USHIKI INT'L PATENT OFFICE

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2012年10月1日



 
近 況 雑 感

 

1.9月7日に日本弁理士会主催で、改正された米国特許法に関する説明会を兼ねたシンポジウムが、東京の新装なったイイノホールで開かれました。そこで明らかにされたことは、米国は先発明特許主義の原則を廃止し、ようやくわが国等と同様の先願特許主義の原則に移行したことであり、その原則に関する限り、ようやく米国はわが国等の特許制度に接近して来たといえます。2012年9月16日の施行に急ピッチで施行規則の作成作業をしていたというが、例えば新規性喪失の例外規定などのgrace periodの問題などは、9月7日の段階ではまだ解決を見ていなかったという。

 ところで、米国は意匠(Industrial Design)については、これまで特許法の中で発明と同様の手続によって審査し登録し、Design Patentとして保護して来たが、今度こそは新特許法American Invents Act(AIA)とは独立した新デザイン法によって手続し登録していく方向にあり、現在、この法案は上院で審議中との答えが、筆者によるUSPTO副長官への質問によってなされたことは、ビッグニュースといえます。しかし、現在のところ、この新しいデザイン法案についての情報は、米国でも正式にまだ発表されていないので、現地の特許弁護士に問い合わせてみたいと思います。

 

2.島屋で開催された「バーナード・リーチ展」を見に行った。これは、陶芸家としてわが国でも著名人である彼の生誕125年(1887−1979)を記念し、民芸運動を先導した柳宗悦と共に行動した富本憲吉,河井憲次郎,浜田庄司らとの交流を通じて創作された120点の作品が一堂に公開されたのです。香港生まれのリーチは、もともとエッチング作家として来日した時、陶芸品に出会い、皿や壷などに絵を油彩することの面白さに目覚めたといわれています。

 民芸運動を提唱した柳宗悦は、「用の美」こそ民芸品の特徴であると言っていますが、これは正に意匠の始まりです。民芸品と呼ばれる作品は、「物品の形状+模様の結合」から成り立っていますが、その全体は手造りであるため、結果的にはほぼ同一作品ではあっても、美術工芸品と呼ばれ、一品製作品として著作権法の保護対象になります。(拙著「意匠法の研究」の第1篇意匠の本質・第3篇工芸品とデザインでも紹介)

 この「用の美」が、現在のわが国意匠法における「意匠」の定義(意2条1項)にも反映しているやに思われますが、そもそも「真」を司る法律の世界に、「美」に通ずる「美感」が導入されたこと自体が奇妙奇天烈の感を免れません。「視覚を通じて」で十分であり、「美感」の有無などは審査の対象になっていないことは、多くの登録意匠の存在が証明しています。

 

3.「裁判例コーナー」のE−6,E−7,E−9で紹介している「切り餅」特許権侵害差止等請求事件は、最高裁の平成24年9月19日における次の2つの決定又は判決により、知財高裁の平成24年7月22日判決「原判決を取消す。被告は各食品の製造等をしてはならない。各食品と半製品並に製造装置の廃棄,損害賠償金として8億0275万9264円を支払え。」が確定することになりました。

(1)本件上告を棄却するとの決定(民訴312条・317条)

(2)本件を上告審として受理しないとの判決(民訴318条・319条)

 それにしても、事実審(侵害論)はすでに終結していたのだから、何が上告のための理由となっていたのでしょうか。その意味では、今回の結末は予想されていたといえます。被告は、すでに特許権侵害とならない新製品を製造販売しているというコメントを発表しています。

 

4.今月の裁判例研究コーナーでは、次の3件について紹介します。

 (1)の「観音像仏頭部」事件は、平成21年5月28日に地裁判決が、平成22年3月25日に高裁判決が出た事件ですが、熟考する時間がなくて放置していたものです。今回ようやくまとめました。

 (2)の「クレンジング用組成物」事件は、被告請求の特許無効審判請求において、一部の請求項が無効となった場合に、侵害裁判所において審理が早いことから、侵害論が終って損害論に入った段階で、侵害の有無を争うような主張は、時機に後れた攻撃防御法として許されないと判断したことの適否が争点の一つとなっています。

 (3)の「観察窓付容器」事件は、その高裁判決に対しては、上告受理の申立ての理由が十分であると思っていたが、原告はそれをしなかった事案です。

 なお、9月1日号のA−52で紹介した「エーシーアダプタ」東京地判平成24年6月29日については、〔論説〕において、さらに強調すべき意匠法3条2項の存在意義を、法3条1項3号との関係を踏まえて解説しました。

 

(1)「観音像仏頭部原状回復」著作権侵害差止等請求事件:知財高裁平成

  22年3月25日(3部)判決<原判決変更→一部認容・その余棄却>

   D−79

(2)「油性液体クレンジング用組成物」特許権侵害差止等請求事件:東京

  地裁平成24年5月23日(民29部)判決<一部認容>➡E−10

(3)部分意匠出願「観察窓付容器」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成

  24年7月4日(4部)判決<請求棄却>➡B1−50 (別紙)

 

 

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