第1.1−6

改正意匠法のポイントの解説

<衆議院調査局経済産業調査室平成185月から>

 

デザインの保護(意匠権)
1.存続期間を延長する
 現行は権利登録から15年であるところ、これを20年に延長する。
 意匠権の存続期間は、諸外国の立法状況を勘案し、設定登録の日から15年間と定められている(昭和34年改正)。しかし、@魅力あるデザインは、例えば、優れたデザインによって長期間販売されている製品や復刻される商品のように、長期間にわたって付加価値を生み出すことがあること、A権利15年目の存続率を比較すると、特許権4%に対し意匠権は、16%と高い数字を示していること(特許権の権利存続期間は出願日から20年間)、B特許(発明)についてはあまりに長期間の独占権を与えることによって技術の向上を阻害することがある一方、意匠については審美的な視点から保護されるものであり、権利存続期間の延長による弊害は少ないこと等から、意匠権の存続期間を延長すべきとの指摘がされていた。
 そのため、本改正案においては、@あまりに長期間独占権を与えると施行前と施行後に出願された場合に大きく保護期間が異なることになり、現行法の権利者と比較してバランスを失するおそれがあること、A意匠権を15年保持している分野としては電気電子機械器具、通信機械器具等の技術的なものも多く、特許権の存続期間とあまりに乖離することは技術開発を通じた技術の向上を阻害する面も考えられることにかんがみ、存続期間は15年から20年間に延長することとされている。

2.情報家電等の操作画面のデザインの保護対象を拡大する。
 現行では初期画面を中心に保護されているところ、保護範囲を拡大し、物品の機能を実現しようとする際に必要となる操作画面についても保護する。

3.意匠の類似判断は需要者の視覚による美感に基づいて行うことを明確化する。
 現行では判例等で需要者の視覚による美感に基づいて行うこととされているところ、これを条文として規定し、類似判断の明確化を図る。
 意匠とは「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と規定されており、外観で類似判断される。しかし、意匠権によって保護される範囲が必ずしも明確ではなく、類似判断の手法や基準が明確でないことから、意匠権の積極的行使や活用につながっていないのではないかとの指摘がある。
 そのため、最高裁判例に従って、判断主体の視点を「需要者」と法律に規定することで、類似判断の明確化を目指すこととされている。

4.デザインのバリエーション(関連意匠)や部分・部品のデザイン(部分意匠)の出願期限を延長する。
 現行では関連意匠は本意匠の出願と同日の出願のみ、部分・部品の意匠はこれを含む全体の意匠の出願の前及び同日の出願のみ認められていたが、意匠公報発行時まで出願を認める。
 1つのデザイン・コンセプトから、多数のバリエーションのデザインが生まれることがある。この場合、当初のデザイン(本意匠)の登録を認め、さらにそのバリエーションのデザイン(関連する意匠)の登録を認めることでその保護・強化を図る制度が作られている(関連意匠制度)。関連意匠登録を受けるには、@本意匠の出願人と同一の出願人による出願であること、A本意匠と類似すること、B本意匠と同日の出願であること、Cその他通常出願と同じ要件を満たすことが求められている。
 しかし、例えば、後日にデザインを改良したときに(関連意匠として出願できずに)通常の意匠として出願すると、本意匠と類似しているという理由で拒絶される(本意匠の類似の範囲に入っていないのであれば、登録査定を受けることも当然にありうる)。また、現行制度で関連意匠としての保護を受けるには、出願当日までに市場投入することが予想されるすべてのバリエーションについて検討し、本意匠の出願と同日に出願しなければならないことになる。そのため、関連意匠の出願期間を緩和して、後日に改良したデザインについても、一定の保護を与えるべきとの指摘がされていた。
 これを踏まえ、本改正案においては上記Bの要件を緩和して、本意匠が掲載される公報の発行日前までであれば、後日に出願した関連意匠の設定登録を受けることができるものとされている。

5.秘密意匠制度(3年を限度に登録意匠を公開しない制度)の請求可能時期を追加する。
 現行では出願と同時の請求のみ認められていたが、登録料納付時の請求も認める。
 意匠権の設定登録があったときは、意匠権者の氏名等、意匠登録出願の願書及びこれに添付した図面、写真、ひな形又は見本の内容等の情報が意匠公報に掲載され、一般に公開される。しかしながら、意匠は流行に左右されやすく、物品の外観として創作されるものであることから、模倣されやすい点を有する。このため、出願人は、意匠権の設定登録の日から3年以内の期間を指定してその期間その意匠を秘密にすることを請求し、指定された期間が経過するまでの間、意匠公報への掲載の猶予を受けられる制度が用意されている(秘密意匠制度)。意匠を秘密にすることの請求は、出願と同時にする必要がある。
 現在、意匠審査の迅速化が進んでおり、平均7ヶ月程度、なかには数ヶ月で審査が終了するケースがある。企業においては出願時に審査に要する期間を考慮したうえで販売戦略を立てていると予測されるところ、予想外に審査が早く終了してしまい、秘密意匠の請求をしていなかった企業は意匠公報で公開されてしまうことで販売戦略を変更せざるを得なくなることがありうると指摘されている。このため、秘密意匠の期間指定の請求を出願日以外にも行えるようにすべきとの指摘がされていた。
 本改正案においては、請求期間を緩和して、意匠登録の第1年分の登録料の納付と同時に請求する場合を認めることとされている。

6.公知となった自らの意匠によって出願した意匠が新規でないとされないための証明書類の提出期限を延長する。
 現行では意匠登録出願日より14日以内で証明書類を提出することが求められてきたが、これを意匠登録出願日より30日以内に緩和する。

 

 


〔牛木理一〕