USHIKI INT'L PATENT OFFICE

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2014年5月1日



 
近 況 雑 感

 

 〔お詫び:4月中に出願をしなければならない同一出願人による特許出願10件のた

 めに、時間を集中して使わなければならない事情がありましたので、5月1日号の発

 行がやや遅延しましたことをお詫びいたします。

  私の場合は、依頼会社の工場に出向き、その現場において社長(発明者)らから直

 接話を聞き、また議論した上で、明細書等をまとめることを弁理士のモットーとして

 います。そして、先願主義の原則を遵守すべく、限られた時間の中で出願行為に全力

 を尽くすことになるのです。〕

 

1.私は、一年の季節のうちで春から夏にかけての初夏にあたる今が一番好きです。この季節は、自然が日本人の誰にも公平に与えてくれる心身共に解放する恵みの風を与えてくれるのです。その思いは、大都会のど真中で時間に追われる仕事をしている者にとって、週末には大自然に囲まれた山小屋に来て時を過ごしている者の実感です。ここでは、青葉を揺らすそよ風と鳥のさえずりはよく聴こえても、人の声は一切聴こえないし、TVもありません。

 すると、逆に、仕事に集中することができるので、明細書や論文はもちろん、判決批評も、この「雑感」も、今ここで書いています。

 前記した書きものについて、私は脱稿までには何回も推敲しますから、週末を静かに過ごすこの山小屋はありがたいのです。

 時間があれば山道を歩いて無心に帰り、ふと俳句をうたったり、道端に生い茂る食用の野草を摘み取ることも楽しみです。

 このような自然の風景は、新緑の季節にこそ大量に味わえるように思いますし、特別な趣味を持たない私にとっては、こうした自然の静寂の中にわが身を置くことこそが、贅沢な趣味といえるかも知れません。

 

2. さて、私はかつて、ソニー中央研究所の菊池所長の講演を聴いたことがあります。それは、同氏が米国のベル研究所に勤務していた時に教えられたこととして、研究者は、テーマを持って研究している内容について、必ずノートに記録しておくことを日課とし、書き終わったら、上司に見せそれに連署してもらうことを忘れるな、という掟があったということです。また、そのノートの冊数によって、研究者の質やレベルもわかるということです。これは、研究の成果を記録して保管することによって、発明者主義をとっていた米国特許法の原則にも叶い、他人による特許出願を後日覆して、無効にすることができる証拠となると説かれていました。

 そうすると、最近騒がれている万能細胞STAPについての理化学研究所における対応で、研究員の研究ノートの数の少なさを知った時、前記菊池氏のベル研における研究者としての教訓は、特許以前の問題として全く遵守されていないことになります。

 明確な証拠を残すことなしに主張するだけでは、他人を説得することができないのは、裁判と共通している問題です。

 

冒頭で書きましたお詫び記事のついでに余談として、私は一つ言っておきたいことがあります。

 それは、「均等論」のことです。私は長年弁理士として、発明や考案の出願依頼を受けて明細書をまとめクレームを作成して来た経験からすると、そういう者でなければ、いわゆる「均等論」の真意を理解することができないのではないか、という思いです。わが国の裁判所では、アノ事件以来、5つの判断基準とやらが常に顔を出していますが、そもそも自分で明細書やクレームを書いたことのない者に、真の「均等」問題を論ずる資格はあるのだろうか、という疑問です。裁判官は評論家の立場ではなく、発明者の立場から事実認定をすべきなのです。そして、評論家は作家の立場になって論評すべきなのです。

 余談ついでにもう一つ。それは、私が以前から論じている弁理士の「クレーム力」への評価です。即ち、特許権の対象となるのは、その内容である発明力ではなく、「クレーム力」であるということです。いかに進歩性の高い顕著な発明であっても、特許権の対象となるものは「クレーム」に記載された内容であり、その「クレーム」を創作するのは代理人たる弁理士なのです。この議論は、私は、職務発明による発明者への報酬が問題となった「中村修二対日亜化学工業株式会社事件」の判例批判においてしました。(➡第1−16,20,22)

 

 

今月の「裁判例研究コーナー」では、次の4件について紹介します。

 

(1)登録商標「南京町」商標権侵害損害賠償請求事件:大阪地裁平成26年3月

   6日(民21部)判決<請求棄却>➡F−46

(2)登録商標「KAMUI」無効審決不成立の審決取消請求事件:知財高裁平

   成26年3月13日(1部)判決<請求認容/審決取消>➡G−185

(3)出願意匠「携帯電話機」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平26年3月27

   日(3部)判決<請求認容/審決取消>➡B1−52

(4)著作権確認等請求控訴事件:知財高裁平成26年3月27日(3部)判決<控訴

   棄却>➡D−90−1

 

 

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