2006年12月1日


 
近 況 雑 感

1.

 早いものですね。もう今年の終りの月となりました。この1年間を振り返って、自分はどの場にいてそこで一体何をしていたか、その場その場における自分について反省してみたいと思います。その反省が、来年の新しい自分と場との関係に生かすことができる源泉となるのではないかと思います。

2. 11月21日に今井哲二静岡大学名誉教授からいただいたメールには感動しました。それは、今井先生が11月20日の朝日新聞(夕刊)一面の“ニッポン人脈記”の記事を読まれた感想を、小口文一と赤崎勇の両先生とともに私にも送信されて来たのです。今井先生は、青色LEDの発明者は赤崎先生であり、その工業化に努力したのが中村修二氏だという位置付けを、マスコミはよく認識しておくべきだと忠告されていたのです。
 今井先生は、かつて私が、職務発明者の対価の基礎となる特許権が有する弁理士の「クレーム力」を評価せよとアピールしたことに対し、インパクトを受けたと一早く言ってくだされた方です。→
第1−1622
 また、今井先生は最近発行の「電子情報通信学会誌」に発表されている解説論文が紹介している「超LSI」の言葉を例にあげ、この言葉を生み出した豊田博夫先生の著書を参考文献としてあげておくのが、後輩研究者の責務であり礼儀であるといわれています。
 同様のことが、弁理士の後輩らが書いたり発言したりしている文章についてもいえます。例えば、「意匠の類似」の問題について考え議論するときに、「類似」の根拠を徹底的に論じた牛木論文や著書を読んでいるならば、それを引用文献として紹介すべきです。しかし、読んでいないのならばその議論は問題外です。

3.  私は「パテント」2006年10月号に、「改正意匠法第24条第2項への疑問−DVD著作権決定の教訓−」と題した批判論文を発表しました。この論旨は、前記新規定は、全く別の争点について判断した最高裁の判決を、行政官が誤解ないし曲解した上で、意匠法の本質も実務も解っていない者による作文であり、この規定はいずれ司法の判断を受けることになるだろうというものです。→関係D−5152
 この論文の“抜刷”を多くの学者や弁護士の方々にお送りしましたところ、返事をいただいた方からは、論旨に賛成するとの考えが示されていました。

 なお、司法の判断とは、国民のための憲法の番人としての裁判所(司法)が、各種の法規が憲法違反していないかをすべてチェックする国の機関であることを意味しますが、現在施行中の住基ネット法に対し、大阪高裁が「住基ネットには、個人情報保護対策で無視できない欠陥があるうえ、提供を拒否する住民に運用することは、プライバシー権を保障する憲法13条に違反する。」と判断し、原告の請求を棄却した大阪地裁(一審)の判決を変更したことは、その好例です(平成18年11月30日判決)。

4.  特許庁では、産構審の知的財産政策部会の「弁理士制度小委員会報告書(案)の概要に対するパブリックコメントを募集しましたので、私はやや辛口な意見を11月24日に提出しました。この意見書を「論文コーナー」の第1−24に発表しておきます。今や特許庁の政策は、弁理士の量的向上と質的低下の相反する矛盾の中であえいでいます。そして、このような政策を続けるならば、わが国の弁理士制度の改革は挫折することになるでしょう。その責任は誰が負うのですか。
 われわれ弁理士という職業は自由業であるということを関係者はまず認識することです。都会に住むか地方に帰るか、何を相手に仕事をするか、それは個人の人生観,世界観によって、各自が自由に選択することができる問題です。この職業についた後は、弁理士は自己責任をもって依頼者に対処すべきであり、政府がとやかく横やりを入れる筋のものではありません。

5.

 今月の裁判例コーナーは、次の3件を紹介します。
1)USBeaR 図形商標事件:
  知財高裁(行ケ)平成18年4月24日判決(棄)→
G−49
2)プロ野球選手の肖像権等事件:
  東京地裁平成
1881日判決(棄)→
H−10
3)Morris & Co.商標事件:
  知財高裁(行ケ)平成18年11月8日判決(棄)→
G−50

 なお、知財高裁二部で争われていた登録商標「ひよこ立体商標」の審決取消訴訟は、原告(審判請求人:(有)二鶴堂)の主張が通り、審決取消(登録無効)の判決が11月29日にありました。「ひよこ」の形態自体は果して商標といえるものなのか。その形態の使用は商標的使用といえるのか、意匠的使用ではないのかという本質的な問題が争われています。そして、改めて立体商標とは何かが問われています。その詳細については次月号に紹介します。
 この事件判決の前後に私はフジTVの取材と収録とを受け、11月29日の朝番組“めざましテレビ”と夜番組“News Japan”にコメンテーターとして短時間出演しました。



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