) 右を前提にすると、原判決が控訴人商品の形態について認定した事項、すなわち、1.控訴人製品を構成する個々の装置、すなわち、ミキシングチャンバー、VAV、CAV及びフレキシブルダクトの形状は、いずれも、直方体や円筒状であって、特異なものとはいえないこと、2.ミキシングチャンバーの形態については、風量バランス調整を行うため、ある程度の容量を必要とすること、また、ミキシング構造を設けたため、縦長にせざるを得ないこと等に照らすと、チャンバーに要求される機能を果たすために通常選択される形状であるといえること、3.フレキシブルダクトの形状については、空調製品の設置場所の物理的な制約を受けることなくダクトを天井裏に配置するため折り曲げ可能にしたことに照らすと、ダクトに要求される機能を果たすために通常選択される形状であるといえること(なお、フレキシブルな構造は、ダクトの一般的な構造の一つであることは争いがない。)、4.また、控訴人製品は、ミキシングチャンバーとフレキシブルダクトがユニット化され、単に接続するだけで空調製品が完成するようにした点で工夫がされているが、形態上の特異性があるとはいえないこと、5.さらに、ミキシングチャンバーに接続されるダクトの本数は、設置場所の具体的状況、吹出口との位置関係により左右されるものであって、あらかじめ自由に選択できるものとはいえないことを、優に認定することができる。
(二) 右認定の下では、控訴人製品の形態は、これを構成する 個々の部品や装置の形態がすべてありふれたものであるのみでなく、全体としての形態をみても、この種機器を製造するに当たって通常予想される形態選択の範囲を全く出ておらず、特徴的な形状であるとはいえないから、これに商品表示性を認めることはできないものというべきである。
(三) 控訴人は、控訴人商品又は「FASU」は、直方体のミキシングチャンバー(控訴人商品の場合)あるいはチャンバー(「FASU」の場合)の左右側面に複数のフレキシブルダクトが左右対称的に接続された形態(蟹型の形態)であり、この形態は、商品全体として、需要者に蛸、蜘蛛その他の動物を連想させているものであるなどとの理由で、控訴人製品に商品表示性があると主張する。
 しかし、直方体の左右側面に複数のダクトを左右対称的に接続するという形態は、チャンバー、フレキシブルダクトともども天井裏に設置されるこの種商品において、通常予想される選択の範囲内の形態であることは明白であるから、仮に同形態が需要者に蛸、蜘蛛その他の動物を連想させるとしても、これをもって商品識別機能があると認めることはできない。
 控訴人は、直方体という形状は、チャンバーの唯一無二の形態でもなければチャンバーに求められ調和空気の分配・送風機能を果たすうえで技術的に最も合理的な形態でもない旨主張する。
 しかし、直方体という形状は、一般に、その中に他の物を収容する役割を有する物の形状として社会一般において最もよく選択される形状、あるいは、少なくともその一つであることは当裁判所に顕著であり、チャンバーという機器についてみても、これがその例外に当たると考えさせる資料は、本件全証拠を検討しても見出し得ない。このような状況では、むしろ逆に、チャンバーの形態が直方体ではなく、例えば円盤形であったり五角形であったりする方が、かえって特徴的なものとして、商品表示性が認められる可能性が生ずるものというべきである。
 控訴人は、フレキシブルダクトの本数について、商品が購入された後に当該商品の使用状況や使用環境等に応じて商品になした形態の変更により生じる事後的な形態、特に需要者自身により当該商品に加えられた形態の変化により生じる事後的な形態にすぎず、商品の形態の商品表示性の有無とは無関係である旨主張する。
 ダクトの本数が当該商品の使用状況や使用環境等に応じて変わるものであることは、控訴人主張のとおりである。そして、それゆえにこそ、この種商品においては、ダクトの本数についての需要者の種々の要求に答えるために種々のものを用意する必要が生ずるのであり、さらに、そのことからして、ミキシングチャンバーの左側面及び右側面に、フレキシブルダクトを接続する開口部が合計6個、8個又は10個設けられているという被控訴人製品の形態に格別の特徴を見出すことができないことになるのである。
 控訴人は、「FASU」についての自らの営業努力によりこの種商品における「FASU」の独占的販売状況が形成され、その形態は全国的に周知となっていると主張する。
 しかし、仮にそうであるとしても、控訴人主張の形態が、それ自体、その商品として、格別の特徴のないもので、商品表示性を有しないことが前認定のとおりである以上、形態の同一あるいは類似自体を根拠に不正競争防止法2条1項該当性を主張することは許されないものというべきである。このような場合に右のような主張が許されるとすれば、ある商品につき何らかのいきさつで生じた独占的状態の下で、その商品の出所としての周知性をいったん獲得した者は、同法条が目的とする出所の混同の排除を超えて、当該商品一般についての独占の継続をも保障されることになりかねないのであり、このような事態は、むしろ、不正競争防止法がその実現を目指す公正な競争を妨害するものという以外にはないからである。
 被控訴人の行為の中に、単に自己の商品の形態を控訴人のものと同一あるいは類似とするとの限度を超えて、不当に被控訴人製品の信用を利用するため、混同のおそれがあるときに採るべき混同防止の手段を怠ったり、混同を生じやすくする行為に出たりする要素が含まれているとすれば、前記法条該当性の主張を控訴人に許すべきであると解することが可能であるが、本件全証拠によっても右要素を認めることはできない。 控訴人の主張は、いずれも採用できない。
3 以上によれば、控訴人の不正競争防止法2条1項1号に基づく請求は、その余の点について検討するまでもなく、理由がないことが明らかである。
二 不正競争防止法2条1項3号に基づく請求について
1 不正競争防止法2条1項3号は、他人の商品形態を模倣した商品の譲渡行為等を他人の商品が最初に販売された日から3年間に限って不正競争行為としているものであり、不正競争防止法における事業者間の公正な競争等を確保する(1条)という目 的に鑑みれば、開発に時間も費用もかけず、先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売して、投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは、公正とはいえないから、そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解される。このような不正競争防止法2条1項3号の立 法趣旨からすれば、「最初に販売された日」の対象となる「他人の商品」とは、保護を求める商品形態を具備した最初の商品を意味するのであって、このような商品形態を具備しつつ、若干の変更を加えた後続商品を意味するものではないものと解すべきである。
2 これを本件についてみると、控訴人が保護を求めている商品形態の構成の中心が「FASU」においても採用されていたものであることは、その主張自体から明らかであるから、「最初に販売された日」の対象となる「他人の商品」は、控訴人商品ではなく、「FASU」ということになると考えるのが合理的である。そうすると、被控訴人製品が販売されたのは、平成 9年8月以降であり、「FASU」が最初に販売された日である平成4年3月より3年を経過していることは明らかであるから、本件について、もはや被控訴人製品が不正競争防止法2条1項 3号に該当するか否かを論ずる余地はないことになる。
3 この点について、控訴人は、控訴人製品は、「FASU」の改良品や部分的な手直し品でなく、新たに開発された製品であり、形態の面でも、控訴人製品と「FASU」とは、定風量装置(CAV)と可変定風量装置(VAV)とがミキシングチヤンバーの後面に接続されている2本の角状の突起が形成されているか否かで外観的に区別することができるのであり、この差異は、わずかな形態上の変更を加えたものではないなどと主張する。
 しかし、仮に控訴人主張のとおり、控訴人製品が 「FASU」の改良品や部分的な手直し品でないというのであれば、このような場合、控訴人が、控訴人製品に固有の形態として不正競争防止法2条1項3号による保護を求め得るのは、控訴人製品の商品形態のうち、「FASU」の形態と共通する部分を除外した部分に基礎をおくものでなければならないことは、同法の前記立法趣旨に照らし明らかというべきである。
 弁論の全趣旨によれば、控訴人製品は、「FASU」に、温度コントロール機能を具備させるため、1.「FASU」のチャンバーの内部に空気を混合させるためのミキシング構造を設け、2.「FASU」のチャンバーにVAV(可変定風量装置)とCAV(定風量装置)を接続し、かつ、単一のユニット化した商品であり、控訴人製品の、先行商品である「FASU」との形態上の相違点は、チャンバーが若干縦長になっている点、及びチャンバーの背面にVAVとCAVが接続されている点のみであり、その他の形態は、「FASU」と同じであると認められる。
 「FASU」に比べチャンバーが若干縦長になっているという形態は、極めてありふれたものであるし、VAV及び CAVの形状は、いずれも円筒形であって特異なものではなく、これを「FASU」に接続した形態も、接続に伴う必然的な形態であり、いずれも、不正競争防止法2条1項3号括弧書きに いう「当該他人の商品と同種の商品が通常有する形態」に当たることは明らかである。
結局、控訴人の主張は、一方で「FASU」の形態の保護を求めつつ、他方で控訴人製品を最初に販売した日を保護の起算日とせよという極めて矛盾したものというほかないのである。
4 以上のとおりであり、控訴人の不正競争防止法2条1項3号にに基づく請求は、いずれにせよ、その余の点について判断するまでもなく、理由がないことが明らかである。
三 不法行為に基づく損害賠償(選択的主張の追加)について
 控訴人は、某空調設備会社が、控訴人から開示された秘密情報である控訴人製品の技術情報を被控訴人に漏泄し、被控訴人は、この情報に基づいて、控訴人製品のとおりに被控訴人製品を製造したことを前提に、某空調設備会社と被控訴人に共同不法行為が成立する旨主張する。
 しかし、控訴人が秘密情報と主張する控訴人製品についての技術情報がどのようなものか、控訴人の主張自体明らかでない。
 そのうえ、証拠によれば、控訴人が品川インターシティへ控訴人製品を納入したときの責任者自らが、控訴人製品が開発された直接の契機は、品川インターシティの動きであったことを認めており、その品川インターシティの動きをみると、証拠及び弁論の全趣旨によれば、品川インターシティの設計会社である品川設計室は、平成6年9月ころ、控訴人の「FASU」と被控訴人の VAVを一体化接続することにより品質の向上と施工の合理化を図ることを計画し、これを控訴人及び被控訴人に打診し、そのための実験を推進し、控訴人と被控訴人とは、そのころ、相互に資材を送付し合ったり、情報交換をしたりしていることが認められ、右認定の事実の下では、控訴人は、品川インターシティに設置すべき空調設備についての打診を受けた当時、いまだ控訴人製品についての構想を有しておらず、その後の設計会社等との打ち合せの過程で具体的になっていったものであるということができる。このような事情の下では、当時、控訴人製品についての秘密の技術情報が存在したとも、設計会社を通じて秘密情報が被控訴人に漏泄されたとも認めがたい。
 したがって、控訴人の不法行為に基づく損害賠償請求が、失当であることは明らかである。
四 以上のとおり、控訴人の請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきであり、原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。
一 不正競争防止法2条1項1号に基づく請求について
1 控訴人商品の形態は、原判決添付の原告物件目録記載のとおりであり、これを具体的に表現すれば、次のとおりである。
1. 直方体の箱状のミキシングチャンバーの背面に、VAVとCAVとがそれぞれ接続される二つの開口部が並行状態に設けられている。
2. ミキシングチャンバーのVAV及びCAV開口部に、VAVとCAVがそれぞれ接続されている。
3. ミキシングチャンバーの正面に、フレキシブルダクトを接続することが可能な開口部が設けられている。(なお、フレキシブルダクトの接続が不必要であるときは蓋で覆われている。)
4. ミキシングチャンバーの左側面及び右側面に、フレキシブルダクトを接続する開口部が合計6個、8個又は10個設けられている。
5. フレキシブルダクトは、折り曲げ状態にしたがって、穏やかに曲がった形状である。
6. 控訴人商品の全体形状は、ミキシングチャンバーの左側面及び右側面から、複数のフレキシブルダクトが、ミキシングチャンバーの中心点より左及び右方向の外側に向かって穏やかに曲がった状態で広がっており、蟹の形状をしている。
2(一) 右を前提にすると、原判決が控訴人商品の形態について認定した事項、すなわち、1.控訴人製品を構成する個々の装置、すなわち、ミキシングチャンバー、VAV、CAV及びフレキシブルダクトの形状は、いずれも、直方体や円筒状であって、特異なものとはいえないこと、2.ミキシングチャンバーの形態については、風量バランス調整を行うため、ある程度の容量を必要とすること、また、ミキシング構造を設けたため、縦長にせざるを得ないこと等に照らすと、チャンバーに要求される機能を果たすために通常選択される形状であるといえること、3.フレキシブルダクトの形状については、空調製品の設置場所の物理的な制約を受けることなくダクトを天井裏に配置するため折り曲げ可能にしたことに照らすと、ダクトに要求される機能を果たすために通常選択される形状であるといえること(なお、フレキシブルな構造は、ダクトの一般的な構造の一つであることは争いがない。)、4.また、控訴人製品は、ミキシングチャンバーとフレキシブルダクトがユニット化され、単に接続するだけで空調製品が完成するようにした点で工夫がされているが、形態上の特異性があるとはいえないこと、5.さらに、ミキシングチャンバーに接続されるダクトの本数は、設置場所の具体的状況、吹出口との位置関係により左右されるものであって、あらかじめ自由に選択できるものとはいえないことを、優に認定することができる。
(二) 右認定の下では、控訴人製品の形態は、これを構成する 個々の部品や装置の形態がすべてありふれたものであるのみでなく、全体としての形態をみても、この種機器を製造するに当たって通常予想される形態選択の範囲を全く出ておらず、特徴的な形状であるとはいえないから、これに商品表示性を認めることはできないものというべきである。
(三) 控訴人は、控訴人商品又は「FASU」は、直方体のミキシングチャンバー(控訴人商品の場合)あるいはチャンバー(「FASU」の場合)の左右側面に複数のフレキシブルダクトが左右対称的に接続された形態(蟹型の形態)であり、この形態は、商品全体として、需要者に蛸、蜘蛛その他の動物を連想させているものであるなどとの理由で、控訴人製品に商品表示性があると主張する。
 しかし、直方体の左右側面に複数のダクトを左右対称的に接続するという形態は、チャンバー、フレキシブルダクトともども天井裏に設置されるこの種商品において、通常予想される選択の範囲内の形態であることは明白であるから、仮に同形態が需要者に蛸、蜘蛛その他の動物を連想させるとしても、これをもって商品識別機能があると認めることはできない。
 控訴人は、直方体という形状は、チャンバーの唯一無二の形態でもなければチャンバーに求められ調和空気の分配・送風機能を果たすうえで技術的に最も合理的な形態でもない旨主張する。
 しかし、直方体という形状は、一般に、その中に他の物を収容する役割を有する物の形状として社会一般において最もよく選択される形状、あるいは、少なくともその一つであることは当裁判所に顕著であり、チャンバーという機器についてみても、これがその例外に当たると考えさせる資料は、本件全証拠を検討しても見出し得ない。このような状況では、むしろ逆に、チャンバーの形態が直方体ではなく、例えば円盤形であったり五角形であったりする方が、かえって特徴的なものとして、商品表示性が認められる可能性が生ずるものというべきである。
 控訴人は、フレキシブルダクトの本数について、商品が購入された後に当該商品の使用状況や使用環境等に応じて商品になした形態の変更により生じる事後的な形態、特に需要者自身により当該商品に加えられた形態の変化により生じる事後的な形態にすぎず、商品の形態の商品表示性の有無とは無関係である旨主張する。
 ダクトの本数が当該商品の使用状況や使用環境等に応じて変わるものであることは、控訴人主張のとおりである。そして、それゆえにこそ、この種商品においては、ダクトの本数についての需要者の種々の要求に答えるために種々のものを用意する必要が生ずるのであり、さらに、そのことからして、ミキシングチャンバーの左側面及び右側面に、フレキシブルダクトを接続する開口部が合計6個、8個又は10個設けられているという被控訴人製品の形態に格別の特徴を見出すことができないことになるのである。
 控訴人は、「FASU」についての自らの営業努力によりこの種商品における「FASU」の独占的販売状況が形成され、その形態は全国的に周知となっていると主張する。
 しかし、仮にそうであるとしても、控訴人主張の形態が、それ自体、その商品として、格別の特徴のないもので、商品表示性を有しないことが前認定のとおりである以上、形態の同一あるいは類似自体を根拠に不正競争防止法2条1項該当性を主張することは許されないものというべきである。このような場合に右のような主張が許されるとすれば、ある商品につき何らかのいきさつで生じた独占的状態の下で、その商品の出所としての周知性をいったん獲得した者は、同法条が目的とする出所の混同の排除を超えて、当該商品一般についての独占の継続をも保障されることになりかねないのであり、このような事態は、むしろ、不正競争防止法がその実現を目指す公正な競争を妨害するものという以外にはないからである。
 被控訴人の行為の中に、単に自己の商品の形態を控訴人のものと同一あるいは類似とするとの限度を超えて、不当に被控訴人製品の信用を利用するため、混同のおそれがあるときに採るべき混同防止の手段を怠ったり、混同を生じやすくする行為に出たりする要素が含まれているとすれば、前記法条該当性の主張を控訴人に許すべきであると解することが可能であるが、本件全証拠によっても右要素を認めることはできない。 控訴人の主張は、いずれも採用できない。
3 以上によれば、控訴人の不正競争防止法2条1項1号に基づく請求は、その余の点について検討するまでもなく、理由がないことが明らかである。
二 不正競争防止法2条1項3号に基づく請求について
1 不正競争防止法2条1項3号は、他人の商品形態を模倣した商品の譲渡行為等を他人の商品が最初に販売された日から3年間に限って不正競争行為としているものであり、不正競争防止法における事業者間の公正な競争等を確保する(1条)という目 的に鑑みれば、開発に時間も費用もかけず、先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売して、投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは、公正とはいえないから、そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解される。このような不正競争防止法2条1項3号の立 法趣旨からすれば、「最初に販売された日」の対象となる「他人の商品」とは、保護を求める商品形態を具備した最初の商品を意味するのであって、このような商品形態を具備しつつ、若干の変更を加えた後続商品を意味するものではないものと解すべきである。
2 これを本件についてみると、控訴人が保護を求めている商品形態の構成の中心が「FASU」においても採用されていたものであることは、その主張自体から明らかであるから、「最初に販売された日」の対象となる「他人の商品」は、控訴人商品ではなく、「FASU」ということになると考えるのが合理的である。そうすると、被控訴人製品が販売されたのは、平成 9年8月以降であり、「FASU」が最初に販売された日である平成4年3月より3年を経過していることは明らかであるから、本件について、もはや被控訴人製品が不正競争防止法2条1項 3号に該当するか否かを論ずる余地はないことになる。
3 この点について、控訴人は、控訴人製品は、「FASU」の改良品や部分的な手直し品でなく、新たに開発された製品であり、形態の面でも、控訴人製品と「FASU」とは、定風量装置(CAV)と可変定風量装置(VAV)とがミキシングチヤンバーの後面に接続されている2本の角状の突起が形成されているか否かで外観的に区別することができるのであり、この差異は、わずかな形態上の変更を加えたものではないなどと主張する。
 しかし、仮に控訴人主張のとおり、控訴人製品が 「FASU」の改良品や部分的な手直し品でないというのであれば、このような場合、控訴人が、控訴人製品に固有の形態として不正競争防止法2条1項3号による保護を求め得るのは、控訴人製品の商品形態のうち、「FASU」の形態と共通する部分を除外した部分に基礎をおくものでなければならないことは、同法の前記立法趣旨に照らし明らかというべきである。
 弁論の全趣旨によれば、控訴人製品は、「FASU」に、温度コントロール機能を具備させるため、1.「FASU」のチャンバーの内部に空気を混合させるためのミキシング構造を設け、2.「FASU」のチャンバーにVAV(可変定風量装置)とCAV(定風量装置)を接続し、かつ、単一のユニット化した商品であり、控訴人製品の、先行商品である「FASU」との形態上の相違点は、チャンバーが若干縦長になっている点、及びチャンバーの背面にVAVとCAVが接続されている点のみであり、その他の形態は、「FASU」と同じであると認められる。
 「FASU」に比べチャンバーが若干縦長になっているという形態は、極めてありふれたものであるし、VAV及び CAVの形状は、いずれも円筒形であって特異なものではなく、これを「FASU」に接続した形態も、接続に伴う必然的な形態であり、いずれも、不正競争防止法2条1項3号括弧書きに いう「当該他人の商品と同種の商品が通常有する形態」に当たることは明らかである。
結局、控訴人の主張は、一方で「FASU」の形態の保護を求めつつ、他方で控訴人製品を最初に販売した日を保護の起算日とせよという極めて矛盾したものというほかないのである。
4 以上のとおりであり、控訴人の不正競争防止法2条1項3号にに基づく請求は、いずれにせよ、その余の点について判断するまでもなく、理由がないことが明らかである。
三 不法行為に基づく損害賠償(選択的主張の追加)について
 控訴人は、某空調設備会社が、控訴人から開示された秘密情報である控訴人製品の技術情報を被控訴人に漏泄し、被控訴人は、この情報に基づいて、控訴人製品のとおりに被控訴人製品を製造したことを前提に、某空調設備会社と被控訴人に共同不法行為が成立する旨主張する。
 しかし、控訴人が秘密情報と主張する控訴人製品についての技術情報がどのようなものか、控訴人の主張自体明らかでない。
 そのうえ、証拠によれば、控訴人が品川インターシティへ控訴人製品を納入したときの責任者自らが、控訴人製品が開発された直接の契機は、品川インターシティの動きであったことを認めており、その品川インターシティの動きをみると、証拠及び弁論の全趣旨によれば、品川インターシティの設計会社である品川設計室は、平成6年9月ころ、控訴人の「FASU」と被控訴人の VAVを一体化接続することにより品質の向上と施工の合理化を図ることを計画し、これを控訴人及び被控訴人に打診し、そのための実験を推進し、控訴人と被控訴人とは、そのころ、相互に資材を送付し合ったり、情報交換をしたりしていることが認められ、右認定の事実の下では、控訴人は、品川インターシティに設置すべき空調設備についての打診を受けた当時、いまだ控訴人製品についての構想を有しておらず、その後の設計会社等との打ち合せの過程で具体的になっていったものであるということができる。このような事情の下では、当時、控訴人製品についての秘密の技術情報が存在したとも、設計会社を通じて秘密情報が被控訴人に漏泄されたとも認めがたい。
 したがって、控訴人の不法行為に基づく損害賠償請求が、失当であることは明らかである。
四 以上のとおり、控訴人の請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきであり、原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。

〔研  究〕

1. この事件は、「空調ユニットシステム」という名の装置を一つの製品として、原告が被告の行為を不正競争防止法2条1項1号及 び3号に該当する不正競争行為と主張し、被告の前記装置の販売 の差止め及び損害賠償の支払いを請求した事案である。
2. 不競法2条1項1号について 
2.1 まず原告製品は、建物室内の天井裏内部に設置されるものであるから、建物完成の前後を問わず、通常人目に触れることはない。また、このような製品は、店頭で並べて販売されることもないものであるから、取引の実情からすると、被告製品から原告製品と出所等の混同を招く事態を想定することはできない、と地裁判決は説示している。
 このような原告製品の事情を総合考慮して、原告が製品形態には原告商品を表示識別する機能はないし、その形態上の特徴が需要者間に周知であると解することもできないと判断したし、また原告・被告製品の取引の実情からすると、被告製品は原告製品と出所の混同を招く事態は考えられないと地裁は判断した。
 これに対し高裁は、その結論に変わりはないが、原告の製品形態についての商品表示性を否認する理由として、原告製品の形態を構成する部品の形態はすべてありふれたものであるばかりでなく、製品全体としての形態も、通常予想される形態選択の範囲を全く出ていない特徴的なものではないことを挙げている。そして、チャンバーの形態が直方体ではなく、円盤形や五角形であれば特徴的なものとして商品表示性が認められる可能性はあるとまで付言している。
 また、同判決は、不競法はその目的として当事者間の公正な競争を確保することとしていることは、仮に格別な特徴がなく商品表示性のない商品形態でも、一度周知性を獲得した場合は、当該商品形態の独占実施を継続できることが保証されかねないから、不競法の目的に反することになると説示する。これは、原告が、自らの営業努力によってこの種商品についての独占的販売状況が形成され、その形態が全国的に周知になっていると主張したことに対して答えたものであった。
2.2 地裁判決においては、原告製品は技術的機能に支配された形態から成るものであるから、商品表示性を有する形態とはいえないと考えたのに対し、高裁は原告製品自体の形態を見て特徴的な形状であるとはいえないから、商品表示性を有する形態とはいえないと認定した。ということは、真っ向から技術的機能による形態の除外を考えていないところに高裁判決の特徴があるといえよう。
しかし、この2つの判決の考え方の違いは、見方の違いに過ぎない。地裁は、原告製品の形態に表現されている当該製品の技術的側面を見ているし、高裁は、原告商品の形態に表現されている外観的側面を見て、その外観の特徴の無さを見ている。そして、後者の場合、原告製品が販売された時点を基準として新規性(客観的創作性)の存在を見い出そうとしても見い出せないことが特徴の無いことと言い換えているのであり、そのような形態では自他商品の識別力を発揮することができないから、商品表示性の存在を否定することになったのである。
3. 不競法2条1項3号について
3.1 原告が保護を求めた商品形態は、最初に販売した「FASU」の改良品であったところ、高裁は、「最初に販売された日」の対象となる「他人の商品」とは、「FASU」であって、それを改良した後続商品ではないところ、前者は平成4年3月に最初に販売された日から3年を経過しているから、原告が原告製品に固有の形態として保護を求め得る改良品は、「FASU」の形態と共通する部分を除外した部分でしかないと判示した。ちなみに、改良された原告製品は平成9年8月以降に販売されたものであった。
 高裁のこの考え方は、一製品を構成する各部分形態を、その全体形態から分離して考察することを許している。しかし、不競法2条1項3号の適用において、製品上の部分形態の模倣を認めるこ とは、最初販売から3年経過したその他の部分形態と合わせた全体形態を保護することと、結果的に変わりがないことになる。したがって、3年経過部分の形態だけを製品全体から物理的に分離除外して、残存部分の形態だけを被告製品の形態と対比するという考え方はおかしいし、無意味である。
 後続商品に特徴的な部分形態が認められ、その部分形態を被告が模倣しているときは、たとえその他の部分形態が最初販売から3年以上経過した古い形態であったとしても、被告は全体としては新旧形態を問わず製品形態の全体を模倣しているということができる。
 なお、長方形態に成るチャンバーが「FASU」に比して若干縦長に成ることはありふれているし、VAVとCAVの形状も特異なものでなくこれを「FASU」に接続した形態も必然的な形態であるから、いずれも「当該他人の商品と同種の商品が通常有する形態」に当たると認定したことはややわかりにくいが、高裁が考えていることは、当該物品がその用途と機能上、基本的に固有すべき形態ないし周知の形態と把握したものが、通常有する形態ということになるのであろう。
4. 原告は控訴審において、共同不法行為に基く損害賠償の請求を追加している。すなわち、原告は、某空調設備会社が原告から開示された秘密情報の原告製品の技術情報を被告に漏洩し、被告はこの情報に基いて、原告製品どおりの被告製品を製造したということである。
 しかし、高裁は、そのような事実を裏付ける証拠はないとして、原告の追加主張を失当と認定したが、妥当である。

[牛木理一]