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2014年12月1日



 
近 況 雑 感

1.私は、先月号の本欄で、職務発明の特許権をめぐる評価問題について、「発明力よりクレーム力を」と主張しました。すると、代理人としての弁理士のクレーム力を評価することは、(私はそのことを意図しているわけではないが、)金銭的にはどのような評価になるのかという質問が返ってくる気がします。

 その答えは、特許権の発生によって取得している又は取得するであろう当事者から、彼らが取得した対価又は利益からそれぞれ半分を支払ってもらうことが公平というものではないだろうか、ということになります。ということは、発明者からはすでに受取っている相当の対価の中から、特許権者からはすでに上げている及び以後に上げるであろう利益分の中から継続的にです。

 しかし、私の思考力はここまでで停止し、先に進みません。この問題については、同じ苦労をして出願依頼の発明内容を理解しかつ公知技術と比較した上で「特許請求の範囲(Claim)」の文章を創作的に表現(著2条1項1号)している多くの弁理士諸公の意見を聞きたいところです。

 大発明といわれるようなものであっても、それを包囲するクレーム力が乏しければ、特許権としての保護範囲は小さく限定的なものとなり、特許権侵害を主張して損害賠償請求によって金銭的利益を上げることはできないのです。

 私のこのような考えと主張は、特許権侵害差止等請求訴訟において、被告製品は特許権の技術的範囲に属するとの中間判決を得た後に、終局判決で損害賠償額として算定された約7億円から、原告が依頼した弁護士及び弁理士に要した費用(?)はその10%の7千万円であると認定された問題に通ずるのではないでしょうか。(➡E−9.知財高判平成24年3月22日(3部))しかし、この金額はまさに報酬であって、必要経費といわれるようなものではありません。

 そのように考えるならば、私の前記の考え方は、けっして不当ではないのではないでしょうか。

 

2.私が代理人の1人として加わり、今年5月30日に最高裁に上告受理申立をした事件は、われわれの期待外れとなって去る11月21日に、「本件を上告審として受理しない。」を主文とする決定が、第2小法廷所属の4人の裁判官(千葉勝美・小貫芳信・鬼丸かおる・山本庸幸)の全員一致の意見によってなされました。この事件は、知財高判平成26年3月27日(請求棄却)に対して不服の原告(出願人)が、上告審として受理することを求めたものですが、最高裁は、「本件は、民訴法318条1項により受理すべきとは認められない。」との理由だけで、不受理の決定をしたのです。

 原告としては、知財高裁による本件判決は民訴法318条1項の規定する「控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断がある事件」であるとともに、「その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件」に該当する事件であるからこそ争い、上告受理の申し立てをしたのですから、もし不受理の決定をするのであれば、その理由をきちんと説示するのが最高裁としての道理であり、義務というべきではないでしょうか。にもかかわらず、最高裁は上告人(原告)に対し、前記規定に該当しない理由を何ら述べることなく一方的に不受理の決定をしていることは、全く不可解なことです。

 しかし、このような最高裁の裁判官たちの姿勢は、正に法の下に平等の原則(憲法14条)に反する、非難されるべき行為といえるのではないでしょうか。第二小法廷の4人の裁判官(5人目の寺田逸郎長官は参加されていない。)は、意匠法3条1項と2項の規定の意味内容をよく理解しているのでしょうか。(この中の山本氏は特許庁に在籍したことがある通産省出身の行政官であり、「不正競争防止法」の著書もある方です。)

 この知財高裁の判決と最高裁の決定については、「特許ニュース」12月26日号の「弁理士の眼」でまず紹介し、本HPには2015年1月1日号で紹介する予定です。実はこの判決事件は、今回紹介している「裁判例研究コーナー」(1)の事件と、すでに6月1日号で紹介した「シール事件」に共通する意匠法3条2項の適用問題なのです。 

 

私は11月1日号で、中村修二さんが文化勲章を受章されたことに関連して、元従業者(職務発明者)に対し日亜化学工業(株)は「おめでとう」と言ってはどうかと書きましたが、会社は中村さんに会うことすら拒否しているといわれています。

 中村さんは、昭和54年に入社して以来、一途に青色LEDの研究開発に尽力し、当時の小川信雄社長(創業者)に直訴して米国の大学にも留学したほどでありましたが、長女の婿養子の英治さんが社長に就くと状況が一変した、と報道されています。職務発明の莫大な対価をめぐる訴訟事件も、そのような両者の関係の中の一出来事であったようです。

 今日は、LED照明の主流は白色LEDであり、日亜化学はその基幹部品メーカーとして、世界市場の2割のシェアを占めているといわれています。

 

 

今月の「裁判例研究コーナー」では、次の4件について紹介します。

 

(1)出願意匠「携帯情報端末」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成26年9

      月11日(3部)判決<請求棄却>➡B1−54 別紙

 (2)「野口英世記念財団」不正競争行為差止請求事件:東京地裁平成26年9

    月30日(民47部)判決<請求棄却>➡C2−29

 (3)出願商標「江戸辛味大根」審決取消請求事件:知財高裁平成26年10月29

   日(2部)判決<請求棄却>➡G−193

 (4)著作物・絵柄のシールを含む商品・「ふわふわ 四季のたより」著作権

   侵害損害賠償等請求事件:東京地裁平成26年10月30日(民46部)判決

   <請求認容>➡D−97 別紙

 

 

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