2006年6月1日


 
近 況 雑 感

1.1 参議院先議で平成18年4月6日に同院を通過した「意匠法等の一部改正法律案」は、衆議院の経済産業委員会で5月26日と31日に審議された後、6月1日、衆議院を通過し成立した。
 私は、衆議院の同委員会所属の民主党委員に質疑を依頼していたが、空振りに終ってしまった。
 両院における質疑応答とこれらに対する疑問点についてはこの週末に整理してまとめ、来週掲載することにする。それにしても、意匠法において意匠の類否判断を行う主体は、今回の特許庁長官の答弁で、端的に「消費者」にまで落ちてしまったのである。ということは、立法者(実はといえば行政者)は、意匠法を特許法と同根の創作保護法ではなく、商標法と同根の識別保護法と考えていることを暴露したことになる。こんな悪法があっていいのだろうか。開いた口が閉まらない。

1.2 前記参議院及び衆議院の各経済産業委員会で審議された「改正意匠法案」に関して、同法の問題点をめぐる質疑応答を整理したので、次のとおり発表する。
第1−1 改正意匠法コーナー
1.改正意匠法案の問題点について(私見) →1−1−1
2.衆議院調査局経済産業調査室発行調査書(抄) →1−1−2
3.改正意匠法24条2項の立法理由について
  (参議院・衆議院の各委員会から) →1−1−3

     <1.2の分については2006年6月6日発行
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2.

私が、2006年1月1日号で紹介し、論文コーナーで発表した弁理士の「クレーム力」を論じた中村修二対日亜化学工業株式会社の職務発明の対価をめぐる訴訟事件の柱となり、日亜化学には基本特許であったはずの特許第2628404号の特許権が、特許権者自身によって放棄されたという驚きのニュースを聞いていた。特許権の放棄とは特許権の消滅を意味するが、後味の悪い始末の仕方である。それは何故か会社側の本心を知りたいところである。(特許庁の特許原簿への放棄登録は平成18年1月26日)
 また、最近の情報では、中村さんは東北大学とも共同研究をしているとのことであり、両者がコラボレートすることによる青色LED技術のさらなる進歩が期待されるところである。

 

3. 先月号で紹介した大学などの学者の世界における論文盗用や捏造だけではなく、美術の世界でも誰が見ても盗作であることが明らかな画家の絵がマスコミを賑わしている。あそこまで明確に一致している絵は写真撮影したものに基かなければ描けないことは誰もが知っている。これを法的に評価すれば、こういう絵は正に「複製」品であって「翻案」品というものではない。
 またこれは、個人の著作権侵害の問題のみならず、これまでも受賞の対象とした審査員や主催者の責任も問われなければならないだろう。この画家も芸術大学の教授だったという。

 

4.

今月の裁判例コーナーでは、次の6つの事件を取り上げる。
1)手さげかご事件:大阪地判平成18年1月17日→A−33
2)運搬車キャスター事件:知財高判平成18年2月2日→B2−9
3)胃潰瘍治療剤カプセル事件
 @東京地民47判平成18年1月13日→C1−31
 A東京地民29判平成18年1月18日→C1−32
 B東京地民46判平成18年1月31日→C1−33
 C東京地民40判平成18年2月24日→C1−34
 これら4つの判決事件は、「ジェネリック医薬品」と呼ばれる特許権消滅後の商品形態の保護をめぐる不正競争防止法に基く差止請求及び損害賠償請求事件であり、同一の原告が多数の薬品会社を被告とした多数の事件は、東京地裁で知財侵害を扱う民事29部,40部,46部及び47部の4か部にわたっていたことから、この各部の言渡判決の中から1件ずつを無作為に取り上げて検討してみることにした。不正競争防止法2条1項1号に規定する要件事実に事案を適用する論法に違いはないけれども、各部によって判決理由の論理の組立てに若干の違いが見られて面白い。そして、判決文を常に教材と考えている立場からは、どの判決が読者をしてより説得力をもっているかの違いがわかる。

 

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