USHIKI INT'L PATENT OFFICE


 

 
 
2012年2月1日


 
近 況 雑 感

 

1.この新年の休み中、筆者は過去に書き溜めていた古い原稿や参考文献などを整理している時に、ハッと驚く2つの文献を発見しました。一つはCRICがまだ(社)著作権資料協会時代の「コピライト」1975年5月号、二つはAIPPI日本部会1976年10月刊行の中松之助先生追悼論文集「国際工業所有権法の諸問題」に発表された田倉整先生の論文「ドイツにおけるMusterについて―日本の判例実務と対比して―」の抜刷でした。

 前者の新刊紹介欄では1974年12月に出版した拙著「意匠法の研究」(発明協会)が、伊藤信男先生によって3ページにわたり論評されており、最後に「著者(注・伊藤)は、個人的希望として、本書をサカナに著者(注・牛木)と心ゆくまで論議を交し、上記の諸問題について、自己の思索を発展させ、自分なりの明確な解釈を得たいと思っている。」と書かれていました。しかし、同じ鎌倉に住まわれていた伊藤先生には、朝の時間に駅のホームで時々お目にかかりましたが、拙著をサカナにして駅前の飲み屋で心ゆくまで議論を交す時間は、遂にありませんでした。その後、筆者は、1980年5月に「商品化権」(六法出版社)と題する著書を出版しましたが、これには伊藤先生が担当された「サザエさん」事件を詳しく紹介しており、商品化権問題の先駆的裁判となった事件です。拙著の方も、タイポグラファーではわが国の第一人者である桑山弥三郎氏に装丁をしていただき、内容も当時類書を見なかったためか「(社)日本図書館協会選定図書」の認定を受けました。

 後者は、筆者が「特許ニュース」の今年1月25日号に紹介した最近の裁判例の「目違い修正用治具」意匠権侵害差止等請求事件(東京地判平成23年11月20日)の評釈で、実用新案法と意匠法における「物品の形状」を論じた箇所の(注)において、ドイツ法と日本法とを結び付けられた田倉先生の論稿を紹介しました。(裁判例コーナー A−47

 さらにもう一つに、弁理士中島健一先生の死を悼んで「パテント」に掲載した「中島健一先生をいたんで」があり、これには藤田米蔵先生も書かれたものを、同題で同時に掲載されていました。中島信一先生については、「可撓伸縮ホース」の意匠登録無効審決取消請求事件に対する東京高裁昭和45年1月29日(6部)判決が、その後の最高裁昭和49年3月19日判決と理由は異なるが、意匠法3条1項3号と2項との適用の違いの理由について、今日でもなお鮮明に脚光をあびているのです。(牛木「意匠法の研究(四訂版)」128頁,192頁参照)

 

 

2.本欄の1月1日号で記述していました経済産業調査会発行「知財ぷりずむ」2012年1月号において、筆者は、「商品化権法への道―著作権法適用の限界―」という論文を発表しましたが、これについては、本号の第1論文コーナー 32.に掲載しましたので、ごらん下さい。

 これは、わが国のこれまでの裁判例が、マンガキャラクターの商品化利用を、現行著作権法における著作物の複製又は翻案と拡大解釈し、著作権法によって保護していることの矛盾を突き、この問題は現行著作権法においては限界にあることを指摘しました。そして、今やわが国においては、新立法として商品化権法を制定すべきであることを、英国のCDPA1988の第52条を基本に、これを超えた内容を具体的な項目を挙げて提唱しています。関係各位のご批判を受けたいと思っています。

 

 

3.今月の裁判例コーナーでは、次の7件を紹介します。
(1)特許出願「マイクロ電極アレイよりなる電極,方法,装置」拒絶査定

   審決取消請求事件:知財高裁平成23年2月28日(3部)判決<認容/審

   決取消>➡I.1−3

(2)特許出願「螺旋状相互係止噛み合い案内前進構造」拒絶査定審決取消

   請求事件:知財高裁平成23年9月7日(3部)判決<棄却>

   I.1−4

(3)特許出願「逆転洗濯方法および伝動機」拒絶査定審決取消請求事件:

   知財高裁平成23年10月4日(2部)判決<認容/審決取消>

   I.1−5

(4)映画の著作権等侵害損害賠償請求事件:東京地裁平成23年10月31日

  (民29部)判決<認容>➡D−74
(5)「目違い修正用治具」意匠権侵害差止等請求事件東京地裁平成23年

   11月20日(民46部)判決<棄却>➡A−47
(6)商標出願「スーパーみらべる」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成

   23年12月26日(3部)判決<認容/審決取消>➡G−136

(7)意匠出願「穀物乾燥機用集塵機」拒絶審決取消請求事件知財高裁

   24年1月16日(2部)判決<棄却>➡B1−47

 この中で(1)(2)(3)の判決事件については、特許庁の審決における手続上の法令違背問題を取り上げています。

 

 なお、1月1日号の「裁判例コーナー」で紹介した(1)「ざる」事件C1−52の論説に6.項を追加しかつこれに関係する別紙2を追加しましたので、ごらん下さい。(この事件の別紙1,別紙2については、目次の当該項目の記載から入って下さい。)

 

 ところで、3月号では、特許権侵害事件の控訴審判決が知財高裁の大合議体によって平成24年1月27日になされた判決を紹介し論じてみたいと思います。これは、ハンガリー国の製薬会社がわが国で取得した特許権に基いて、協和発酵キリン株式会社に対し特許権侵害の差止等を請求した訴訟事件であり、これまで知財高裁において、考え方と判断が分れていたProducts by Process Claim をどのように解釈するかについて、特許法70条1項の原則に基く妥当な判断となった判決事件です。

 また、3月号では、北朝鮮映画をわが国のTV局がニュース番組でその一部を情報として放映したことに対する著作権侵害事件について、最高裁が平成23年12月8日に出した判決について紹介し論じてみたいと思います。

 

 

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