USHIKI INT'L PATENT OFFICE


 

 
 
2011年8月1日


 
近 況 雑 感


1.昭和20年(1945)8月15日、わが国は、昭和16年(1941)12月8日から始めた米英その他の連合国との戦争を終了しました。この終戦日は、わが国政府がポツダム宣言を全面的に受諾して無条件降伏をした敗戦の日でもあります。あれから今年は66年を迎えることになっても、消去されない事実は、わが国の多くの都市に対する米軍の空襲による戦災のことであり、多くの犠牲者を出し、木造家屋が密集していた日本の都会地を焦土と化してしまったことです。

 それにしても、当時のわが国政府が、同年7月26日に発せられた前記ポツダム宣言を8月14日よりもっと早く受諾していたならば、わが国の焦土面積は減少したでしょうし、本日夜の長岡空襲はもちろん、その後の広島,長崎への原爆投下はなかったのです。

 ちょうど1年前の本欄に書いた東京高裁で行われている東京大空襲による被害者に対する補償請求訴訟は11月28日に結審し、来春に判決言渡しの予定であり、また大阪大空襲による同様の訴訟は大阪地裁において12月7日に判決言渡しがある予定です。

 また、この問題の解決については、「空襲被害者等援護法」(仮称)の制定をめざして、国会では6月15日に超党派の議員連盟が発足し、立法化を図ろうとしていますが、先にあった名古屋地裁の判決が示唆した立法化の必要性に向う努力が現在続けられています。

 

2.ところで、7月21日(木)の朝日新聞の「科学」欄に「iPS細胞」を作る技術に関する京都大学の特許が欧州でも認められたとの記事が、「広い権利 京大粘り勝ち」の見出しで掲載されていました。同記事によると、「特許の範囲を国内では『狭くして早く』、欧州では『じっくりと広く』した両面作戦が当たった。」ということです。この作戦をリードしたのはドイツの代理人であり、「同代理人が強気で、『ファミリーが認められた特許がある』と粘り強く(特許庁審査官と)交渉して押し切った。」と、京大iPS細胞研究所の高須直子知財契約管理室長が明らかにしたということです。

 もっとも、米国や欧州への特許出願は、2005年12月に行われたわが国特許庁への出願に基き優先権を主張して2006年12月になされていますが、「特許請求の範囲(クレーム)」の記載内容は、各国特許庁における審査の段階で、審査官との交渉次第で変わってくることがあり、この時にものを言うのが代理人たる弁理士のリーダーシップであり、「クレーム」の作成です。つまり、「クレーム」が広いか狭いかという問題は、特に出願前に先行する公知技術との関係で決まることになるところ、その有無にかかわらず、出願時には広く、審査段階でやや狭くということが、われわれ弁理士の鉄則です。そして、弁理士が作成する「クレーム力」によって、その特許権の範囲が決定することから、いかに広い範囲のクレームにするかにわれわれは尽力するのです。特許権の強さは、「発明力」より「クレーム力」によって決まるのです。

 これは、私がかつて、中山修二対日亜化学工業株式会社の職務発明補償金請求訴訟の東京地裁判決に対して発言した「弁理士の『クレーム力』を重視せよ」(特許ニュース2003年12月22日号・第1−16)であり、「クレーム」を作成する代理人弁理士の立場をクローズアップしたのです。同様の考え方を私は、「NBL」の2005年12月15日号でも「『職務発明』の対価問題について−弁理士の“クレーム力”を評価せよ−」(第1−22)と題して発表しています。この論文を関係者は、ぜひ読んで考えてほしいのです。

 われわれ弁理士が作成する「クレーム」の記載について、別の見方をすれば、特許とは理と文とのシナジーな分野に存在するものと考えることができますから、発明をいかに法的に研磨するかは弁理士の力にかかっているということです。

 

3.今月の裁判例コーナーでは、次の5件を紹介します。
(1)「デニムパンツ」商品形態不競行為差止等請求事件東京地裁平成
   23426判決請求棄却C1−48
(2)「廃墟写真」著作権等侵害差止等請求事件東京地裁平成2212
   21日判決請求棄却>/知財高裁平成23510日判決控訴棄却
   
D−72

(3)登録商標「PIA」商標権侵害差止請求事件大阪地裁平成236
   2日判決<認容F−28

(4)「デジタル歩数計」商品形態模倣・不競法事件東京地裁平成23年6月
   17日判決<認容C1−49

(5)「モンシュシュ」商標権侵害差止等請求事件大阪地裁平成236
   30日判決<認容F−29


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