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2019年6月1日



 
近 況 雑 感

1.最近、意匠法についての大改正があり、改正意匠法(案)は去る5月17日に公布されました。施行日は、公布日から1年以内とあり、現在のところ未定です。

1.1 特許庁は、まず2018年8月6日には「意匠制度の見直しの検討課題」を発表しましたが、改正問題の対象は次の諸点についてでした。

(1)画像デザインの保護(物品の機能として記録された画像に限る。)➡意匠の定義の改正

(2)空間デザインの保護(建築物の外観,内装,トレードドレス)➡「意匠」定義の改正

(3)関連意匠制度の拡充(出願期間,存続期間)

(4)意匠権の存続期間の延長(出願日から25年)

(5)複数意匠の一括出願制度の導入(範囲の制限)

(6)物品の区分表の見直し

(7)図面の記載要件の緩和(図面作成の負担軽減)

 しかしながら、意匠法3条2項の規定の明確化については、法改正対象の検討事項には入っていなかったのです。

1.2 ところが、5月17日付「官報」には、「特許法等の一部を改正する法律案要綱」として、「第一 特許法の一部改正」においては、「一.特許権の侵害行為により生じた損害の賠償額の算定方式の見直し」(第102条4項)と「二.査証制度の創設」(第150条の2〜105条の2の10)、「第二 実用新案法の一部改正」として「一.実用新案権の侵害行為により生じた損害額の算定方式の見直し」(第29条1項及び4項)だけであるのに対し、「第三 意匠法の一部改正」としては、10項目に及んでいます。

 そこで、意匠法の一部を改正する法律案要綱の内容については、ここに添付する(別紙)において明記しますので、ごらん下さい。

 なお、私が、現行意匠法3条2項の適用を誤った特許庁審決と知財高裁判決と最高裁決定を批判した論説は、外部誌において今月10日頃に発表されますので、その全文内容は本HPの7月1日号に転載する予定です。

 

2.パリにあるルーブル美術館に行ったことがある人は、入り口前の広場にピラミッド型のガラス屋根の建物があることを見たことがあると思います。その建物のデザイナーの中国系アメリカ人のイオ・ミン・ベイさんが、ニューヨークの自宅で死去されました(102才)。

 わが国にはこれを模造したコピー物が各地で見られますが、例えば、新潟県長岡市にある帝京大学付属高校のプールの屋根部として使用されているのを、新幹線の列車の窓から見ることができるのです。その建物のデザインについては許諾を得ているのでしょうか。

 

3.有名女優の杉葉子さんが結腸ガンのため5月15日に死去された(90才)。昭和22年東宝のニューフェイスとして入社し、昭和24年に「青い山脈」でヒロイン新子(しんこ)に抜擢されてデビューしました。この映画は、新聞連載の石坂洋次郎氏の小説の映画化であり、相手役は池部良さんでした。また、若山セツ子さんもいました。

 

4.ロンドンにあるあの大英博物館で、5月23日に「日本マンガ展」が開幕されましたが、同展は若者を中心に前売り券の販売が好調だというのです。私もその昔行ったことがある大英博物館における催しとしては画期的なもので、最大規模の「Manga」展であるといわれていますが、英国人は日本マンガの何に対し興味を持っているのでしょうか。

 英国でも「ONE PIECE」や「NARUTO」などのキャラクターの原画に人気が高いようですが、日本語によるシリーズマンガや四コマ漫画については言葉の問題があるので、関心は薄いと思います。

 そういうわが国においては、英国のウィリアム・モリス(1838〜1896)に関連する展覧会が、東京都と横浜市の3か所で開催されています。私も、モリスのことは意匠法の研究を始めた最初の頃からよく承知していますが、彼は産業革命後の大量生産を批判し、手仕事の復興を目指して工芸品や室内装飾を手がけた人物として有名です。(読売新聞2019年5月23日17頁)

       

            (読売新聞2019年5月23日17頁)

 私が、モリスの名前や作品のことをよく知るようになったのは、ハーバード・リードの著書「Art and Industry」からであり、ここに登場するJ・ウェッジウッドと対立する存在として紹介されているのです。ウェッジウッドは、黒色コーヒーカップのプロトタイプ・デザインの創作者として著名ですが、これは成型品として量産することができるから、一般庶民も広く所有することができるからです。(牛木理一「意匠法の研究」初版 1974年)

 もう1人、民芸運動家の柳宗悦(お茶の水女子大学名誉教授)さんが1月16日に死去された(101才)という記事が新聞に出ていました。

 

5.ところで、物理学者のアインシュタイン,スーピーの生みの親チャールズ・シュルツ,映画監督のスピルバーグ,マイクロソフト創設者ビル・ゲイツは、いずれも内向的性格の人物だと、スーザン・ケインさんはその著書で書いているというのです。偉大なアイディアや美術、発明の一部は、「自分の内的世界に耳を傾け、そこに秘められた宝を見つけるすべを知っていた物静かで思索的な人々によるものだ」と訴えているというのです。(新潟日報2019年6月1日「日報抄」から)

 われわれ弁理士という実務者は、発明者や意匠創作者の立場に立って思索し納得して、はじめて明細書や意見書等が書けるのだということに気付かなければならない、と私は常日頃思っており、主張しているのです。

 前記著書は、内向型の人はクリエイディブな発想に優れ、粘り強さや緻密さという能力があるというのです。ただ専ら内向型人間で終わってしまっては人間としての価値がないから、これを外部に表現して言動することによって、その実績が客観的に評価されるのですから、ノーベル賞の対象にもなり得るのです。本庶佑先生が、これに近いようなことを述べていることを、私は知っています。

 

 

6.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の4件について紹介します。

 

(1)登録商標「BULK AAA」無効審決取消請求事件:知財高裁平成31年

   3月7日(2部)判決<請求認容/審決取消>➡G−265

(2)登録商標「プーマ図形」無効審決取消請求事件:知財高裁平成31年3月26

   日(2部)判決<請求棄却>➡G−266

(3)登録商標「プーマ図形」無効審決取消請求事件:知財高裁平成31年3月26

   日(2部)判決<請求認容/審決取消>➡G−267

(4)出願意匠「卓上敷マット」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成31年4月

   18日(2部)判決<請求棄却>➡B1−64

 

 

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