USHIKI INT'L PATENT OFFICE


 

 
 
2010年11月1日


 
近 況 雑 感


1.日本弁理士会研修所主催のシンポジウム「意匠の類似」が昨年11月5日に大阪で、同年11月30日に東京で開かれてから、ちょうど1年経ちますが、「パテント」誌の今年8月号,9月号において、東京で行われたシンポジウム(パネルディスカッションではない)の内容がまとめて公表されました。講師は、弁理士からは小生のほか、小谷悦司氏,加藤恒久氏,梅澤修氏(元特許庁審査・審判官)、弁護士からは牧野利秋氏、知財高裁からは飯村敏明判事であったが、大阪では裁判所からは大阪地裁の山田陽三判事でした。

 しかし、このシンポジウムは各講師による一方的な考え方の報告に終始し、講師間の議論の応酬は殆んどなかったので、そこがパネルディスカッションとの違いといえるでしょう。その意味では、各講師の考え方の違いに対する議論に入っていないから、リスナーにとっては、問題点に対する突っ込みが弱いことから、やや物足りない印象を与えたのではないでしょうか。

 実は、今回のシンポジウムのテーマ「意匠の類似」については、かつて「商標の類似」をテーマとしたシンポジウムが研修所主催で行われたことに対抗して、私が提案したものが実現したのです。

 しかし、このテーマは、研修所におけるよりも、中央研究所において実務者と学者とで共同研究した方がよい問題であり、ここで論議した上でパネルディスカッションのかたちで発表するようにするのが、適当ではなかったかと思っています。

 ただ現在の弁理士会の組織では、両所における論議のテーマを区別して考える能力がやや欠如しているように見えますし、実務者集団である弁理士会の研究所における研究部会の構成員は、不思議なことに、実務者が学者よりも少ないのです。しかし、公平に見て、われわれ弁理士は少なくとも産業財産権法分野の実務のプロであり、学者らはアマチュアなのです。また、われわれ弁理士の中には、日本工業所有権法学会や著作権法学会の会員もおり、研究発表会や判例研究会では積極的に議論に加わっている会員もいます。

 

2.舟本信光さんという東京地裁民29部や東京高裁6民部におられた判事をご存知の方はおられるでしょうか。私は公私ともに面識がありますが、最初にお会いしたのは、1981年に有斐閣から出版された豊崎光衛先生の追悼記念論文集「無体財産法と商事法の諸問題」(古稀記念から追悼記念に変更された。)に私も寄稿していたことから、舟本判事がやはり意匠法部門において「意匠の識別機能について−美感を起こさせるもの−」と題された論文を発表されており、その刊行記念祝賀会が本郷の学士会館で開かれた時にお会いし話し合ったのです。舟本判事のこの論文中の考え方はその後、裁判所においては、創作保護説に代わって表舞台に登場し、竹田判事や清永判事らに影響を与えて今日に至っているように思われます。

 これに対して驚いた私は、早速、この舟本論文に対し、「意匠は創作か識別か−舟本説を中心に−」と題した反論文をパテント1982年3月号・4月号に発表したものです。(この論文は、拙著「デザイン キャラクター パブリシティの保護」67頁悠々社(2005)に収録している。)

 舟本判事には在職中に工業所有権法学会の総会などでお会いする機会はありましたが、退官後どうされているかは消息がなかったところ、たまたま9月11日(土)に神田三崎町の古書店の店頭の棚に並んでいた本の中に、舟本信光「裁判官の四季」新日本法規(平成2年)があるのを発見したのです。しかも、間を置いたところに2冊あったので、2冊とも買って来ました。同判事は詩人であり、詩集を刊行されていることも知りましたが、この本の内容は判夕や法苑などに発表されたエッセイで、中には高村光太郎の名前が出てくるものもあります。

 この話を、裁判所では同期位であったと思い田倉整先生に電話したところ、舟本先生は松本重敏先生と同期で、自分は1年後輩だと言っておられました。

 その舟本先生が逝去されたのは平成11年1月であることが、2冊のうちの1冊の裏表紙の内側に、この古書の持ち主によって書かれてありましたので、初めて知った次第です。もう1冊には、「恵存」の言葉と舟本先生のサインが表表紙の内側に書かれているとともに和紙に筆書きの書翰がはさまれていました。

 

3.今月の裁判例コーナーでは、次の4件を紹介します。
(1)出願商標「Factory900」拒絶審決取消請求事件:知財高裁
   平成21年5月28日判決<認容/審決取消>→G−110

(2)登録商標「招福巻」商標権侵害差止等請求事件:大阪地裁平成20年10
   月2日判決<認容>/大阪高裁平成22年1月22日判決<取消/請求棄
   却>/最高裁平成22年10月26日上告不受理決定→F−26

(3)「猫のぬいぐるみ」著作権侵害差止等請求事件:大阪地裁平成22年2
   月25日判決<請求棄却>→D−66

(4)出願商標「WORLD」拒絶審決取消請求事件:知財高裁平成22年9
   
月27日判決<認容/審決取消>→G−111   

 

 

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