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2014年7月1日



 
近 況 雑 感

1.近年、知的財産権分野の名物判事といわれていた飯村敏明さんは、6月15日の誕生日を以って定年退職されたが、第4代目の知的財産裁判所の所長であった。後任は旧3部裁判長の設楽隆一判事であるが、飯村判事(旧1部裁判長)と設楽判事とは法適用の是非に大きな差異があることは、意匠法3条2項の解釈適用について、6月1日の本号で紹介したところである(➡B1−53)。その意味では、この「シール事件」の判決は、奇しくも飯村判事の大きなお土産となったといえるのである。

 ところで、やや心配なのは、後任の石井忠雄判事については、知財法分野では聞いたことのない素人判事であることである。

 また、今年5月の人事異動では、著書や論文も多い高部真規子判事は、横浜地裁川崎支部長から福井地裁所長になられたが、2年後には知財高裁の裁判長の席に戻って来られることが期待されるし、またかつて知財高裁2部におられた森義之判事は、和歌山地裁所長から大阪高裁の総括判事になられたから、いずれ知財高裁に戻って来られるのではないだろうかと想像する。

 

2.6月には2つの学会の総会・大会があり、私は会員としていずれの学会にも出席した。一つは6月21日・22日に東京工芸大学(東京都中野区)で行われた日本アニメーション学会、二つは6月28日・29日に京都精華大学(京都市左京区)で行われた日本マンガ学会である。 

2.1 アニメ学会について私は、初日の総会と大会しか出席していないが、大会の大きなテーマは「技術の進歩と作品制作の現在」であり、多くの会員からいろいろな角度からの研究発表がなされ、映像として製作されているアニメ作品のわが国の技術と内容のレベルの高さをアピールするものであった。また、東映動画という一企業の現状と将来についての発表もあった。

2.2 マンガ学会の大会の初日は、2つの会場において、多くの会員による個別の研究発表がなされた中で、ラウンドテーブルのテーマとして「新聞・政治漫画と震災,原発事後」が取り上げられ、2日目はシンポジウムのテーマとして「マンガと震災」があった。シンポでは第1部「マンガ家の支援活動」と第2部「震災を描く」とがあり、後者のパネリストとしては、しりあがり寿、とり・みき、山本おさむ、ヤマザキマリという有名マンガ家が出演され、スライドを出しながら、東日本大震災や原発事故の風景をマンガ表現した経緯についていろいろ説明された。例の「美味しんぼ」のことも話題になった。

 これで理解できるように、あのような大震災とそれによる原発事故の住民への大影響について、マンガ家の立場で何が出来るかを模索して考え出したのが第1部の支援活動についての報告であり、若手マンガ家の信濃川日出雄(新潟県出身・札幌市在住)からのメールによる一方的な提唱に呼応した多くのマンガ家が無償で創作し、2012年5月に「僕らの漫画―東日本大震災復興支援チャリティーコミック―」初版を小学館から発刊した(440頁・本体905円)。そして、この本の売上利益を全部、東北三県の子供の保護育成に関する委員会に寄付したという説明があった。

 第2部にあっても、各マンガ家から、自分の描いた絵のスライドについての紹介説明があった。

 

3.ところで、本欄においても直接・間接に紹介したSTAP細胞に関する英国科学誌natureに発表した論文について、理研ではその内容の改ざんや捏造を認定し、早くから撤回(取下)を申し入れていたが、これに反対していた小保方晴子さんもようやく撤回に同意し、またハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授も翻意して、撤回に同意したと、我が国の新聞は7月1日号に報じている。結局、STAP細胞それ自体の存在を証明するための根拠がなかったというのであるが、情けないことである。

 そうすると、現在、各国特許庁に出願中の発明自体は未完成のものと判断され、それを理由に拒絶査定されることになるのだろうが、特許庁審査官は発明が未完成であることを何をもって証明することになるのだろうか。それとも、発明者らの自白をもって、自然法則を利用した発明には該当しないとの理由で拒絶査定するのだろうか。あるいは特許出願の自発的な取下げをうながすのだろうか。

 ただSTAP細胞に関する論文はとりあえず撤回されても、理研としては、その存在を確認するための検証実験を開始し、これには小保方さんにも参加してもらうというから、前記特許出願の審査は当分棚上げということになるのだろう。

 

 

今月の「裁判例研究コーナー」では、次の5件について紹介します。

 

(1)登録商標「プライムセレクト」他2件・商標権侵害損害賠償等請求事件:

   大阪地裁平成26年3月27日(26民部)判決<請求一部任用>➡F−47

(2)「椅子 TRIPP TRAPP」著作権侵害行為差止等請求事件:東京

   地裁平成26年4月17日(民46部)判決<請求棄却>➡D−94 (別紙)

(3)登録意匠「建築用パネル」侵害差止等請求事件:大阪地裁平成26年4月21

   日(26民部)判決<請求棄却>➡A−60

(4)登録商標「粋」無効審決不成立の審決取消請求事件:知財高裁平成26年6

   月18日(4部)判決<請求棄却>➡G−186

(5)登録商標「Tivoli+図形等」無効審決の取消請求事件:知財高裁平

   成26年6月18日(2部)判決<請求棄却>➡G−187

 

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