2007年1月1日


 
近 況 雑 感

新年おめでとうございます。
 新しい年が、人生を地道に歩いて来ている者にとっても企業にとっても、報いのある年であることを祈りたいと思います。そのためには、常に問題意識をもって創意工夫を続ける努力が必要です。
 今年は4月1日から改正意匠法が施行されますが、この次の改正は何時頃になるかと思うほど、「第24条第2項」の規定は悪法です。意匠法という法律の存在意義や意匠の本質を知らない行政官が立法者の仮面をかぶって改正法を作っているのが、わが国の姿です。(拙稿については、「パテント」2006年10月号参照)

2.私は、法学書院から依頼されて「弁理士受験新報」の新年号から、「好きになる意匠法の講義」を24回続けます。この内容は、大学院における講義を想定しているものです。弁理士を職業として、特許,実用新案,意匠,商標という4つの分野の出願業務を45年以上やって来て、そして誰もやっていない分野として選んだ意匠法の研究ほど、茨の道はありません。その理由を私なりに考えてみると、意匠は感性を中心機能として持つ右脳と理性を中心機能として持つ左脳の両脳細胞にまたがり、これを論理的に判断する悟性という才能が作用することにあるからです。
 ところで、今はやりの知的所有権や知的財産権という言葉の真意は、意匠法を究めて始めて理解することができるということを、特に学者の先生方に教えておきたいのです。そのためには、私が1967年9月から1968年3月にかけて「パテント」誌に発表した長編論文「インダストリアルデザイン−その美と保護の研究」(『デザイン キャラクター パブリシティの保護』(悠々社
2005)の第1部第1章に収載)を読んでいただきたいのです。この論文は、私の「知的創造権序説」のようなものです。これを書いたのは、暇を持て余していた新潟時代であり、「パテント」連載が終わって間もなく上京して東京時代が始まった次第です。
 若い学者や弁理士は、その気になれば研究する時間が余るほどあるのですから、その時間を論文書きに使ってほしいと思います。そのためには、常に実務から生まれた諸問題を自分の頭脳で考え、文献をよく調べ、先輩をつかまえて質問魔になることです。
 かつて東大教授の尾高朝雄先生が書いていました。『法の窮極にあるもの』という名論文は28歳の時に書いたものだ、と。

3.私は昨年11月、新潟県主催の知的財産権セミナーが新潟市で行われた際に、“マジックしゃもじ”の発明者で安藤百福賞の受賞者の大山治郎氏(株式会社曙産業会長・燕市)とともに講師として招かれた。私は当時の話題の一つとして、特許法35条の職務発明の対価をめぐる裁判事件について触れた。その際に受けた質問は、特許法の規定が通用するのは一部の大企業だけの話であって、中小企業以下の企業には通用しなのではないか、と。ということは、中小企業に就職する労働者は中途採用でも専ら職務発明に従事することを条件に雇用されることはないし、トップダウンで社長自身が発明する場合が多いのが現実だとの発言がありました。中には、自分で発明した新技術をセールスに歩くエンジニアもいます。
 すると、99%以上を占めるわが国中小企業の労働者にとって特許法35条3項の規定は、絵に描いた餅に見えることでしょう。
 と同じことが、同条5項に規定する「その他の事情を考慮して定めなければならない。」の中に、代理人弁理士の「クレーム力」が含まれると解することができるとしても、それも絵空事の主張でしかないことになるようです。
 私は、自分のこの考え方の妥当性を論理的に裏付けたいと思い、昨年、弁理士会のセミナーシリーズに参加しましたが、収穫はありませんでした。これに参加している弁理士の関心は、「クレーム力」のような自分事についてではなく、第三者的立場からの他人事についてでした。結局、弁理士の「クレーム力」についての評価は、ケース・バイ・ケースで、事実に直面した時に考えるしかないのだろうと思うようになりました。

4.今月の裁判例コーナーは、次の4件を紹介します。
1)サンプリングチューブ事件:
  大阪地判平成18年7月27日(26民)→
C1−37
2)金属製ブラインドルーバー事件:
  知財高判平成18年8月31日(3部)→
B1−24
3)金属製ブラインドルーバー事件:
  知財高判平成18年9月20日(4部)→
B1−25
4)コンクリート型枠支持金具事件:
  大阪地判平成18年11月30日(26民)→
A−34

 なお、これらの判決文に登場する当事者などの実名は支障のある場合もあり得ることから、今後は原則としてイニシャルだけとします。

 質問や意見などがありましたら、ご遠慮なくお知らせ下さい。
 今年も心身の健康を保ち、バランスのある論評をしたいと心掛けていきます。


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