USHIKI INT'L PATENT OFFICE

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2013年5月1日



 
近 況 雑 感

 

1.「特許ニュース」は日刊紙であるとともに経済産業調査会という経済産業省の外部団体の一つが発行している貴重な情報紙であるところ、4月4日号には産業構造審議会・特許制度小委員会の報告書「強く安定した権利の早期設定及びユーザーの利便性向上に向けて公表」が掲載されていました。この報告書は、平成25年2月25日に開かれた同委員会でまとめられたものですが、同委員会の委員名簿を見ると、特許法の専門家といえる人は16人の中に1人も見当たりません。弁理士が1人いるほか、大学の教授や総長(民法),裁判官,弁護士,企業関係者などは、いずれもそれぞれの立場から抽象的には意見を述べられても、制度の方向性や立法論に言及するような具体的な意見を述べられるような専門家ではありません。また、出願実務や審判実務を長く経験するとともにそれを理論的に考える能力を有する人でなければ専門家とはいえません。

 すると、結局、この報告書をまとめるまでに長年審議するための具体的な提案を作成して来た者は特許庁内部の関係者であり、内部で全部お膳立てした書類を会議毎に提出して是非をとるだけです。もし意見があればメモしておく程度にすぎず、各自の発言が立法論や特許庁の実務に反映するようなことはまずないといわれています。

 この問題について私は、今年2月1日号の本欄で、朝日新聞夕刊の記事に登場した故日隅一雄弁護士の言を引用して指摘しましたが、前記委員会についても痛感します。前記のような専門委員会にあっては、その道の専門家に向って公募をかけ、応募者の中から公平に選考するのが民主主義国家の常識というものです。それだけ、委員会に選任された人々の責任は重いということですが、前記の委員の方々はどのように考えているのでしょうか、思いを聞きたいものです。

 

2.ところで、特許庁は現在、意匠法の改正審議も行っていることは本欄の2月1日号で明らかにしましたが、この中で難航しているのが「画像デザイン」の保護方法のことのようです。当事務所では、そのようなデザインについてはまだ取り扱ったことはないので、あまり考えたことはありませんが、その保護に当たっては意匠法という法律の前に、著作権法という法律が存在することを忘れてはならないのです。そして、著作権法は、画像とか模様とかそれ自体を直接保護しますから、物品には関係しなくてすみます。そして著作物(作品)はそれが完成した時点で、無方式で著作権が即発生し保護が開始します。

 私が弁理士業を始める頃に読んだ本に、Russell-Clarke "Copyright in Industrial Designs" 1930がありますが、この本の題名からもわかるとおり、わが国で制定(明治32年)当時から使われている意匠法とは、英国では「工業デザインの著作権」と考えられていたのです。

 私が、意匠法の研究をそれ以来今日まで欠かすことなく長年続けている時に、著作権法との関係を常に念頭においているのは、ラッセル−クラークの著書からの影響があると思い、この思いは50年以上経っても変わりません。私が彼から学んだことは、意匠法は著作権法の特別法だという歴史的背景があったことであり、意匠法が保護するものは創作者の創作物であり、登録意匠と類似する意匠に意匠権の効力が及ぶのは、創作された意匠の創作体を意匠法は保護することを目的としているからです。

 

工業デザインの国際登録に関するハーグ協定の1999年ジュネーブアクトに、わが国も加盟するかという審議が特許庁で続いているといわれていますが、その動向はまだ明らかにされていません。わが国政府は米国の動きを見ているということは以前から聞いていますが、米国は現在、大統領のサイン待ちであると、最近米国の弁護士から聞いています。

 私は以前にも書きましたが、WIPOで行われていた専門家委員会にはAPAAの代表として毎回出席し、また1999年の外交会議にも出席し、各国代表の発言や議論を聴取し、議事録等も受け取っていますが、オブザーバー参加のわが国代表(意匠課中心)は、その後、ハーグ協定についてはあまり考えて来なかったように見えます。

 しかし、ハーグ協定によるデザインの保護対象や範囲や方法は極めて多彩でありますから、特許庁は目をまわして的確に対応できないでいるのかも知れません。

 わが国としては、国民の利益のためにも、また国際的な協調のためにも、ハーグ協定への加盟は早急に結論を出さなければならない課題であります。

 

 

今月の裁判例研究コーナーでは、次の10件について紹介します。

 

(1)「携帯ゲーム機専用コイル状ストラップ付タッチペン」商品形態・不正

   競争行為損害賠償請求事件:東京地裁平成24年12月25日(民46部)判決

   <一部認容>➡C1−61 別紙

(2)「アニメ請負契約」損害賠償等・同反訴請求事件:東京地裁平成24年12

   月25日(民47部)判決<認容>➡D−80 別紙

(3)「漫画各話の作画」著作権侵害損害賠償請求事件:東京地裁平成25年1月

   31日(民46部)判決<請求棄却>➡D−81

(4)「眼鏡式ルーペ」商品形態・不正競争行為差止等請求事件:東京地裁平

   成24年7月4日(民29部)判決<請求棄却>/知財高裁平成25年2月6日

   (3部)判決<請求棄却>➡C1−62

(5)登録商標「御用邸」商標権侵害差止等請求事件:東京地裁平成25年2月19

   日(民47部)判決<請求棄却>➡F−37

(6)特許出願「偉人カレンダー」拒絶査定審決取消請求事件:知財高裁平成

   25年3月6日(3部)判決<請求棄却>➡I.1−6

(7)「モンシュシュ」商標権侵害差止等請求控訴・同附帯控訴事件:大阪高

   裁平成25年3月7日(8民部)判決<変更/棄却>➡F−29−1

(8)登録商標「Baby Mon chouchou+図形」無効審決取消請求事件

   :知財高裁平成25年3月21日(2部)判決<請求棄却>➡G−164

(9)登録商標「Fashion Walker」不使用取消審決取消請求事件:知

    財高裁平成25年3月25日(1部)判決<請求棄却>➡G−165

(10)登録商標「ボロニアジャパン」無効審決取消請求事件:知財高裁平成25

   年3月28日(4部)判決<請求認容/審決取消>➡G−166

 

 また、第1論文コーナーの「第1.3その他」において、私が「NBL」の第745号(2002年9月15日)に発表した「弁理士法の一部改正と弁理士制度の行方」を転載させていただきます。この中では、付記弁理士制度への批判と司法制度全体の改革審議の中における弁理士制度改正への展望を提言しています。

 

 

5.このHPに掲載されている私の論文,論説には著作権が与えられていますので、無断複製を禁止します。引用される場合には、必ずその出所を明記して下さるようにお願いいたします。 All Rights Reserved.


 
牛 木 内 外 特 許 事 務 所
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