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登録意匠「コネクタハウジング」無効審決取消請求事件:東京高裁平15(行ケ)398 平成16年3月31日判決(認容・審決取消)

〔キーワード〕 
意匠の類似、公知意匠による引用登録意匠の類似範囲、美的印象

 

〔事  実〕

 タイコエレクトロニクスアンプ(原告)は、「コネクタハウジング」に係る意匠を平成12年3月10日に出願し、平成13年2月2日に設定登録をした意匠登録第1105291号の意匠権者である。日本圧着端子製造(被告)は、平成15年1月17日に、本件登録意匠に対する登録無効審判を請求したところ、特許庁は平成15年8月1日に登録無効の審決をした。その結果、審決は、本件意匠は、その出願前に頒布された意匠登録第1018720号公報に記載された意匠(平成8年11月28日出願、平成10年6月12日設定登録)(引用意匠)と比較すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態の類否については、差異点よりも共通点の与える影響が支配的であるから、意匠全体として互いに類似し、本件意匠は、意匠法3条1項3号に違反して登録されたものであるから、無効とすべきであるとした。
 これに対し、意匠権者である原告は、東京高裁に審決取消を請求したところ、平成16年3月31日、審決を取り消す旨の判決がなされた。

 

〔判  断〕

 

1 取消事由(本件意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について
(1)本件意匠と引用意匠の差異点の判断の誤りについて
ア 審決は、差異点(1)「後端突出部の態様について、本件登録意匠は、上端から下端に至るまで突出し、それぞれの上下面に前後方向の細溝を施しているのに対し、引用意匠は、中程に上下幅の略1/3の間隔を設け、それぞれの上下両面を平滑無模様としている点」について、「本件登録意匠の出願前より、この種物品分野において、後端突出部を本件登録意匠のものと略同様に上端から下端まで連続して形成した態様のものは、甲第8号証(注、本訴甲4〔平成11年5月17日被告作成のソケットハウジングの製作図面〕,甲4図面)に示す意匠(別紙第3参照)、意匠登録第577695号(注、甲5−1公報)及び同号の類似第1号(注、甲5−2公報)に示す各意匠が見受けられるから、本件登録意匠のみに格別新規に形成したものとは言えず、また、上下面の細溝の有無は、形態全体からみれば限られた部位の態様についての差異にすぎず、前記のとおり、両意匠の後端突出部を細長い突出部と連続一体状であっていずれも左右対称状に形成している点が、いずれの方向から視た場合にも形態全体を特徴づける要素であるのに対し、これらの差異が形態全体に与える影響は小さいものであり、両意匠の類否判断に与える影響も微弱にとどまる」と判断したが、これに対し、原告は、甲4図面記載の意匠には、「上端から下端まで連続して形成した態様」の後端突出部は開示されていないし、また、「上端から下端まで連続して形成した後端突出部」それ自体は、公知であるが、本件意匠の後端突出部は、先行公知意匠のものに比較して、幅広に形成されており、本件意匠に特有の形態をなし、このように後端突出部を幅広に形成することによって、これと連続して一体状をなす細長い突出部を相対的に短く見せているのであるから、この点の美感に関する本件意匠と引用意匠との差異の形態全体に与える影響が小さいとはいえないと主張するので、検討する。
 甲4図面は、平成11年5月17日被告作成のソケットハウジング(コネクタハウジングと同様の物品であると認められる。)の製作図面であり、ソケットハウジングの背面図(左側上段)、平面図(左側中段)、正面図(左側下段)及び右側面図(右側)が図示され、平面図及び右側面図によれば、甲4図面記載のソケットハウジングには、本件意匠と同様、後端突出部が形成されているが、右側面図によれば、その後端突出部は、中ほどに上下幅の略1/3の間隔が設けられており、上端から下端まで連続して形成した態様とは認められず、この点に係る審決の上記認定は誤りである。
 また、甲5−1公報及び甲5−2公報には、「上端から下端まで連続して形成した後端突出部」が開示されているが、同記載の意匠の後端突出部は全長の略1/10幅であるのに対し、本件意匠の後端突出部は全長の略1/5弱の幅広に形成され、これが甲5−1公報及び甲5−2公報記載の意匠にはない美感ないし美的印象を与え、意匠的効果をもたらすというべきである。
 被告は、両意匠に係る物品がコネクタハウジングであって、縦横ともに1cm弱の極小の物品であることから、そのような物品の類否にあっては、後端突出部のわずかな違いよりも、後端全体で観察した場合の類似性を大きく評価するのが、妥当な判断手法であると主張する。しかし、甲6公報の「従来、複数のピンコンタクトを収容しているピンヘッダを持つコネクタにおいては、・・・ピンコンタクトのピッチ間隔を大きくするようにしていた。・・・ピンコンタクトのピッチ間隔を大きく設定すると、どうしてもピンヘッダのサイズを大きくせねばならず、コネクタが全体的に大型化になる」(段落【0002】〜【0003】)、甲7公報の「コネクタを小型化した場合には、高電圧に耐えることができず、これらランス間で放電が起きる可能性が高くなり、正負のコンタクト間の絶縁を有効に行うことが困難であった」(段落【0006】)との記載によれば、コネクタハウジングには、大型のものも存在することが認められ、本件意匠に係る物品は、「電気コンタクトを収容し、相手コネクタと嵌合して電気的に相互接続するためのもの」(甲2、「意匠に係る物品の説明」の項)であって、このような大型のコネクタハウジングを除外するものではないから、意匠に係る物品が縦横ともに1cm弱の極小の物品であるということはできず、被告の上記主張は、前提において誤りであり、失当というほかない。
イ 審決は、差異点(2)「左右の脚部間の態様について、本件登録意匠(注、本件意匠)は、 前後同幅であって開脚部分より後方の上下面の基部後端寄りまでを開脚部分と同幅の凹溝状としているのに対し、引用意匠は、後端よりも前端がやや広がった平面視斜め状である点」について、「本件登録意匠の出願前より、左右の脚部間の開脚部分を前後同幅に形成することは、請求人(注、被告)提出の甲第3号証(注、甲6公報)に記載の図1および図2に示す意匠(別紙第4参照)および甲第4号証(注、甲7公報)に記載の図1および図3に示す意匠(別紙第5参照)のとおり広く知られ、左右の脚部間を凹溝状に形成した態様(意匠登録第577695号の意匠参照。)も知られているから、凹溝状に形成した部分を脚部間の全体としたか部分としたかの変更の範囲であって、形態全体からみれば限られた部位の軽微な差異にとどまり、その差異が両意匠の類否判断に与える影響は微弱にとどまる」(同5頁最終段落〜6頁第1段落)と判断したが、これに対し、原告は、本件意匠の深い凹溝は、平面視及び背面視において、大変すっきりとしたスマートな印象を看者に与え、これら各脚部の上面の長方形の凹溝及び下面の小型の長方形の開口部分の縁が平行であるがために幾何学的にみて長さが強調されているから、看者に与える意匠上の影響は極めて大であり、引用意匠のV字状の脚部は、ざん新な形態であり、意匠の類否判断に与える影響は大きいと主張する。
 甲6公報記載の意匠及び甲7公報記載の意匠において、いずれも左右の脚部は、本件意匠と同様、左右の脚部間の開脚部分を前後同幅に形成され、甲6公報記載の脚部上下面及び甲7公報【図3】記載の脚部上面には、相手方コネクタに接続するための嵌合部が形成されているが、コネクタ相互の接続をより確実にするためにコネクタハウジングの脚部の差込部分に適宜凹凸を施すことは普通に行われるところであり、特徴的なものではなく、また、甲7公報【図1】記載の脚部上面は凹凸はなく平坦である。これに対し、本件意匠の左右の脚部の上面には長方形の凹溝を、下面にはこれより小型の長方形の開口部分を有している。そして、本件意匠は、各脚部の上下面の先端部から基部にかけて脚部上面の長方形の凹溝と略同様の長方形の深い凹溝が形成され、平面視においては、左右の脚部上面の長方形の凹溝と長方形の深い凹溝が、また、底面視においては、左右の脚部の小型の長方形の開口部分と長方形の深い凹溝が、それぞれ二等辺三角形状に配列された外観を呈し、これが引用意匠、甲6公報記載の意匠及び甲7公報記載の意匠にはない美感ないし美的印象を与え、意匠的効果をもたらすことは明らかである。他方、引用意匠の平面視で基部から前方へV字状の隙間をもって左右二股状に延びる略四角柱状の脚部は、ありふれたものとは認められず、引用意匠の形態における顕著な特徴を構成するものというべきである。
 被告は、引用意匠の脚部は、V字状といえるほどには開脚しておらず、また、コネクタハウジングという極小の物品にあっては、引用意匠の脚部の広がりのさ細な差異より、「極間スリットがある」という両意匠の骨格における共通点の方が重視されるというべきであると主張する。しかし、引用意匠の脚部がV字状の開脚を有することは、平面図及び底面図から一見して明らかであり、また、コネクタハウジングが極小の物品であるとの前提が誤りであることは上記のとおりである。
ウ 審決は、差異点(3)「脚部先端寄りの態様について、本件登録意匠は、それぞれ上面中央に平面視縦長長方形状のごく浅い凹部を、下面に前記段差と交差して縦長長方形状の小さな開口部をそれぞれ設けている点」について、「差異点(3)について、この種物品分野においては、コネクタ相互の接続をより確実にするためコネクタハウジングの脚部など差込部分に適宜凹凸を施すことは普通に行われるところ、本件登録意匠の凹部は、脚部先端寄りに形成したごく浅いものであって、下面の開口部も小さいものであり、いずれも格別の態様に形成したものでもないから、形態全体の基調に影響を与えるほどの要素となり得ないものであり、両意匠の類否判断に与える影響は微弱にとどまる」(同6頁第1段落)と判断したが、本件意匠は、平面視においては、左右の脚部上面の長方形の凹溝と長方形の深い凹溝が、また、底面視においては、左右の脚部の小型の長方形の開口部分と長方形の深い凹溝が、それぞれ二等辺三角形状に配列された外観を呈し、これが意匠的効果をもたらすことは上記のとおりである。
 被告は、二等辺三角形の配列は、両意匠の類否判断において重視されない部分の配列であり、また、本件意匠の脚部上面の凹溝は浅く、下面の開口部分は小さいものであり、極小のコネクタハウジングにあって、そのような細かい部分が意匠の類否判断で重視されることはないと主張するが、二等辺三角形状の配列が意匠的効果をもたらすことは上記のとおりであり、また、コネクタハウジングが極小の物品であるとの前提が誤りであることも上記のとおりである。
(2) 本件意匠と引用意匠の共通点の判断の誤りについて
ア 審決の共通点の判断@「形態全体についての共通点は、両意匠の形態の骨格を構成する基本的な構成態様に係るものであり、形態全体の基調を左右するほどの影響を与えるものである」との判断について、原告は、上記「形態全体についての共通点」は、この種の意匠における「骨格を構成する基本的な構成態様」にすぎず、意匠の類否判断に与える影響は小さいと主張するので、検討する。
 審決の指摘する上記「形態全体についての共通点」は、「横幅よりも奥行きが長い扁平な筐体状であって、後方を電線接続側である基部とし、その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している点」(同4頁下から第2段落)をいうものであるが、引用意匠の出願日前に頒布された甲8公報(昭和55年1月8日発行)及び甲9公報(昭和62年9月12日公開)には、「横幅よりも奥行きが長い扁平な筐体状であって、後方を電線接続側である基部とし、その前方へ左右二股状に延びる略四角柱状の脚部を基部と一体状に形成している」形態を有するコネクタハウジングが開示されており、同形態は、コネクタハウジングの形態としてごくありふれたものと認められ、看者の注意をひくものとはいえない。
 被告は、本件意匠と引用意匠とは、小型の2極ソケットコネクタハウジングとして、その基本的な構成態様が共通するものであるのに対し、甲8公報記載のコネクタハウジングは、基部に比べて前方へ左右二股状に延びる脚部の割合(前後方向長さ)が大きく、しかも、基部及び脚部は、その角が面取りされて丸められているから、本件意匠及び引用意匠と異なる印象を与えるものであり、また、甲9公報記載のコネクタハウジングは、基部と脚部とが一体状に形成された形態ではなく、基部の前端面から四角柱状の脚部が段差を有して突出した形態であるから、本件意匠及び引用意匠とは美感を異にすると主張する。しかし、本件意匠及び引用意匠が小型の2極ソケットコネクタハウジングに係るものであるとの点は、本件意匠及び引用意匠に係る意匠登録出願の願書及び願書に添付した図面に何ら記載されていないから、主張自体失当というほかない。また、甲8公報記載のコネクタハウジング及び甲9公報記載のコネクタハウジングの上記形態は、「形態全体についての共通点」に係る形態が、コネクタハウジングの形態としてごくありふれたものであり、看者の注意をひくものとはいえないとの上記判断を何ら左右しない。
イ 審決の共通点の判断A「形態各部の態様において、共通するとした後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し、細長い突出部よりも後端の突出部がさらに突出している態様は、引用意匠の出願前には同様に形成した態様のものが見受けられず、いずれの方向から観察した場合にも形態全体を特徴づける要素である」との判断について、原告は、「後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し、細長い突出部よりも後端の突出部が更に突出している態様」は、甲10公報に開示されているから、「引用意匠の出願前には同様に形成した態様のものが見受けられず」とした認定は誤りであると主張する。しかし、甲10公報記載のコネクタハウジングは、細長い突出部が一方の側面にしか形成されていない点で、本件意匠及び引用意匠とは異なるから、審決の上記認定を誤りであるということはできない。
ウ 審決の共通点の判断B「共通するとした基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差は、両意匠の形態全体がいずれも扁平であって上下の面が広いため、比較的目立つ態様であると言えるから、形態全体に与える影響が大きいものであり、特に下面は先端寄りにも段差を形成しているため、踏み込み幅の長い階段状の態様を呈しており、側面視のみならず底面側から視た場合にも形態全体を特徴づける要素となりえるものである」との判断について、原告は、「基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差」は、甲11公報に開示されているように、本件物品が相手方コネクタとはまり合うために機能上要求される形態にほかならないから、類否判断に与える影響が相対的に小さいと主張する。
 原告が引用する甲11公報記載のコネクタハウジングのみならず、甲6公報及び甲7公報記載のコネクタハウジングにおいても、「基部寄りの上面および下面に形成した後方よりも前方が低い段差」が開示され、同形態は、相手方コネクタとはまり合うために機能上要求される公知の形態と認められるが、審決の指摘する「下面は先端寄りにも段差を形成している」点については、上記各公報にも開示されておらず、この点は機能上要求される公知の形態とは認められない。
エ 審決の共通点の判断C「これら共通点は、いずれも左右対称状に形成している態様に係り、共通点が相まって生じる意匠的な効果は、両意匠の形態全体の基調を形成し、両意匠の類否判断を左右するほどのものと言える」との判断について、原告は、共通点に係る形態的特徴は、いずれも引用意匠に特有のものではなく、両意匠の類否判断を左右するほど重要なものということはできないと主張するところ、「これら共通点は、いずれも左右対称状に形成している態様に係る」との点については、甲10公報のものを除き、甲8公報、甲9公報及び甲11公報記載のコネクタハウジングは、いずれも左右対称であり、2極のコネクタハウジングが左右対称であることは、ごくありふれたものと認められ、そうである以上、共通点に係る部分が左右対称に形成されることも当然のことであり、この点が看者の注意をひくものとはいえない。
(3) 以上を前提に、本件意匠と引用意匠の類否について検討すると、差異点(1)の「後端突出部の態様について、本件登録意匠は、上端から下端に至るまで突出し、それぞれの上下面に前後方向の細溝を施しているのに対し、引用意匠は、中程に上下幅の略1/3の間隔を設け、それぞれの上下両面を平滑無模様としている点」について、本件意匠の後端突出部は全長の略1/5弱の幅広に形成され、これが甲5−1公報及び甲5−2公報記載の公知意匠にはない美感ないし美的印象を与え、意匠的効果をもたらし、さらに、差異点(2)及び差異点(3)に係る形態についても、本件意匠は、各脚部の上下面の先端部から基部にかけて脚部上面の長方形の凹溝と略同様の長方形の深い凹溝が形成され、平面視においては、左右の脚部上面の長方形の凹溝と長方形の深い凹溝が、また、底面視においては、左右の脚部の小型の長方形の開口部分と長方形の深い凹溝が、それぞれ二等辺三角形状に配列された外観を呈し、これが引用意匠、甲6公報記載の意匠及び甲7公報記載の意匠にはない美感ないし美的印象を与え、意匠的効果をもたらし、他方、引用意匠の平面視で基部から前方へV字状の隙間をもって左右二股状に延びる略四角柱状の脚部は、引用意匠の顕著な特徴を構成するものであるから、両意匠は、意匠全体として異なった美感ないし美的印象をもたらすものと認められる。
 これに対し、両意匠の「形態全体についての共通点」に係る形態は、コネクタハウジングの形態としてごくありふれたものであり、共通点に係る部分が左右対称に形成されることも当然のことであって、いずれも看者の注意をひくものとはいえず、また、両意匠の共通点に係る「後端突出部の態様及び上端面を面一致状とした前後に細長い突出部を基部の前記突出部に連続一体状に形成し、細長い突出部よりも後端の突出部が更に突出している態様」及び「下面は先端寄りにも段差を形成している」点は、公知の形態とは認められないが、特段の美的特徴を有するものとも認められず、いずれも上記差異点の類否判断に及ぼす効果をしのぐものとまでは認められない。
 したがって、本件意匠と引用意匠は、看者に全体として異なった美感ないし美的印象をもたらす非類似の意匠というべきであるから、差異点よりも共通点の与える影響が支配的であるとして、両意匠が意匠全体として互いに類似するとした審決の判断は誤りであり、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

2 以上のとおり、原告の取消事由の主張は理由があるから、審決は違法として取消しを免れない。

〔論  説〕

1.本件登録意匠に対し他人の登録意匠を引用し、類似するから無効であると主張するとき、単に物理的に両意匠を対比して類否の有無を決めるのではなく、先行する他人の登録意匠の形態が含む公知の構成態様以外の創作と認められる構成態様がどこに存するかをまず把握すべきことを、本件判決は教えている。かくすることによって、引用意匠の形態が有する創作性ある構成態様を、無効対象とする本件意匠が具備しているか否かが判断されることになり、具備していなければ新規性は存することになるから、無効とはされない。

2.本件意匠のような物品はこれまでにも数多く登録されていることを考慮すると、それぞれの意匠の形態が部分的に発揮している特徴に創作性が認められるならば、その点に美感ないし美的印象が認められると解することになるから、各登録意匠の有する類似範囲はかなり狭いものとなることが多い。
 したがって、意匠の類否判断を行うときは、過去の登録例についてのデザインマップを作成し、それを背景に置いて本件意匠の類似範囲を考えることになる。そのように考えることは、同時に美感の異同を感ずることになる。

[牛木理一]