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2016年7月1日



 
近 況 雑 感

くまモン」は、熊本県が著作者(株式会社グッドデザインカンパニー)から著作権の譲渡を受けて独占的に使用している著作権者であることは、以前の本欄においても紹介しましたが、その「くまモン」のキャラクターの使用は、熊本県人であれば予め県に使用申請をすれば、自社の商品や役務の販促目的であっても無料で使用することができることになっています。

 ところが最近、人形焼の2つの業者が、著作権者の熊本県に無断で製造販売をつつけたため、県は今年3月と6月に県警に告訴したのです。著作権の侵害行為に対しては、民事責任のみならず刑事責任も追及されます(著法119条)から注意を要しますが、刑事事件はすべて警察が調査し立証し、検察庁が訴訟遂行のための仕事をやってくれますから、弁護士や弁理士は不要になります。

 このような著作権者である熊本県の著作物についての無料開放の方針は、県産品の販促効果を出すためのきわめて積極的な政策であり、県民のために経済的効果をもたらしているといえるのです。

 そこで、私から熊本県知事にアドバイスをしたいことは、「くまモン」を一人ぼっちのオリジナルキャラクターにしておかないで、ファミリーを有するストーリーキャラクターにしてアニメを制作すれば、登場人物らの活動によって経済的効果は一層高まり、収益は倍増することになるだろうと思います。子供のキャラクターは大地震後に誕生したとかして。

         

 

さて、今月10日には参議院議員の選挙が行われますが、その争点の1つに日本国憲法の改正問題があります。

 朝日新聞4月18日号(月)の文化欄によりますと、舞踏家の笠井叡さんが、国分寺市立いずみホールで、「日本国憲法を踊る」と題した新作公演を開くという記事が出ていました。この記事によると、「全ての身体は時代や歴史の記憶。その身体が生みだす言葉を頭より先に身体で感じたい」という思いが、笠井さんを「人が人であることの意味を問う究極のことば」であることが、憲法に向かわせたというのです。

 その舞台には、笠井さんを含む約20人のダンサーが立ち、ベートーベンの交響曲第3番「英雄」で始まり、昭和20年8月15日の玉音放送で終了というストーリで、笠井さんとしては、「反対や賛成といった理屈に自信を落とし込む前に、己の身体で憲法をことばで『体感』してもらいたい。」といわれています。

 このような笠井さんの言葉は、私自身、小学生時代を太平洋戦争下で過ごし、昭和20年8月1日に新潟県長岡市という地方都市で米軍空襲という現場を体験しているからこそ理解できるのであり、そこから第9条は誕生しているのだと実感しているのです。沖縄には昭和20年3月に米軍が上陸し、日本軍は住民を巻き込んで6月23日まで戦争していたのです。

 最近、どういう理由からか不明ですが、わが国では満18歳以上の少年少女に選挙権が与えられるようになりました。選挙のことは憲法条項(43条1項)ですから、彼らには日本国憲法の内容をよく読んで勉強してもらいたいと思います。(例えば「日本国憲法」小学館 540円) 

 

3.日本マンガ学会の第16回大会が6月25日・26日に東京工芸大学(中野区)で開催され、同学会の理事でもある私は参加しました。1日目には4つの教室に分かれて20テーマについて大学関係者らによる「研究発表」と2つのテーマについてのラウンドテーブルが行われ、2日目にはシンポジウム「学校とマンガ」が1部と2部とに分けて行われマンガ家も3人登場しました。

 

 このうち「シンポジウム」は、第1部は「マンガ教える」、第2部は「マンガ教える」と分れており、マンガ学部やマンガ学科を有するわが国の芸術系大学の教授らやマンガ家が報告をしました。また、これらの大学に入学する学生は、プロのマンガ家を目指していることがわかりましたし、中国や欧州からの留学生もいることを知りましたし、こういう人たちも大会に参加して話をよく聞いていました。

 来年の日本マンガ学会の大会は、新潟市で開催する予定ということですが、これには新潟市が積極的に勧誘しているとのことです。同人誌グループの多い新潟市(大学ではなく)で大会を開催するのは2回目です。

 

第16期文化審議会著作権分科会の「法制 基本問題小委員会における当面の検討課題及び検討の進め方について」(案)が発表になったので、検討してみましたが、up-to-dateな問題がないので失望しています。

 それは、私が以前から指摘している昭和41年4月に発表された答申による第1案についての検討です。(➡第1−30参照)

 即ち、昭和45年著作権法2条2項の立法経過を見ると、この規定は暫定的なものであり、美術の著作物を量産品に利用した場合の著作権の効力の限界、例えば漫画キャラクターの絵画を物品の模様デザインとして使用した場合の著作権の効力のいかんや意匠法による意匠権との関係いかん等についての検討です。意匠法、商標法の工業所有権との間の調整措置を講ずるとする第1案の採用が困難な場合は、著作権制度の改正には、美術工芸品を保護することを明らかにするだけで、第1案は将来の課題として考慮すべきものとし、第2案が採用された次第です。

 しかしながら、今回の第16期審議会においても、このかつての宿題が忘れ去れてしまっており、残念なことです。(以上につき、牛木「現行著作権改正時の宿題」コピライト 2010年9月号参照)

 また、知財高判平成27年4月14日の理由説明に対しては多くの批判があるように、やはり応用美術品をめぐる著作権法と意匠法との関係についての古くて新しい問題を、文化庁では認識しているはずなのに看過しているのは、いかがなものでしょうか。

 しかし、小委員会(第1回)への出席者名簿だけは20名を選出していますが、前記問題点について積極的かつ合理的な意見を申述できる委員(学者や弁護士)はほとんど見当たらないのです。紋谷暢男先生が偲ばれます。  

 

ある問題点から私が個人的に注目していた英国のEUへの残留か離脱かの国民投票は、6月24日に開票の結果、51.9%対48.1%で、離脱支持が勝利しましたが、私の予想とは逆でした。この結果は、英国民の将来にとって、プラスとなるのかマイナスとなるのか、わかりません。

 外国人の私がこの結果について案じていることは、CDPA1988第52条の規定が、EU著作権指令 Copyright Directive に違反することになるから、2016年7月28日をもって削除されることが決定していたのです。

 The final position is asfollws:

  ・ the repeal of section 52 will happen on 28 July 2016 (nine months from the

    start of the consultation period); and

  ・ the depletion period for comtracts in place prior to consultation will remain six

    months following the repeal, but will therefore conclude on 28 January 2017.

 ところが、英国がEUを離脱すれば、多くの Directive による圧力からも解放されることになると解されますから、今回の英国民の選択は今後の英国法制度に大きな影響を与えることになると思われます。

 英国の今後の法制度の変化についての情報がありましたら、本欄などで紹介することにいたします。 

 

6.パソコン好きの裁判官も人の子ですから、こういう奇妙奇天烈なこともやるのかと思うような新聞記事が出ていました(6月28日朝日新聞朝刊)。ここに登場する東京高裁の岡口基一判事は、自身のツイッターに、縄で縛られた上半身裸の写真3枚を投稿したということです。これらは、2014年4月〜16年3月に投稿されたものとのことで、私はそのような画像を見たことはありません。岡口判事は若い頃は東京地裁民事29部におられ知財訴訟を担当していたから、私も記憶があります。また、(株)商事法務から民事訴訟法に関する実務書である「要件事実問題集」を出版しています。この本は、司法試験受験者の必読とされています。

 

7.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の4件について紹介します。

 

(1)「シートカッター」特許権侵害差止等請求事件:東京地裁平成26年10月30

   日(民46部)判決<請求認容>/知財高裁平成27年12月16日(3部)判決

   <原判決取消・控訴認容>➡E−23 (別紙:本件特許公報)

(2)登録商標「RAIGA」無効審決取消請求事件:知財高裁平成28年3月23

   日(2部)判決<請求棄却>➡G−216

(3)登録商標「フランク三浦」無効審決取消請求事件:知財高裁平成28年4月

   12日(3部)判決<請求認容>➡G−217

(4)「幼児用箸」著作権侵害差止等請求事件:東京地裁平成28年4月27日(民

   29部)判決<請求棄却>➡D−111

 

     

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牛 木 内 外 特 許 事 務 所
  弁 理 士  牛   木   理   一
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(JR秋葉原駅東口前)
TEL:03−3866−3503
FAX:03−3866−8319
 e-mail:upat@blue.ocn.ne.jp

 

 

〔日本マンガ学会の2日間にわたる大会終了後の懇親会で、隣席に座られた会員で獣医師

 の明石さんが、小生の似顔絵を描いてくれましたので、掲載させていただきます。〕