USHIKI INT'L PATENT OFFICE

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2014年10月1日



 
近 況 雑 感

初めにおことわりしたいことがあります。それは、本欄の9月1日号の2.において、数字とドイツ語スペルに誤りがあったことです。これらにつきましては、気が付いた時点で直ちに訂正しましたが、同時にほかの部分についても併せて補正しましたので、ごらん下さい。読者の方におれましては、誤りに気付かれた方がもしおられましたら、その都度ご指摘下されば幸いです。

 こういうことがありますので、私はどの文章であっても、発表後には必ず読み返すことを習慣としており、誤りに気付けばすぐに訂正した文章にしています。これは、特許出願をした発明についての明細書を、少なくとも審査請求時には読み返し、補正が必要であれば、手続補正書を同時に提出することと同じことであります。

 

2.さて、私は、英国政府の知的財産庁(IPO)が広く一般にパブコメにより、2013年11月27日までに提出を要求していたCDPA1988第52条の廃止論に対し応募したことから、ステークホルダー(stakeholder)と言われる1人となり、英国政府は9月15日に、CDPA1988第52条の廃止時期の検討を開始するに当たって、私に対してもConsultation on transitional provisions for the repeal of Section 52 of the Copyright, Designs and Patents Act 1988”と題する刊行物を送信して来ました。(同書によると、IPO is an operating name of the Patent Officeとある。)

 そこで、私としては、わが国では現在においても、英国におけるこの重要問題について、わが国民やわが国政府(特に文化庁,特許庁)においても知ってもらうために、本HPを通じてまず衆知することにしました。(この問題に対するパブコメに応募した私見については、第1.4−1「CDPA1988第52条の廃止に反対する」(英語版日本語版)として発表しています。)(注)

 今回は、ステークホルダーに与えられた最初の情報についてだけを、ここにお知らせすることにします。詳細な紹介は、本文を読んだ後にします。

(1) 英国政府の今回の変更の効果は、古い美術作品に著作権をもたすことになるでしょう。これは、主に、工業的に製品化されて25年以上経過した美術作品に対して良い効果を与えることになります。例えば、ある家具に著作権保護の資格を与えることができたり、壁紙に製作された視覚的作品に影響を与える、と示唆されています。英国政府は、協議が実務上に影響するかも知れない問題点についての情報を、さらに要求しています。 

(2) 変更が効力を発揮した時、その結果、権利所有者がその作品を許諾することができたり、複製を禁止することができるでしょう。著作権者でない者やその被許諾者は、法的に許諾を求めたり、著作権者に対し、複製のための許諾を求める必要があるでしょう。 

(3) 政府は、廃止の効果を2018年4月6日から執ろうとしています。

(4) 協議は、提案している推移期間が、関係団体にとっては公正で妥当かどうかの見解を求めています。また、3年間の推移期間の影響の証拠と他の選択肢についての証拠、即ち2015年4月に発足して6か月又は5年間についての証拠を求めています。廃止の政策は、この協議の範疇外の問題です。 

(5) 文書は、英国政府のwebsiteから入手することができます。

 https://www.gov.uk/government/consultations/transitional-provisions-for-the-repeal-of- 

 section-52-of-the-cdpa

(6) 協議に対する回答は、2014年10月27日が期限です。

(7) 政府は、協議内容について議論する会合を次のとおり開きます。

 @ デザイナー及び権利者・実施業者の会合(10月8日午後2時)

 A 製造業者,輸入業者,美術作品の複製品の販売者の会合(10月9日午後3時)

 B 美術作品の2D複製の使用者又は創作者の会合(10月10日午後3時)

 これらの会合は、知的財産庁において1〜1.5時間位行われます。

 

 (注)この問題に直接関係する拙著としては、牛木「商品化権法への道―著作権法適用 

 の 限界―」があるので、参照してください。私はここにおいては、CDPA1988第

 52条を、権法のモデルローと位置付けています。➡第1−32

 

わが国政府は、意匠の国際分類に関するロカルノ協定(1971年発効.1979年改正)に加入するための文書をWIPOに寄託したことから、同協定はわが国について9月24日から発効することになった、と特許庁は発表しています。

 特許庁の発表によりますと、国際の意匠分類は、32の分類と219の小分類で構成されているから、わが国の意匠分類である13のグループ、77の大分類と3196の小分類と比較すると、分類肢が少なく、分類の構成も粗いものとなっていますので、製品市場のグローバル化の拡大から国際分類による外国意匠公報の調査の増加もあるから、わが国も参加して、国際意匠分類の細分化のための専門家委員会における論議を進め、わが国の考え方を反映した改定作業に参画したいという強い意思があるようです。したがって、わが国がロカルノ協定に加入したからといって、わが国の現行の物品分類を同協定のそれに合わせて改正するというものではないようですが、専門家委員会(これまではオブザーバー)における強力な発言と積極的な改正参画を期待したいと思います。

 ただこの協定は、意匠法の保護対象となる物品について多分野の多種類にわたって分類し規定しているところ、大別して、次の3つのデザインに及んでいます。すると、われわれは、わが国特許庁がこの分類の内容を、どのように導入し運用しようと考えているのかを注目したいと思います。

 (1) Product Design

 (2) Enviromental Design including Building

 (3) Graphic and Informational Design(この中には、Typographyも含む。) 

 このうち、わが国がこれまで保護対象としていなかった(2)(3)に属するデザインの保護に、われわれは注目すべきです。これらの分野のデザインは著作権法に属するものでもあるからです。

 

一方、意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブアクト(1999年)への加入も、わが国はWIPOに文書を寄託したことから発効しましたが、この協定は、わが国の出願人は直接、スイスのWIPO(国際事務局)へ出願することを原則としています。例外的には、わが国特許庁を経由して出願することもできます。この出願のユーザーメリットは、一つの出願書と図面によって、協定加盟国への意匠登録が可能となり、言語は英語,仏語,西語であればいずれでもよく、しかも代理人なしで直接出願ができることです。しかし、ハーグ協定の加入にともなうわが国意匠法の改正はまだなされていないので、わが国特許庁への国際出願の受理の日程は現在のところ未定です。

 このハーグ協定と前記ロカルノ協定との関係は無縁ではありません。即ち、ハーグ協定に基づく国際登録出願をすることができる対象物品は、ロカルノ協定下に規定されている分類に基づいていますから、前記した(1)(2)(3)の全部が対象となるかといえば、わが国意匠法下にあっては「物品」と認定されないものについては、対象外となります。

 その他、同協定の詳細と国内法規との関係についてはいずれ特許庁から発表されることになると思いますが、意匠法の改正問題が絡むことから、その施行のためにはまだ時間がかかることになるでしょう。

 

元社会党委員長で、後に衆議院議長にもなった土井たか子さんが、9月20日、死去された(85歳)。同志社大学法学部では田畑忍教授の憲法の授業を受け、同大学院修了後、関西学院大学などで憲法の教鞭をとられた人だから、護憲政治家として、わが国政界にマドンナ旋風を巻き起こしたことでも知られています。その意味では、わが国政界の中ではNo.1の女性政治家といえるでしょう。神戸市の出身です。

 憲法といえば、偶然、土井さんの死去を報道した9月29日(月)の朝日新聞「声」欄のトップを見ると、「憲法9条の条文がない教科書」と題した千葉県の牧師さんの投書が掲載されていました。これによりますと、「小学校6年生の息子が使っている社会教科書を見て、はっとさせられた。憲法を学ぶ単元の中に、『9条』の文字と条文が見当たらないのだ。」というが、私もそれを見て驚いたものです。非核三原則や憲法前文の要旨などは紹介されていても、第9条そのものの規定がないというのでは、牙を抜かれたライオンのような文章となり、社会科の教科書としては失格というべきでしょう。

 ついでにもう一つ。同紙の29ページ下に「意見広告」として、「憲法9条にノーベル平和賞を」と題した半ページ分の大広告が出ています。これは、もともと神奈川県座間市在住の鷹巣直美さんという主婦の発言に端を発した運動ですが、これは奇しくも「憲法9条を国連憲章に!」と以前から提案している私の発言に呼応しています。現在、そのための実行委員会が出来ているそうですが、私自身はこの委員会には直接関係ありません。 http://shiminsyugi.org/

 

今月の「裁判例研究コーナー」では、次の5件について紹介する。

 

(1)登録意匠「放電ランプ」意匠権侵害差止等請求事件:大阪地裁平成25年

   1月22日(21民部)判決<請求棄却>/大阪高裁平成26年7月4日(8民部)

   判決<請求棄却>➡A−62

(2)出願商標「浅間山」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成26年7月30日

   (2部)判決(請求棄却)➡G−190

(3)登録商標「PITAVA」商標権侵害差止請求事件:東京地裁平成26年

   8月28日(民47部)判決<請求棄却>➡F−48

(4)出願商標「東京維新の会」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成26年9月

   11日(1部)判決<請求棄却>➡G−191

(5)出願商標「日本維新の会」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成26年9月

   17日(2部)判決<請求棄却>➡G−192

 

 

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牛 木 内 外 特 許 事 務 所
  弁 理 士  牛   木   理   一
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