C1-16

 

 

「モデルガン」商品形態・差止等請求事件:東京地裁平成10年(ワ)23337号平成12年6月29日判決(棄却)

〔キーワード〕 
実銃と玩具銃、商品形態、出所表示機能、商品識別機能、混同

 

〔判示・認定事項〕 

  1. 不正競争防止法2条1項1号は、「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を不正競争と規定しているが、同号の趣旨は、人の業務に係る商品の表示について、同表示の持つ標識としての機能、すなわち、商品の出所を表示し、自他商品を識別し、その品質を保証する機能及びその顧客吸引力を保護し、もって事業者間の公正な競争を確保するところにある。そうであればこそ、同号は、他人の周知の商品等表示と同一若しくは類似の「商品等表示」を使用する行為を不正競争行為としている。すなわち、同号の不正競争行為というためには、単に他人の周知の商品等表示と同一又は類似の表示を商品に付しているというだけでは足りず、それが商品の出所を表示し、自他商品を識別する機能を果たす態様で用いられていることを要するというべきである。けだし、そのような態様で用いられていない表示によっては、周知商品等表示の出所表示機能、自他商品識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を害することにはならないからである。
  2. 本件においては、被告商品は、我が国においては、市場において流通することがなく、所持することも一般に禁じられている実銃であるM93Rを対象に、その外観を忠実に再現したモデルガンであり、実銃の備える本質的機能である殺傷能力を有するものではなく、実銃とは別個の市場において、あくまで実銃とは区別された模造品として取引されているものであって、その取引者・需要者は、原告実銃の形状及びそれに付された表示と同一の形状・表示を有する多数のモデルガンの中から、その本体やパッケージ等に付された当該モデルガンの製造者を示す表示等によって各商品を識別し、そのモデルガンとしての性能や品質について評価した上で、これを選択し、購入しているものと認められる。したがって、原告実銃において原告商品形態が原告ベレッタの商品であることを示す表示として使用されており、また、被告商品が原告商品形態と同一の商品形態を有しているとしても、被告商品形態は、出所表示機能、自他商品識別機能を有する態様で使用されているものではないというべきである。
  3. 被告商品のパッケージ等に被告商品の外観を示す写真や図面、その商品名を示す表示が付されていても、それは、当該モデルガンがどの実銃を対象とし、どのような外観を有するのかという当該モデルガンの内容を説明するために使用されているにすぎず、右パッケージ等に表示された被告商品形態は、出所表示機能、自他商品識別機能を有する態様で使用されているものではないというべきである。 
  4. 原告ウエスタンアームス自身、原告ベレッタとの間でその商号及び商標等のモデルガンの分野における独占的使用契約を締結する以前から、被告商品と同様、原告実銃の形態やそれに付された表示を再現したモデルガンを製造販売していたことなどを併せみれば、いずれも原告ら主張のような慣行が確立していたことを認めるに足りるものではない。したがって、被告商品に被告商品形態を用いること等が「商品等表示」としての「使用」に当たるということはできない。
  5. 商品の形態は、本来、商品の機能ないし美観を高め、あるいは商品を効率的に生産するといった観点から選択されるものであり、商品の出所を表示することを目的とするものではないが、一定の特徴的な形態がある商品のみに排他的に長期間継続して使用された結果、あるいは商品の特徴的形態に着目した大規模な宣伝広告等により、一般消費者に、一定の特徴的形態がある商品と結びつけて記憶されるようになったような場合には、商品の形態が二次的に、自他商品の識別機能を有するに至ることがある。
     しかし、そのような場合であっても、当該形態は具体的な商品の形態として需要者に記憶されるものであるから、右形態が当該商品の分野を超えて他の種類の商品の分野にまで出所表示機能を獲得することは、一般的には困難であり、商品の形態を商品等表示として、広義の混同を生じることは、極めて例外的な場合に限られるというべきである。

 

〔事  実〕

 

1. 原告(ファブリカ・ダミル・ピエトロ・ベレッタ・SPA、以下、「原告ベレッタ」という。)は、イタリア国に本拠をおく銃器メーカーで、原告商品形態を有する「M93R」という名称の実銃を製造・販売している。
原告(株式会社WA、以下「原告ウエスタンアームス」という。)は、玩具銃の製造・販売業者である。
被告(有限会社M)は、玩具銃の製造・販売業者であり、その製造に係る玩具銃を、すべて被告(有限会社M商店)に売り渡している。被告M商店は、これを国内で販売している。
2. 被告らは、平成2年12月頃から、「ベレッタM93R」という商 品名の玩具銃(ガス式エアガン)を製造又は販売し、そのパッケージ、広告、商品カタログ及び取扱説明書(以下、「パッケージ等」という。)に被告商品の商品形態を表示し、これらを譲渡し、引き渡していた。

〔争  点〕

1. 被告商品が、原告ら主張に係る被告商品形態を有するかどうか。
2. 原告ベレッタとの関係における不正競争の成否(不競法2条1項1号)
3. 原告ウエスタンアームスとの関係における不正競争の成否(不競法2条1項1号)
4. 原告らの差止請求権の有無
5. 原告らの損害賠償請求権の有無及び原告らが請求し得る損害額
6. 権利濫用の成否

 

〔判  断〕

 

一 争点2(原告ベレッタとの関係における不正競争の成否)について
1.〈証拠〉並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
 (一) 我が国においては、実銃の所持が一部の例外を除いて禁止されており、M93Rは、一般に流通することがなく、所持することもできないものである。
 (二) モデルガンは、実銃の外観に似せて作られた、実銃としての機能を有しない玩具であり、我が国では、昭和30年代後半ころから販売が開始された。当初はほとんどが金属製であったが、
次第にプラスチック製のものも製造・販売されるようになり、さらには、単に実銃の外観を模しただけでなく、空気やガスの圧力によって実際にプラスチック製の弾丸を発射できる機能が付加されたもの(従前の外観を模しただけのモデルガンと区別する意味で、「エアーソフトガン」、「エアースポーツガン」などと称されている。)なども製造・販売されるようになった。
 我が国においては、原告ウエスタンアームス及び被告らを始め、イマイ、MGC、ガレージガンワークス、グンゼ産業、KSC、啓平社、コクサイ、サンエイ、サン・プロジェクト、鈴木製作所、タニオ・コバ、タイトー、タナカ、デジコン、東京CMC、東京マルイ、ハドソン産業、ファルコントーイ、フジミ模型、マルシン工業、などの多数の玩具銃メーカーが存在し、各玩具銃メーカーが各実銃メーカーの製造・販売に係る各種実銃をモデルとして各種各様のモデルガンをそれぞれ製造・販売している。
 (三) これらのモデルガンは、いずれも現実に存在する実銃を基に、これを実物大で、その形態や実銃本体に刻印された表示までも忠実に再現したものである。ただし、同じ実銃をモデルにしたものであっても、材質や重量、リアルさの程度、射弾性能(エアソフトガンの場合)、玩具としての対象年齢等において種々の違いがあり、それに応じて販売価格も様々である。最近では、射弾動作のメカニズムまで含めて、そのリアルさが競われている。
モデルガンの商品名については、ほとんどの場合、商品名の全部又は一部に基になった実銃の名称やその製造者名が用いられており、それによってモデルとされた実銃が特定されている。そのため、メーカーは異なるが商品名は同じというものも数多く存在する。
モデルガンは、実銃の外観を忠実に再現するという性質上、その本体に当該モデルガンを製造したメーカーを示す表示が付されていることは少ない。しかし、モデルガン本体にメーカーを示す表示が併せて付されているものもあり、また、モデルガン本体にメーカーを示す表示がなくても、そのパッケージ等には必ず基になった実銃を特定する表示とともに当該モデルガンを製造したメーカーを示す表示が付されている。
 (四) 月刊GUN、月刊コンバットマガジン、月刊アームズマガジンなどの銃関係の専門雑誌には、原告実銃を始めとする実銃や射撃に関する記事、写真のほか、モデルガンの紹介記事や宣伝広告が当該モデルガンの写真と共に掲載されているが、モデルガンに関する記事や広告においては、まずそのモデルガンを製造したメーカー名のほか、それがどの実銃をモデルにしたものかがモデルガンの商品名や当該実銃自体の名称をもって明確に示された上、当該実銃の外観や質感、射弾動作メカニズムがいかにリアルに再現されているかという点や、装弾数、命中精度等の射弾性能の点が主に記述されている。我が国で製造販売されているモデルガンについての情報を一覧できるような形で編集したカタログも出版されているが、これにも当該モデルガンを製造したメーカー名、商品名等が掲載されている。
 (五) 原告実銃をモデルとしてその外観を実物大で模した玩具銃についても、原告ウエスタンアームスを始め、多数の玩具銃メーカーによってかなり以前から製造販売されている。これらのモデルガンの多くは、他のモデルガンと同様、基になった原告実銃の形態や実銃本体に刻印された表示までもが忠実に再現されており、それ自体日本製でありながら、原告実銃と同様に「MADE IN ITALY」という記載もされている。
 (六) 被告商品は、原告実銃であるM93Rの外観を模したガス式エアガンであり、その商品名は、基となった実銃の名称及びその製造者たる原告ベレッタの名称に由来する。そして、ガス式エアガンとしての機能上必要な部分を除き、M93Rとほぼ同一の形状、色合いを有するとともに、M93Rに付されている表示と同一の表示がM93Rにおけるのと同様の位置に付されており、スライド側面の「PIETRO BERETTA」、「P.B.-MOD.93R」、「GARDONE V. T. CAL.9 Parabellum」という表示や、フレーム側面に付された製造番号と思われるアルファベットと数字からなる7桁の番号までもが、忠実に再現されている。もっとも、スライド側面にはM93Rと異なり「MADE IN JAPAN」の表示があり、フレーム側面には製造者を示す「MARUZEN」の表示もされている。
被告商品のパッケージ及び使用説明書には、被告商品の外観を示す写真や図面、その商品名を示す「Beretta」及び「M93R」(被告商品一及び五)の表示が随所に付されているが、それとともに、被告商品がガス式エアガンであることやその対象年齢が18歳以上であること、ガス式エアガンとしての機能・性能・使用方法の説明、製造者を示す「MARUZEN」ないし「マルゼ ン」の表示等も、併せて記載されている。
 (七) 原告ウエスタンアームスは、被告商品と同様、原告実銃をモデルとしてその外観を実物大で模し、原告実銃の形態や実銃本体に刻印された表示までがリアルに再現された玩具銃を製造販売していたところ、平成9年6月、原告ベレッタとの間で、原告ウエスタンアームスがモデルガンの分野において原告ベレッタの商号及び商標等を独占的に使用できる旨の契約を締結した。そして、それ以降、自らの製造販売に係る原告実銃の外観を模した玩具を「パーフェクトバージョン」などと称し、「ピエトロ・ベレッタとの正式契約を得て生まれ変わったM92FS」、「完全進化パーフェクト・ベレッタ誕生!」、「本物の証、P.BERETTA の刻印が冴える!」、「『世界のベレッタ』とのジョイントが実現したリアルな刻印」などと広告宣伝して、これを製造販売しているが、そのパッケージ等においては、従前と同様、それが玩具銃であることやその対象年齢、玩具銃としての機能・性能、使用方法の説明、製造者を示す「WESTERN ARMS」や「MADE IN JAPAN」の表示等も、併せて記載されている。
 (八) 原告ベレッタは、これまで玩具銃を製造・販売したことはなく、現在も製造・販売していない。もっとも、原告ベレッタは、平成5年及び平成6年に、実銃から発砲機能、稼働機構を除去した模型銃を製造し、我が国において輸入販売したことがあるが、右模型銃は、あくまでも観賞用に商品化されたものであり、その価格は約30万円に上り、実銃そのものを利用するというその製造過程に照らしても、実銃の外観に似せて作られた玩具銃とは性質を異にするものであって、その輸入数量も平成5年51丁、平成6年84丁と僅少である。
また、原告ベレッタは、実銃のほか、ガンケース、ナイフ、狩猟用のコートやベスト、シャツ及び帽子、射撃競技用のベストや靴、色メガネ、シャツ、帽子及びバッグ、並びに実銃のケア用品等の商品につき、「Beretta」等の表示を付してこれを販売しており、これらの商品は、我が国にも輸入されているが、いずれも実銃の関連商品としてのいわゆるシューティング・アクセサリーの類であり、主に実銃所持者を販売対象とするものであって、その販売数量も多くない。
2(一) 右認定の事実を前提に、まず、被告商品に被告商品形態を用いること等は、「商品等表示」としての「使用」に当たるかどうかについて検討する。
 (二) 不正競争防止法2条1項1号は、「他人の商品等表示・・・・・・として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を不正競争と規定しているが、同号の趣旨は、人の業務に係る商品の表示について、同表示の持つ標識としての機能、すなわち、商品の出所を表示し、自他商品を識別し、その品質を保証する機能及びその顧客吸引力を保護し、もって事業者間の公正な競争を確保するところにある。そうであればこそ、同号は、他人の周知の商品等表示と同一若しくは類似の「商品等表示」を使用する行為を不正競争行為としている。すなわち、同号の不正競争行為というためには、単に他人の周知の商品等表示と同一又は類似の表示を商品に付しているというだけでは足りず、それが商品の出所を表示し、自他商品を識別する機能を果たす態様で用いられていることを要するというべきである。けだし、そのような態様で用いられていない表示によっては、周知商品等表示の出所表示機能、自他商品識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を害することにはならないからである。このことは、同法11条1項1号において、商品の普通名称又は同一若しくは類似の商品について慣用されている商品等表示を普通に用いられる方法で使用する行為については、同法2条1項1号所定の不正競争行為として同法の規定を適用することが除 外されていることからも、明らかというべきである。
 (三) 一般に、模型は、一定の対象物(例えば、自動車、航空機、船舶、建築物、兵器等)について、本物の備えている本質的機能(例えば、自動車、航空機、船舶等にあっては運送能力、建築物にあっては住居可能性、兵器にあっては殺傷能力)を有さず、単に、その外観を縮尺ないし原寸で模すものである。模型は、本物の外観を忠実に模すところに有意性が存するものであり、外観上本物にどれだけ近づくことができたかによって、模型自体やその製作者の技術に対する評価が下されることから、模型の製作に当たっては、本物の形状のみならず、色合いや質感、それに付されている模様やマークに至るまで、精巧かつ緻密に再現することが行われている(この点は、図鑑や写真集の場合と同様である。)。また、同一の対象物について、複数の異なる製作者により、いくつかの模型が製作されることも、当然に生じる。
このような模型は、古代における墳墓の副葬品に既にその原型が見られるように、古くから人類によって製作されてきたものであり、模型の有する右のような特徴は、長年にわたって広く社会的に認識されてきた。また、本物の備える機能を有さず、外観のみを忠実に模したものであるという模型の本質的特徴から、一般に、模型の需要者は本物のそれとは異なるものであり、模型の製造販売の主体も、本物のそれとは異なるのが通常であ
る。
そして、模型の形状や模型に付された表示が本物のそれと同一であったとしても、模型の当該形状や表示は、模型としての性質上必然的に備えるべきものであって、これが商品としての模型自体の出所を表示するものでないことは、広く社会的に承認されているものである。右の点は、模型が、航空機や建築物のプラモデルやミニチュアカーのように縮尺されたものであるか、あるいはモデルガンのように原寸大のものであるかによって、何ら異なるものではない。
 (四) 本件においては、前記認定の事実関係によれば、被告商品は、我が国においては、市場において流通することがなく、所持することも一般に禁じられている実銃であるM93Rを対象に、その外観を忠実に再現したモデルガンであり、実銃の備える本質的機能である殺傷能力を有するものではなく、実銃とは別個の市場において、あくまで実銃とは区別された模造品として取引されているものであって、その取引者・需要者は、原告実銃の形状及びそれに付された表示と同一の形状・表示を有する多数のモデルガンの中から、その本体やパッケージ等に付された当該モデルガンの製造者を示す表示等によって各商品を識別し、そのモデルガンとしての性能や品質について評価した上で、これを選択し、購入しているものと認められる。したがって、原告実銃において原告商品形態が、原告ベレッタの商品であることを示す表示として使用されており、また、被告商品が原告商品形態と同一の商品形態を有しているとしても、被告商品形態は、出所表示機能、自他商品識別機能を有する態様で使用されているものではないというべきである。
また、前記認定の事実関係によれば、被告商品のパッケージ等に被告商品の外観を示す写真や図面、その商品名を示す表示が付されていても、それは、当該モデルガンがどの実銃を対象とし、どのような外観を有するのかという当該モデルガンの内容を説明するために使用されているにすぎず、右パッケージ等に表示された被告商品形態は、出所表示機能、自他商品識別機能を有する態様で使用されているものではないというべきである。
 (五) 原告らは、昭和41年には田宮模型が本田技研から許諾を得てその自動車の模型を製造・販売していたことを例に挙げ、玩具の商品分野において、実物を模した玩具を製造・販売する際、実物の形態やそれに付された表示の使用について、実物メーカーの許諾を得る慣行が既に確立していた旨を主張し、その証拠として甲第27号証ないし第30号証を提出する。
しかし、甲第30号証によれば、田宮模型がグッドイヤー社製のタイヤを装着したF1カーを模型化するに当たり、グッドイヤーの名前の入ったミニチュアタイヤを装着することについて、初めて事前にグッドイヤー社に対してその承諾を求めたことがうかがえるが、他方、同号証には、田宮模型の担当者が本田技研に対してF1カーの模型化のための協力を依頼した結果、車の写真を撮影したり、本田技研の技術者から説明を受けるなどの取材が行われた旨の記載や、田宮模型の担当者がポルシェに対しそのスポーツカーの模型化のための取材を申し込んだ際にも、その車の製造工程を写真に収めるなどしたものの、寸法等のデータを得ることができなかったので、ポルシェのスポーツカーを数千万円で購入し、これを分解して必要なデータを収集した旨なども記載されているものであり、これらの記載に照らせば、むしろ、模型メーカーは実物メーカーに対し、模型化に必要な資料収集についての協力を求めていたにすぎないものと認められ、同号証は、原告ら主張のような慣行があったことを認めるに足りるものではない。
また、甲第27号証は、玩具とは全く関係のない分野で使われている有名ブランドを玩具のブランドとして使うことについての記載であって、模型に実物の形態やそれに付された表示を使用する場合を想定したものではないし、甲第28号証は、これに記載された当事者間の一つの合意を示したにすぎず、甲第29号証も、商品化許諾基本契約についての契約書ひな形にすぎない。前記認定のとおり、原告ウエスタンアームス自身、原告ベレッタとの間でその商号及び商標等のモデルガンの分野における独占的使用契約を締結する以前から、被告商品と同様、原告実銃の形態やそれに付された表示を再現したモデルガンを製造販売していたことなどを併せみれば、いずれも原告ら主張のような慣行が確立していたことを認めるに足りるものではない。
したがって、甲第27号証ないし第30号証によっても、原告らの主張するような慣行が確立していると認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 (六) 以上のとおり、被告商品に被告商品形態を用いること等が「商品等表示」としての「使用」に当たるということはできない。
3(一) 前記のとおり、被告商品に被告商品形態を用いること等は、「商品等表示」としての「使用」に当たるとはいえず、不正競争行為に該当しないと解されるが、さらに、被告商品に被告商品形態を用いること等は、原告ベレッタの商品と混同を生じさせるものでもなく、この点からも、不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当しない。
 (二) 商品の形態は、本来、商品の機能ないし美観を高め、あるいは商品を効率的に生産するといった観点から選択されるものであり、商品の出所を表示することを目的とするものではないが、一定の特徴的な形態がある商品のみに排他的に長期間継続して使用された結果、あるいは商品の特徴的形態に着目した大規模な宣伝広告等により、一般消費者に、一定の特徴的形態がある商品と結びつけて記憶されるようになったような場合には、
商品の形態が二次的に、自他商品の識別機能を有するに至ることがある。
しかしながら、そのような場合であっても、当該形態は具体的な商品の形態として需要者に記憶されるものであるから、右形態が当該商品の分野を超えて他の種類の商品の分野にまで出所表示機能を獲得することは、一般的には困難であり、商品の形態を商品等表示として、いわゆる広義の混同を生じることは、極めて例外的な場合に限られるというべきである。
 (三) 前記認定の事実関係、殊に、被告商品が一般に流通することがなく、所持することもできない実銃の外観を再現したモデルガンであり、その基となった実銃とは別個の市場において、あくまで本物と区別された模造品として取引されているものであること、原告ベレッタはこれまで玩具銃を製造・販売したことがないこと、原告ベレッタが我が国において販売した模型銃は、観賞のために実銃から発砲機能、稼働機構を除去した高価なものであり、玩具銃とは性質を異にし、その輸入数量も僅少であること、原告ベレッタが実銃のほかに「Beretta」等の表示を付して販売している商品は、いずれも実銃の関連商品としてのいわゆるシューティング・アクセサリーの類で、主に実銃所持者を販売対象とするものであり、その販売数量も多くないことなどの事実関係に加え、およそ実銃メーカーが玩具銃を製造販売し、玩具銃メーカーが実銃を製造販売していることをうかがわせる証拠はないこと、かつて国外の玩具銃業者が原告ベレッタからライセンスを受けて玩具銃を製造販売したことがあったとしても、その玩具銃が我が国において販売されたことを認めるに足りる証拠はなく、また、そのようなライセンス生産の事実が我が国において一般に知られていることをうかがわせる証拠もないことなどを併せみれば、被告商品及に被告形態が用いられているからといって、その玩具銃が原告ベレッタ若しくはその子会社又はそのライセンシーの製造に係るものであると誤認されるおそれがあるものとは認められず、したがって、広義の混同を生じさせるものではない。
4 したがって、平成2年12月ころ以降、被告商品に被告商品形態を用い、そのパッケージ等に被告商品形態を表示する行為、及びこれらの商品等を譲渡し、引き渡す行為は、いずれも不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するということはできない。
二 以上によれば、原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

〔研  究〕

1. 不競法事件にあっては、実物と玩具との関係は、本物と模倣品との関係とは違う、許るされる市場であることを明示した裁判例である。
 ただ、争点3.については判断を示していないことは、原告ウェスタンアームスの玩具銃と被告の玩具銃との関係について触れていないことになるから、問題が残る、争点2.の判断にすべて含まれていると考えることはできない。
2. 物品の類否問題
 自動車のモデル(模型)は、自動車の概念に含まれる原型であって、玩具の概念に含まれるものではない。
 機械でも建築物でも、それらは大型であるため、一般需要者に対し、新規なデザインを紹介したり、説明したりするときには、モデルが製作されるものである。本物に対して小型化されるモデル(模型)には、その小ささは関係ない。一般需要者が目で見ることができる大きさであれば十分である。
 したがって、ミニチュアはモデルの一種であり、自動車の概念に含まれるものとして、同一の意匠と判断すべきであると思う。モデルガンについても同じ考え方が適用できる。
3. 有名周知のガンのデザインの利用と名前の使用に対しては、原告のガンが有するパブリシティ・バリュウに対する侵害といえるから、民法709条の不法行為の成立が考えられるのではなかろう か。そして、このような本物のガンとモデルガンとの間には、拡大された混同の概念の導入も可能であろう(不競法2条1項2号参 照)。

[牛木理一]