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2015年6月1日



 
近 況 雑 感

一般紙が現在一面のトップ記事としている国会に上程された集団的自衛権法や安保法制に関する様々な法律案が、一括して審議されようとしているし、国際平和支援法という内容のよくわからない戦争を支援するための法案まで上程されている今日のわが国政府の姿勢を見ていると、いずれも日本国憲法第2章第9条の「戦争放棄」の規定に違反する法案であり、すべて違憲立法審査会にかけなければならない法案を、今日わが国の国会は審議しているのであり、矛盾に満ち溢れた風の中に、わが国の国権の最高機関である国会(第41条)はあるようです。

 

2.さて、わが国の日本工業所有権法学会(初代理事長・豊崎光衛先生)が創立して今年は40周年を迎えることになり、発足がそれよりはるか先輩の1962年設立の著作権法学会(初代理事長・東季彦先生)との合同大会を2日間にわたって開催することになりました(6月6日・7日)。そうすると、両法分野にまたがる懸案事項についての論議を期待しておりますところ、プログラムによると、座談会,シンポジウム,個別報告における各テーマを見る限り、そういう実感が湧いてきません。

 私には、昔から言われています両法分野にわたり交錯する問題としては、例えば次のテーマがあります。

(1) CPの両法に及ぶ関係問題について.

(2) 応用美術と意匠との関係問題について.

 この内、特に(2)につきましては、著作権法適用の可否をめぐる「幼児用椅子」デザインの侵害差止等控訴事件において、意匠の著作物性を肯認する趣旨の判決が、最近、知財高裁から出たのです。

 ◎知財高裁平成26年()10063号・平成27年4月14日(2部)判決

 この判決は、従来の裁判例による意匠の著作物性を否定する考え方を否定し、積極的に肯定する見解をとっていますから、画期的な判決であると言えるのです。私は、この判決文を疑いを持って何回も繰り返して読みましたが、疑いはなかったのです。

 また、この問題にも関係しますが、同判決中で引用されています著作権制度審議会が昭和41年(1961)4月20日に文部大臣からの応用美術の著作権法による保護いかんの諮問に対して提出した答申で指摘している事項は、「応用美術について、著作権法による保護を図るとともに現行の意匠法等工業所有権制度との調整措置を積極的に講ずる方法としての措置を講ずることは困難」であるから、「著作権制度および工業所有権制度を通じて図案等のより効果的な保護の措置を、将来の課題として考究すべきものと考える。」として、第1案は採用されず、第2案が採用されたことです。しかし、衆議院における付帯決議以来50年以上経過して今日に至るも、この将来の課題については、文化庁においても特許庁においても審議の対象になったことはないのです。(拙著「意匠法の研究」(四訂版)388頁 発明協会参照)

 ところが、前記「幼児用椅子」事件の知財高裁判決の内容を検討しますと、前記図案等(具体的には漫画キャラクターの絵)の商品化問題とは別論のデザイン(意匠)自体の著作物性を肯認する判断が示されたことは、注目に値するのです。しかも、この控訴棄却の判決については上告されることなく確定したのです。

 

同志社大学名誉教授の仙元隆一郎先生が死去されたのが今年4月5日であったのですが、同先生を偲ぶ会が5月30日(土)に、京都御苑の向かい側にある京都市中京区「京都ガーデンパレス」で開催されました。当日約80人の方々が集会され、仙元先生の思い出話に花が咲きました。私も一言喋ることになり、悠々社から出版されていた「特許法講義」の三訂版の刊行時に、チラシで私が推薦文を書いたことの謂れについて、後日、悠々社の須藤社長から聞いた話をしました。それは、同先生が、知的財産法分野の実務と研究を両立して来た私の人生の実績を評価されていたからだということです。ありがたいことです。(悠々社からは、拙著論文集「デザイン キャラクター パブリシティの保護」2005年を刊行しています。)

 また、仙元先生は、特許法,意匠法,著作権法などの知的財産法には、それぞれ独自の哲学があるのだから、論文などを書くときには、そのことを忘れずに入らなければならないということを言っておられたことを私は話しました。このことは、前記「特許法講義」の第1編序説を読めばよくわかります。

 この日は日帰りで京都に行ったのですが、帰りに烏丸御池にある京都国際マンガミュージアムに一寸寄って見ました。館内は相変わらず盛況で人々にあふれており、老いも若きも皆さんは、様々な姿勢で、黙々と「マンガ本」に読みふけっていたのです。この状景は中庭においても同様でした。

 同館では6月6日〜9月6日の間、「マンガと戦争展・6つの視点と3人の原画から」が開催されます。ここに6つの視点とは、原爆・特攻・満州・沖縄・戦中派の声・マンガの役割のテーマをそれぞれ4象限にわけ、24の「戦争マンガ」をパネルと関連資料で紹介しますが、この中には、里中満智子「積乱雲」・ちばてつや「家路1945〜2003」・松本零士「音速電撃隊」・水木しげる「総員玉砕せよ」などの作品が紹介されます。

 なお、日本マンガ学会第15回大会は6月27日・28日に広島市JMSアステールプラザで開催され、また日本アニメーション学会第17回大会は6月13日・14日に横浜国立大学で開催されますが、いずれの大会も、非会員でも参加費を支払えば出席することができます。私は現在マンガ学会の理事をしていますが、マンガ学会の大会では28日に「はだしのゲン」の多面性と題したシンポジウムが開かれます。

 

4.ところで、5月16日(土)、久し振りに上野公園にある東京国立博物館・平成館へ行きました。とはいっても、まず5月3日(日)午後に行ったのですが、入館できるまでには2時間待ちと係員に言われて、絵葉書だけを買って出直すことにしたのです。それは、京都高山寺の至宝「鳥獣戯画」の展覧会で、4月28日から6月7日まで開催されていますが、何故こんなに古い絵に人々が集まって来るのか、私には理解できませんでした。

 2回目に行ったときは午前9時半の開館に合わせて30分前に行ったのですが、それでも入館できるまでには1時間以上かかりました。

 しかし、本命の絵の場所に入室できるまでには、さらに70分と言われましたので、その場所に入る前の部屋に陳列されていた動物らの戯画の絵巻物だけを見て退館しました。朝日新聞の広告には兎が扇子を持って立ち上ったり、兎を蛙が投げ飛ばしたりした絵がPR用に使用されていました。高山寺の中興始祖の明恵上人(1173〜1232)の時代の作品であり、作者は不明といわれていますが、上人自身という説もあります。

 ところで、私がこの絵について長年関心を持ってまた理由は、この絵はわが国の漫画の起源に当たるという説があるからで、現在、日本マンガ学会の理事をしている私としては、その辺のところをよく承知しておきたいと思っているのです。鳥獣戯画と名付けられているこの絵に登場する動物は、犬や猿や兎や蛙であっても、鳥は見当られないから、「動物戯画」と名付けた方が正確であるかもしれません。また、戯画とは「たわむれに描いた絵。風刺や滑稽を狙って描いた絵。ざれ絵。風刺画。カリカチュア。」(三省堂・大辞林 571頁)と説明されています。これに対し、「漫画」とは、「大胆に省略・誇張して描き、笑いを誘いながら風刺や批評をこめた絵。戯画。→カリカチュア」(同1320頁)と説明されていますから、両者は共通の意味を有する単語といえます(Caricature)。

 すると、この鳥獣戯画が描かれた平安末期から鎌倉時代初期より前の時代においても、この程度の絵は存在していたのではないかという思いを私はしてます、まだ確認はしていませんが。

 戯画や漫画ではないかも知れませんが、俵屋宗達が描いた「風神」や「雷神」の絵は、一種の戯画といわれるものではないでしょうか。

 

 

 

5.今月の「裁判例研究コーナー」では、次の3件について紹介します。

 

(1)「遠山の金さん」映画の著作権侵害差止等請求事件:東京地裁平成26年

   4月30日(民29部)判決<請求認容>➡D−103

(2)「幼児用椅子」等著作権侵害等差止請求事件:知財高裁平成27年4月14日

   (2部)判決<請求棄却>➡D−94−1

(3)登録商標「 」無効審決取消請求事件:知財高裁平成27年4月27日

   (2部)判決<請求棄却>➡G−198 

 

 

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牛 木 内 外 特 許 事 務 所
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