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2019年1月1日



 
近 況 雑 感

 謹賀新年

 弁理士の職務は、依頼者のために文と理のシナジー効果を発揮する仕事をすることを使命としているものと心得ており、同時に知的財産法分野における諸問題を本質的に研究することを本分としております。

 本年も相変わらずよろしくお願い申し上げます。

 

2.明仁天皇陛下は平成30年12月23日に85才の誕生日を迎えられ、今年4月末の退位を見据え「天皇としての30年間の旅を終えようとしている」ことを語られたが、日本国憲法上、国家と国民の象徴として頑張って来られた日本人の代表として、われわれ国民はご苦労様でしたと申し上げ、伴侶の美智子皇后と幸せな人生を続けて下さいと申し上げたいと思います。「70,80才は働きざかり」とは、京都大徳寺大仙院住職尾関宗国師が言われている言葉です。

           (朝日新聞2018年12月23日1頁)

 

3.私は、本欄の昨年12月号で、秋篠宮が天皇の代替わりに伴う皇室行事「大嘗祭」をめぐり、山本宮内庁長官に、現在の宮中の「神嘉殿」を活用し費用を抑制する具体案を示したことを紹介しましたが、このことについて宮内庁の西村次長は、12月25日の定例会見で、「一つの考え方」として長官が事前に聞いていたと認めたという記事が、朝日新聞12月26日に出ていました。しかし、古来皇位継承があった際は、常設の施設ではなく、臨時の宮を建ててきた歴史的経緯を踏まえて、従来どおり「大嘗宮」を新設して行うことにしたというのであります。

 

4.わが国の特許庁は、昨年8月9日から行政サービスの品質向上を図るため、「デザイン統括責任者(CDO)」を設置し、その下に「デザイン経営プロジェクトチーム」を立ち上げました。これによって、ユーザーの立場で行政サービスを刷新し、幅広い利用者にとっての利便性向上に努め、競争力の源泉となる知的財産の強化を与えるというのですが、意味がよくわかりません。

 しかし、そのような行政をするよりもまず行うべきことは、現行意匠法の改正ではないでしょうか。そして、そのためには、意匠法という知的財産法の本質と存在意義とをよく考えた保護のあり方を究明することです。

 

5.特許庁から「産業競争力の強化に資する意匠制度の見直しについて」と題した報告書が発表されていますが、その中で私が関心を持っているのは、@空間デザインの保護,A意匠権の存続期間の延長,B複数意匠の一括出願の導入,C意匠法3条2項(創作非容易性/創作力)の水準の引き上げです。

 この中で私が特に関心を持っているのはCです。このテーマについては、現行意匠法の立法時における変更経過を全部紹介した論文を私は発表していますところ、最近取り扱った審決取消請求訴訟事件において、意匠法3条2項の規定趣旨を誤解して適用した審決を肯認した知財高裁判決に対し、上告受理の申立て(民訴法318条1項)を最高裁にしましたところ、不受理の決定を受けてしまったのです。

 しかし、これは誤りであることを論じた論文を、この正月休みに作成して発表することにしています。そして、この拙稿は、前記法3条2項の規定の改正問題を裏付ける有力な証拠になり得るでしょう。

 また、@の空間デザインとは「トレード・ドレス」と呼ばれる分野のデザインで、これは建築の著作物として著作権法の保護対象となるものではないかと私は思っていますから、これを意匠法の改正によって保護対象とするということには疑問があります。

 そうすると、著作権法10条1項が著作物の例示として挙げている「5.建築の著作物」との関係を、どう区別して理解したらよいのでしょうか。

 他方、「空間デザイン」という作品を意匠法で保護したいと考えているのであれば、法改正が必要ですが「タイプフェイス(印刷用文字書体)デザイン」という作品を、意匠法8条(組物の意匠)を改正して拡大し、保護対象としてほしいのです。この問題についても、私はすでに発表しており、文字の書体デザインについては、すでに多くのタイポグラファー達が創作し発表して利用されていることは周知の事実です。(裁判例もあり)

 しかし、そのような新書体デザイン群を保護する法律がわが国にはまだないので、野放し状態になっているのです。これでは不公平であり、法治国家としては恥ずかしい限りですから、何らかの保護法が早く必要なのです。

 

6.私は毎朝、朝日新聞の社会面と「声」欄とは必ず目を通していますが、12月27日の声欄には、私も関心を寄せている「文化にしわ寄せ著作権保護延長」の題名の投稿記事が出ていました。

 投稿者は、神奈川県無職の富田晶子さん(66才)ですが、これによると、富田さんの夫が有志と始めた「青空文庫」は、著作権が切れた作品をインターネットで公開しているところ、作者の死後50年で著作権が切れると、その作品は自由に利用できるから、毎年元旦には、新たに著作権が切れた作家の作品を公開しているというのです。

 ところが、著作権の保護期間が、作者の死後50年から70年に延長されることになったので、青空文庫にとっては、来年1月から20年間は、新しい著作権の切れる作家の作品が公開できなくなったのです。これについて富田さんは、わが国はTPPという経済協定に組み入れられ、著作権保護期間の延長となったことは残念でならないと嘆いておられます。この協定は、最初USAが主張していたのですが、加入していません。だから、わが国も加入しなければ著作権の保護期間の延長はないのです。

 これに対して、特許権や意匠権の保護期間はどうでしょうか。

 特許権の場合は、特許出願の日から20年をもって終了する(特許法67条1項)とありますが、特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法規定による許可その他の処分を的確に行うには、相当期間を要するものの場合には5年を限度として期間延長をすることができますところ、医薬品には多いのです。

 しかし、最長5年という延長では、前記著作権の存続期間と比較すれば、いかにも短い期間であり、新技術の開発研究のために要した投資費用の額や時間の長さを考慮すれば、基本的な存続期間は、現行法の出願日より20年ではなく、30年〜50年の長期間に変更してもよいのではないでしょうか。

 また、意匠権にあっては、これを出願日から25年間という改正が提案されていますから、特許権についてもこれに倣って、もっと長い期間保護することは現実の要求となってよいと思うのです。

 なお、実用新案権や特許権の存続期間が満了して権利が消滅したから一般に開放されたとしても、実施して市場を独占しているような事情がある場合には、不正競争防止法2条1項1号又は2号の適用が十分あるとした判決を出した事件の裁判例を、今月の「裁判例研究コーナー」の(1)(2)において紹介していますから、ごらん下さい。 

 

7.商品の買い主(注文者)がネット販売で苦労するのは、画像に表示されている現物を手に取って見て確認することができないことです。だから、その商品の産地名も著作権表示Ⓒや商標権表示Ⓡの有無は、画像上では不明です。

 朝日新聞(夕刊)2018年12月5日10頁によると、2020年東京五輪のマスコット「ミライトワ」の偽物ピンバッジを販売目的で所持していたとして、ある男(48才)が昨年10月に、著作権法違反容疑で警視庁に逮捕され、起訴されたという記事が出ていましたが、同じような商品は今もネット上に多数出回っているのです。

 この競売サイト「ヤフオク!」は、昨年10月に「東京五輪 レア商品 新品」などの題名でピンバッジが出品されたところ、入札は価格1,000円から始まり、終了間際には1,100円の入札があり、双方で9回の入札を繰り返し、5,000円余りで落札したそうです。

 問題はその後であり、サイトの案内にしたがって氏名や送付先などを記入すると、3日後に出品者からサイト内の連絡機能を通じて「発送しました」との連絡があり、2日後に、ハート柄のピンク色のビニールでくるんだ小包が届き、親指ほどの大きさのバッチが入っていたそうです。ところが、警視庁が大会組織委員会に確認すると、同種のバッジは作っていないし、どの企業にも製造を許諾していないという返事でした。そして、入札前に書いてあった発送元は「群馬県」でしたが、実際の発送元の住所は中国大連市の郵便局だったのです。

 

 

8.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の4件について紹介します。

 

(1)商品形態「テラレット」不正競争行為差止等請求事件:東京地裁平成29年

   6月28日(民40部)判決<請求認容>➡C1−81

(2)商品形態「テラレット」不正競争行為差止等請求控訴事件:知財高裁平成

   30年2月28日(2部)判決<一部変更>➡C1−81−1

(3)「南急標章」不正競争行為差止等請求事件:東京地裁平成30年9月12日

   (民29部)判決<請求認容>➡C2−41

(4)冒認出願による特許権移転登録手続等請求事件:東京地裁平成30年11月15

   日(民47部)判決<請求認容>➡J−11

 

9.このHPに掲載されている私の論文,論説には著作権が与えられていますので、無断複製を禁止いたします。引用される場合には、必ずその出所を明記して下さるようにお願いいたします。 All Rights Reserved.


 
    牛 木 内 外 特 許 事 務 所
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