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2011年2月1日


 
近 況 雑 感


1.最高裁判事(1980年1月〜1989年9月)を歴任された東大教授の伊藤正己先生が死去されたとの新聞記事を見たのは、昨年12月30日でした。この伊藤先生と私との一方的な連がりは、私が商品化権の研究をしていた昭和45年頃に出会った著書「プライバシーの権利」(岩波書店・昭和38年1月25日第一刷発行)です。私の研究の一端は、著作権法学会の「著作権研究第5号」(有斐閣昭和48年3月20日発行)に「キャラクターの法的保護について」の題名で発表していますが、この論説は、昭和47年(1972)10月3日に著作権法学会の研究会で発表したものです。

 この論説の中で私は、山本桂一東大教授の新著「著作権法」(有斐閣昭和44年1月15日発行)から、特に漫画キャラクターの絵(図画)の著作物性の問題について引用し論ずるとともに、伊藤教授の著書からは、私が解釈していた広義のキャラクターとしての「実在人物」の無断使用に対し保護するニューヨーク州民法50条,51条が適用された1902年のRoberson事件の州最高裁判決やProsser教授の論文“Privacy”48Calit.L.Rev.383.P.386-88(1960)を紹介されていたことを知ったのです。当時、Prosser教授はプライバシーの権利を4つのパターンに分類され、その第4番目に「他人の氏名・肖像の営利的利用」を挙げていることを、伊藤教授は「パブリシティ(Publicity)の権利」として紹介されていたのです。

 ところで、その後驚くべきことに、「パブリシティの権利」についてわが国に紹介し論じた者として、私の名前が伊藤教授の次に出て来たのです。それは、わが国著作権法の大御所の阿部浩二教授(岡山大学名誉教授)が司会パネリストで開催された1998年の著作権法学会のシンポジウム「パブリシティの権利」というテーマの総論の中においてです。そして、この問題については、私が前記論説を「著作権研究」に発表した後の1976年に阿部教授が「注釈民法18巻」(有斐閣)で紹介しているといわれ、その他土井輝生早大教授の名前も出されていました。(その後、1979年には大家重夫氏が「肖像権」(新日本法規出版)を刊行された。)前記シンポジウムの記事については、「著作権研究第26号」(2000年9月11日発行)に掲載されています。

 ところで、伊藤正己教授が「パブリシティの権利」問題をプライバシーの権利からアプローチされているのは、あくまでも人格権の範疇で考えられているのに対し、私のアプローチは、実在人物が他人の商品や業務のために利用されるという財産的価値のある存在であるととらえているのであり、人格権が入り込む余地は殆んどありません。即ち、私の立場は、あくまでも広義の商品化権問題の一要素として他の2種類のキャラクターと並んで、実在人物のパブリシティ権の営利的利用問題を考えているのです。その詳細な展開については、拙著「商品化権」(六法出版社1980),「キャラクタービジネスと商品化権」(発明協会2000)などを参照して下さい。

 なお、私は現在、「商品化権法への道−著作権法適用の限界」という論文を執筆中であり、間もなく脱稿の予定です。

 

2.今月の裁判例コーナーは、次の5件を紹介します。
(1)番組制作請負契約に基づく請負代金請求事件:東京地裁平成22年7月

   16日判決<請求棄却>/知財高裁平成22年12月28日判決<控訴棄却

   >→D−68

(2)脚本の収録,出版妨害禁止等請求事件:東京地裁平成22年9月10日判

   決<請求棄却>→D−69

(3)「餅」特許権侵害差止等請求事件:東京地裁平成22年11月30日判決

   <請求棄却>→E−6

(4)「長柄鋏」意匠権侵害差止等請求事件:大阪地裁平成22年12月16日
   
判決<認容>→A−46

(5)新規性喪失例外規定適用不可・異議申立棄却決定取消請求事件:知
   財高裁平成23年1月11日判決<控訴棄却>→A−44

 (5)の判決は、東京地判平成22年8月6日<請求棄却>を不服とした原告によって請求された控訴事件の判決ですから、A−44の中に追加することにします。

 

 

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