第1.1−2

意 匠 法 改 正 の 目 的 は 何 か   
<パテント 1997 9月号>


1 問題の所在
1.1 DR1計画
 1960年4月1日施行の現行意匠法の改正の最大の課題は、出願意匠の類否判断について、厳重な実体審査を行うわが国意匠法では、特許庁の自助努力による審査の促進にもかかわらず、今日ではもはや限界があることを自ら認識し、その突破口を見つけることにあったはずである。
 特許庁意匠課は、1989年10月に「意匠制度検討に関する中間報告−意匠登録制度の現状と課題、今後のあり方」と題した報告書をまとめたが、この報告書では、「意匠登録制度のあり方」について、次のように述べている。
(1) 基本的な考え方
 意匠登録制度の抱える課題は多岐にわたるが、とりわけ早期審査処理を実現すること、具体的には出願から権利発生(意匠権の設定登録)までの期間を平均で1年程度とすることが緊急の大きな課題であると考えられる。このため、審査処理能力の強化に向けて運用面でなし得る施策を早急に検討する必要がある。
また、ライフサイクルの極めて短い製品の意匠の保護や、タイプフェイス、システムデザイン等の未保護領域のデザインの保護に関する課題については、国内ニーズおよび知的所有権の保護に関する国際動向等を踏まえつつ、制度のあり方として対応すべく検討することが必要である。
(2) 運用面での今後の施策のあり方
 意匠保護の一層の早期化の要請に対処するため、出願から権利発生までの期間を平均で1年程度にするための実行計画(「意匠登録1年化計画」、通称DR1計画)を策定し推進することを提唱する。
 特許庁意匠課は、この最初の段階では、制度改正の具体的テーマをほとんど挙げておらず、運用上の施策としてDR1計画のアウトラインを開示しただけであった。
1.2 空白の1年間に保護策を
 これに対し筆者は直ちに、「空白の1年間をどうするか」という疑問を、「『意匠制度検討に関する中間報告』を読んで」と題した論説の副題につけて、「パテント」年43巻5号(1990)に発表した。この中で、筆者は次のように述べたものである。
 これからの5年間でDR1計画が仮に実現し得たとしても、実は大きな問題が残されたままである。それは、出願から設定登録までの1年間は意匠法による法的保護がないという問題である。この1年間のブランクを意匠法はなぜ放置してよいと考えるのだろうか。製品発表から模倣までの期間を示す資料によると、その期間は1年以内というケースが47.1%である。
 近年のライフサイクルの短かさを考えると、出願即発売も多いし、出願前に発表することもあるから、意匠登録の出願をするようなデザインは常に盗用・模倣の目にさらされているといってよい。しかも、わが国の権利侵害裁判所では、意匠権侵害の成立を認めた場合でも実施料相当額の損害賠償金の支払しか認めないことが多い。したがって、米国のような懲罰的賠償制度のないわが国にあっては、ヤリ得の場合が多いのである。
 そこで、特許庁としてはさらに、この1年間の空白をどうするのかという問題を新しく考えなければならないことになる。この空白期間を放置し、出願人に我慢を強いたり、これまでどおり、出願人自身で対策を講じてもらうという考え方では、意匠保護制度の今後のあり方を検討している特許庁の立場としては、甚だ無責任といわねばならない。
 これについて報告書は、『制度面からの保護のあり方を検討する必要がある。』と述べている。この問題を考えることは、日本特許協会が「早期権利付与のための補完的な制度の新たな導入」に関する要望書を提出していることと通ずるものがある。
 しかし、では具体的にどのような制度にすればよいのかについては示唆すらされていない。ということは、制度改正面の検討はまだ本格的にはなされていないということだろうか。
 それよりも特許庁の関心は、タイプフェイス(文字フォント)やシステムデザインのような未保護対象にあるようである。
 しかし、特許庁の立場としてはこのような新しい問題を検討するよりも先に、長年懸案の現行の意匠審査登録制度をどうすればよいかを重点的に検討し、具体的な方策を早く打ち出して世に問うべきではないだろうか。
 そこで考えられることは、1年間の空白状態を補完するために、例えば、意匠権の効力の発生日を、審査後の設定登録を停止条件として出願日に遡及させる立法に改正するとか、出願人の選択による無審査登録方法を導入し、有審査登録方法と両立させる立法に改正するとか、DR1計画の実施と併行して緊急で具体的な方策を早く立てるべきである。
 このような制度改正にまで踏み込んだ検討を早くしなければ、DR1計画がたとえ将来実現したとしても、同時に解決すべき明白な問題が5年後に再び蒸し返されることになるから、当時の行政担当者への批判は大きくなるだろう。
1.3 解決策の模索
 ここで述べた1年間の空白状態を補完する新制度についての提案は、筆者がすでに「パテント」38巻11号(1985)で「意匠法改正の提案−現行法の手直しの場合」として、また同誌40巻2号(1987)で「意匠保護の未来学1)」として発表し、その後、これらの提案を具体的に補完すべく発表した「意匠審査制度の弊害と解決法」特許管理37巻11号(1987)の中で提案している事項のごく一部である。そして、法改正のこれらの提案については、特許庁意匠課でも日本特許協会意匠委員会でも検討されたようである。
 しかしながら、筆者が指摘した疑問に対して、その後に至るも答えは示されなかった。のみならず、DR1計画の実現は自然に遠退き始めたから、空白の1年間の問題についての真面目な議論も白けていた2)。
 日本特許協会が1989年7月10日に特許庁長官に提出した要望書3)は、「当協会といたしましては、かかる会員の意見ならびに検討結果を踏まえたとき、現行意匠制度を企業の経済活動の実態に適合させ、創作活動の成果である意匠を保護し機能させて行くためには、特に早期保護が緊急の課題であり、具体的には、次の点については改善いただくことが必要との結論に至りました。」と述べて、次の四点を挙げている。
(1) 審査官の増員並びに運用体制の改善により、当面、出願日から権利設定まで1年を実現する。
(2) 上記期間の達成に当たっては、現行の審査主義を維持する。
(3) しかしながら、上記1〜2項の達成が困難と判断される際は、現行登録制度を維持しつつ、早期権利付与のための補完的な制度の新たな導入を目指すなど、そのための法改正の検討を行う。
(4) さらに、意匠保護制度がより機能するために、現行制度に関しても必要な事項について、合わせて法改正の検討を行う。
 ところで、「意匠制度の現状と課題」については、日本工業所有権法学会の1988年5月の総会シンポジュウムにおいて取り上げられ、筆者は利用者側のパネリストとして、また斉藤瞭二審判長は行政側のパネリストとして意見を発表し、活発なディスカッションがなされた4)。この内容は、同学会の年報12号(1989)に紹介されている。

2 法改正の至上命令は何か
2.1 早期保護の命令と解決策
 さて、今回の意匠法改正の至上命令は何であるか。日本デザイン保護協会の意匠制度検討特別委員会の報告書や一覧表、平成9年6月17日から発足した工業所有権審議会の意匠法小委員会の検討事項を見ても、そこにあるものは比較的小に属する手直し程度の事項の列挙であって、これらの上に立つ「至上命令」となるべき法改正の最大の中心テーマは何であるかを直ちに理解させるものではない。
 筆者は、長年の実務経験と研究から、また国際会議の出席などを経て、わが国の意匠法が今日やらなければならない改革の至上命令とは、出願意匠の早期保護をおいて他にないと考えてきた。
 そして、そのための一つの解決法として筆者の考え方を、先の論文「意匠保護の未来学」でアウトラインを紹介し、日本工業所有権法学会の総会シンポジュウムで具体的に発表し、そして「パテント」48巻11号(1995)の論文「わが国意匠保護のあり方」で明確に発表したのが、出願意匠の二本立て保護のスキームである。
 すなわち、伝統的にパテントアプローチの考え方を採り実体審査主義を貫いてきたわが国においては、出願人が望むならば、従来どおりの方法で時間をかけて実体審査をしてもらうコースと、そのような実体審査をせずに早期に登録してもらうコースとに分け、出願人に、意匠保護のための選択権を与えることである。これが真のユーザーフレンドリーというものであると考えた。
 この考え方は、英国のCDPA 1988やEUデザイン法案におけるデザイン保護のあり方とは似て非なるものである。しかし、長年、英国法の著作権とデザイン保護の改正論議と経過を追跡してきた筆者にとっては5)、世界で英国ほどこの分野の議論と立法化が進んでいる国はないと考えているから、同国の立法審議の歴史をヒントに、日本人の国民性に合うように修正したものが、前記した内容の二本立て登録保護制度のアイディアである。そして、この考え方は10年後の今日でも、古びることなく依然として新鮮な考え方であるように思えてならない。
2.2 特許庁の後ろ向き姿勢
 ところが、特許庁が工業所有権審議会に提出した資料4「意匠制度のあり方に係る検討事項について」は、「3(3)無審査登録制度の併設の是非」について、「早期保護の観点から無審査登録制度の併設については、審査主義を堅持することにより安定した権利を得たいとのニーズが強いのではないか。また、無審査登録制度の併設は、制度を複雑化し、混乱を招くおそれがあるのではないか。」と述べている。そして、このような姿勢は、すでに他の場所における問題提起から一貫している。つまり、意匠の早期保護の方法の一つとして審議の対象とはしているものの、最初から後ろ向きの姿勢での説明しかなされていない。
 特許庁が審議前からそのような姿勢であるならば、このような案をあえて提出しなければよいのである。
 にもかかわらず、あえて検討事項としているのは、この提案が将来への課題として魅力あるものに見えているからであろう。委員の中には大学関係者らもいるのだから、今後時間をかけて研究されることをすすめたい。この問題は、知的財産法の研究者にとっては格好なテーマである。
 外国における立法例がないという理由で、二本立て保護案に後ろ向きの姿勢しか示さないのは、わが国の模倣体質を特許庁自らが表明していることになる。そうではなく、わが国の特殊な国情を考えると、有審査登録制度を堅持しつつも、欧州諸国の無審査登録制度を導入することは、わが国民のニーズに合うとともに外国の利用者のニーズにも合うことになる。後者の場合、権利行使はこれを選択した意匠権者自身の責任においてすることになるが、前者の場合とて、侵害裁判所における現実の姿を見れば、特許庁の審査を受けた登録意匠であっても、裁判所において被告側の攻撃にあい、それに対して意匠権者は自己責任で防御しなければならず、また被告側の登録意匠の無効の主張に対しては、特許庁はこれを一切擁護しないのみならず、登録無効審判が請求され立証されれば、特許庁は今度はその意匠登録の無効を宣言するのである。
 したがって、わが国の特許庁の関係者は、目を外に向けるとともに内にも向け、わが国意匠制度のあり方と将来をよく考えてもらいたいのである。
2.3 出願実施意匠の保護策を
 ところで、早期保護が今回の法改正の至上命令であってみれば、特許庁が自信を持って強調するDR1計画が、将来たとえ実現し得たとしても、出願から設定登録までの1年間の無権利の空白状態は依然として解決されないことになる。そして、この空白状態の解消なしには意匠の早期保護は実現しないことになることは、DR1計画の最初の段階から当然わかっていたはずである。
 しかし、筆者の問いかけから7年以上経っているが、この問題の検討の跡は、その後、特許庁内部からは示されず、何にも答えられていない。ということは、その答えは工業所有権審議会に委ねるということであろうか。
 否、特許庁は、自らこの空白期間を埋める具体的方策を提案し審議会に諮るべきである。
 何回も繰り返して述べてきたように、出願人にとって重要な関心事は、単に出願したことではない。そこで、筆者が特に問題にするのは、出願後に実施(販売または販売の準備を含む)を開始した意匠の保護をどうしてくれるかである。
 現在、特許庁の運用では、実施意匠を見た他人が模倣(侵害)した場合に限り、早期審査の請求をすることができる方法が用意されているが、模倣されてからでは遅く、創作者・出願人の保護にはならない。
 したがって、DR1計画の実現は、まずこのような早期審査を含むものでなければならない。すなわち、出願後は実施を条件に早期審査の請求ができる法規定をおくべきである。この請求があったときは、短期間(約1〜2か月)のうちに、審査結果を出願人に通知することである。
 特許庁は、出願後実施する意匠の数の多いことを理由に、この提案には消極的のようであるが、案ずるよりも産むが易しである6)。そして、早期審査制度は、有審査登録制度を採るわが国意匠法において、DR1計画を実行する政策と一体不可分な関係のものとしなければならない解決法であると、特許庁は認識するべきである7)。
 後記する英国の非登録デザイン権の発生の基準日は当該商品を流通においた日であり、これから10年間(流通しない場合は、製作または創作した日から15年間)保護すること、および不競法2条1項3号を参考に考えると、早期審査の請求は販売開始日または販売準備開始日以降とするのが妥当である。
2.4 別の保護策を
 しかし、実施を条件とした早期審査についての法制化が不可能であるとすれば、たとえDR1計画をおそくとも2005年度までには実施し得たとしても、筆者が1990年に指摘したように、1年間の空白期間の無権利状態が2005年度後も依然として継続することになるだろうから、有審査登録制度の宿命を補うための別の保護策を考えなければならないことになる。それが、次の三つの方法、すなわち(1)意匠権の発生の遡及効、または(2)非登録意匠権の発生、または(3)無審査登録制度の併設であり、これを選択的に考えることになる。
(1) 遡及効制度8)
 審査後の設定登録を停止条件として、出願日に遡及して意匠権の効力(独占排他的効力)の発生を認めることである。有審査登録制度の英国登録デザイン法がそうである。したがって、出願中に実施した出願人は、無許諾者が模倣を開始したときは警告をし、設定登録後に損害賠償を請求する旨を予告する。しかし、出願中に差止請求権は認められない。
 模倣に対しては不競法2条1項3号の規定があるというが、類似の範囲まで禁止的効力は及ばないし、創作保護法の立場からの立法とするが妥当である9)。
 意匠権の効力の出願日への遡及効を認めた場合、意匠権の存続期間は出願日を起算日とすることが妥当であると思うが、その期間は現行の15年でよいか、20年(独国法)または25年(英国法)とするのがよいかは、別に検討されるべき問題である。
 遡及効制度の導入は、DR1計画と直接関係ないことであり、必ずしもDR1に拘束されない問題ではあるが、しかし有審査登録制度を採るわが国においてDR1計画の実現は、意匠権の早期確定による法的安定性を図るために必要なユーザーフレンドリーな政策であり、これと遡及効とを結合して考えることは、出願意匠の早期保護にとって積極的な方策といえる。
(2) 非登録意匠権の発生
 設定登録にならなくても実施を開始した意匠は、当業者の目に確実にさらされることになるから、実施を条件として、出願意匠に対し何らかの保護を与えてよい。そのための法的根拠は、出願と同時に意匠権に準ずる権利を与えることに求めるべきである。この権利を根拠にすれば、差止請求権も損害賠償請求権の設置も合理性をもつ。しかし、権利行使に際しては(裁判所において)、登録要件の具備の立証は出願人自身の責任においてしなければならないことになろう。
 不競法2条1項3号の規定は、英国CDPA 1988の213条に規定する“(Unregistered) Design Right(非登録)デザイン権”に相当するといえようが、これは出願も登録もなしに著作権のような権利として10年ないし15年間保護する制度である10)。
 しかし、わが国の意匠法の中の非登録意匠権の発生の場合は、あくまでも実施後、設定登録までの間の保護とし、設定登録後は登録意匠権に自動的にスイッチされることにする。
(3) 無審査登録制度の併設 
 この制度は、現行の有審査登録制度と併設し、出願人によりいずれかの出願コースを選択させ、無審査登録出願を選択した意匠に対しては、実体審査なしに設定登録をする。したがって、意匠権者は権利行使に際し(裁判所において)、登録要件の具備の立証を、意匠権者自身の責任においてしなければならないことになる。
 前記した非登録意匠権との違いは、将来、登録意匠権に自動的にスイッチされることはないことである。
 しかし、新規性喪失の例外規定の適用を受けられる救済期間(grace period)内に意匠登録出願をすれば、審査の結果、将来、登録意匠権を取得できるのはもちろんである。この場合、前記救済期間を現行法のように6か月とするかまたはEUデザイン法案のように12か月とするかは、別に検討されるべき問題である。
 この制度の導入は、テキスタイルデザインを始めとする流行性の強い分野の意匠にとっては、著作権型の意匠権として歓迎されるし、TRIPs協定の要求にも応えることになる。
 工業所有権審議会の意匠小委員会の第1回会合(1997年6月17日)では、デザイナーや流行性の強い物品分野の複数の委員から、無審査登録制度の導入による早期保護の要求が強かった。したがって、わが国意匠法は、この要求に対して正面から応えなければならない責任があると考えるべきである。
2.5 出願公開制度の脱落 
 特許庁は当初、アンケート調査の結果を見て、出願公開制度の導入を考えていたようであるが、公開制度の本質は早期保護に通じず、単に他人の新規情報の強制公開でしかないこと、およびDR1計画の実現のためにはむしろ邪魔になることを考え併せると、無意味な制度であることを理解したようである11)。したがって、出願公開制度の導入は、前記した三つの制度のいずれかが実現することを考えれば、もはや改正論議から消えてしまったといってよいだろう。

3 これまでの議論は何であったか
 ところで、今回の意匠法改正問題が工業所有権審議会の議題となるまでには長い道程があり、各場所で多くの報告書やアンケート結果が発表されているが、これらは、一体何のためであったのだろうか。
これまで、特許法、実用新案法、商標法の改正過程においては、今回、意匠法がたどってきたような幾重もの論議の道程はなかった。すべて、特許庁主導で進んで来て、これらの制度を利用する民間側が長年にわたりいろいろな方法で積極的に議論に参加するかたちで改正論議が進行したことはなかった。実用新案法の改悪はその典型である。これは、初めに実用新案制度の廃止がメルクマールとしてあったことから、存続の妥協として今日のようなアンチ・ユーザーフレンドリーな法制度に変質した法律が施行されているが、これに対して中小企業や弁理士会は具体的にどのような反対の運動をしたのだろうか。
 EUは現在、実用新案制度の導入を検討しており、イギリスでも検討中であるという。
 これに対し、意匠法の改正論議は、叙上したように、違っているようには見える12)。
 しかしながら、改正問題については、それを論議する場所は違っていても、ほとんど同じ委員(この中に真に意匠法を理解し研究している者は何人いるだろうか。)の構成により、ほぼ同じテーマを、ほぼ同じような短いスケジュールで、ほぼ同じような内容の論議を繰返して来たが、これは一体何のためだったのか。
 それぞれの報告書に見られるテーマも内容も、特許庁主導としか思われず、テーマも内容も新鮮味のないものである。検討する具体的事項とそれらが所属する概念との勝手な配置替えは見られても、それらは同じテーブルの上でのメニューの移動に過ぎず、新しいテーブルへのメニューの導入は見られない。そして、最大のメルクマールであった「早期保護」問題は、いつの間にか小さくなってしまっているが、特許庁は小に専して大を失ってしまっている。
 すると、今日に至るまでのいろいろな場所における意匠法改正論議は、各委員において、冒頭で述べた意匠法改正の至上命令とそれに伴う問題点を果たしてよく理解した上でして来たものなのだろうかと疑いたくなる13)。「制度のあり方」を問うのであれば、まず大から入って十分論議して解決すべきであったのであり、小のことはその後で十分なのである。

4 最重要課題は何か
 そこで、以下においては、特許庁が挙げている小さい問題の中でも、最重要と思われる課題について考えてみる。
(1) DR1計画の実行について
 特許庁は、この計画をまず平成2年(1990年)度から5年間で実現することを目指したが、平均1年4か月となり実現しなかった。今後は、この計画の実現のためには、まずFA1実現を2000年度とし、DR1の実現は2005年度としている。また、FA1もDR1もその実現は全出願についてのものではなく、平均的な処理期間としていることにわれわれは注意すべきである。しかし、必要なのは全部の出願に対する公平な審査の処理期間である。
 そこで、特許庁は、今後のDR1計画の実行のためのシュミレーションを具体的に完成しているのだろうか。少なくとも2000年度から2005年度にかけてのシュミレーションを打ち立てることが必要であり、それが完成したら早く公表してほしい。けだし、実現のためのアクションプログラムが示されなければ、われわれ利用者はDR1計画の実現を信頼できないからである。
(2) 創作容易性の基準引上げについて14)
 特許庁は、3条2項の「周知形態」から、3条1項1号・2号の「公知意匠」に基づいて容易に創作できる意匠は、これを拒絶することにしたい、と容易性を拡大しようと考えているが、甚だ危険である。
 これは、出願意匠を登録するために必要な「創作力」の基準を挙げることを意味する。問題は、容易か否かの判断を当該物品の審査官自身の知識と経験に基づいて行うことになるから、その判断には個人差が出てくることである。客観的な審査基準の確立は果たして可能なのだろう。
 なぜ創作力の高い意匠の保護が必要なのか。周知の形態ではなく、公知の意匠(意3条1項1号・2号)に基づいて容易に創作できる意匠は、なぜ創作力がない意匠といえるのか。
 特許庁意匠課は、特許法29条2項や実用新案法3条2項にいう技術的進歩性と、意匠の創作力とを混同しているのではないか。否であれば、どのような違いがあると認識しているのか説明すべきである。
 挙げられている例を見ると、類似と認定することができる意匠(意3条1項3号)であったり、創作力ありと認定できる意匠ばかりである。
 一つの意匠の完成のためには、単純に複数の公知の意匠を組合せてまとめられるものではない。そこには、コンセプトに基づいた創作性が形態をもって表現されているのである。
 それを、産業政策的に拒絶したいという観点から議論するからおかしくなる。産業政策をもち出すならば、機能的意匠の保護を排除することは、部品産業への影響を考えれば、わが国の産業政策上、疑問であることに、なぜ気がつかないのだろうか。
 特許庁は、創作力の引上げの問題を、「創造的デザインの保護」と「広くて強い権利」という二つの観点から考えているが、この両概念はなぜ同じ目的となる意義をもつものなのか不明である。多くの出願意匠を創作力がないと拒絶することによって、意匠権の効力範囲がより広くかつ強くなると考えているとすれば、それは大間違いである。創作力がないと認定して、より多くの出願意匠を拒絶する反対効果として、他人の既存の意匠権の効力範囲が広くなったり強くなったりすることはあり得ない。既存の意匠権の効力範囲とは、その登録意匠が有する類似の範囲の問題であり、登録意匠を含む多くの公知意匠が発揮する創作力の問題では全くない。
 すなわち、意匠の「類似」とは、同一又は類似の物品間における創作の容易性(同一性・共通性)をいうから、同一又は類似の物品の範囲を超えた非類似物品からの転用は「創作容易」となり、創作力がないということになる15)。
 したがって、特許庁においては、登録意匠の類似の範囲を広く認めることこそ、意匠の創作の奨励となり、意匠権の強化に連がると考えるべきである。この問題は、特許庁と裁判所との間に整合性をもたなければならない問題でもある。両者間に、「意匠の類似」とは何かについての考え方に本質的な違いがあってはならないのである。
 さらに、わが国だけが新規性の審査のみならず、創作力の審査をしかつそのレベルを上げることが、国際的整合性をもち、デザイン先進国と対等の地位を保つことができるとでも考えているのだろうか。
 例えば、「デザインが、専ら技術的効果の達成に不可欠なものは、保護されない。」(2条1項)の規定をもつベネルックス統一デザイン法は、新規性のないデザインの一つの場合として、「寄託日又はパリ条約の優先権発生日前の50年間に、ベネルックス領土内の商工業界において知られているデザインと同一又は微小な点でのみ相違しているもの。」(4条1項(a))と限定してあげている。しかも、わが国意匠法3条2項のような規定はない。
 また、“must-fit”(265条1項(b)(i)や“must-mutch”(同条項(ii))のデザインは保護しないと規定する英国CDPA 1988は、出願デザインが”new”とは、英国内において公表されていないデザインをいうと規定(265(2)(b))する。同法は、登録デザインの登録要件から“original”を削除したし、まして複数の公知のデザインを組合わせたものを新規性や創作力のないデザインとは規定していない。
 そこで考えることは、すでに公然知られた事実である複数の意匠(意3条1項1号)を見た当業者が、これを単純に合わせて構成すれば新規の意匠が完成することが常識といえると判断できる場合は、客観的に創作力のない意匠と認定しても不当ではないだろう。しかし、刊行物記載の意匠(意3条1項2号)にあっては、当業者にとって前記のような事実として「公然知られた」意匠ではなく、調べなければ明確には判らない単に「知られ得る状態にある」意匠にすぎないものだから、刊行物記載公知の複数の意匠に基づいて創作した意匠に対しても、客観的に創作力のない意匠であると認定することは不当である。
(3) 類似意匠登録制度について16)
 現在の意匠法改正論議の中で、特許庁が犯そうとしている最大の罪は、類似意匠登録制度の廃止論である。この制度は、わが国において長年にわたり、本質的に判断が困難で不明確といわれる登録意匠の類似範囲(創作性の及ぶ範囲)を、少しでも明確にしておこうと意匠法が古くから用意している意匠権者のための保護方策であることを、なぜ特許庁は認識しないのか。
 意匠法は、意匠の創作を保護する法律であることを考えれば、一つの登録意匠が有する創作性の範囲がどこまであるかを、類似する意匠を登録することにより予め確認しておくことが意匠権者にとっても第三者にとっても、類似範囲の明確化の一助となることから望ましいとの考え方から、類似意匠登録制度が誕生したのである。だからこそ、類似意匠の意匠権は本意匠の意匠権に合体するという法的性質を有しているのであり(旧意22条)、類似意匠に類似する意匠の登録は認められないのであり(旧意10条2項)、法論理として当然のことを注意的に規定しているにすぎないのである。
 類似意匠制度は、連合商標制度とは似て非なるものである。すなわち、連合商標の場合は、もともと中核となるべき登録商標が存在しないから、連合商標制度の廃止は容易に是とすることができても、類似意匠の場合は、もともと中核となるべき登録意匠が存在し、その周辺に重複状態の花弁のように存在するものであるから、各類似意匠の独立性は法論理上考えられない。したがって、類似意匠制度の廃止を考えることは論外の議論である。
 過去の侵害裁判所における多くの裁判例は、福井地裁昭54年(ワ)227昭和59年4月27日判決を唯一の例外として、類似意匠の意匠権の本意匠の意匠権からの独立性とその独自的効力は認めないことについては、すでに定説としているのである。けだし、それは正に類似意匠登録制度の立法趣旨に合致するからである17)。
 また、旧意匠法10条1項の規定は、23条本文の規定と表裏の関係にあるものであることは、一つ登録意匠の創作体の範囲に当初から潜在的に存する類似の意匠に専有的効力が及ぶことを、本意匠に類似する意匠を登録しておくことによって確認しておく登録制度を設けたと理解することになる。したがって、類似意匠の登録とは、本意匠の有する創作体の範囲を確認する効果しかないと考えるべきであり、登録意匠の範囲を法律上拡張するものではない。
 類似意匠が登録された場合、本意匠が固有する最初の類似の範囲から多かれ少なかれはみ出す(拡張する)としても、これは単に事実上の問題であるから、この事実上の問題と法律上の問題とを混同してはならない。法律上の問題とは、本意匠から見た評価以外の何ものでもないのである18)。
 歴史的に見て、長年わが国産業界に根付いて大きく開花してきたこの制度を廃止するからには、これに対する強烈な反対論に十分対抗し得るだけの説得力をもった理論武装を改正論者はしなければならないのに、それをせず、官の力で押し切ろうとするだけである。特許庁は、現行の類似意匠登録制度の廃止と新制度の設立のための全容を明らかにした法理論を最初に発表していないことは、無責任である。
また、類似意匠の出願時期を制限する動きがある。それは、本意匠の設定登録後はおろか出願の改良意匠の出願を認めない考え方である。理由は、DR1計画実現のための審査の都合である。しかし、利用者のニーズを考えれば、登録意匠のもつ創作体を客観的に明確にしておくという機能を達成させるために、意匠権が有効に存続する限りは類似意匠の登録を認めることが妥当である。
 わが国意匠法には、特許法や実用新案法と異なり、「請求の範囲(クレーム)」を記載する制度がなく、図面または写真に表現されたものから、登録意匠が有する類似範囲を観念的に把握するしか方法がない。したがって、登録意匠の権利範囲の不明確さは、必要があれば、時の前後を問わず、登録意匠の外延に存するであろう類似の意匠をいくつか出願し、これらを登録して明確にするしか方法がないのである。
 意匠というものは、視覚という感性を通じて認識した対象を論理という理性を通じて判断したり、出願前周知・公知の意匠との対比によって登録意匠の有する創作体の大きさを把握するという、人間生活の中では極めて特異な分野に存在するものであるから、わかりにくいとか、難しいとかいわれるのは当然である。にもかかわらず、これまで特許庁は長年にわたり多くの類否判断をして類似意匠の登録を蓄積してきたし、侵害裁判所は長年にわたり登録意匠をめぐる多くの類否判断をして妥当な裁判例を蓄積してきたのである。
 また、意匠の類似とは何かについても多くの裁判例の蓄積があり、われわれ実務家に有意義な教材となっている。ということは、実務家はこれらの教材から依頼人に適切なアドバイスをし、紛争解決のために最大限の努力をするのである。類似意匠の意匠権の存在と本意匠の意匠権への合体は、本意匠の意匠権が存在することと同様に、一種の社会規範としての存在意義を有するのである。
 にもかかわらず、特許庁は、裁判所のこれまでの蓄積や産業界の了解事項を、なぜあえて切り崩そうとするのか。特許庁という行政庁には、現行の類似意匠登録制度を解体するだけの資格があるのか。
(4) 模様、特にテキスタイルデザインについて19)
 TRIPs協定25条2項には、特にテキスタイルデザインの保護に関して特別扱いをするようにとの規定がある。
 ところが、特許庁は今回の改正で何らの法規的手当てを用意していないのはなぜか。たとえ、出願後迅速に審査に着手することにしているとはいえ、その出願・登録等の費用に他物品とは格別な差別を考えていないし、意匠公報の発行についても、秘密意匠の登録の場合以外は、通常扱いである。
 すると、この保護問題を、ヨーロッパ諸国や関係団体はWTOの場ではなく、WIPOのヘーグ協定の専門家会議の場で持ち出してくる可能性がある20)。このようなとき、わが国特許庁はどのように対応するつもりなのか。
 また、模様自体の保護の問題については、これを物品を離れて保護しようとするのであるならば、意匠法固有の保護領域から外れてしまうことになるが、著作権法との重畳的保護または著作権法だけの単独保護の対象となり得ることも、特許庁は考えているのだろうか。
(5) 訂正審判制度について21)
 この問題は、今回立法化しないことになれば、国会で再燃することになるだろう。その必要性はきわめて合理的であるから、無視すべきでないどころか、「早期審査」に次いで今回立法化すべき重大事項である。
 しかし、この訂正審判制度を利用し救済すべき対象は、願書や図面の記載に瑕疵がある場合に限られるべきである。
 意匠の創作はすでに完成している以上、図面の不一致を訂正することは意匠の創作の要旨の変更とはならない。詳細部分を省略した図面から成る意匠が登録されている事実は日頃よく見られ、出願用図面だけでは実施不能な図面が多いことは日頃知られているところである。例えば、各種機械の意匠を想起すればよい。したがって、もし図面の不一致を理由に登録無効にするのであるならば、たとえ図面が一致していても実施不能を理由に登録無効としなければならないことになる。
 しかし、これはいかにも不合理ではないか。したがって、図面の不一致だけを理由に登録無効にすることが適法であるというのであれば、せめてそのような登録意匠を救済し、図面を一致させることを認める訂正審判の制度を導入すべきことは事理の当然というべきである。
 次の二つの提案は、わが国意匠法においては新規性はあっても、特許法や米国法との比較では創作力のない提案であるから、決して奇異なものではないから、直ちに導入できる制度である。
(6) 審査前置制について22)
 訂正審判制度と同様に、特許法にはあって、なぜ意匠法にないのかについて、国会で取り上げられることになろうが、その必要性は極めて合理的であるから、無視すべきではない。この制度を導入すれば、競合する審判請求中の先願意匠の地位をより早く確定することができるし、DR1計画に貢献することになる。
(7) 出願図面チェッカー制について23)
 これは、法律改正をせずに運用で可能であるから、意匠課内部に出願図面を専門にチェックする担当官を設置することである。これはDR1計画の実現に大きなプラスになるし、意匠権の安定性に資することになる。米国ではこの制度を早くから導入して成功している。

5 おわりに
 冒頭で記述したとおり、意匠法改正の至上命令は「早期保護」の実現にあった。にもかかわらず、この至上命令は、「1 国際化時代への対応」、「2 創造的デザインの保護」の後の三番目の、しかも他の二つのテーマと対等の地位しか与えられていない。
 しかし、これは結局、意匠法を改正しようとしている特許庁が今回の意匠法改正の至上命令についての理解と自覚を、今日に至るまで強く持っていないことを物語る。そして、小さい問題をいくつか並べることによって、噛みつくとこわい大きい問題から国民の眼をそらさせる意図をもっているのか、としか考えられない。検討特別委員会の報告書が、横並びではあっても第一に挙げていた「早期保護」のテーマを、審議会の検討事項では第三に落としていることは、その考え方の表れであるといわれよう。
 特許庁においては、実体審査主義の弊害に論及せざるを得ないわが国意匠制度の根元的問題を本格的に取り上げて論議しようとする姿勢が、今日では消えてしまっているから、法改正の目的は結局何なのか、という問いに正確に答えることができないのである。
 そこで、筆者は、本論の最後にあたり、関係者の認識を新たにしてもらうために、工業所有権審議会の意匠小委員会に提出されている「意匠制度のあり方に係る検討事項」の前記三つに「4 その他」を加えた全テーマについて、これを再編成するとともに新たな問題点を加えたものを、次にまとめて総括としたい。(MMとはmerkmalの略)
 このうち、MM1は最初に解決しなければならない至上命令であり、MM2,3,4はその後で解決すればよい問題である。立法者が解決の決め手とすべき大きなメルクマールは、ユーザーのニーズであり、意匠法におけるユーザーフレンドリーの精神である。

MM1 早期保護
DR1計画の実現による1年間空白の埋め方
@早期審査制…実施後に。
A遡及効制…設定登録を停止条件として意匠権の効力の発生を出願日に遡及。
B非登録意匠権制…実施により発生−権利行使は自己責任−登録時に登録意匠権に自動スイッチ。
C無審査登録制(有審査登録制と併設)…出願人の選択−権利行使は自己責任。
答え:早期保護のために利用者にとっては、@ABCのうち、どの制度を採用するのがユーザーにとって得策かの見地からの立法。

MM2 的確保護              MM3 本質問題
@容易創作性(3条2項)          @機能のみの意匠の保護(2条1項)
A新規性喪失意匠の拡大(4条)       A模様のみの意匠の保護(2条1項)
B図面の簡素化(6条1項)         B部分のみの意匠の保護(2条1項)
C特徴記載(6条1項)           Cシステムの意匠の保護(8条)
D先願主義(9条)
E類似意匠登録制(10,22条)        MM4 国際化問題
F図面チェッカー制(新設)         @一出願多意匠制
G審査前置制(新設)            Aヘーグ協定への加盟
H訂正審判制(新設)            

 わが国の意匠法の改正は、わが国が有審査登録制度をとる限り、審査の促進による早期保護以外のことは世界から注目されていないから、わが国産業界の将来を考えた主体性のある合理的な法改正を願うものである。




1) 筆者のこの論文は、弁理士会『インテレクチュアル・プロパティ(パテントから30選)』(発明協会1995)153頁に転載されている。
2) わが国特許庁における状況とは関係なく、WIPOにおいては1991年から、「意匠の国際寄託に関するヘーグ協定」の改革のための専門家委員会が開始されている。この委員会の第1回会議の副議長に、わが国代表の森本敬司審査長(現審判長)が選出されたことを見ると、わが国のヘーグ協定への加盟をWIPOが期待していたことがわかる。この会議は、厳重な審査主義を採るわが国と米国等の加入を特に期待して開かれたものであったが、無審査登録制度を採るヘーグ同盟国が、有審査登録制度を採る国との間に妥協線を見い出すことは殆んど不可能であることは、1995年6月の第5回会議で明らかとなり、1996年11月の第6回会議で決定的となった。問題は、このような両者間の対立をWIPOがいかに調整するかがカギとなっている。今年11月には第7回の会議が開かれる予定であるが、これが最後となるか否かは予断を許さない。
3) 日本特許協会会長から特許庁長官への要望書「意匠保護制度の強化についてのお願い平成1年7月10日」特許管理39巻9号1177頁(1989)。
4) このシンポジュウムの他のパネリストは満田重昭教授であり、司会は紋谷暢男教授であった。
5) 筆者の英国法に関する研究には、時間を追って次の論説がある。
 @「インダストリアルデザイン−その美と保護の研究−(4)」パテント21巻1号(1968)。
 A「美的著作権の限界」パテント22巻2号(1969)。
 B「イギリスにおけるデザインの保護」(訳)パテント28巻8号(1975)。
 C「イギリスは意匠法を廃止する@〜D」パテント30巻7号〜11号(1977)。
 D「英国にみるデザイン保護の変遷と将来への展望」『豊崎光衛先生追悼記念論文集』461頁(1981)。
 E「イギリスは意匠法を廃止するか」パテント35巻7号(1982)。
 F「最近の英国における工業デザイン保護の試行錯誤」『杉村信義先生古稀記念論文集』661頁(1985)。
 G「英国の意匠保護の新しい動向」パテント39巻9号(1986)。
 H「英国の新しいデザイン保護制度(上)(中)(下)」パテント42巻4〜6号(1989)。
I「英国の新しいデザイン保護体制」ジュリスト944巻(1989)。
 J「意匠法と著作権法の間」『意匠法の研究〈四訂版〉』309頁以下(1994)。
6) 日本デザイン保護協会の「意匠制度の見直しに関するアンケート調査」によると、意匠出願時期を商品発売の1月ないし1年未満とする割合は74.6%であるが、この間には時間差があるのだから、早期審査の請求が一時に集中することはあり得ない。
7) 特許庁はこの点にようやく気が付いたのか、工業所有権審議会の意匠小委員会の資料の「検討事項」の3(2)に、「早期審査制度の活用」を加え、早期審査を法制化することを挙げている。
8) 牛木理一「日本の意匠保護制度のあり方」パテント48巻11号32頁(1995)。
9) 牛木理一「新不正競争防止法と意匠の保護−意匠法への挑戦−」パテント46巻6号27頁(1993),牛木理一『意匠法の研究〈四訂版〉』503頁。
10) 牛木・前掲『研究』350頁。
11) 牛木理一「意匠出願と早期公開制度について」パテント49巻12号22頁(1996)。
12) 現在、EUを組織する15か国のうち12か国が実用新案制度をもつ。これらの国における実用新案保護のスキームはそれぞれ異なり、実態審査を行わない点では共通性を有するが、登録要件の厳重さは各国で一定ではない。12か国とは、フランス,ベルギー,オランダ,ギリシャ,スペイン,ポルトガル,イタリー,フィンランド,ドイツ,デンマーク,オーストリア,アイルランドであり、イギリス,スウェーデン,ルクセンブルグはまだもたない。共同体委員会は1995年7月19日に、EUにおける実用新案保護制度の確立を目指すグリーンペーパーを発表した。実用新案保護制度のあり方については、AIPPIにおいても長年議論し検討してきたが、わが国においてもそろそろ見直しの時期に入っているのではないか。関係者の多くがこの問題に関心をもたれるべきである。
13) 日本デザイン保護協会は、1992年10月「デザイン保護委員会中間報告書」を発表したが、この委員会は1989年3月から1991年3月まで4回開かれている。
  その後、日デ保協「早期保護すべき意匠及び保護のあり方に関するアンケート調査報告書」1991年10月、知財研「意匠の国際的保護のあり方についての基礎的研究報告書」1992年3月、知財研「意匠権の保護範囲の明確化に関する調査研究報告書」1994年3月、知財研「デザイン活動の実態に合致した意匠保護のあり方に関する調査研究報告書」1996年3月、日で保協「報告書・国際化時代に対応した創造的デザインの保護強化」1997年3月。また、日本デザイン団体協議会「デザインと著作権・デザイン保護研究報告書」1995年10月もある。
14) 牛木・前掲『研究』171頁。
15) 意匠の「類似」と「創作容易(創作力)」との関係との違いについは、牛木・前掲『研究』192頁以下に詳しい。
16) 牛木理一「類似意匠登録制度の見直しについて」パテント50巻1号85頁(1997)。
17) 牛木・前掲『研究』241頁。竹田稔氏は、「類似意匠の登録がなされるか否かにより、意匠権の効力範囲に変動を生ずるという解釈は、類似意匠に類似する範囲を確定する困難を生み出し意匠権の権利範囲を不安定なものにするのみならず、本意匠と美感を共通にしない意匠までもその権利範囲に含めることは、意匠の本質に反するのではないかという疑問を払拭できない。かかる観点からすれば、確認説が説得力をもつと思われる。」と述べられる(竹田稔:『知的財産権侵害要論−特許・意匠・商標編』251頁)。最近の裁判例では、東京地裁平7(行ワ)116平成8年5月31日判が、類似意匠登録制度の趣旨を明快に説示している。判時1575号107頁・知財管理「判例研究」47巻9号1331頁(1997)。
18) 牛木・前掲『研究』242頁。三宅正雄『特許とその周辺』405頁。
19) 牛木理一「テキスタイルデザインの法的保護」パテント50巻3号65頁(1997)。
20) 牛木は、ヘーグ協定改訂のための専門家会議に第5回以来出席しているが、実質的にはこれまでのヘーグ同盟国、就中、テキスタイル産業団体から、わが国の意匠制度と運用は攻撃の的になっている。テキスタイルデザインの審査でもなぜ長期間かけなければならないのか、と。
21) 牛木理一「その他の重要問題を論ず」パテント50巻2号16頁(1997)。なお、訂正審判制度の導入については、弁理士会は1989年4月14日にその必要性についての「要望書」を特許庁に提出している。
22) 牛木・前掲「その他」21頁。
23) 牛木・前掲「その他」20頁。

 


〔牛木理一〕