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2013年10月1日



 
近 況 雑 感

 

1.女子栄養大学などの学校を経営する学校法人香川栄養学園の創立80周年記念式典が、9月14日に開催されました。この学園の創立者の香川昇三先生(香川県)と香川綾先生(和歌山県)は、いずれも東京帝国大学医学部出身の医師でしたが、共に病気を治すことを目的とする医師ではなく、病気をしない身体をつくることを目的とするのが医師の使命であるという共通の認識があって栄養学園を設立されたというのです。これこそ、正に医学の本質であると私は思います。

 「食は生命なり」を学園の精神として教育をされて来られ、病気をしない身体づくりの第一歩はすべて食にあることをアピールすることから教育を始められていることを知り、われわれは両医師が創立された香川栄養学園の存在意義の偉大さを改めて認識させられました。

 また、香川先生は、わが国で最初に「計量カップ・スプーン」を考案され実用新案権を取得されています。また、現在も特許や意匠登録の出願をされています。

 

2.さて、内閣官房の知的財産戦略本部は、今年も6月25日に「知的財産推進計画2013」を発表しました。今年は知的財産基本法が平成15年(2003)に施行されてから満10年に当たるところ、過去に策定した計画についての見直しがあると思いきや、それは特になく、今後10年間を見据えた政策になっているといっています。

 しかし、総論的には10年後に及ぶ知財法の推進計画を立てることは可能でも、各論的には議論をまとめてにく問題が山積しているのです。その中で今回は、特に「職務発明制度」について、現行特許法35条の規定の改正問題が挙がっていますが、これは早く審議されることが期待されています。改正の保護の方向性は、現行法の発明者中心から使用者中心に変わろうとしており、著作権法15条のような規定となると思われます。

 ところで、推進計画とは関係ありませんが、個人的にはかつて産構審によるパブコメにおいて、美術の著作物(例えば、マンガキャラクターの絵)が物品(製品)に転用された時は、それを著作物の複製や翻案とは解さず実施と解して、著作権の効力は及ばないとする制限規定を著作権法に設けることにより、隣接する知財法である意匠法との調和がとれることになると提言しています。このような著作権法における効力制限規定のモデルは、すでに英国CDPA1988の第52条にあります。即ち、 

 美術作品が著作権者自身またはその被許諾者によって、(a)美術作品のコピーが工業手段によって物品に製作され、(b)その物品を英国その他の国で流通においた場合、その物品が最初に販売された年の終わりから25年間だけは物品化したものを著作権法によって保護することにしたのです。

 これは、1968年デザイン著作権法にとって代わる新しい制度です。1968年法は、1956年著作権法の10条が、著作権者またはその被許諾者が著作権のある美術品を物品に利用し、その物品を販売等した場合は、その後、第三者がそれと同一の物品を著作権者の許諾を得ずに製作して販売等しても、著作権の効力はもはや全く及ばないとしていたのを廃止し、1949年登録デザイン法によって登録していなくても登録したと同様の15年間を「デザイン著作権」として保護するとしていたのです。

 前記CDPAはこの1968年法を廃止し、そのような場合の規定を再び著作権法に組み入れ、物品に利用される美術作品を応用美術作品とみなし、その存続期間を通常の著作権に与えられる存続期間ではなく、25年としたのです。これによって、英国はベルヌ条約パリ・アクト7条4項(応用美術作品の保護期間)の規定を充足することができたから、パリ・アクトを批准することになったのです。

 この条項は、マンガキャラクターの商品利用の場合の「商品化権」に関する規定でもありますから、商品化権について何の制約もされず、通常の著作権による利益の享受を認めているわが国の著作権法関係者は、英国におけるこの保護法は、商品化権問題の合理的な解決を考えるための今後の国際的トレンドとなるとの認識をもっていただきたいのです。

 これでおわかりのように、商品化権問題は正に、応用美術作品(artistic work applied to articles)の保護問題であると同時に意匠権問題でもあるのです。即ち、用語は異なるけれども、美術(マンガ)の著作物→商品化物(物品への転用)=意匠(物品の形態)の関係になるのです。

 

「同人誌」のことは、故米沢嘉博氏がわが国のコミックマーケット(コミケ)の普及に貢献され、毎年春秋に行われる販売会の発展はすさまじいものがあることは本欄でもかつて紹介しました。

 その同人誌出身のプロ・マンガ家の赤松健さんが新連載を始めた「週刊少年マガジン」(小学館)9月28日号で82ページもある「少年よ強くあれ」には、「近未来バトルファンタジー開幕」とある「ユーキューホルダー!」の表示に隣接して、朝日新聞2013年8月28日(水)号の記事に紹介されているマークが掲載されています。

 このマークは、新聞記事にあるとおり、マンガ家のオリジナル作品中のキャラクターや情景などを使用して、他人が新しいマンガを創作するという二次的創作を発表することを予め許諾する意思表示を意味するものです。

 

 「二次的著作物」については、著作権法で2条1項11号に定義されていますが、マンガの場合にあっては、著作物の変形その他の翻案に当たる作品をいいます。かつて、“サザエ本”と呼ばれた長谷川町子さんの「さざえさん」に登場する人物の絵や名前を無断使用した全く別異のマンガ本がコミケで販売されていたことがあり、今日販売されているアマチュア・マンガ家によるマンガ本の中にはそのようなものもまだあります。

 かつて本欄でも紹介した「ブラックジャックによろしく」の作者のマンガ家佐藤秀峰さんは、自分の作品からの他人による二次的著作物の発表をフリーにされています。

 現在、活躍しているプロのマンガ家の中にもコミケ出身の人もいるし、コミケでマンガ誌を売って生計を立てている人も多くいます。

 米沢さんがコミケ30周年の企画で刊行した「パロディ古典古典」(松文館 2005年)を見ると、この分野の問題を知るにはいろいろ参考になる事実が書かれています。

 

 

今月の裁判例研究コーナーでは、次の5件について紹介します。

 

(1)「履物装着用ヒールローラー」意匠権・実用新案権侵害差止等請求事件

   :東京地裁平成25年4月19日(民29部)判決<請求認容> A−57

(2)「バッグ」商品形態・不法行為差止等請求事件:大阪地裁平成25年5月30

   日(21民部)判決<請求認容>➡C1−63 (別紙)

(3)「タイプフォント」不法行為等損害賠償等請求事件:大阪地裁平成25年

   7月18日(21民部)判決<請求棄却>➡D−84 (別紙)

(4)登録意匠「亀甲墓屋根」意匠権侵害差止等請求事件:大阪高裁平成25年8

   22日(26民部)判決<請求棄却>➡A−58

(5)登録商標「ほっとレモン」登録取消決定取消請求事件:知財高裁平成25

   年8月28日(1部)判決<請求棄却>➡G−177

 

 

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牛 木 内 外 特 許 事 務 所
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