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2014年6月1日



 
近 況 雑 感

1.次女が小学生のころから読んでいたマンガ本に「美味しんぼ」があり、書棚に何十冊と並んでいたが、私は一度も開いたことはなかった。ところが、このマンガが最近マスコミの話題になり、社会問題から政治問題にもなっているので、今は2児の母親になっている娘に聞いてみたところ、このマンガの内容は、もともと食の安全をテーマとしたような問題を取り上げてアピールしたものではなかったのかという。

 それが今日、2011年3月11日の東日本大震災時に発生した福島における原発事故が展開している「鼻血ブー」の一カットが、われわれ日本人の注目を受けているのは、作者の問題提起もあって、事故の真相とそれによる影響を、マンガという表現手段によってアピールしているようにも思う。その意味では、マンガという表現手段を利用した原発事故の影響についての国民の意識を高めるという問題を、日本マンガ学会(現会長・小野耕世)においても研究テーマとして取り上げてみてはどうかと、同学会員の1人である私は提案したところである。

 この学会の発足時には、私はキャラクターの商品化利用について著作権の面からアプローチして今日に至っているが、今年6月27日・28日には京都精華大学において、総会と大会が開催されることになっている。この大学の現在の学長はマンガ家の竹宮恵子さんである。大会には何人も参加できるから、興味ある人は来てみませんか。

 ところで、「美味しんぼ」の原作は雁屋哲さん、作画は花咲アキラさんで、原作者と画作者とが別人であるマンガ作品は、「キャンディ・キャンディ」の場合と同じである。しかし、原作者と画作者とのそれぞれの持つ表現力の違いが、読者への伝達力の違いとなって現れるので、いずれの立場でも手抜きは許されない。その意味では、漫画の存在を原作の二次的著作物と解して判断したキャンディ・キャンディ事件の裁判所の考え方は、作品成立の実態をよく理解していないから誤りでというべきで、これはあくまでも2人による共同著作物と解すべき存在であると私は思っている。(第1.1「連載漫画とキャラクターの関係」参照)

 私は、「美味しんぼ」の第604話「福島の真実㉔」が掲載されている「BIG COMIC スピリッツ」(小学館)を買ったが、コミック誌を購入するのは珍しい。この号によると、「美味しんぼ」は次号より当分の間休載し、いずれ再開するということである。その理由は不明であるけれども、この休載は、原発事故が人体に与えた影響の漫画表現の意義について考え直してみるという反省などというものではなく、作者は新しいテーマの構想を練っているからではないだろうか。

 しかし、驚くことに、前記号には掲載マンガの最後に10ページも使って、読者というよりは、多くの関係者や自治体からの意見を掲載していることである。なぜ、編集部の立場として、「美味しんぼ」の「福島の真実編」の最後に当たって、このようなことまであえてしなければならなかったのか理解に苦しむが、それだけこのマンガ作品が与えたメッセージは大きかったといえるのだろう。

 

2.たまたま、古い新聞の切り抜きファイルをめくっていたら、偶然「科学論文不正なぜ続出」の大見出しの記事を見つけた(朝日新聞2006年3月1日(水)15面)。この記事のイントロによると、「韓国の胚性幹細胞(ES細胞)研究や大阪大の遺伝子研究の論文でデータの捏造や改ざんが明らかになり、科学研究における不正行為が問題となっている。そこで世界最大級の医学論文データベースを調べると、結果の再現性がないことや不正などを理由の「取り下げ論文」は、70年代以降で672件(2月24日現在)に上っていることがわかった。国別では、米国253件がトップで、日本は35件でワースト4位。」とある。ちなみに、2位はドイツ、3位はイギリスである。

 この中には、地位の安定した研究者である米バーモント大学の元教授は、実験データを自分の理論に合うように改ざんを重ねていたことが判明した結果、1992年から2002年までに発表した論文5本を取り下げたという。科学論文の掲載誌としては、米国のサイエンス、米科学アカデミー紀要、英国のネイチャーとある。取り下げ論文には、理由がつくのが原則で、「何らかの原因で結果の再現不能」「データ処理の間違い」などの過失によるミスもあるが、「データの捏造・改ざん」「他人のデータの盗用」「二重投稿」など、明らかな故意による不正行為もある。すると、最近話題の「STAP細胞」の場合はどの範疇に属する不正行為と評価されることになるのだろうか。

 しかし、このような超高度の研究内容を含む科学論文の分野では、当たり前のことになっているような研究成果の不正行為は、私には想像もつかないところであるが、デジタル化時代の今日にあってはこのような不正行為はより容易かつ活発になると予想される。

 他方、知的財産法分野の研究論文を読んで思うことは、著者の考え方を主張する裏付けとして引用される他人の論文や著書の数の少なさや片寄りを痛感することがある。それは特に若い学者に多いが、専門分野の古い論文や著書や外国法の論文などを広く読んでいない軽い内容ものが多いし、裁判例を自分の考える理論を裏付けるために引用するのではなく、紹介するに終わっている論文(?)も多い。その意味では、学者というものは、それぞれその法分野についての独自の哲学を基本的に持つべきであり、法解釈や実務への適用はそれを基本にしてなされるべきであると、私は常に考えている。

 

4月号でお知らせした知財高裁大合議部によるサムスン電子対アップルジャパンの次の3つの事件の判決言渡しが、平成26年5月16日にあった。

 (1) 平成25(ネ)10043号事件

 (2) 平成25(ラ)10007号事件

 (3) 平成25(ラ)10008号事件

 これらの事案については、次号において紹介したいと思う。

 

 

今月の「裁判例研究コーナー」では、次の2件について紹介します。 この中の(1)は特に注目すべき判決であり、意匠法3条2項についてのこれまでの裁判所の解釈をくつがえす金字塔となるものであり、特許庁の意匠出願の審査・審判に影響を与えることは必至である。そして、これによって、私が長年主張して来た現行意匠法3条2項の立法趣旨とその意義についての理解がようやく司法の承認を得られたことになったともいえる。

 

(1)出願意匠「シール」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平26年3月27日

  (1部)判決<請求棄却>➡B1−53

(2)「半熟卵ボウル」等商品形態模倣等損害賠償請求事件:東京地裁平成26年

   4月17日(民46部)判決<請求棄却>➡C1−64

 

 

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