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2016年11月1日



 
近 況 雑 感

私は、大学1年時に、ドイツ語の勉強も兼ねて、カントの三批判書を、天野貞佑先生の翻訳文で読みかじったことがあります。カントの三批判書とは、@「純粋理性批判」,A「実践理性批判」,B「判断力批判」であるところ、法哲学はA批判書に論述されており、ドイツ語の原文以上に翻訳文で書かれた内容は難解で苦労しました。「批判(Kritik)」とは理非を明らかにすることをいい、非難とは全く違います。この批判書中でカントは死刑について論じており、人を殺したものは報復として殺されなければならないし、死刑は国家が合法的に行う殺人行為である、と述べていたことを覚えています。刑法学者が論じている客観主義の論理をカントは説いていたのです。

 日弁連は、10月7日、福井市で開催した人権擁護大会で、反対者もいた中で多数決で死刑制度廃止宣言を採用しました。死刑廃止論について日弁連は、世界的傾向であることを挙げているようですが、これに対し一部の弁護士グループは、日弁連として死刑制度廃止の宣言を採択することに反対するとの声明を出しました。

 しかし、人権擁護を提唱する日弁連の立場としては、個人による殺人行為に対する国家による法的制裁のあり方を考えるべきであり、そのためには、古くて新しいカントの前記批判書を読んで考えてもらいたいのです。そして、この問題は、戦災によって死傷した国民に対する国家賠償責任という法的救済にも通ずるのであり、空襲被害者救護法の制定が待たれるのです。

 

私が出張先で読んだ新潟日報の社会面(10月6日・30頁)最上段に、「ノーベル化学賞・欧米3氏」の記事に並んで右側欄に「若者たちの選択・人口減の新潟で」の記事が出ており、そこには三条市の諏訪田製作所で働く横浜市出身の坂本裕子さんのことが掲載されていました。同社は、今や世界的に有名になっている爪切り「SUWADA」印のメーカーであり、坂本さんも「新潟の商品を世界に発信するので、責任を感じる。」と言っています。

 このセリフは、本欄の10月1日号で紹介した捧吉衛門さんに言われた松方幸次郎さんのセリフに通ずるものがあります。新潟日報のこのような記事は、新潟の地場産業の発展のためにも刺激を与えていると思いますが、そのためには地場産業自体が、若者が就職したいと思う魅力ある「新ものづくり」産地を目指すという強い努力目標を持つことが必要であります。

 その「ものづくりメッセ」が10月27日・28日に燕三条地場産センターで開催されましたので、私も行って見ましたが、三条市・燕市の企業のみならず東京をはじめ県外からも多くの企業が参加しており、出展者は合計241社といわれています。そこには、各企業が開発した新製品の魅力が発散されていました。

 また、前記諏訪田製作所について注目したいのは、プレス等による切削された廃材をそのまま使って美術工芸品を制作していることであり、今年も下記の獅子像が燕三条駅ウイングに設置されていました。

         

 これは、製造中に排出されるブランク材を創意工夫と記述によって再生した「ブランキングアート」と呼ばれる「モノづくりの心と技」の表現体であり、2014年から、三条・燕の両商工会議所のブランキングアート展実行委員会が主催して地元工場が応募した作品の一つです。このような作品こそ“Art”であり、正に技術と芸術とが融合した作品であり、著作権が発生しているのです。

 また、例えば諏訪田製作所(三条市高安寺)や玉川堂(燕市中央通1)などの各工場へ、上越新幹線の燕三条駅から客を観光タクシーによって案内する旅行をJR東日本が実施しているのです。

 10月24日には、「第6回東京燕交流会」が銀座6丁目のホテルで開催され、燕市長や燕商工会議所会頭,燕市議会議長をはじめ、地元メーカーの社長らが来場され、東京在住で燕市産業界とゆかりのある人々との交流がなされました。会場で配布された商品や冊子の中には、燕市役所が発行した市内の企業情報「TJ30」があり、若い優秀な人材を求めており、新商品の技術開発力に期待しているのです。

 

3.ブランドコンサルティング会社の米国インターブランドは10月5日、2016年のグローバル企業のブランド価値評価ランキングを発表しましたが、1位は昨年同様「アップル」であり、「サムスン」が昨年同様7位につけています。その中で「トヨタ」が5位につけ、「ホンダ」が21位につけています。

 ここにブランドとは、単に商品等に付ける商標(Trademark)を超えたパブリシティ・バリューを所有しそれを発揮するものですから、その知的財産的評価は無限大なものになるのです。しかし、その根底にあるエネルギーは、各企業の商品開発力であり、生産力であります。

              

 

4.私は日本マンガ学会の会員であり現在理事でありますが、昨年本欄でも書きました、わが国のマンガの起源について登場する絵巻「鳥獣戯画」内容の真偽について紹介する記事が、朝日新聞2016年10月4日33頁に掲載されていました。この記事は、今年9月に刊行された「修理報告書・鳥獣戯画 修理から見えてきた世界」(勉誠出版・京都国立博物館編)からのものですが、朝日新聞文化財団の助成で4年かけて行われた大規模修理で判明したとのことです。これによりますと、23枚目と11枚目は紙をすいて乾かす段階でついたはけの跡が連がっており、元は1枚の紙だったことを確認したのです。この鳥獣戯画展は、10月4日から九州国立博物館で開かれた特別展で展示されているとのことですが、その後は、かつてそうだったように、東京上野でも開催していただきたいと思っています。

 

 「鳥獣戯画」といえば、わが国のマンガ史の起源との有力な説があり、知識のない私もそう考えていますが、明治大学の宮本大人さんによると、絵巻物や鳥獣戯画には現代に続く漫画との連続性はなく、欧米から輸入されたカリカルチュアの影響を受けて生まれた漫画が現在に連がっている、というのです。(朝日新聞2006年12月28日夕刊11頁)

 しかし、その事実関係はわが国に広く知られていないだけであり、わが国の長い歴史の中にはマンガと呼ばれ得る作品は、各地で誕生していたと私は思っていますし、それは大人に限らず子供についてもいえるのです。そこに特別な思想が影響しているのか否かは別として。

 マンガについては、朝日新聞2016年10月18日17頁の「リレーおぴにおん」の欄で、京都精華大学の伊藤遊さんが写真と記事とで掲載されていましたが、その中で伊藤さんは「欧米でマンガは、絵画や彫刻などと並ぶ“芸術”と認められている」と言われています。しかし、わが国にあっても、マンガ作品は著作権法で保護される著作物であり、それが美術(Art)の著作物のジャンルに属するものであることは、通常の日本人であればよく理解しているものと思います。

 

最近の新聞報道によると、一昨年あたりから話題になっている文化庁(文科省の外局)の京都移転について、2018年度以降に部門を切り分ける組織の再編を実施する方針を固めたというのです。

 しかし、その中でも国際性の高い著作権課は著作権庁に格上げして東京に存在すべきであり、経産省の外局である特許庁と同格の地位に置くべきであると、私は考えています。

 

 

6.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の3件について紹介します。

 

(1)出願意匠「容器付冷菓」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成28年9月21

   日(2部)判決<認容/審決取消>➡B1−59

(2)出願商標「HOKOTABAUM」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平

    成28年10月12日(4部)判決<請求棄却>➡G−225

(3)「幼児用箸」著作権侵害差止等請求控訴事件:東京地裁平成28年10月13日

   (3部)判決<控訴棄却>➡D−111−1

 

     

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