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2018年3月1日



 
近 況 雑 感

1.知財高裁所長の清水節さんの講演が、日本弁理士会研修所主催で、東京では2月14日、大阪では2月15日に行われました。テーマは「最近の知的財産訴訟の現状と弁理士の役割」でありますので、対象は現役の弁理士が、特許権,意匠権等の侵害訴訟や審決取消訴訟を原告又は被告から請け負ったときに対処するための心得は何であるかを、具体的事例を挙げながら詳細に説明していただいたので、長年、出願等の特許庁相手の権利取得のための仕事をして来た弁理士にとっては、こんどは裁判所相手の仕事になることから、貴重な時間であったのです。

 私は個人的には、AIPPIの判例研究会や弁理士会の知財訴訟委員会などの関係で、清水さんと顔を合わせて話をする機会は多々ありますが、スクリーンを見ながらの講演は初めてでした。

 私は、本欄において、長年、多くの知財事件の裁判例を紹介しかつ批評していますが、裁判所に提出された書面による事実や証拠については見聞することができないとしても、紛争解決のための手段である裁判については、やはり裁判官の立場に立って事案を公平に理解した上で判断しなければならないと心得ていますので、清水所長の講演はその意味でも有難い内容のものでありました。私は、使用されたテキストは、法令集と並んで座右の書の一つとさせてもらい活用したいと思っています。

 

.わが日本弁理士会の特許委員会が今年2月19日は東京、2月20日は名古屋、2月1日は大阪で、公開フォーラムを開催しましたが、今年の同委員会のフォーラムは極めて質の高いものでした。

 第1部は「こうしたい審査制度」、第2部は「近時の裁判例の傾向分析及び判決から見た明細書の留意事項」、第3部は「審査ハンドブックにおける3Dプリントデータ関連の事例」、第4部は「IoT関連発明について一出願時の留意事項」、第5部は「第四次産業革命時代の対応」という、きわめてレベルの高い内容の議論でありました。この第四次産業革命については、最近特許庁が発表し意見募集した「知的財産推進計画2018・知的財産戦略ビジョン」に対応することができる議論であると思います。この件については、弁理士会の知財訴訟委員会でも意見をまとめています。

 第四次産業革命とは、AI(人工知能)による新産業時代に入ったことを意味するから、これに特許制度はどう対応していくべきか、と弁理士業界に問いかけているのです。

 

3.ところで、私は少年時代から遊び半分で俳句や川柳を創作していましたが、金子兜太という俳人の人柄や作風には関心を持っていましたところ、2月20日に死去されました(98才)。金子さんは、1943年に東京帝大経済学部卒業の日本銀行マンでした。海軍に任官され、主計中尉としてトラック諸島へ行き、餓死者が相次ぐ中の1945年8月15日の終戦で無事帰国されたとのことです。医師の父の影響で俳句を始め、学生時代には俳誌「寒霜」などに投句し、加藤楸邨に師事したということです。季語を無視した俳句に対して私は反感を持った時もありましたが、心情を唄うのが俳句だと解すれば、抵抗はなくなりました。

 金子さんは俳句を「自由な魂のうた」として、多くの人々に開かれたものとし、戦後俳句の旗振り役として朝日俳壇の選者の1人でもありましたが、その中に「銀行員等朝上り蛍光す烏賊のごとし」「弯曲し火傷し爆心地のマラソン」に代表されるように、前衛俳人の第一人者でありました。

 同じ新聞のニュース欄に、三橋国民(クニタミ)という造形美術家が2月4日に97才で死去したとの記事が出ていましたが、この人も戦時中はニューギニアに出征し、部隊がほぼ全滅する中、重傷を負いながらも生還し、過酷な戦争体験をモチーフにした彫刻や絵画を創作していたというのです。

 2月には有名人の死去はまだあります。その1人は水俣病患者のことを小説「苦海浄土」に描いた石牟礼道子さん(90才)で、2月10日に死去されました。天草から生後、水俣に移住し、短歌で才能を認められ、詩人谷川雁らと同人誌に参加しましたが、1968年に水俣病対策市民会議の設立に参加し、患者らの闘争を支援されていました。

 もう1人は名脇役として著名な大杉漣さん(68才)です。徳島県小松島市の出身ですが、撮影終了直後に腹痛を訴え、2月21日急性心不全を起こしたとのことです。強い個性的なキャラクターの持ち主でした。

 

4.おそくなって追加の訃報ですが、佐野文一郎さんが昨年12月22日に逝去されました(92才)。文部省の著作権課長時には現行著作権法(1970年公布)の生みの親であり、その後、文化庁長官や文部事務次官を歴任された大物の1人です。(3月5日記)

 

5.私の出身地の新潟県長岡市は、昭和20年8月1日夜、米軍B29による焼夷弾攻撃を受けて焼け野原と化したことは、かつて本欄でも書いたことがあり、長岡駅近くにある「長岡戦災資料館」では毎年、いろいろな催しがあることを紹介しましたが、2月17日の新潟日報によると、長岡空襲の悲劇を伝える紙芝居が完成したことから、その贈呈式と公演が長岡市の表町小学校で行われたとのニュースが写真入りで掲載されていました。これは2012年に死去された七里アイさんの空襲体験を原作として、紙芝居作家の諸橋精光さん(64才)が原画と脚本を創作し、市内の紙芝居上演グループ「新潟ひょうしぎの会」の今井和江さん(64才)に手伝ってもらい、20枚にまとめたものです。

 この紙芝居は、市内の小学校で平和学習に使われるほか、前記長岡戦災資料館(0256-36-3269)でも貸し出されているそうです。

 

6.もう一つの話題です。以前、本欄で紹介したアニメ「この世界の片隅に」(漫画家・こうの史代原作)に登場する広島県呉市にあるこうの史代さんの祖母の宅地をこうのさんが市に寄付したことから、ここを「聖地」として市が整備することにしたというニュースが朝日新聞2月22日号に掲載されていました。主人公すずが嫁いだこの場所からは、隣接する広島市への原爆の破裂風景が見えたのでした。

 

 

7.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の5件について紹介します。

 

(1)登録商標「 」無効審決取消請求事件:知財高裁平成29年12月25日

  (1部)判決<認容/審決取消>➡G−246

(2)登録商標「ベガス」不使用取消審決取消請求事件:知財高裁平成29年12月

   25日(1部)判決<認容/審決取消>➡G−247

(3)出願商標「雅 MIYABI+図形」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平

   成30年1月25日(3部)判決<請求棄却>➡G−248

(4)登録商標「資格の学校」不使用取消審決取消請求事件:知財高裁平成30年

   2月19日(4部)判決<請求棄却>➡G−249

 

 

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