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2009年7月1日


 
近 況 雑 感

1.毎年6月になりますと所属している種々の学会の総会・研究発表会が、国内各地で開催されますところ、6月6日に神戸大学で開かれる予定であった日本工業所有権法学会は、新型インフルエンザの影響の名の下で9月に延期されました。しかし、日本マンガ学会は6月20日・21日に東京工芸大学で、日本アニメーション学会は6月27日・28日に神戸芸術工科大学で、それぞれ開催されました。

 ところで、この2つの学会で若干話題となっていたのは、国立のマンガ・アニメ等のメディア芸術総合センターの設立に、われわれの税金から117億円の補正予算が使われることになり、その建物の設計図も出来ているということに対し、その中味は何かという必要性を含めた疑問ばかりでした。

 この件については、前記2つの学会での問題を予想し、両学会で著作権問題を担当している私は、文化庁芸術文化課に取材に行き、錦課長補佐からいろいろな話を聞きかつ資料を入手していました。そして、7月に入ると文化庁では委員会を開き、具体的な内容について詰めていくということになっていますが、このセンター設立の以前には、すでに「芸術文化基本法」が制定されており、国として何かを行こなおうという素地といえるものはできていたのです。

 そして、2004年に制定された所謂コンテンツ法といわれている「コンテンツの創造,保護及び活用の促進に関する法律」は、前記基本法に基いて制定されたものといえるのです。

 ただわが国各地にはすでに、公民合わせて、次のような多くの施設が存在していますから、これらの図書館や美術館の内容を超える中味のある国立のセンターとなるかどうかは、これからの企画次第でしょう。

 @ 現代マンガ図書館(東京都新宿区)

 A NTTインターコミュニケーション・センター(新宿区)

 B 東京アニメセンター(千代田区)

 C 東京国際マンガ図書館(千代田区)

 D 杉並アニメーションミュージアム(杉並区)

 E 三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)

 F 川崎市市民ミュージアム(神奈川県)

 G 山口情報芸術センター(山口県)

 H 京都国際マンガミュージアム(京都府)

 I 大阪府立国際児童文学館(大阪府)

 J 広島市立まんが図書館(広島県)

 K 北九州市漫画ミュージアム(福岡県)(計画中)

 (以上の記載は朝日新聞2009年6月28日9面より引用)

 この中で@は内記稔夫さんという個人が始めて50年以上経っている巨大な貸本屋であり、現在、これを全部引き取ってくれる大学等を探していますし、川崎と大阪にある公営施設は予算がないから廃止が検討されています。

 また、マンガやアニメのクリエーターの人材育成といえば、関西を中心に日本各地の大学や専門学校には学部や学科を専攻する学生が増えていますから、その教育については一応万全であるといえます。

 しかし、もし国が予算を使うのであれば、これらの分野についての既存刊行物の収集保存のためのアーカイブセンターの設立が急務でしょう。

 なお、わが国にはマンガやアニメという芸術作品に対し、これをサブカルチャーとしてさげすむ人による批判の声が聞こえますが、これらの作品は産業としても今や世界を制覇しつつあるメーンカルチャーとなっていることをわれわれは認識すべきであります。

 

 

2.今月の裁判例コーナーには、次の3つの判決事件を紹介します。
(1)家元芸名の商標権侵害事件:東京地裁平成21年3月12日判決<請求
   
棄却>→F−19

(2)商標「皇寿」査定不服審決取消請求事件:知財高裁平成21年3月17
   
判決<請求棄却>
   
G−81

(3)実演家の権利侵害差止請求事件:東京地裁平成20年10月22日判決
   
<請求認容>、知財高裁平成21年3月25日判決<控訴棄却>
   
D−63

 

 

3.これまで裁判例コーナーで紹介した東京地裁の判決の中で、(民46)とある部の裁判長を勤められていたことのある設楽(しだら)隆一判事が、6月27日付で新潟地裁の所長となられました。設楽判事は、意匠の類否の判断基準について、創作的混同説をその論文「意匠権侵害訴訟について」(特管37巻11号1375頁)の中で唱えられた人で、混同説(識別説)が優勢であった裁判所側から、はじめて折衷説を出されたとして私は注目していました。(牛木「判例意匠権侵害」10頁発明協会1993年,牛木「意匠権侵害」29頁経済産業調査会2003年)

 この問題に対する私の立場について外部では創作説といわれていますが、私は自分が創作論者であると言ったことは一どもありません。けだし、「意匠は創作なり」とは意匠の本質であり、意匠の類似を考えるときはここから出発しなければならないのは当然であるからです。人はすべからく、意匠法1条と商標法1条の規定の違いをよく知るべきなのです。

 なお、現在、知財高裁3部裁判長の飯村敏明判事はかつて甲府地裁所長をしておられたし、知財高裁4部裁判長の滝澤孝臣判事は3月まで山形地裁所長をしておられたが、両者の違いは、飯村判事はその前には東京地裁民事29部の裁判長を長くしておられたことです。

 

 

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