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2016年1月1日



 
近 況 雑 感

 新年おめでとうございます。

 今年もよろしくお願い申し上げます。

 

人間の生命は、その出生の時から与えられたものであり、時間もまた1日24時間という与えられたものでありますから、その時間を何のためにどのようにして使っていくかは、各自がよく考えなければならない問題であります。したがって、私は、今年も与えられる1つ1つの仕事を、本質から考えて事実を分析し論理的に思考して結論を出すという方法によって、実務と研究を続けて行くことを決意しています。

 昨年、知財高裁(2部)判決で話題になった「幼児用椅子」のTRIPP TRAPP事件については、思考すべき本質的な基準を、裁判所は知らないか、忘れているのです。

 その作品が、美術の著作物であるか、物品に係るデザイン(意匠)であるかの決め手は、そこに表現される美が、「自律の美」か「他律の美」かのどちらに属するものであるかということです。その思想については、すでに拙著「意匠法の研究」(初版)28頁以下(発明協会 1974年)において論じており、20年後の「四訂版」(1994年)においても一貫して変わりありません。

 また、この「自律の美・他律の美」については、2005年4月に出版した過去発表の多数の論文中から選定した「デザイン キャラクター パブリシティの保護」(悠々社)の第1部デザインの保護.T 意匠法の存在意義.“第1章インダストリアルデザイン―その美と保護の研究―第7節自律の美・他律の美”においても、まとめて発表しています。そして、「自律の美」による作品は著作権法の保護対象に、「他律の美」による作品は意匠法の保護対象になるのです。この法則をわれわれはよく理解し、忘れてはならないのです。

 ということは、いかなる実定法にあっても、その法が存在するための哲学がありますから、まずその法の本質を考えて理解していなければ、正しい解釈はできないということです。

 

さて、昨年の本欄にも書きましたが、今年こそは長年溜め込んで執筆している本格的な教科書「意匠法」を刊行したいと思います。2分の1以上は進んでいますので、残りの分の時間を作って進めていくつもりです。意匠法に関する長い研究と実務経験とに裏付けされた内容の教科書であり、知的財産権法の中では最も難しい分野であるといわれています。それは、意匠法の周辺には特許法や著作権法や不競法などの、他法とオーバーラップする問題がいろいろあるからです。それだからこそ面白いのであり、研究しがいのある法分野であるのです。

 

ところで、本欄の昨年12月号で漫画家の水木しげるさん(93才)の死去のことをお知らせしましたが、今月号においては残念ながら、野坂昭如さんの名前を出さなければなりません。1930年生まれの彼は、12月9日に死去したのです(85才)。野坂さんのことは、以前、本欄にも「火垂るの墓」という名の映画やアニメのことを書いた時に紹介しましたが、鎌倉生まれでその後移住した神戸で昭和20年6月5日に米軍の大空襲に会い、当時14歳の旧制中学生は3歳の妹を背負って逃げまどったが、実母が焼死したことから養子に出され、挙句の果て養母に家を追い出され、妹と沼池のほとりの洞穴で生活をし、やがて妹は栄養失調で死んだので、死体を洞穴の入り口前に掘って埋めて山盛りにした墓のまわりに火垂が飛び交うという戦争体験を小説に書いて、直木賞を受賞した作家です。焼跡闇市派と呼ばれていたエッセイストで、私自身も戦災にあっていたことから、いろいろと関心を持っていた人物であり、人生について教えられることも多かった人ですが、2003年に脳梗塞で倒れてからは、今日までその存在を殆ど忘れかけていました。

 それでも毎日新聞には「七転び八起き」を2015年8月19日まで連載していたというから驚きました。その本は「シャボン玉 日本」という題名となって現在販売されています。彼は実父の家に戻りましたが、実父の野坂相如はその後、新潟県副知事になった人です。現在、私の書棚を見ると、野坂本として次の3冊の古本が並んでいます。

 ・「好色の魂」(昭和43年 新潮社)

 ・「ああ軟派全落連」(昭和49年 番町書房)

 ・「誕生の時を求めて」(昭和50年 中央公論社)

 それからもう1冊ありました。「妄想老人日記」(新潮社 平成2年)に、訂正を加えたという中公文庫で同題名の本であり、日記形式の究極の私小説と呼ばれているものです。

 

  

 

4.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の6件について紹介します。

(1)登録商標「湯〜とぴあ」商標権侵害行為差止等請求事件:知財高裁平成27

   年11月5日(4部)判決<控訴認容> ➡F−54−1

(2)登録商標「DHC」商標権侵害差止等請求事件:東京地裁平成27年11月13

   日(民40部)判決<請求棄却>➡F−58

(3)出願商標「 」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成27年11月29日

   (4部)判決<認容➡審決取消>➡G−210

(4)出願商標「肉ソムリエ」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成27年11月30

   日(4部)判決<請求棄却>➡G−211

(5)登録商標「サンローラン」不使用取消審決取消請求事件:知財高裁平成27

   年12月10日(4部)判決<請求棄却>➡G−212

(6)「写真」著作権侵害損害賠償請求事件:東京地裁平成27年12月9日(民40

   部)判決<請求認容>➡D−107

 

     

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