第1.1−1

意匠法に無審査登録制度の導入を


1.8月21日の本紙によると、特許庁への意匠(工業デザイン)登録の出願に対する審査期間を大巾に短縮する制度を導入することが報じられている。
  しかし、この制度の利用は、通常の出願に対するものではなく、他人による模倣が起きた時に請求する優先審査の場合に限られるものであり、この請求をした出願は1か月以内に審査結果を出そうという。
  このような審査方法は意匠法を改正することなく運用で可能であるが、デザインの性質や商品寿命を考えるならば、意匠法の抜本的な改正こそ必要である。現行の意匠法は平成10年に改正されたものであるが、この改正の多くはそれまでの意匠法の手直し的なものであった。

2.ところで、私はかって、意匠法改正の審議時に、当時すでに先を越されて施行されていた不正競争防止法2条1項3号(商品形態の3年間模倣禁止規定)について、このような他人の創作にかかる意匠は、本来、不正競争行為を禁止するという消極的な解決法ではなく、無審査ではあるが登録により意匠法によって積極的に保護する制度を導入して解決すべきであることを提案したものであった。
  私の当時の提案の背景には、次の二つの外的要因があった。その一は、イギリスの1988年著作権デザイン特許法であり、その中で「非登録デザイン権」が新設され、10年〜15年間の保護を与えていたし、その二は、WTOによるTRIPs協定25条2項に、テキスタイルデザインのような流行性のあるデザインの保護については、そのコストや審査などの面で特別な配慮をすべきことを規定していたのである。

3.そこで、私は今や、意匠権の早期保護のために、現行意匠法の抜本的改正を提案したい。それは、これまでの審査登録制度と無審査登録制度との併存であり、出願人がこのいずれか一方の登録システムを選択することができるようにすることである。
  後者に似た制度に前記不競法2条1項3号の規定が存在するが、出願人はいずれの法規による保護をも裁判所に求めてよい。無審査登録意匠権の侵害でも模倣禁止規定の違反でも、その新規性や創作力の欠如を証拠によって争うのは、登録意匠やデザインを無断で実施した侵害者側であるべきである。

4.前記本紙記事の見出しだけを見ると、特許庁は出願意匠にかかる審査期間を、通常は8か月であるのを1か月以内に終了すると見間違いがちであるが、これはあくまでも模倣品が市場に出た場合に、出願人が特別に請求する優先審査のことである。
  しかし、無審査登録制度を導入すれば、出願意匠を方式審査にかかる1か月後には設定登録がされ半月以内には「意匠登録証」が発行されることになるだろうから、意匠権の行使は模倣品が市場に出回った時には十分可能となっている。
  近年、EUデザイン法にも前記英国非登録デザイン権と同様の権利が導入されたことを考えれば、わが国においても特許庁による登録行為を条件とした無審査による意匠権が発効する新しい制度の導入を検討する時期に来ているだろう。これによって、わが国産業界の国際競争力も高まり、毎年4万件弱の意匠出願件数も増大することが期待できるだろう。

 


〔牛木理一〕