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「作業用足場」意匠権侵害差止等請求事件:東京地裁平14(ワ)18356平成15年4月30日判(棄)

〔キーワード〕 
物品の基本的構成、公知意匠、意匠の要部(特徴的部分)、印象、美感

〔事  実〕

 原告(アイ・エス・ティー株式会社)は、訴外株式会社ホリーが「作業用足場」について、平成4年9月21日に出願し、平成6年4月22日に設定登録された意匠登録第903265号の意匠権の意匠権者の1人である(共有)。また、この登録意匠には2件の類似意匠が付帯していた。
 被告(アルインコ株式会社)は、別紙物件目録記載の各作業用足場を製造、販売していた。
 本件の争点は、次の2点であった。
 (1) 被告各製品の意匠(被告意匠1、被告意匠2)は、本件登録意匠に類似するか。
 (2) 損害の額。

 

〔判 断〕

 

1. 本件登録意匠について
(1) 本件登録意匠の構成
  証拠によれば、本件登録意匠の構成は、以下のとおりであると認められる。
ア 正面図
  正面図において開脚の状態で、足場となる水平板と、同水平板に対して左右に略105度の角度で開く脚部が存在し、この脚部は上部(以下「上部脚部」という。)と、上部脚部よりやや細い下部(以下「下部脚部」という。)とに分かれている。水平板と左右の脚部を繋ぐヒンジ部は、脚支柱の上部に取り付けたヒンジ板の内側上辺が略弧状となっている。水平板表面には、上方に僅かに突出している多数の小半円形(後記のとおり、平面図では小円形)が設けられている。水平板の長手方向中央部の側面に把手部が存在する。
イ 平面図
 平面図において横長長方形状の1枚の天板からなる足場(水平板)と、上端の端を水平板の前後幅と同幅とし、左右に末広がり状(略「ハ」の字状)に開く形状の脚部がある。脚部には2段の梯子状の桟が設けられている。足場部分を構成する水平板の左右長手方向幅と前後方向幅は約4対1の割合に形成されている。足場表面には、前後方向中央に長手方向に沿って細幅帯状に余地部を設け、その前後には、多数の小円形が2121の配列で千鳥足状に形成されている。脚支柱及び横桟は、それぞれ略四角柱状に形成されている。水平板の長手方向中央部の側面に把手部が存在する。
ウ 右側面図
 右側面図において、上部脚部は、上方から上部脚部の約5分の1程の長さまで左右垂直に垂下し(垂下部)、該垂下部に続いて左右外方にハの字状に末広がりとなる。上部脚部には2本の桟部が横張りされ、下部脚部は、上部脚部よりもやや細めに形成され、脚部最下端にはキャップ状の部材が設けられている。最下段の横桟の両端に、小突片が設けられている。 
エ 底面図
 底面図において、左右長手方向中央部にI字型の補強部材が渡し込まれている。
オ 折畳状態の正面図、平面図
 折畳状態の正面図、平面図において、脚部の4箇所の端部は、ほぼ隙間なく左右互いに対向する形となっている。
(2) 本件登録意匠の要部(特徴的部分)
ア 事実認定
  証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 一般に作業用足場は、その用途上当然に、足場となる平板部の左右両側に二本の支柱と複数本の横桟からなる略梯子状の脚部を左右対称に設け、平板部と脚部の連結部分にヒンジ部を設けて脚部が折り畳み可能であるという基本的な構成を備えている。
(イ) 本件登録意匠の登録出願前の昭和63年9月1日に発行された「総合カタログ KYOKUTO」(極東産機株式会社発行)には、「スライドダイバ」と称するアルミ製台場の写真が掲載されている。同スライドダイバの意匠の構成は、以下のとおりである。
a 開脚の状態で、平面視横長長方形状の水平なスライド式天板を用いた足場部分を備え、同足場部分に対して左右に略105度の角度で開く脚部が存在し、脚部は、上部脚部と、上部脚部内に収納され得るやや細い下部脚部とに分かれた構成となっている(なお、写真からは必ずしも明らかでないが、乙2中の同製品を製造した株式会社ピカコーポレーションの昭和58年12月9日付け製作図面を参酌すれば、上記のとおりの構成であると認められる。)。上部脚部の上端は足場部分の前後幅と同幅であり、左右に末広がり状(略「ハ」の字状)に開いている。水平板の左右両端部に設けたブラケットと脚部支柱の上端部に設けたブラケットとは枢軸で枢着して連結されている。
b 上部脚部には2本の桟部が横張りされ、脚部最下端にはキャップが設けられている。脚支柱及び横桟は、それぞれ略四角柱状に形成されている。
c 折畳状態において左右の脚部支柱は左右互いに対向する形となっている(ただし、スライドダイバのうち品番62−5111、型式SD−200の製品)。
(ウ) また、上記カタログには、「アルミステージ(ピカコーポレーション)」として、細長い長方形の水平板の表面に、滑り止めのための円形状の小孔が3333の配列で千鳥足状に形成されている足場板の写真が、また、「スチールステージ(アルインコ)」として、細長い長方形の水平板の前後方向中央に、長手方向に沿って連続して上方へ突出した筋部を設け、その前後に1111の配列で千鳥足状に滑り止めのための円形状の小孔が形成されている足場板の写真が、それぞれ掲載されている。
イ 要部(特徴的部分)についての判断
 上記認定事実を基礎として、本件登録意匠の要部(特徴的部分)を認定判断する。
(ア) 本件登録意匠の要部は、以下のとおりであると認められる。
A 正面図及び平面図において、水平板の長手方向中央部の片側側面に把手部が存在する。
B 平面図において、水平板表面の前後方向中央に長手方向に沿って細幅帯状に余地部を設け、その前後に2121の配列で小円形が千鳥足状に形成されている。
C 側面図において、上部脚部全体の約5分の1の長さに相当する部分が、上部脚部の上端から左右垂直に垂下し、該垂下部に続く部分が、左右外方にやや末広がりに台形状となる。
D 折畳状態の正面図において、脚部の4箇所の端部は、左右互いにほぼ隙間なく対向する。
?(イ) この点について、原告は、第2の2(1)(原告の主張)ア(ア)のとおり主張する。
? しかし、原告の主張は、以下のとおり採用できない。
 すなわち、原告が本件登録意匠の要部であると主張する構成のうち、@正面図において、開脚の状態で、足場となる水平板、左右に略105度の角度で開く脚部が存在し、この脚部が伸縮可能に上部と下部とに分かれる点、A平面図において、穴部の多数存在する横長方形状の足場、左右に末広がり状の脚部、脚部に2段の梯子状の桟がある点、B右側面図において、上部脚部が左右外方にやや末広がりに台形状の脚部を形成し、該脚部には2本の桟部が横張りされ、下部脚部は足場の高さ調整をするため上部脚部に挿入可能となるべくやや細めに形成され、脚部最下端には補強部を設けてある点は、いずれも作業用足場においてありふれた公知の意匠であり、看者の注意を引く部分とは認められない(なお、本件登録意匠の足場には、表面に小円形があるだけで、穴部は存在しない。)。
 また、作業用足場の通常の使用態様からすれば、その裏面の構成は、看者の注意を引く部分とはいえず、原告が本件登録意匠の要部であると主張する構成のうち、C底面図において、水平板の左右長手方向中央部に縦直線状の補強部材が渡り込まれている点も、本件登録意匠の要部とすることはできない。
2. 被告各意匠の構成
? ? 証拠及び弁論の全趣旨によれば、被告各意匠の構成は、以下のとおりであると認められる。
(1) 被告意匠1の構成
ア 正面図
 正面図において、開脚の状態で、足場となる水平板と、同水平板に対して左右に略105度の角度で開く脚部が存在し、この脚部は伸縮可能に上部脚部と下部脚部とに分かれている。水平板の左右長手方向両端部には、表面にアールをつけた湾曲面を備えた端板がそれぞれ設けられ、同端板の前後両端部には、上縁部が端板の湾曲面と同じアールをつけたブラケットが取り付けられている。足場の左右長手方向両端部は、端板の湾曲面とブラケットの湾曲縁とによって緩やかに曲がる稜線を形成し、脚部支柱の外側面は、上記湾曲面と略面一となるように形成されている。
イ 平面図
 平面図において、横長長方形状の足場部分(水平板)と、上部脚部の上端を水平板の前後幅と同幅とし、左右に末広がり状(略「ハ」の字状)に開いた脚部があり、脚部には2段の梯子状の桟が設けられている。足場部分を構成する水平板の左右長手方向幅と前後方向幅は約3.5対1の割合に形成されている。水平板表面には、左右長手方向に水平板を4等分する3組(2本1組)の細い突条が形成され、各突条の前後両側には、左右長手方向両端部付近の余地部を残して、それぞれ1111の配列で円形状の多数の小孔(円形穴109)が千鳥足状に形成され、同小孔のうち水平板の前後方向両端に形成された小孔及び中央2列に形成された小孔の間には、さらに小さい径の孔(円形穴110)が上記小孔(円形穴109)と交互に形成されている。また、水平板の上記余地部の前後方向両端部付近には、上記小さい径の孔(円形穴110)よりも径の若干大きい小孔(円形穴112)がそれぞれ1個ずつ形成されている。水平板の長手方向両端部の端板の湾曲面には、前後方向に複数の筋線が設けられている。脚支柱及び横桟は、それぞれ略四角柱状に形成されている。
ウ 右側面図
 右側面図において、上部脚部は、上端から左右外方に直線状に末広がり(「ハ」の字状)に形成されている。上部脚部には2本の桟部が横張りされ、下部脚部は足場の高さ調整をするため上部脚部に挿入可能となるべくやや細めに形成され、脚部最下端には端具が設けられている。下段の横桟の両脇に、三角形状の伸縮調整部材が設けられている。
エ 底面図
 底面図において、左右長手方向に沿って直線状の補強部材が3本渡し込まれている。
オ 折畳状態の正面図、平面図
 折畳状態の正面図、平面図において、脚部の4箇所の端部は、ほぼ隙間なく左右互いに対向する。
(2) 被告意匠2の構成
ア 正面図
 正面図において、開脚の状態で、足場となる水平板と、同水平板に対して左右に略105度の角度で開く脚部が存在し、この脚部は伸縮可能に上部脚部と下部脚部とに分かれている。水平板の左右長手方向両端部には、表面にアールをつけた端板がそれぞれ設けられ、同端板の前後両端部には、上縁部に端板の湾曲面と同じアールをつけたブラケットが取り付けられている。足場の左右長手方向両端部は、上記端板の湾曲面とブラケットの湾曲縁とによって緩やかな曲線を形成し、脚部支柱の外側面は、上記湾曲面と略面一となるように形成されている。水平板の左右長手方向中央部の側面に把手部が存在する。 
イ 平面図
 平面図において、横長長方形状の1枚の天板からなる足場部分(水平板)と、上端の端を水平板の幅と同幅とし、左右に末広がり状(略「ハ」の字状)に開いた脚部があり、脚部には2段の梯子状の桟が設けられている。足場部分を構成する水平板の左右長手方向幅と前後方向幅は約4対1の割合に形成されている。水平板表面には、左右長手方向に凸条(7本)と凹状溝(6本)とが交互に形成され、凸条部分の表面には、多数の筋線が左右長手方向に刻設されている。水平板の長手方向両端部の端板の湾曲面には、前後方向に複数の筋線が設けられている。脚支柱及び横桟は、それぞれ略四角柱状に形成されている。水平板の左右長手方向中央部の側面には、略扁平U字状で、中央部側が肉厚で両端部側が肉薄となる把手部が設けられている。
ウ 右側面図
 右側面図において、上部脚部は、上端から左右外方に直線状に末広がり(「ハ」の字状)に形成されている。上部脚部には2本の桟部が横張りされ、下部脚部は足場の高さ調整をするため上部脚部に挿入可能となるべくやや細めに形成され、脚部最下端には端具が設けられている。下段の横桟の両脇には、三角形状の伸縮調整部材が設けられている。
エ 底面図
 底面図において、左右長手方向に直線状の補強部材(補強リブ)が1本渡し込まれている。
オ 折畳状態の正面図、平面図
 折畳状態の正面図において、脚部の4箇所の端部は左右互いに相当な隙間を空けて対向する。
3. 本件登録意匠と被告意匠1との対比
(1) 本件登録意匠の要部(特徴的部分)と被告意匠1の構成とを対比する。
 A 正面図及び平面図において、本件登録意匠には、水平板の長手方向中央部片側側面に把手部が存在する。これに対し、被告意匠1には存在しない。
 B 平面図において、本件登録意匠は、水平板表面の前後方向中央に、長手方向に沿って細幅帯状に余地部を設け、その前後に2121の配列で小円形が千鳥足状に形成されている。これに対し、被告意匠1では、水平板表面に、左右長手方向に水平板を4等分する3組(2本1組)の細い突条が形成され、各突条の両側には、左右長手方向両端部付近の余地部を残して、それぞれ1111の配列で円形状の多数の小孔(円形穴109)が千鳥足状に形成され、同小孔のうち水平板の前後方向両端に形成された小孔及び中央2列に形成された小孔の間には、さらに小さい径の孔(円形穴110)が上記小孔(円形穴109)と交互に形成され、これに加えて、水平板の上記余地部の前後方向両端部付近には、上記小さい径の孔(円形穴110)よりも径の若干大きい小孔(円形穴112)がそれぞれ1個ずつ形成されている。
 このように、本件登録意匠と被告意匠1の平面視における水平板表面の形状が大きく異なり、特に、本件登録意匠の水平板表面は、小円形が千鳥足状に配列されているのみであるのに対し、被告意匠1の水平板の表面には水平板を4等分する3組の細い突条が形成され、しかも千鳥足状に配列されているのは小円形ではなく、小孔(円形穴109)である点において、両者はかなり美観を異にする。
C 側面図において、本件登録意匠の上部脚部は、全体の約5分の1の長さに相当する部分が上端から左右垂直に垂下し、該垂下部に続き、左右外方にやや末広がりとなり、全体としてゆるやかな「く」の字状を形成していることにより、脚部全体が上部で引き締まってスマートな印象を与える。これに対し、被告意匠1の上部脚部には、垂下部が存在せず、上部脚部が直線状に左右外方に末広がりの形状を形成しているため、脚部全体が単調で特段の印象を生じさせない。
D 折畳状態の正面図及び平面図において、本件登録意匠と被告意匠1は、脚部の4箇所の端部が左右互いにほぼ隙間なく対向するという点で共通する。
(2) 以上のとおり、被告意匠1は、折畳状態の脚部の構成を除き、本件登録意匠の要部を具備していない。両者は折畳状態の脚部の構成において共通するが、この点は物品の性質上、看者の関心を引きにくい部分であるから、類似の美観を生じさせるとはいえない。また、本件登録意匠と被告意匠1とは、作業用足場の意匠において割合的に最も大きな部分を占め、看者が強く注目する部分である足場部分(水平板)が、本件登録意匠においては幅と長さの割合が約1対4と細長いのに対し、被告意匠1においては約1対3.5と、より安定した形状となっており、その結果、本件登録意匠が、前記脚部の垂下部の形状と相まって全体としてほっそりとしたスマートな印象を与えるのに対し、被告意匠1は、全体として太めのどっしりとした印象を与えている。さらに、開脚状態において、被告意匠1は、足場部分の両端部が湾曲面を形成し、脚部支柱の外側面と略面一となっていることから、足場の両端部から脚部にかけて丸みを帯びた滑らかな印象を与えるのに対し、本件登録意匠では、略四角柱状の脚部の上端部が足場部分の両端部側面に接して露出していることから、角張った印象を与えている。
 これらの点を総合すれば、被告意匠1を全体として観察したときに、本件登録意匠と類似の美観を看者に生ぜしめるとは認められず、両意匠が類似しているということはできない。
4. 本件登録意匠と被告意匠2の対比
(1) 本件登録意匠の要部(特徴的部分)と被告意匠2の構成とを対比する。
A 正面図及び平面図において、本件登録意匠と被告意匠2とは、水平板の長手方向中央部の片側側面に把手部が存在するという点で共通する。
B 平面図において、本件登録意匠は、水平板表面の前後方向中央に、長手方向に沿って細幅帯状に余地部を設け、その前後に2121の配列で小円形が千鳥足状に形成されている。これに対し、被告意匠2では、水平板表面に、左右長手方向に凸条(7本)と凹状溝(6本)とが交互に形成され、凸条部分の表面には、多数の筋線が左右長手方向に刻設されている。
 このように、本件登録意匠と被告意匠2とは、水平板表面の形状が大きく異なっており、このため看者の受ける美観は、大きく異なる。
C 側面図において、本件登録意匠の上部脚部は、全体の約5分の1の長さに相当する部分が上端から左右垂直に垂下し、該垂下部に続き、左右外方にやや末広がりとなり、全体としてゆるやかな「く」の字状を形成していることにより、脚部全体が上部で引き締まってスマートな印象を与える。これに対し、被告意匠2の上部脚部には、垂下部が存在せず、上部脚部が直線状に左右外方に末広がりの形状を形成しているため、脚部全体が単調で特段の印象を生じさせない。
D 折畳状態の正面図及び平面図において、本件登録意匠は、脚部の4箇所の端部が左右互いにほぼ隙間なく対向している。これに対し、被告意匠2は、相当な隙間を空けて対向している。
(2) 以上のとおり、被告意匠2は、把手部の構成を除き、本件登録意匠の要部を具備していない。両者は把手部の構成において共通するが、この点は物品の性質上、それほど看者の注目を引く部分とはいえない。また、本件登録意匠と被告意匠2とは、作業用足場の意匠において割合的に最も大きな部分を占め、看者が強く注目する部分である足場部分(水平板)の表面の形状が大きく異なり、そのため看者が受ける美観は大きく異なる。さらに、開脚状態において、被告意匠2は、足場部分の両端部が湾曲面を形成し、脚部支柱の外側面と略面一となっていることから、足場の両端部から脚部にかけて丸みを帯びた滑らかな印象を与えるのに対し、本件登録意匠では、略四角柱状の脚部の上端部が足場部分の両端部側面に接して露出していることから、角張った印象を与えている。
 これらの点を総合すれば、被告意匠2を全体として観察したときに、本件登録意匠と類似の美観を看者に生ぜしめるとは認められず、両意匠が類似しているということはできない。
 

〔論  説〕

  1.意匠の類否判断を正しく行うためには、まず本件登録意匠にかかる作業用足場という物品が固有する基本的な形態は何であるかを把握し、次に従来から公知の形態は何であるかを調査した後に、はじめて本件登録意匠が有する創作の要部、即ち特徴的部分を見い出すことができることをこの判決は教えている。
  このような手法による段階的な解明をすることなく、最初から全体を対比して、両意匠が混同するか否かによって意匠の類否判断を行う裁判所もあるが、意匠法は創作を保護する法律であって、商品の出所を保護する商標法とは違うから、類否判断をする目的が、意匠と商標とでは本質的に違うものである。この違いを、われわれはよく知っておかなければならない。
  この判決は、需要者が意匠を見たときの美感とか印象という感性的な現象を介して、その奥にある創作という原因を考え、本件登録意匠の創作部分を特徴のある要部ととらえ、この要部を被告意匠が有するか否かによって、意匠の類否判断を行うという正統な思考法をとっているのである。
2. 同一の意匠権侵害をめぐり原告は同一で、被告が別異の事件(東京地裁14(ワ)16938号平成15年3月28日判)においても、請求棄却の判決が出ているが、この事件の被告意匠は前記事件のイ号意匠に近似した意匠であった。

[牛木理一]