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「腕時計」商品形態・差止等事件:東京地裁平成9年(ワ)27096号平成11年6月29日判決(認容)〔民46部〕〈日経デザイン1999年11月号72頁〉

〔キーワード〕 
商品の形態、実質的に同一といえる程度に類似、改変、特徴的な形態、模倣、共同開発、救済主体、最初販売から3年間、損害賠償額、謝罪広告

 

〔判示・認定事項〕 

  1. 不競法2条1項3号にいう「模倣」とは、既に存在する他人の商品形態をまねてこれと同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい、対比観察して、形態が同一であるか実質的に同一といえる程度に類似していることを要するものである。
    問題とされる商品形態に他人の商品形態と相違する部分があるとしても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、商品の全体的形態に与える変化が乏しく、商品全体から見て些細な相違にとどまると評価される場合には、当該商品は他人の商品と実質的に同一の形態というべきである。 
     これに対し、当該相違部分についての改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変が商品全体の形態に与える効果などを総合的に判断したとき、当該改変によって商品に相応の形態的特徴がもたらされていて、当該商品と他人の商品との相違が商品全体の形態の類否の上で無視できないような場合には、両者を実質的に同一の形態ということはできない。
  2. 被告商品の形態と原告ら商品の形態とは、各目録の記載から明らかなとおり、時計側、文字盤、バンドの形状等の腕時計としての基本的な形態がいずれも同一であるか又は極めて類似していると認められる。
     原告らの商品は、その商品目録に見られるとおりの特徴的な形態を有しているところ、被告商品はそのすべてを備えているから、被告商品の形態は、対応する原告ら商品の形態と実質的に同一であり、これを模倣したものと認めるのが相当である。
  3. 原告ら商品が販売される前に、これと同様の形態的特徴を有する腕時計が存在していたことをうかがわせる証拠はない。
  4. 原告ら商品の開発に関しては、原告C商事が新規腕時計商品の企画を提案し、これに基づいて原告C時計が腕時計の具体的な形態・仕様を創作していると認められ、原告ら両名が共同して原告ら商品の形態を開発したということができるから、原告らはいずれも不競法2条1項3号の不正競争行為に対し同法所定の救済を求める主体となり得るものである。
  5. 被告による被告商品の輸入販売は不競法2条1項3号の不正競争に該当し、原告らは営業上の利益を侵害されているものと認められるから、原告らは被告に対し、対応する原告ら商品が最初に販売された日から起算して未だ3年を経過していないハ号商品ないしリ号商品については同法3条により輸入販売行為の差止め及びその廃棄を求めることができ、またすべての被告商品について、損害が認められる場合には同法4条によりその賠償を求めることができる。
     原告が求める同法7条による信用回復の措置としての謝罪広告の掲載は、本件において被告商品の輸入販売により原告らの営業上の信用が害されたことを認めるに足りる証拠はないから、損害賠償に加えて、謝罪広告を掲載することまでが必要であるとは認められない。 
  6. 本件意匠とリ号商品の腕時計用側の意匠とを比較すると、両者の形状は同一ないし極めて類似していうといえるから、リ号商品を輸入販売する行為は、本件意匠権を侵害するものである。
  7. 被告の不正競争行為によって被った損害として、原告は、1.被告商品が輸入販売された数量に、原告ら商品の販売により原告らが得られる原告ら商品1本当たりの利益額をじた金額、2.宣伝広告費を含めた原告ら商品の開発のために投資した金額、3.予備的に、被告が不正競争行為によって得た利益に相当する金額の賠償を請求した。
     しかし、1.の金額については、原告ら商品1本当たりの利益額の主張を裏付ける証拠はない。2.の金額については、本来デザイン費用、宣伝広告費は商品の販売収入により回収されるべく商品価格が設定されているはずであるから、原告ら商品の販売数量の減少による逸失利益の損害に加えて、これと別途に前記費用を損害と主張すること自体、失当である。3.原告らの被った損害は、被告が自認する利益額2,069,600円であるから、これが損害額となる。

 

〔事  実〕

 

 原告(C時計株式会社)と原告(C商事株式会社)は、被告(有限会社T)が輸入販売した腕時計の形態が、原告らの腕時計の形態を模倣したものであり、被告の行為は不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当すると主張して、被告の行為の差止め、損害賠償等を求めるとともに、原告C時計が被告に対し、意匠権侵害を理由とする差止め及び損害賠償を求めた事案である。
 原告C時計は、物品「腕時計用側」について、平成9年1月30日に出願し、平成10年1月30日に設定登録した意匠登録第1008003号に係る意匠権の意匠権者である。

〔争  点〕

1. 被告商品の形態が原告ら商品の形態を模倣したものであり、その輸入販売行為が不競法2条1項3号の不正競争行為に該当するか 。
2. リ号商品の輸入販売が本件意匠権の侵害となるか。
3. 原告らの損害額

 

〔判  断〕

 

一 争点1(不正競争防止法2条1項3号の該当性)について
1 不正競争防止法2条1項3号にいう「模倣」とは、既に存在する他人の商品の形態をまねてこれと同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい、他人の商品と作り出された商品を対比して観察した場合に、形態が同一であるか実質的に同一といえる程度に類似していることを要するものである。そして、問題とされている商品の形態に他人の商品の形態と相違する部分があるとしても、その相違がわずかな改変に基づくものであって、商品の全体的形態に与える変化が乏しく、商品全体から見て些細な相違にとどまると評価される場合には、当該商品は他人の商品と実質的に同一の形態というべきである。
 これに対して、当該相違部分についての改変の着想の難易、改変の内容・程度、改変が商品全体の形態に与える効果等を総合的に判断したときに、当該改変によって商品に相応の形態的特徴がもたらされていて、当該商品と他人の商品との相違が商品全体の形態の類否の上で無視できないような場合には、両者を実質的に同一の形態ということはできない。
 これを本件についてみると、被告商品の形態と、それぞれの被告商品に対応する原告ら商品の形態とは、別紙一「被告商品目録」(一)ないし(九)(イないしリ)及び別紙三「原告ら商品目録」(一)ないし(七)の記載から明らかなとおり、時計側、文字盤、バンドの形状等の腕時計としての基本的な形態が、いずれも同一であるか又は極めて類似していると認められる。殊に、原告ら商品は、4枚の板状体を連結してバンドを構成し、文字盤の時刻目盛に星形図形を用いた点(原告ら商品(一))、環状不完結のリング状体を複数連結してバンドを構成し、文字盤の時刻目盛に塔を想起させるA字型図形を用いた点(同(二))、文字盤部分の左側に表示窓を設け、この窓から回転する文字盤が現れるようにした点(同(三)及び同(五))、細棒状の金属片を多数連結してバンドを構成し、変形八角形の時計側に横長長方形状の文字盤を設け、その中央部に横長楕円形模様を配置した点(同(四))、縦長長方形の金属片を3列に配してバンドを構成し、時計側の文字盤の周囲に環状壁を設け、その上部にドーム状のガラスを取りつけた点(同(六))、文字盤部分の右側に表示窓を設け、この窓からアナログ時計表示部が現れるようにした点(同(七))等において形態上の特徴を有していると認められるところ、被告商品がこれら特徴的な形態をすべて備えていることを考慮すると、被告商品の形態は、対応する原告ら商品の形態と実質的に同一であり、これを模倣したものと認めるのが相当である。
 この点につき、被告は両者の形態には相違点があるなどと主張するが、原告ら商品が販売される前にこれと同様の形態的特徴を有する腕時計が存在していたことをうかがわせる証拠はなく、しかも、被告商品及び原告ら商品の基本的な形態が同一又は極めて類似していることからみて、被告商品は対応する原告ら商品を基にしてその形態に若干の改変を加えて作り出されたと認められるところ、被告が相違点として主張する点は、針や竜頭の形状、文字盤の色、数字の字体、日付表示の有無等、いずれも改変の内容及び程度がわずかなものであって、当該改変を加えるにつき着想が困難であるとはいえないし、これらの改変によって相応の形態的特徴がもたらされていると認めることはできず、結局のところ、被告の指摘する相違点はいずれも商品全体から見て些細なものにすぎない。
2 〈証拠〉及び弁論の全趣旨によれば、原告らは、原告ら商品(一)を平成6年10月から、同(二)を同7年6月から、同(三)ないし同(六)を同8年10日から、同(七)を同9年1月から、それぞれ製造販売していること、被告は、イ号商品及びロ号商品を平成平成7年8月ころに、ハ号商品ないしリ号商品を同9年1月ないし8月ころに、それぞれ輸入し、そのころ販売したことが認められる。
 したがって、被告商品は、いずれも対応する原告ら商品が最初に販売されてから起算して3年を経過する前に、その輸入販売が開始されたものである。
3. 被告が時計の輸入販売を業とする有限会社であること、原告らが時計の分野において我が国の代表的な製造販売会社であり、原告ら商品については、原告らが配布する商品カタログに頒布する商品カタログに掲載されていたほか、広く宣伝広告活動がされ、少なからぬ数量の商品が販売されたこと〈証拠〉、前記1のとおり、原告ら商品が従来の商品に見られない形態上の特徴を有するところ、被告商品がいずれも対応する原告ら商品の特徴を有し、その形態が極めて類似していること、被告商品については、その輸入に関する送り状〈証拠〉は提出されているものの、輸入取引の際の状況を具体的に明らかにする証拠が何らて提出されていないこと、などの事情に照らすと、被告において、被告商品を輸入した時に被告商品が原告ら商品の形態を模倣した商品であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がなかったということは、到底できない。
4. 本件においては、原告ら商品を製造しているのは原告C時計であり、原告C商事はC時計からこれを購入して販売しているものであるが、証拠によれば、原告ら商品の開発に関しては、原告C商事が新規腕時計商品の企画を提案し、これに基づいて原告C時計が腕時計の具体的な形態・仕様を創作していると認められ、原告ら両名が共同して原告ら商品の形態を開発したということができるから、原告らはいずれも不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に対して、同法所定の救済を求める主体となり得るものである。
5. 以上によれば、被告による被告商品の輸入販売は不正競争防止法2条1項3号の不正競争に該当し、これにより原告らは営業上の利益を侵害されているものと認められるから、原告らは被告に対し、対応する原告ら商品が最初に販売された日から起算して未だ3年を経過していないハ号商品ないしリ号商品については同法3条により輸入販売行為の差止め及びその廃棄を求めることができ、また、すべての被告商品について、損害が認められる場合には同法4条によりその賠償を求めることができる。
 原告らは、右に加え、同法7条による信用回復の措置として謝罪広告の掲載をも求めるが、本件において被告商品の輸入販売により原告らの営業上の信用が害されたことを認めるに足りる証拠はないから、損害賠償に加えて、謝罪広告を掲載することまでもが必要であるとは、認められない。
二 争点2(意匠権侵害の成否)について
 本件意匠とリ号商品の腕時計用側の意匠とを比較すると、別紙四「意匠公報」及び別紙一「被告商品目録」(九の二)記載のとおり、両者の形状は同一ないし極めて類似しているということができるから、リ号商品を輸入し販売する行為は、本件意匠権を侵害するものであると認められる。
 したがって、原告C時計は被告に対し、意匠権侵害行為として、リ号商品の販売等の差止め、廃棄を求めることができ、また、損害が認められる場合には同法4条によりその賠償を求めることができる。
三 争点3(原告らの損害の額)について
1. 原告らは、被告の不正競争行為により被った損害として、(1) 被告商品が輸入販売された数量に、原告ら商品の販売により原告らが得られる原告ら商品1本当たりの利益の額を乗じた金額、(2)宣伝広告費を含めた原告ら商品の開発のために投資した金額 、(3)予備的に、被告が不正競争行為により得た利益に相当する金額の賠償を請求している。
 原告C時計は、被告によるリ号商品の販売につき、右請求と選択的に、本件意匠権の侵害により被った損害として、右(1)の金額と同額の賠償を求めている。
2. そこで検討すると、不正競争ないし意匠権侵害による損害として主張する右(1)の金額について、原告らは、原告ら商品1本当たりの利益の額が600円ないし4000円であると主張するが、右利益の額についての主張を裏付ける証拠はない。したがって、原告らの右(1)の主張は、その前提を欠くものであり、その余の点について判断するまでもなく、採用できない。
3. また、原告らは、右(2)の金額が被告の不正競争行為により原告らが被った損害であると主張し、その主張に沿う証拠として、原告らにおける腕時計一点当たりのデザイン費用は、平均で約62万円であり、原告ら商品(三)及び同(五)については合計約286万円であること、原告ら商品の宣伝広告費が3億円を超えていること、原告ら商品(三)及び同(五)の販売数量が、平成8年10月から同9年9月までの期間に比べ、同年10月以降急激に減少していることを示す資料〈証拠〉を提出する。
 右(2)の金額については、本来デザイン費用、宣伝広告費は商品の販売収入により回収されるべく商品価格が設定されているはずであることに照らせば、被告の不正競争行為による原告ら商品の販売数量の減少による逸失利益の損害に加えて、これと別途に原告ら商品についてのデザイン費用、宣伝広告費を損害という原告らの主張は、主張自体失当として排斥すべきものである。また、仮にこの点をおくとしても、原告ら提出の右各証拠を総合しても、原告らの主張する右(2)の金額が被告による不正競争行為と相当因果関係のある損害に当たると認めることはできないから、いずれにしても、右(2)の損害をいう原告らの主張は採用できない。
4. そうすると、原告らの被った損害については、右(3)の被告が被告商品の輸入販売により得た利益の額であると自認する206万9600円(イ号商品ないしチ号商品につき168万9600円、リ号商品につき38万円)であると認められ(不競法5条1項)、右認定の額を超える損害を原告らが被ったことを認めるに足りる証拠はない。
 本件においては、原告ら商品はいずれも原告C時計が製造して専ら原告C商事に納入し、これを受けて原告C商事において販売しているものであって、原告両会社は企業グループ内において原告ら商品につき製造と販売を分掌するものである。原告らは、そのような状況を前提として、本訴請求において、原告ら商品それぞれ一個当たりにつき各原告が取得すべきそれぞれの利益額を基礎として算出した金額を、各原告の逸失利益として請求しているものであり、右によれば、原告らは被告の不正競争により被った損害については、原告ら商品から得られる各原告の利益額に応じた割合でこれを請求しているものと解することができる。
 そこで、原告らの損害の額と認められる右金額を、原告らがそれぞれ損害賠償として請求している金額の割合(イ号商品ないしチ号商品につき原告C時計一に対し原告C商事二の割合、リ号商品につき原告C時計一に対し原告C商事四の割合)で按分すると、原告らがそれぞれ賠償を求める金額は、原告C時計が63万9200円(イ号商品ないしチ号商品につき56万3200円、リ号商品につき7万6000円)、原告C商事が143万0400円(イ号商品ないしチ号商品につき112万6400円、リ号商品30万4000円)であると認められる。
5. 以上によれば、原告らの請求は、それぞれ右金額及びこれに対する不法行為の後である日(イ号商品ないしチ号商品に係る分につき平成10年1月13日、リ号商品に係る分につき同年10月10日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。

〔研  究〕

1.この判決は、まず不競法2条1項3号に規定する「模倣」とは何かについて考えたが、「他人の商品の形態をまねて」としか述べていない。しかし、「真似」をするということは「模倣」のすべてといってもよいだろうから、一般用語ではあっても、適切といえよう。ここは、依拠するとか、アクセスしたとかいう準法律用語よりも、事実を表現するには実感のある用語であるといえる。
 さらに、判決は、「真似」てないのならば、被告の方で立証しなさいといわんばかりに、被告商品の形態は客観的に見て、原告商品の形態に実質的に同一といえる程度に類似するものであると考えたのである。即ち、両者の各商品形態には、商品全体から見て些細な相違点があることは認められるものの、被告商品における改変の難易・内容・程度・効果などを総合的に見ると、そこにはそれ相応の別異の形態的特徴は認められないから、両者を実質的に同一の形態と認定し、結果として、被告商品の形態は原告商品の形態を模倣したものと判断したのである。
 このような判決の理論構成と判断は妥当であろう。
 ただ気になる表現は、「実質的に同一といえる程度に類似」とか「基本的な形態が極めて類似」とかと述べている「類似」とは、意匠の類似を考えるときに使う「酷似」とか「同一性」をいう概念がもつ意味よりも、やや広義なものとして使われているのではないか、という思いである。判決は、一般論として、被告商品の改変による相違部分が「商品に相応の形態的特徴」をもたらし、「商品全体の形態の類否」の上で無視できないような場合には、両者を実質的に同一の形態ということはできないと説示していることが、筆者が叙上のように思う根拠である。
2.筆者は、意匠の類似とは、2つの意匠の創作が実質的に同一の創作体に由来するものであることをいうと考えるから、(注)創作の保護法である意匠法は、意匠権の効力として「登録意匠及びこれに類似する意匠」に専有権を与えているのである。
 しかし、不競法2条1項3号には、同条項1号や2号に規定している「類似の商品等表示」とか、「類似のもの」とかについては明記されていないから、多くの解説も裁判例も、「実質的に同一」と認められる商品形態についても、デッドコピーの範囲にあるものと解している。なぜなら、もしそのような商品形態にまで保護を及ぼさないとすれば、3号類型を不正競争と規定した法の目的が達成されないと考えられるからである。
 そこで、想起される事例は、「ドラゴンスウォード・キーホルダー」事件(東京地裁平成8年12月25日判・認容、東京高裁平成10年2月26日判・認容・原判決取消)(東京地裁判決につき、“日経デザイン”1997年3月号98頁)である。
 「商品形態の実質的同一」についての解釈が、地裁と高裁とでは反対となった。即ち、地裁判決では広く解し、高裁判決では狭く解したのである。この事案では、当事者の販売したキーホルダーはいずれも「ドラゴンスウォード」ではあり、そのアイディアは全く同一であったが、原告のドラゴン模様には上下が頭部と尾部とによって表現されていたのに対し、被告のドラゴン模様には上下にいずれも頭部が表現されていたのであった。
 このような2つの商品形態の構成態様をめぐって、地裁判決は実質的同一の範囲を類似の範囲にまで拡大したのに対し、高裁判決は同条項号は類似の範囲のものまでは保護しないと解したのである。
 本件腕時計をめぐっては、前記キーホルダーの形態に見られたほどの相違性は認められないから、同地裁の理由づけには問題はないといえる。
3. 本件では、多くの商品形態のうち、原告は1件(原告商品(七) )の「腕時計用側」については、本訴係属中に、意匠登録出願(平成9年1月30日)をしていた意匠が設定登録(平成10年1月30日)されたことから、被告リ号商品に対しては、意匠権侵害として差
止め、廃棄及び損害賠償の請求をした。
 これについて判決は、被告に対し、意匠権侵害行為として、リ号商品の販売等の差止めと廃棄を認めたが、これは意匠法37条に基くものである。ところが、損害賠償請求については、意匠法39条に基くものではなく、不競法4条に基いて、原告C時計が76,000円、原告C商事が304,000円であると賠償金額を認定した。けだし、この法律適用は妥当であり、リ号商品は前記意匠権が発生する以前から不正競争の対象となっていたものであるからである。
4. この腕時計事件で思い出されるのは、同じ東京地裁の平成9年(ワ)8416号平成10年2月25日判決(認容)の「たまごっち」事件である。
 この事件で、原告は、被告が平成9年4月から原告の商品形態の模倣品であるイ号商品を輸入販売していたことにより、不競法2条1項1号及び3号に該当する不正競争として、同法3条及び4条に基いてイ号商品に差止めと廃棄並びに損害賠償の請求をしたが、係属中に意匠登録出願(平成8年12月16日)をしていた意匠が設定登録(平成9年6月13日)されたことから、ロ号及びハ号商品に対しては、意匠権侵害に基く差止めと廃棄を請求した。その結果、裁判所は原告の差止めと廃棄の請求を全部認め、損害賠償については2,000万円の金額で認めたが、後者の認容は侵害期間のこともあって原告が請求した不競法4条に基くものであった。
 その意味で、商品形態(意匠)のデッドコピーの場合に対する救済法は、3年間という短期間ではあるけれども、最初の侵害時点から起算されることから、差止めも廃棄も、そして損害賠償についても、不競法が意匠法より強力な味方といえるのである。

[牛木理一]

(注)拙著「意匠法の研究(四訂版)」122頁以下。拙著「判例意匠権侵害」4頁以下。