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2019年5月1日



 
近 況 雑 感

1.京都大学特別教授である本庶佑先生は、2018年のノーベル医学・生理学賞を受賞された人物であるところ、本庶先生の研究を基に開発したがん免疫治療薬「オプジーボ」についての特許権実施契約を、小野薬品工業(株)(大阪市)と締結していたが、同社から本庶先生に支払われた26億円は、契約内容に納得できない問題があるとして現在、全額が法務局に供託されており、自分は直接受け取っていないというのです。

 その理由は、会社が発明者であり特許権者である本庶先生に支払うべき対価が安いからであるというのです。両者の契約内容は明らかにされていないから不明ですが、会社が現在発明者であり特許権者である本庶先生に支払うべき対価が、会社のあげている利益と比して安価なのでしょう。

 本庶先生は、ノーベル賞の賞金を原資にし設立した「本庶佑有志基金」に、前記オプジーボの販売で得られる対価を充てたいと考えられているというのですが、果たして小野薬品側が今まで以上の金額を対価として支払うことに納得するのでしょうか、わかりません。しかし、これはあくまでも特許権の存続期間中の対価ですから、もし期間が満了した後はどうなるのか、という問題が将来残るのです。いずれ小野薬品側から提案があるでしょう。

 この問題において私が黙っていられない問題は、「発明力」より「クレーム力」というモットーであり、「特許請求の範囲」の請求項に、いかなる要件を有して権利主張しているのかであり、代理人弁理士が作成するクレームの記載や構成要件によって、特許権の範囲はいかようにもなるのです。したがって、「クレーム力」に因るものというのは、記載している字句が表現している意味内容が有する力のことをいうのであり、その力を生み出すのは弁理士の才能なのです。

 そして、特許権者が対価という経済的利益を取得することができるのは、発明者の発明力ではなく、弁理士の「クレーム力」であることを国民は忘れてはならないのです。だからこそ、発明者や特許権者は、弁理士にこそ感謝しなければならないのです。

 

2.かつてアインシュタインが一般相対性理論を基に存在を予言していた地球から約5500万光年離れた「M87」という銀河の中心部にある巨大ブラックホールが今や写真撮影され、われわれ地球上の人類はそれをTVや新聞などで見ることができたのです。この撮影は、わが国の国立天文台など世界約80か国の研究機関による国際チームが、4月10日に初めて成功したのです。画像によると、オレンジ色に輝くガス体の中に黒い「穴」が浮かび上がっているが、この「穴」こそがブラックホールの正体なのです。本体は、太陽の100万〜100億倍の質量を持つといわれ、今回の撮影により宇宙の成り立ちの解明につながると言われています。(読売新聞2019年4月11日1頁)

  

 

3.わが国の天文台がブラックホールの撮影に成功したと大きく新聞等で報道されたのは4月11日の朝刊1面でしたが、その後4月16日の朝刊には、元国立天文台長で、ハワイに建設された光学赤外線望遠鏡「すばる」計画の責任者である海部宣男さん(75才)が4月13日に膵臓がんで死去されたとの記事が顔写真入りで掲載されていました。新聞には新潟県出身とありましたが、宣男さんは3人兄弟の二男で、父親は当時新潟地方裁判所の判事で、佐渡相川支部長をされていたと聞いています。

 私がなぜそれを知っているかといえば、私と家族は昭和49年(1974年)ごろから鎌倉市七里ガ浜2丁目に住んでおり、父親の海部弁護士(故三宅正雄判事と同期)とは、朝の出勤時に江ノ電の「鎌倉高校前」駅で出会って、いろいろな話をさせてもらったのです。海部先生の長男はNHKの外信部記者で、中近東方面へ行かれていましたし、三男は弁護士をされています。

 

4.また、有名な漫画原作者が死去されました。小池一夫さん(82才)であり、中央大学法学部卒業で大学院へ進学されましたが、劇画の魅力にひかれ、漫画家斉藤睦夫の会社に入社され、「ゴルゴ13」などの原作を担当されたといわれています。独立後は、出世作となったのが時代劇が「子連れ狼」(画・小島剛夕)であり、昭和45年〜51年に「漫画アクション」(双葉社)に連載された漫画は、映画やTVでもヒットし、漫画原作者としては一時代を築いた人物でした。小池さんは後進の育成にも力を入れ、昭和52年に独立した「小池一夫劇画材塾」からは高橋留美子や原哲夫らの人材を出世させ、長年、大阪芸術大学教授としても教鞭をとられていました。

 私は、今から数年前に同大学で開催された「日本マンガ学会」の総会・大会において、同学会員としてはじめて同じ卒業大学の先後輩として挨拶を交わしたのです。

 小池一夫さんは漫画原作者であるところ、一審被告Yから、著作物の独占的利用権の設定を受けたと主張する原告会社(株)MAGARAK(劇画村塾(株))が、小池一夫らに対し、独占的利用権の侵害に基づく損害賠償請求訴訟を起こし、東京地裁は原告の主張を認め、約2億4000万円の支払いを命じたため、双方がそれぞれ敗訴部分について控訴及び付帯控訴をしていたのですが、知財高裁(2部)平成27年(ネ)10057号は平成29年9月28日に、原審判決を変更し、一審被告らに、一審原告に対して約7000万円と350,000米ドルの支払いを命じた判決を言い渡したのです。〔2019年5月7日追記〕

 膵臓がんと中央大学法学部とを合わせると、4月19日に死去された保岡興治さん(79才)がいます。鹿児島県奄美大島出身の弁護士でしたが、法務大臣を歴任された政治家でもあり、徳田虎雄さんと激しい選挙戦をした人物として知られ、私は日本弁理士政治連盟会長時代にお会いし、いろいろ話したことがあります。

 

5.かつて本欄で紹介したことがある2人の画家(?)について再び紹介したい記事を新聞で見ました。1人はマンガ家で京都精華大学教授の竹宮惠子さん(69才)であり、日本マンガ学会会長でもありますが、「カレイドスコープ」という名称の展示会が川崎市民ミュージアムで4月14日まで開催されていましたし、4月27日からは、「京都国際マンガミュージアム」で開催されています。竹宮さんは、徳島大学を中退して上京し、「リンゴの罪」という漫画でデビューした後、漫画家の萩尾望都さん(69才)と、練馬区の長屋で共同生活を始め、「大泉サロン」と名付けた“女性版トキワ荘”で競い合って作品を発表していたといわれています。(産経新聞2019年3月31日16頁から)

 もう1人は、フランスの画家であると同時に建築家でもあったル・コルビュジエさん(1889〜1965)で、午前中はアトリエで絵を描き、午後は事務所で建築の仕事をしていたというのです。その彼の展示会が現在、彼が建築設計した上野の国立西洋美術館で開催されています。

 産経新聞の記事によりますと、「建築は現実的な条件を無視しては作れないが、描くことは自由で、そこで生まれた発想が建築につながることもあり」「建築と美術は彼にとって車の両輪であった」というのです。そのことは、現在開催中の展示会を見ればよくわかるというのです。(5月19日まで)

 ル・コルビュジエの弟子である板倉準三さんが設計した鎌倉市の鶴岡八幡宮境内の源氏池に向かって立つ「鎌倉文学館鶴岡ミュージアム」が修復され、6月8日に正式にオープンすることになりました。(産経新聞4月28日15頁)〔2019年5月7日追記〕

 

6.最近、「平成28年度特許庁産業財産権制度問題調査研究」の一つである「意匠制度の利便性向上に向けた運用の見直しについて」を、ネットで入手したので読んでみた。この「報告書」の内容は、意匠制度の利便性の向上のため、@願書及び図面の記載、A参考図の取扱い、B組物の意匠の運用に着目して、具体的な改善ニーズを把握し、運用改善の方向性について検討する基礎資料とすることを目的とするものとしています。

 そこで、私はこの報告書を全部通読し、2つの用語に注目し、現行法制化の法思想との矛盾を見出しているのです。その用語とは「意匠上の特徴」(12頁)であり、「意匠の特徴」(20頁)であり、現行意匠法下の「意匠法施行規則」(平成11年改正)第6条の規定との関係や矛盾についてであります。

 私は、「施行規則」第6条第3項の規定は誤りであるから早く削除すべきであることを、何回か主張して来ているのです。けだし、そのような規定は、出願人の出願意思を無視するような規定だからです。換言すれば、意匠登録出願の実務を知らない者の一般的な考え方なのです。こういう私の指摘に対して特許庁はいまだ、何も答えていないのです。今日、出願意匠について前記のような説明をすることは、まさに矛盾であることを自ら告白しているようなものです。

 それでは、国民は、特許庁発行の前記報告書の内容を信用するわけにはいかないのです。

 前記施行規則第6条第3項は、提出〆切間近になって、当時の特許庁審議室長が思い付きで書き加えたのではないかと思うのです。しかも「記載を考慮してはならない」という命令調の動詞を施行規則に規定することは、国会の立法権を無視していると指摘されても仕方がないのです。 

 

7.私は最近、特許庁発行の情報をネットで知りましたが、それは「意匠法施行規則及び意匠登録令施行規則の一部改正案に寄せられた御意見とご意見に対する考え方」なるものです。(2019年4月26日付)その中には施行規則第6条に係る記事は全くありません。

 しかし、もし私は事前に知っていれば、意見を提出したところでした。〔2019年5月7日追記〕

 

 

8.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の7件について紹介します。

 

(1)商品形態「サックス用ストラップ」不正競争行為差止等請求事件:東京地

   裁平成30年3月19日(民29部)判決<請求棄却>➡C1−82 (別紙

(2)商品形態「サックス用ストラップ」不正競争行為差止等請求控訴事件:知      財高裁平成31年1月24日(4部)判決<原判決変更・請求認容>

   ➡C1−82−1

(3)「骨切術用開大器」特許権侵害差止等請求事件:東京地裁平成30年12月21

   日(民40部)判決<請求認容>

   ➡E−25

(4)商品形態「携帯用ディスポーザブル低圧持続吸引器」不正競争行為差止等

   請求事件:東京地裁平成30年12月26日(民29部)判決<請求棄却>

   ➡C1−83

(5)「虚偽事実の流布」不正競争行為差止等請求事件:東京地裁平成31年2月

   20日(民29部)判決<請求一部認容>➡C2−43

(6)登録商標「LOG」無効審決取消請求事件:知財高裁平成31年2月27日

   (1部)判決<請求棄却>➡G−263

(7)登録商標「mainmark」無効審決取消請求事件:知財高裁平成31年

   2月28日(4部)判決<請求棄却>➡G−264

 

 

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