C1-15

 

「リーバイス・ジーンズ・バックポケット・ステッチ標章」商品形態・差止等請求事件:東京地裁平成8年(ワ)12929号平成12年6月28日判決(一部認容)

〔キーワード〕 
標章の類似、誤認混同、標章の使用、商標の類似

 

〔判示・認定事項〕 

  1. 〔不正競争防止法に基づく請求〕
    原告標章一,二と被告標章一,二とを対比すると、両標章は類似すると判断され、さらに原告標章一,二は、原告の商品又は営業を表示するものとして相当程度広く認識されていること、原告標章一,二と被告標章一,二とは重大な点において多く共通し、類似性が強いことが認められる事実に照らすと、需要者が、原告と被告の間で商品又は営業を誤認混同したり、被告標章一,二が付された商品を製造販売する者が原告と何らかの資本関係、提携関係等を有するのではないかと誤認混同するおそれがあると認定した。
  2. 原告標章三,四と被告商標五とについては、原告標章三の「501」は原告の商品又は営業表示として永年使用により需要者間に広く認識され、周知となっているものと認められるし、特別な識別力を生じているものと解することができるが、独占的使用を許すべき類似の範囲は厳格に解されるべきであるから、被告標章五「505」とは類似しないと判断した。
  3. 原告標章五と被告標章一,三のタブ部分、被告標章六,七及び一〇とを対比し、原告標章五は赤色のタブであるが、原告のみが赤色ないしオレンジ色のタブを使用してきたという事実はないから、この色彩上の特徴によって原告等表示が著名ないし周知になったということはできないと認定した。
  4. 商標法2条3項1号は、標章の使用を「商品又は商品の包装に標章を付する行為」としているが、被告は被告商品のバックポケット上にステッチにより被告標章一ないし四を付しているのだから、商品又は出所を表示する機能を果たしていないというような特段の事情がない限り、被告は同標章を商標として使用しているといえるから、本件においては、特段の事情の存在は窺われないと認定した。
  5. 〔商標法に基づく請求〕
    商標法上の商標の類似性についても、前記不正競争防止法における判断と同様に、原告商標一,二と被告標章一,二は類似するが、他方、原告商標一,二と被告標章三,四、原告商標三と被告標章五、原告商標四と被告標章六,七,一〇、原告商標六と被告標章八,九は、いずれも類似しないと判断された。

 

〔事  実〕

 

1. 当事者
 原告(リーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー)は、ジーンズ等の衣料品の製造販売等を業とする米国法人である。被告は(株式会社エドウィン商事)、ジーンズ等の被服の製造販売を業とする日本法人である。
2. 原告の標章
 原告は、原告の製造販売するジーンズ(以下「原告商品」という。)に関して、別紙原告標章目録記載の各標章(以下順に「原告標章一ないし六」という。)を以下のとおり使用している。
原告は、原告商品のバックポケット部分に、ステッチ(刺繍,針目の意味で用いる。)によって原告標章一及び二を付し、また、これを宣伝広告に使用している。
原告は、原告商品のうち、品番「501」及び「505」の各商品のパッチ(つぎ布、あて布の意で用いる。)及びラベル部分に、それぞれ原告標章三及び四を付して販売し、宣伝広告に使用している。
原告は、原告商品のバックポケットの横部分に、原告標章五−一ないし五−四のタブを付して、販売し、宣伝広告に使用している。
原告は、原告標章六を、原告商品の包装、ラベル、店内広告等に使用している。
3. 原告の商標権
 原告は、次の各商標権(以下、それぞれ「原告商標権一ないし六」といい、その登録商標を「原告商標一ないし六」という。)を有する。

 1.登録第2205094号(原告商標目録(一))昭和55年9月30日出願平成2年1月30日登録(更新済)第17類 被服,他
 2.登録第2006244号(原告商標目録(二))昭和46年2月24日出願
昭和62年12月18日登録(更新済)
 3.登録第2624101号(原告商標目録(三))昭和59年9月26日出願
平成6年2月28日登録
 4.登録第685090号(原告商標目録(四))昭和39年1月9日出願昭和40年9月4日登録(更新済)
 5.登録第1222156号(原告商標目録(五))昭和46年7月29日出願
昭和51年9月27日登録(更新済)
 6.登録第1597419号(原告商標目録(六))昭和54年5月8日出願
昭和58年6月30日登録(更新済)

4. 被告標章の使用
 被告は、被告の製造販売するジーンズ(以下、「被告商品」という。)に関し、別紙被告標章目録記載の各標章(以下順に「被告標章一ないし一〇」という。)を、以下のとおりの態様で使用している。
被告は、昭和59年から被告標章一、二(ステッチ)を、平成6年から被告標章三、四(ステッチ)を、いずれもジーンズのバックポケット部分に付した「サムシング」と呼ばれるジーンズを製造販売している。
被告は、平成6年から、被告標章五(505)を付した被告商品を製造販売し、また宣伝広告に使用している。
被告は、昭和39年から被告標章六(タブ)を、平成6年から被告標章七(タブ)を、いずれも被告商品のバックポケットの横部分に付している。
被告は、平成6年から被告標章八の二ないし四(ロゴ)を、平成7年から被告標章九(ロゴ)を、被告商品についての宣伝広告、売場ディスプレイ等に使用している。なお、被告は、被告標章八の一を使用したことはない。
被告は、被告標章一〇(タブ)を被告商品のバックポケットの横部分に付している。

 

〔判  断〕

 

〔不正競争防止法に基づく請求〕
一 争点1(原告標章一、二と被告標章一ないし四)について
1.商品等表示性、著名性、周知性について 
 (一) 証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
1. 原告は、1971年(昭和46年)以降、雑誌、カタログにおいて、原告標章一及び二を強調する宣伝広告を継続的に実施していた。右各標章を紹介した代表的な雑誌、カタログ、パンフレット等に、以下のものがある。(略)
2. 1979年(昭和54年)から1993年(平成5年)にかけて、原告標章一、二を強調したテレビコマーシャルが全国的に放映され、右標章を宣伝する屋外広告も設置されたことがある(証拠)。
3. 各種調査においても、原告標章一、二は、需要者の間において、強い出所表示機能を有しているとの結果を示している。すなわち、1.過去6か月間にジーンズを購入した者を対象とした査で原告標章二を示されて、出所をリーバイスと正しく答えた者の割合は、15歳から29歳までの層で46%であり、右層を含む15歳から69歳までの全年齢層で31%であった(証拠)、2.年齢15歳から34歳までの男女で、過去1年以内に、いずれかのブランドのジーンズを自分で購入(購入してもらった者も含む。)した者で、その出所を明確に答えられた者を対象にした調査では、原告標章二を確かに見た、見たような気がする者の割合は86%であり、そのうち、37%が出所をリーバイスと正しく答えた(証拠)、3.ジーンズメーカー、アパレルメーカーに本人、家族が勤務している者等を除いた一般消費者を対象とした調査で、原告標章二のみを示されてリーバイスと正しくブランド名を答えた者の割合が、18.3%に上る(証拠)という結果を示している。
 以上、認定した事実によれば、原告標章一、二は、原告の商品又は営業表示として需要者に広く認識され、周知となっているものと認められる。なお、右原告標章が、原告の商品又は営業表示として、著名であるとまでは認めることができない。
 (二) これに対し、被告は、以下の点を挙げて、原告標章一、二は、原告の商品等表示として周知性はないと主張する。すなわち、1.右原告標章は、バックポケットの刺繍のデザインにすぎない、2.原告標章の使用形態は、原告標章の特徴を強調するものではない、3.原告がバックポケットに付したステッチの形態には統一性がない、4.第三者が、原告標章に類似するステッチを使用しているなどの点を主張する。
 しかし、1.、2.については、前記認定のとおり、原告は、右原告標章の特徴を際だたせた宣伝広告等を長期間にわたって継続してきたことが明らかであり、3.については、確かに、原告が使用してきたステッチの形状に多少の変遷はあるが、極く僅かな変更にすぎないので、いずれも、前記の結論を左右するものではなく、被告の主張は採用できない。
4.については、被告が被告標章一、二を1984年(昭和59年)から、被告標章三、四を1994年(平成6年)から使用を開始し(当事者間に争いがない。)、また、第三者が1988年(昭和63年)以降、原告標章に近い形状のステッチを使用したことが窺われる(証拠)。しかし、原告は、右いずれの時期よりはるか前から、原告標章一、二に関する大量の宣伝広告を実施し、その結果、強い出所表示機能を有していることは前記のとおりであること、右第三者が販売した商品に関する宣伝広告や販売の規模、周知性の程度は明らかでないこと、原告は、右原告標章に類似すると判断した第三者の商品については、発見する度ごとに、その販売を中止させる努力をしてきたこと(証拠)等の事実に照らすならば、第三者が原告標章に類似するステッチを使用していたことは、前記の結論を左右することにならない。
2. 類似性
 (一) 原告標章一、二と被告標章一、二を対比する。
 原告標章一、二と被告標章一、二とは、以下の点が共通する。すなわち、1.ジーンズのバックポケットに付されたステッチであること、2.左右二つのアーチからなること、3.左右二つのアーチは線対称であること、4.それぞれのアーチは、ほぼ平行な2本の曲線からなること、5.2本の曲線は、両端部分から中央部分に向かって、円弧を描くようにして次第に下降し、中心部で交差していること等の点で共通する。右の共通点に照らすならば、両標章は、類似しているということができる。
 これに対し、被告は、原告標章一、二と被告標章一、二とは、1.原告標章は、被告標章と比べて、両端部分と中央部分との高低差が大きいこと、2.原告標章は、2本の曲線が中央部で互いに交差し、中央部にひし形の図形を形成しているのに対し、被告標章は、そのような図形がない等の点で相違する旨主張する。しかし、1.、2.いずれの相異も僅かな点にすぎず、前記の多くの共通点に照らして、前記結論を左右するものとはいえない。
 (二) 原告標章一、二と被告標章三、四を対比する。
 原告標章一、二と被告標章三、四とは、以下の点が共通する。すなわち、1.ジーンズのバックポケットに付されたステッチであること、2.左右二つのアーチからなること、3.それぞれのアーチは2本の曲線からなること、4.2本の曲線は、両端部分から中央部分に向かって、円弧を描くようにして次第に下降し、中心部で交差していること等の点で共通する。他方、両者は、以下の点で相違する。すなわち、1.原告標章は、2本の曲線が平行であるのに対し、被告標章は、両端部と中央部とでは、2本の曲線の距離が異なり、平行でない、2.原告標章は 、左右二つのアーチが線対称であるのに対し、被告標章は、左右二つのアーチが線対称でない、3.原告標章は、バックポケットの両端部分からステッチの中央部にかけてほぼ下向きの曲線で構成されているのに対し、被告標章は、二つのアーチの一方が、端部から中央部へ上方へ進んだ後、下方に進むという弓形曲線で構成されている点で大きく相違する。
 右のとおり、両者は、共通している点もあるが、重大な点において相違していることに照らすと、両者は全体として類似しないというべきである。
3. 混 同
 前記1、2のとおり、原告標章一、二は、原告の商品又は営業を表示するものとして相当程度広く認識されていること、右原告標章と被告標章一、二とは、重大な点において多く共通し、類似性が強いことが認められ、前記の認定事実に照らすならば、需要者が、原告と被告の間で、商品又は営業を誤認混同したり、少なくとも被告標章一、二が付された商品を製造販売する者が原告と何らかの資本関係、提携関係等を有するのではないかと誤認混同するおそれがあると認められる。
 これに対し、被告は、ジーンズの一般の販売形態、被告がある程度の期間被告標章一、二を使用していること等から混同のおそれはない旨主張するが、原告標章一、二を強調して展開した原告の宣伝広告活動等の状況に照らすならば、被告の主張する事情を考慮に入れてもなお、前記の結論を左右するものとはいえない。
4. 結 論
 以上のとおり、原告の申請中、不正競争防止法に基づき、被告標章一、二の使用の差止めを求める部分は理由があるが、被告標章三、四の使用の差止めを求める部分は理由がない。
二 争点2(原告標章三、四と被告標章五)について
1.原告標章三について 
 (一) まず、商品等表示性、著名性、周知性を判断する。
証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
1. 原告は、1975年以降継続的に、雑誌、カタログ等において、原告標章三を、単なる商品の管理番号としてではなく、「ジーンズのオリジナル」、「リーバイス製品の代表」という商品の位置付けを強調する宣伝広告を実施した。また、雑誌等においても、そのような紹介がされてきた。そのような紹介が掲載された雑誌、パンフレット等に以下のものがある。(略)
2. 調査においても、原告標章三は、需要者の間において、出所表示機能を有しているとの結果を示している。すなわち、ジーンズメーカー、アパレルメーカーに本人、家族が勤務している者等を除いた一般消費者を対象とした調査で、原告標章三を示されて、出所をリーバイスと答えた者の割合が、16.6%であった(証拠)。
 以上認定した事実によれば、原告標章三は、原告の商品又は営業表示として需要者に広く認識されており、周知となっているものと認められる。なお、右原告標章が、原告の商品又は営業を表示するものとして著名であるとまでは認めることはできない。
 (二) そこで、進んで、両標章の類否について判断する。
 前記のとおり、原告が原告標章三を永年使用することによって、「501」という数字から構成される右標章は、原告の商品又は営業を示すものとして、特別な識別力が生じたものと解することができる。他方、商取引において、特定の数字を特定人の独占的使用にゆだねることに弊害があることは容易に推測できるところである。したがって、数字で構成される標章について、特別な識別力が生じたとしても、その独占的使用を許すべき類似の範囲は、厳格に解すべきであって、同一又は実質的に同一といえる範囲に限られるものと解するのが相当である。このような観点から、原告標章三「501」と被告標章五「505」を対比すると、その外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しないので、両標章は非類似である。原告は、上二桁が共通するから両標章は類似する旨主張するが、右主張は採用の限りでない。
2. 原告標章四について
 本件全証拠によっても、原告が、「505」という数字から構成される原告標章四について、一般の製品番号とは異なり、特定の商品又は出所を示すものとして、継続的な宣伝広告をした等の事実を認めることはできない。したがって、原告標章四は、原告の商品又は営業を示す機能を有しない。したがって、原告標章四について、商品等表示性を獲得したことを前提とする原告の主張は採用できない。
3. 結 論 
 以上のとおり、不正競争防止法に基づき、被告標章五の使用の差止めを求める部分は理由がない。
三 争点3(原告標章五と被告標章一、三のタブ部分、被告標章六、七及び一〇)について1.商品表示性、著名性、周知性について原告標章五のうち、赤色ないしオレンジ色の色彩部分(換言すれば、原告標章五の一及び同五の二ないし四のうち文字部分を除いた部分)が、原告の商品等表示として著名ないし周知であるか否かについて判断する。
証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
 (一) 原告は、昭和47年ころまでに、バックポケットの横上部に赤色のタブを付けて、原告商品を販売し、また、赤色のタブに関連した宣伝広告を実施した。また、以下の雑誌等にも、赤色のタブを取り上げたものが現れるようになった。1.1972年(昭和45年)「日本繊維新聞」5月31日付、2.1981年(同56年)「リーバイスブルージーンズの伝説」、3.1991年(平成3年)「ホットドッグプレス」10月号、4.1992年(同4年)「チェックメイト」5月号、「ブーン」9月号
 (二) 一方、原告は、原告標章五−二ないし四(いずれも原告の通称が表示されている。)について、多数の宣伝広告をしているが、他の色彩である赤色、オレンジ色を原告商品に対応させるものとして強調したものではなかった。また、赤色のタブは、1960年(昭和35年)ころから、原告以外の商品、すなわち、被告、ビッグジョン、ボブソン及びラングラー等のジーンズ商品において、多数使用されていた。
 以上認定した事実、原告が、タブの色彩を原告の商品等表示として強調するような宣伝広告を格別実施していたものでないこと、被告及び第三者が1960年ころから長期間にわたって、赤色のタブを継続的に使用し、原告のみが赤色ないしオレンジ色のタブを使用してきたというような事情はないことに照らすならば、赤色ないしオレンジ色のタブ部の色彩が、その色彩上の特徴の故に、原告の商品等表示として著名ないし周知であるということはできない。したがって、原告標章五−一は、原告の商品等表示には当たらない。
なお、原告標章五−二ないし四には、「LEVI'S」又は「Levi' s」という原告の通称が付されているから、全体として原告の著名な商品等表示であることは明らかである。
2. 類似性について
 前記のとおり、原告標章五−二ないし四は、原告の商品等表示として著名かつ周知であるが、赤色ないしオレンジ色のタブの色彩は、原告の商品等表示としての特徴部分であるとはいえないことに照らし、その要部は、原告の通称として著名である「LEVI' S」又は「Levi's」との記載部分であるといえる。
 そして、被告標章一、三のタブ部分、被告標章六、七及び一〇は、いずれも原告標章五の二ないし四の要部を備えていないから、両者は類似しない。
3. 結 論
 以上のとおり、不正競争防止法に基づき、被告標章一、三のタブ部分、被告標章六、七及び一〇の使用の差止めを求める部分は理由がない。
四 争点4(原告標章六と被告標章八、九)について
1.商品等表示性、著名性、周知性について 
 証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、遅くとも1971年以降継続的に、原告商品の宣伝広告のために、原告標章六を積極的に使用してきたこと、その全体形状は、上部が水平の直線、左右の辺が下方に進むにしたがって狭まった直線、下部が2個の円弧で 構成され、バックポケットに付けられたステッチ模様を連想させる独特の形からなること、原告標章六には、原告の通称として著名である「LEVI'S」の文字が表記されていることに照らすと、原告標章六は、全体として原告の商品等表示として著名であるといえる。
2. 類似性について
 そこで、進んで、両標章の類否について判断する。
 原告標章六と被告標章八、九とを対比すると、原告標章六の文字部分が「Levi's」であるのに対して、被告標章八、九の各文字部分はそれぞれ「NEW Vintage 505(3行書き)」、「NEW Vintage(2行書き)」、「NEW Vintage EDWIN(3行書き)」、「EDWIN」であり、両者は外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しない。のみならず、原告標章六と被告標章八、九について、文字部分を除く図形部分を比較しても、両標章は類似しない。
 すなわち、原告標章六と被告標章八を対比すると、1.原告標章六は左右の辺が斜めであるのに対し、被告標章八は垂直である、2.原告標章六は左右の辺の長さが同一であるのに対し、被告標章八は、左辺が短く右辺が長い、3.原告標章六は、下部が2個の円 弧からなるのに対し、被告標章八は、下部が3個の円弧からなる 、4.原告標章六は、円弧が正円の一部であるのに対し、被告標章八は、円弧が右に傾いた楕円の一部である、5.原告標章六は、下部の頂点(左辺・右辺の下端を除く)が、左辺・右辺の下端を結ぶ直線上か内側に位置するのに対し、被告標章八は、下部の頂点(左辺・右辺の下端を除く)が、左辺・右辺の下端を結ぶ直線より外側に位置している等の相違点があり、全体として異なる印象を与える。
 また、原告標章六と被告標章九を対比すると、1.原告標章六は、上辺の左右の頂点の角度が、被告標章九の角度よりも大きい、2.原告標章六は、左右下端の頂点の角度が鋭角であるのに対し、被告標章九は、左右下端の頂点の角度が鈍角である、3.原告標章六は、下部に円弧が2つ並列配置されているのに対し、被告標章九は、下部に直線が2本配置され、さらに、左右の辺及び下部の2本の直線で、アルファベットの「W」形状を形成している等の相違点があり、全体として異なる印象を与える。
3. 結 論
 以上のとおり、不正競争防止法に基づき、被告標章八、九の使用の差止めを求める部分は理由がない。
〔商標権に基づく請求関係〕
五 争点5(商標的使用)について
 商標法2条3項1号は、標章の使用を「商品又は商品の包装に標章を付する行為」としている。被告は、被告商品のバックポケット上にステッチにより被告標章一ないし四を付しているから、およそ商品又は出所を表示する機能を果たしていないというような特段の事情がない限り、被告が同標章を商標として使用しているといえるところ、本件においては、特段の事情の存在は窺われない。
 これに対し、被告は、被告標章一ないし四を、専ら装飾的に使用しているので、商標として使用していない旨主張する。しかし、前掲各証拠によれば、原告、被告も含めたジーンズメーカーは、バックポケットのステッチをジーンズの自他識別機能を有するものとして重視し、商品カタログや雑誌やテレビコマーシャル等において、ステッチが目立つような宣伝広告方法を工夫していること、被告も、ポケットのステッチによる標章につき登録商標を有していることが認められ、そうすると、被告が被告標章一ないし四を、装飾的にのみ用いていないことは明らかであって、被告のこの点についての主張は採用できない。
六 争点6(商標の類似性)について
 前記のとおり、1.原告商標一、二と被告標章一、二は類似するが、他方、2.原告商標一、二と被告標章三、四、2.原告商標三と被告標章五、3.原告商標四と被告標章六、七、一〇、4.原告商標六と被告標章八、九は、いずれも類似しない。
 結局、商標権に基づく請求は、原告商標一、二、に基づき、被告標章一、二の使用の差止めを求める部分のみ理由がある。
〔結 論〕
 以上のとおり、原告の請求のうち、不正競争防止法又は商標権に基づき、被告標章一、二の使用の差止めを求める部分は理由があり、その余は理由がない。

〔研  究〕

 本件は、不正競争防止法と商標法とに基く使用差止め請求であったが、裁判所はこの両者について判断し、被告標章一,二に対する使用差止め請求のみを認容し、他については棄却した。事実関係を見るかぎり、問題はない妥当な判決であるといえる。
 なお、審決取消訴訟の「リーバイス」事件については、G−1リーバイス・ポケット図形事件:東京高裁平成11(行ケ)166号平成11年12月15日判決を参照。

[牛木理一]