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2015年3月1日



 
近 況 雑 感

1.私は、以前にも一寸書いたことがありますが、毎月第3火曜日の朝日新聞の「声」欄に投稿される「語りつぐ戦争」を必ず読んでいます。

 今年の1月20日には、「元旦も強制労働のシベリア抑留」(86才),「原爆で妹失う 今も自責の念」(73才),「空襲『地獄ってこんなのか』」(81才),「軍隊手帳に書かれた叔父の『遺書』」(72才),「平和への思いを受け継ぎたい」(22才)の5件。

 2月10日には、「密林で仲間が死んでいった」(94才),「きょうだい8人が必死に生きた」(83才),「風船爆弾の和紙をこすり続けた」(89才),「外国捕虜から父への恩返し」(84才),「決死の引き揚げ 亡き母思う」(72才)の5件が掲載され、次は3月10日です。

 これらを私は、通勤する電車の中で読んでいますが、涙なくして読み切ることはできません。そこには、投稿者らが戦時中に体験した真実が語られているからです。

 

2.東京大空襲(昭和20年3月10日)における人命,財産の被害に対して、被害者と遺族らが国を相手に賠償請求を提起していた訴訟事件の一つに対しては、平成25年5月8日、最高裁(一小廷)は上告棄却の決定をしました。

 しかし、別の原告らからは同様の損害賠償請求訴訟が、東京地裁―東京高裁やその他の地裁にも係属中です。

 こうした中で、全国空襲被害者連絡協議会(私も会員の1人)は3月6日(金)午後6時に浅草公会堂大ホールで、「戦後70年・戦争被害のすべて解決を!大集会」を開催することになりました(実行委員長:中山武敏全空連共同代表・弁護士)。この会では、国会に対し、早く「空襲被害者等援護法」の制定を求めて署名運動をしています。戦後70周年の今年こそは、国の責任において、過去に空襲によって被害にあった日本各地の国民を救済するための「援護法」の制定を、私も念願しているところです。

 70年前といえば、東京のみならず日本中の多くの都市は、毎夜米軍機による焼夷弾投下の空爆によって火の海と化し、木造家屋の消失とともに多くの日本人が殺戮されたのです。しかし、もしわが国政府がもっと早く終戦していれば、このような大きな犠牲を国民は被らなくてもすんだかも知れないのです。(田中・中山・有光他「未解決の戦後補償」創史社 2012年)

 さらに、わが国には戦時中に日本の企業が行った韓国人や中国人に対する強制徴用への補償や未払い賃金の支払い問題が残っていることを忘れてはならず、各国の裁判所においては民事訴訟が起こっていますから、わが国としてはまだまだ解決しなければならない戦後処理の問題が多々あるのです。それらの諸問題は、時効とは無関係ですから、わが国民としても注視していかなければなりません。

 また、日本軍による南京占領後に遷都させられた重慶への1938年2月からの大爆撃による被害に対し、中国人の遺族198人から日本政府に対する損害賠償と謝罪を請求した訴訟の判決が2月26日にあり、被害者が賠償請求する根拠はない、と東京地裁は言い渡した実体のない形式的な判決です。

 

3.TPP問題についても、私は何回かこの欄で紹介しました。最近の記事で、わが国著作権法は、著作権侵害等の刑事事件にあっては親告罪であるから、これを非親告罪とするとの交渉が米国との間でなされていることを知りました。わが国著作権法123条1項がその規定ですが、わが国法がなぜ長年親告罪としているのか理由は不明ですが、著作者人格権との関係があるとは思われません。これを非親告罪とすべきとする米国の提言に私は賛成します。

 しかし、その代わりに米国等の戦勝連合国は、わが国にまだ存続している「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律 Law Concerning Exceptional Provisionals for Copyrights Owned by the Allied Powers and the Allied Nationals, August 8, 1952 & May 6, 1970」の廃止を宣言してもらいたい。この特例法の中には、戦時中に発生した連合国及び連合国民が有していた著作権や翻訳権の存続期間分を加算して、日本国との平和条約の最初の効力発生日から適用するとありますから、昭和16年12月7日から昭和27年4月28日までの約10年以上の加算についての法律が、実質的な有効性は不明ですが、現在でも存続しているのです。(ドイツとイタリーに対する戦時加算法はすでに廃止されている。)

 ただ存続期間のことについては、同時に、わが国は個人の著作権の存続期間を死後50年ではなく70年にすることを承認してもよいだろうとは思っていますけれども、こんなに長期間、著作権は誰のために保護するものなのか、疑問です。

 但し、長期間保護するにしても、これには条件があります。マンガやアニメ等に登場するキャラクターを、工業上利用する商品や製品の世界に導入することは、隣接する知的財産法である意匠法が存在する以上、意匠法による保護以外に、複製や翻案と解して著作権法によって保護をすべきではないということです。この著作物としての存在意義と工業品としての存在意義を的確に理解して、保護法を別異にすべきであるというのは、商品化権分野の研究を長年してきている私の結論です。そして、この考え方を実現したのが英国のCDPA1988の第52条でありました。➡第1−32参照

 

4.栄久庵憲司さんが85才で死去された。彼がインダストリアルデザイナーとして著名なことは、面白い姓であることもあって注目していたし、逗子に住んでいたと聞いていたから、横須賀線の電車内で時々お見受けしていました。私は個人的には、インダストリアルデザイナーとしてはマツダのオート三輪車を創作した小杉二郎さん(実父は画家の小杉放菴)を新潟県高田市(現・上越市)出身ということもあって知っていましたが、栄久庵さんはキッコーマン醤油の卓上瓶(1961年)が代表作品であるほかに、ヤマハのバイクや音響機器も手掛けられたし、調理用具や家具類や成田エクスプレスの車両もそうだといわれています。また、栄久庵さんはGKデザイン機構の代表者としても有名ですが、GKとは彼の東京芸術大学時代の小池岩太郎助教授の自主ゼミからの命名であることを、朝日新聞2月18日の35頁で初めて知りました。こう見てくると、民芸品作家の柳宗悦さんと共通性を持ち、「用の美」を製品化した本当のインダストリアル・デザイナーといえると思います。

 

わが国が「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定 Geneva Act of the Hague Agreement Concerning the Internatyional Registration of Industrial Designs, 1999」に加入することについては、すでにお知らせしましたが、わが国では平成27年2月18日にこの協定が公布されましたので、本HPで全文を紹介します。但し、わが国政府は、この協定のわが国民への効力発生日についてはまだ明らかにしていません。これは、わが国では意匠法改正がまだ実現していないからであり、国会における法案審議の見通しさえ立っていません。➡第1.3−5参照

 なお、WIPOは2015年2月13日に”The United States of America and Japan have joined the Hague System for the International Registration of Industrial Designs, adding two of the world’s biggest economies to a WIPO-administered registry that supports creators worldwide.”と報じており、意匠登録の出願件数の増加を期待していることは、Gurry事務局長のメッセージにも表れています。➡第1.4−2参照(著作権者はWIPO)

 

6.来る4月1日から、改正商標法が施行されます。今回の改正点は、「新しいタイプ(新型)」の商標の保護制度の導入にあるといわれ、@動き,Aホログラム,B色彩のみ,C音,D位置、がその保護対象となっています。➡第1.3−6(著作権者は特許庁)

 これらの商標の定義については法規定を参照していただくとし、施行日前から使用されている前記「新しいタイプ」に属する商標は、商標登録をしなくても、従来の業務範囲内で使用し続けることができる「継続的使用権」という権利が与えられます。但し、「位置商標」については、もしそれが従来から登録され使用されていた商標であれば、その商標を付する位置が特定されるにすぎないので、継続的使用権というものは与えられないということです。

 

今月の「裁判例研究コーナー」では、次の5件について紹介します。

 

(1)登録商標「博多織」商標権侵害差止等請求事件:福岡地裁平成24年12月10

   日(6民部)判決<請求棄却>➡F−52/福岡高裁平成26年1月29日(2

   民部)判決<控訴棄却>➡F−52−1

(2)「書籍の題号・形態」不正競争行為差止等請求事件:東京地裁平成26年8

   月29日(民29部)判決<請求棄却>➡C2−30

(3)「シュエッティーベア」商品形態・不正競争行為差止等請求事件:大阪高

   裁平成26年8月21日(21民部)判決<請求認容>➡C1−66

(4)出願商標「しあわせ牛」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成27年1月29

   日(2部)判決<請求棄却>➡G−195

(5)「芸能人の裸合成画像」パブリシティ権等侵害差止等請求事件:東京地裁

   平成27年1月29日(民46部)判決<請求認容>➡H−16

 

 

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