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2014年11月1日



 
近 況 雑 感

.1 私は、中村修二さんのことも、赤崎勇さんのことも、この欄において何回か書いています。例えば、中村さんについては、勤務していた会社との間の職務発明に係る特許を受ける権利を承継(法的には権利の譲渡)させたときには、相当の対価の支払いを受けるとした特許法35条3項の適用について、東京地裁及び東京高裁の判決を批判しました。

 この批判の根本にある理由は、前記権利譲渡による対価の支払いのための評価の対象となるものは、実は発明者の「発明」ではなく、代理人たる弁理士が書いた「クレーム」であるということです。換言すれば、長年苦労して開発し完成した発明が「大」のつくものであったとしても、企業が収益を得ることができる根拠になるものは、その特許権が有する「クレーム力」なのです。

 特許権の効力が及ぶ発明の内容は、特許庁へ提出する特許願書に添付する「特許請求の範囲」の記載にこそあり、いかに画期的な発明であっても、その発明力に合致するだけの広くかつ強い技術的範囲についての記載がなければ、結果的には小発明の評価しか受けられないことになります。私が常に「発明力よりクレーム力を評価せよ」と言っているのは、このことです。ただし、弁理士自身がその発明から「クレーム」の内容を創作しない、出願人たる企業又は発明者たる個人から与えられた「クレーム」の記載をそのまま書いているような代書人的弁理士の場合には、この考え方は通用しません。

 

1.2 今年のノーベル物理学賞の入賞者にはわが国の3人の学者が選定され、その共通テーマは「青色LED(Light Emitting Diode)」の開発の成功と実用化に対してです。しかし、中村修二さんは、赤崎勇さんや天野浩さんとは、研究中に特に交流はなかったと言っていますし、今井哲二静岡大学教授は、中村修二さんは職務発明によって莫大な対価を得たのだから、それを機会に同じ道の先駆者としての赤崎勇さんに対し賛辞があってもよいではないかとさえ言っています(本HP 第1−22参照)。

 なお、中村さんと天野さんは今年の文化勲章の受章者になりましたが、赤崎さん自身はすでに2011年に文化勲章を受章されていますし、その前には文化功労者にもなっておられます。

 そこで不可解なのは、前記中村修二(原告)対日亜化学工業株式会社(被告)の職務発明事件における対価判決が確定した後、被告は問題の特許第2628404号に係る特許権を放棄したことです。この事実は、善意に解すれば青色LEDの基本的特許発明を一般に開放することにしたこと、悪意に解すれば発明者の名前の入った特許権は早く消滅しておきたいとしたことになります。

 しかし、いずれにしても、基本特許権の放棄とは独占権の放棄ですから、それによる会社の収益の減少に通ずることは明らかであり、ライバル企業の増益につながることになります。しかも、この特許発明は、ノーベル賞の受賞の対象となったものですから、会社としては、元従業員の中村さんへ「おめでとう」の言葉を与えてもよいと思います。

 

2.私はワイン党です。2人の娘の名前を標章としたラベルを、タイポグラファーの桑山弥三郎さんに作成して印刷してもらったものを、毎年100本単位で契約している山梨県勝沼のワイナリーに預けておき、必要な時に、そのラベルを貼ったワインを贈ったり,送ってもらったりしています。このワインは、甲州ぶどうで醸造された白ワインに限られ、毎年のビンテージが貼られています。こういうワインを人はマイワインと呼んでいます。私が今でも持っているマイワインには、マリリン・モンローや美空ひばりがありますが、石原裕次郎のものは入手できませんでした。彼らの氏名や肖像やサインは、死後でも保護されるパブリシティ権を有しているのです。

 ところが、最近、写真入りのラベルの「おぶち優子ワイン」なるものが、小渕優子さんの出身地の群馬県で出回っていたというニュースを聞いて、驚きました。彼女は現在、衆議院議員の政治家であり、そのワインを地元民に無料で配布していたといわれています。何年物か、何本かなどは発表されていないから知りませんが、公職選挙法の違反行為に該当することは明らかですから、私はワイン党の1人として断固として容赦できませんし、このような使われ方をされるワインが可哀想です。

 

今月の「裁判例研究コーナー」では、次の4件について紹介する。

 

(1)職務発明の対価請求事件:東京地裁平成24年2月27日(民40部)判決<一

   部認容>/知財高裁平成25年4月18日(2部)判決<原判決一部変更/附帯

   控訴棄却>➡J−8

(2)漫画「軍鶏」の映画化の著作権侵害損害賠償請求事件:東京地裁平成26年

   8月29日(民40部)判決(請求棄却)➡D−95

(3)著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求控

   訴事件:知財高裁平成26年9月29日(2部)判決<請求棄却>➡D−92−1

(4)「テンプレート」等著作権侵害差止等請求事件:東京地裁平成26年9月30

   日(民47部)判決<請求棄却>➡D−96

 

 

4.このHPに掲載されている私の論文,論説には著作権が与えられていますので、無断複製を禁止します。引用される場合には、必ずその出所を明記して下さるようにお願いいたします。 All Rights Reserved.


 
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